なんちゃってシリアス回。
「ニャー!」
足元に近寄ってきたずんぐり猫に向かって、猫ポーズをする私。
今日は、昨日お仕事頑張ったのでお休みなのです。仁君もお茶子ちゃんも梅雨ちゃんもお仕事なので、部屋でゴロゴロする予定だったのです。でも、トムラ君達に追い出されてしまったのです。
「雨が降ってたら、家から出なくてよかったのです」
地面の水溜まりの水を、パシャンと右足で跳ねさせる。夜から降っていたのに、朝御飯を食べ終える頃にはあがって、今は青空が広がっているのです。
この前、仁君と買い物に行ったから、買いたい物もないし、正直何もする事がないのです。あてもなく歩いても、何も思い付かないのです。
「あれ?トガさん?」
「えっ?あっ!!出久君!!奇遇なのです!!」
水溜まりに映る自分の顔を見ながら、どうしようか悩んでいると、後ろから名前を呼ばれたのです。振り返ってみると、そこには、ヒーロースーツ姿の出久君が立っていたのです。
「こんな所でどうしたの?」
「トガは今日お休みなのです。部屋でゴロゴロする予定だったのに、追い出されてしまったのです。とっても暇なのです!出久君は、パトロールですか?」
「うん、パトロール中」
「···着いていってもいいですか?緊急チームアップミッションなのです!」
「えっ!?う~ん、いいのかなぁ?ヒーローとしては先輩だけど、トガさんも僕と同じ仮免だし、何かあったらお互いの事務所にも迷惑掛かるかもしれないし···」
「じゃあ、許可が出れば問題ないのです。今、トムラ君に聞いてみるのです」
急いで携帯を取り出して、トムラ君の携帯に電話を掛ける。2コールもしない内に、トムラ君が電話を取ったのです。
『どうした、トガ』
「私、今から出久君と一緒にパトロールするのです」
『はっ?······出久ってのデクの事か?』
「そうなのです!その出久君なのです!!」
『···デクに変われ』
「?分かったのです。出久君、トムラ君がお話があるそうなのです」
「え、あ、うん···はい、変わりました、トムラさん······はい···えっ?!いいんですか?!?···はぁ、ええ、分かりました。あ、ナイトアイには···、あ、トムラさんの方で···はい、じゃあ午前中までですけど···はい、はい、それでは···はい、トガさん」
『トガ、デクに迷惑掛けんじゃねぇぞ。もし何かしたら、一ヶ月トマトジュースだからな』
「なっ!!ぶー、分かったのです」
『じゃあ、パトロール頑張れよ』
「はいです」
電話の向こうで、深い溜め息が聞こえたと同時に切れた。
「これで、着いていっても大丈夫なのです。さぁ、張り切ってパトロールしましょう!」
「うん、よろしくね、トガさん」
「よろしくなのです!出久君!」
「はぁ···」
「トガちゃん、どうしたの?」
「いや、大した事じゃねぇよ」
「そう、ならいいわ。そろそろお仕事の時間よ、所長」
「ああ。お前ら、良い意味でも悪い意味でも、日本で今一番注目されてる政治家様だ、凡ミスすんじゃねぇぞ」
「頼むから、マジ頼むな!赤黒議員に何かあったら、事務所無くなるだけじゃすまねぇかんな!!」
「任せとけって、秀一!嫌だ、俺はサボる!!」
「ま、仕事はキッチリやりますよ」
▼▼▼
「ありがとー!ヒーローのお兄ちゃん、お姉ちゃん」
「ありがとうございました」
「いえ。今度は、お母さんの手を離さないようにね」
「うん!」
お母さんとはぐれて泣いていた女の子を、無事お母さんの所に送り届ける事が出来て良かった。
「じゃあ、次の場所に行こっか···トガさん?」
「えっ!あ、はい、次に行くのです!ヒーローとして、市民の安心を守るのです!!」
さっきの親子を、何とも言えない表情で見つめていたトガさん。羨ましい様な、妬ましい様な、そんな顔だった。心配して声を掛けてみたけど、その色は直ぐに消え失せ、いつものトガさんの表情に戻ったけど、とても気になる。
前を歩くトガさんの背中を追うけど、何て声を掛けたら良いか分からない。こんな時、お茶子さんが居てくれれば。
「···出久君、出久君は、今の世の中は生きやすいですか?」
「えっ?」
「トガの個性は、その人の血を飲む事でその人に成れる個性です。その所為か、昔から血が大好きです。ちうちうしたいと常に思っています。でも、それは普通じゃありません。普通じゃないから、普通になれと、お父さんとお母さんから言われ続けていました。トガも、一応取り繕ってはいたのです。
でも、中学の卒業式の日、トガは我慢の限界の迎えたのです。名前は忘れましたけど、当時好きだった男の子を切り刻んで、ちうちうしてしまったのです。好きな人と同じになりたくて、好きだからその人になりたくて」
「···その事件、聞いた事がある。卒業生の女の子が、同級生を刺して重傷を負わせたって。犯人の女の子は、逃亡したけど、アイスメイカーが確保したって」
「流石、出久君なのです。そうです、好きな人をちうちうして逃げた私を、アイスメイカーが捕まえたのです。そして、トガに、この生きづらい世の中で、少しでも生きやすく生きていく方法を、一緒に探してくれました。だから、こうしてトガはヒーローをやれています。でも、時折思うのです。今の世の中を全部ひっくり返して、トガが生きやすい世界にすれば良いんじゃないかって。さっきの親子が、普通じゃない世界になれば、トガは···」
「···僕も、世の中は生きづらいと思う。僕は、雄英の入試まで、無個性なヒーローオタクでしかなかった。ヒーローになりたいって言っても、"無理だ""諦めろ""身の程を弁えろ"って言われ続けた。一番堪えたのは、母さんに"ごめんなさい"って言われた事だったかな」
「···」
「個性が発現して、個性がある人間になった時にびっくりしたんだ。個性があるから生きづらいって、そういう人達が居るんだって。異形型の迫害の歴史も、学校で習ってたけど、理解してなかった。
テンタコルって知ってる?同級生何だけど、異形型の個性で、産まれ育った場所で、ずっと迫害を受けてたんだって。でも、この世界を恨むことなく、自分の様な人達が少しでも減る様にって、異形型だからって苦しむ人達の希望になる様なヒーローにって。
多分、トガさんみたいに苦しんでる人は、世界中に居るんだと思う。トガさんは、そんな人達が、無理に普通に押し込めなくても、生きていける方法はあるんだって示せる、とても大切な存在何だと思う」
「···トガが、大切な存在···ですか」
「うん。普通に生きたいと願っていた人達と、これから産まれてくる子達の希望。世界をひっくり返さなくても、世界を少しでも変えられる。そんな存在として、トガさんは産まれてきたんじゃないかな」
「···やっぱり、出久君はカアイイのです」
「うえっ!!」
「出久君、トガとずっと友達で居てくれますか?」
「···うん。あ、でも、もしトガさんが世界をひっくり返そうとしたら、僕は止めるから」
「ええー、酷いのです!友達なら、味方になって欲しいのです!!」
「友達が、危ない事をするのを止めるのも、友達の役目だから」
「···ヒーローとして、ではないのですか?」
「うん。多分、その時のトガさんは、助けてって顔をしてると思うから。友達として止めて、その後ヒーローとして助ける」
「何ですか、それ」
「「アハハハハ!!!」」
▼▼▼
「今日は、護衛をありがとう」
「まぁ、仕事ですから」
「···君は、私の考えをどう思う?ヒーロートムラ」
「···」
「市民の声を聞くのが政治家の仕事だ。何と言おうと構わない」
「···早すぎる、だな」
「早すぎる···とは?」
「あんたの考えは早すぎる。個性社会って言っても、たかだか100年だ。まだ世界は、そんなに成熟してねぇ。俺達の次の次の世代で、漸く動き出せるんじゃないか?アンタの役目は、耕して種植えて、焦らず、水やりを忘れない事だと思う」
「なるほど」
「それと、俺達はヒーローで軍人じゃねぇ。そこは、しっかりと押さえといてくれよ。ヒーローじゃなくなった次の瞬間、他国の人間を殺す兵器になる気はねぇからな」
「···肝に命じておく」
「おう、頑張れよ、赤黒議員先生」
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「仁君、おかえりです」
「おう、緑谷とパトロールしたんだってな、どうだった?」
「良かったのです」
「そうか、そりゃ良かった」
「仁君」
「何だ?」
「大好きなのです」
シリアスなのやだ!!もう書かん!!
こんなのトガちゃんじゃないと思われた方、原作程追い詰められていないから、とお目こぼし頂ければ。
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