「凄い景色ね。本当に、私らみたいな学生が来て良いとこ?」
「学校が用意してくれたんだし、気にしてもしょうがないでしょ」
「···そうね」
何で、私こと柳レイ子が、恋人である心操人使と、そこそこ有名な温泉宿に来ているのかというと、ここの宿泊チケットが、今年の体育祭で三位に入った人使に贈られた賞品だからである。
人使は、「緑谷達が別グループで潰しあってくれたし、対戦相手運が良かっただけだよ」なんて言ってるけど、個性を知られている上に、捕縛布無しで勝ち上がったんだから、十分実力よ。
因みに、もう一人の三位は緑谷君。隣の部屋に、麗日と来ている。
「俺としては、頑張った彼氏へのご褒美、期待してるんだけどね」
「······人使の変態」
「レイ子が魅力的な所為だから」
「···馬鹿」
▼▼▼
「はぁ~~、気持ちええ~~」
「本当に。足湯でこれだから、本命の温泉が楽しみね」
「やね~」
「···眩しいね、心操君」
「···ああ、眩いな、緑谷」
お茶子さん·柳さんと向かい合って、足湯に浸かる僕と心操君。お湯に濡れて輝く、お茶子さんの膝小僧とかから目が離せない。心操君も、柳さんから視線が動いてない。
「レイ子」
「何?人使」
「ん···ハイ、チーズ。よし、そろそろ行くか」
「そっちは撮らなくていいの?」
「···いるか?緑谷」
「う~ん、記念に一枚位撮っとく?」
「ほな、二人とも、はいチーズ。うん、バッチリや」
撮った画像を送ってもらい、足を拭いて足湯を後にする。お茶子さんと手を繋いで、お団子とか食べたり、お互いのツーショット写真を撮りあったりしながら、温泉街を練り歩いた。
そろそろ、宿に戻ろうかという時間、柳さんがとある建物に気付いた。
「絶叫屋敷·廃旅館の恐怖···」
「これ、お化け屋敷···だよね、柳ちゃん」
「屋敷なのか旅館なのかどっちなんだ?」
「えと······入るの?」
「諦めろ、こうなったレイ子は止められない」
心操君の言う通り、目をキラキラさせた柳さんが、心操君を引っ張ってズンズンとお化け屋敷に入っていく。本当に、ホラーが大好きなんだね。
「折角だし、僕らも行ってみる?」
「···絶対、手ぇ離さんといてね」
へっぴり腰で、腕にがっしりしがみつくお茶子さんを、可愛いなぁと思いながら、心操君達の後を追ってお化け屋敷に足を踏み入れる。
「設定もしっかりしてたし、作り込みも中々。まさか、こんな掘り出し物に出会えるとは」
「···満足そうで何より」
「グスン···グスン···」ブルブルブルブル
「もう外だから、もう大丈夫だから、ね、お茶子さん」
今日一番の笑顔を浮かべる柳さん、疲れた顔の心操君と僕、半泣きで僕の胸に顔を押し付けて震えるお茶子さん。どれだけ恐かったか、この惨状で察してください。
▼▼▼
「あ、レイ子から写真だ。二人とも、しっかり楽しんでんね~。お、発目ちゃんもはしゃいでんね~。ほらほら、私らも。ハイチーズ!」
「テメッ!自分の今の格好分かっとんのか!!」
「大丈夫大丈夫、大事な所は写ってないから」
「そういう問題じゃねぇわ!!!」
もう、折角良いお湯なんだから、そんなカリカリしないの、かっくん。
「はい、背中流したげるから、座った座った」
「···ちっ」
「え?この瑞々しくてプルップルでボンキュッボンな体で洗って欲しいって?」
「言っとらんし普通にやれ!!」
「ちぇっ、つまらん」
▼▼▼
「「ん~!おいひ~~!!」」
「···打ち合わせしてたの?」
「キャラが二天一流*1になってないか?」
声揃えて、料理に舌鼓を打つお茶子さんと柳さん。心操君がメタい突っ込みしてるけど、幸せそうに料理を頬張るお茶子さんは、いつ見ても飽きないなぁ。
「あ、ご飯お代わりいる?心操君」
「ん?ああ、頼む」
自分のをよそうついでに、心操君のお椀にご飯をよそう。旅館の人達も、長年の経験で分かっているのか、普通の一食分では量が足りないだろうからと、ご飯がお櫃でドンと置かれている。後、汁物とお漬け物も。
メインのおかずが無くても、このお漬け物だけでご飯一杯いけちゃう位美味しい。流石だね。
カポーン
「ああ~~、しみわたる~~」
「ほんとだね~~」
雄大な景色を眺めながら、露天風呂に浸かる僕と心操君。え?野郎はいいからお茶子さん達を出せ?だが断る。
「悪かったな」
「え?」
「いや···去年の体育祭。結局、謝ってなかったから」
「···あ、もしかして、土下座しろって言ったやつの事?」
「ああ」
「別に、気にしてないのに」
「俺なりのケジメって奴だ。この個性を使う以上、俺は誰もが憧れる正義のヒーローにはなれない。どこかで、ヒーローらしからぬ事をしなきゃなんねぇ」
「心操君···」
「本当、お前が羨ましいよ」
「そんな···僕だって···」
「それでさ、一つ聞いて良いか?」
「えっ!?あ、うん」
「今日は、麗日と何回するんだ?」
「うえっ!!?!し、心操君?!?」
さっきまで、シリアスっぽいやり取りしてたよね?!温度差ありすぎじゃないかな?!?
「まさか、ただ仲良く並んでお休みするつもりだったのか?」
「え、いや、その···そういう事はないけど」
「だろ。じゃなきゃ、彼女誘わねぇもんな」
「いや、そんな、下心だけで誘った訳じゃ···」
「おいおい、素直になれよ緑谷。期待、してるんだろ?」
「うう······はい」
「で、何回するんだ?つか、アレは何個持ってきたんだ?」
「···二箱」
「ふたっ!!···すげぇな」
「いやっ、流石に全部使わないよ!念の為、念の為だから!!」
「そこで、一箱は予備だって言わねぇんだな。確実に、使用量が一箱越えると」
「うぐっ!!」
「男として、羨ましいのかどうなのか微妙な所だな」
「······かっちゃんよりはマシだから」
「話には聞くが、アレと比べる時点でおかしい事に気付け」
「ぐはっ!!」
「なぁ、レイ子」
「んっ、んっ、ひゃに?ひとひ」
「これ使いきるまで終わらないって言ったら、どうする?」
「···はっ?干からびたいの?」
「いんや、聞いてみただけ」
「···雪花や麗日じゃないんだから、普通に体壊すわよ」
「じゃあ、壊れない程度に」
「そうして頂戴、あむっ」
「え?もうええん?疲れとるん?どっか調子悪いん?」
「いや、そういう訳じゃないけど···」
「···遠慮せんでもええんよ。私、デク君とするん、全然しんどくないから」
「お茶子さん···」
「それに、デク君のここは、全然満足しとらん言うとるよ」
▼▼▼
「おや、皆さん!奇遇ですね!!皆さんも今帰りですか?」
「発目ちゃん···元気やね」
「貴女も、飯田と旅行行ってたのよね?」
「飯田君、やつれてないけど何か疲れてない?」
「?温泉入ってぐっすり寝たのに何ででしょうか」
「···え?温泉入って寝るまでに何もしなかったの?」
「はい、そうですよ」
「部屋、別々やったん?」
「いえ、同じ部屋でしたよ。お布団も一緒でした」
「どういう風に寝たの?」
「普通に横並びですよ。あ、でも、朝起きたら天哉さんの上に乗っていましたね、うつ伏せで」
「「「飯田/飯田君、頑張って耐えたんだね」」」
二年体育祭順位 一位爆豪 二位飯田 三位緑谷·心操
賞品は、一位:SSランク 二位:Sランク 三位Aランクの温泉旅館宿泊チケットでした。
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