ヒロアカ、終わるんすね。
「···釣れねぇな」
「···釣れませんね」
満点の太陽に照らされ、ジリジリと肌を焼かれながら、水面をユラユラとする浮きをじっと見つめて、早一時間。
この一時間、浮きが沈むどころか、針に付いた餌を取られる事さえ無かった。
「デクくーん!!また釣れたよーー!!!」
「入れ食い入れ食い!!!」
反対に、向こう側で同じように針を垂らしている、お茶子さんと八木さんの竿は満員御礼。バラしてしまう事はあれど、投げる度に何かしら当たりを引いている。
麦わら帽子被ってはしゃぐお茶子さん、可愛いなぁ。
「···釣れねぇな」
「···釣れませんね」
「緑谷少年!!一緒に、キャンプ行かない?」
そう誘われたのが先々週。
何でも、この度ラビットヒーロー"ミルコ"と結婚される、崩壊ヒーロー"トムラ"こと志村転孤さんのお祝いを兼ねて、キャンプに行くとの事。そこに、僕が加わってもいいのかと疑問に思ったけど、転孤さんからのリクエストがあったらしい。
そういう事ならと、二つ返事で了承した僕。お茶子さんも誘っていいとの事で、お茶子さんに聞いてみると、丁度予定も無かったので、二人で参加する事に。因みに、かっちゃんにも声掛けたらしいんだけど、予定が合わず断られたらしい。
こうして、僕とお茶子さん、八木さん一家、転孤さん、グラントリノの7人で、海辺のキャンプ場にやってきたのです。
「あ、転弧さん、ご結婚、おめでとうございます」
「ああ、仕方なしだけどな」
「···ミルコが会見で、デキ婚って言ってましたけど、本当なんですね」
「···ちゃんと避妊しろよ。少なくとも、責任取れる年齢になって、責任取る覚悟を決めるまでは」
「は、はい」
「···OFA、歴代継承者の個性が使えるんだってな」
「え、あ、はい。使いこなすのは、まだまだ訓練が必要ですけど」
「···七番目、祖母の個性は」
「浮遊ですね。五番目の黒鞭と合わせて、機動力が格段に上がるので重宝しています」
「···そうか」
浮きをじっと見つめる転弧さんの目は、何だか嬉しそうだった。
「なぁ、緑谷」
「はい」
「黒鞭って奴で、魚取ってこれねぇか?」
「···流石に無理です」
「······そうか」
「デク君!!また釣れた!!今度は三匹!!」
「大漁じゃー大漁じゃー!!」
「···あっち、行ってみます?」
「いや、ここでいい」
「そうですか」
「···」
「···」
「···」
「···」
「なぁ、緑谷」
「はい、何ですか?」
「名前、どれが良いと思う?」
「な、名前?」
「子供の名前だよ。意見がぶつかり合っててな」
「因みに、どんな」
「女の子だったら、漢字にするかカタカナにするかは兎も角、ルナ一択で決まってる。問題は男の場合でな。俺は、月兎(ツキト)とか月(ユエ)とかが良いと思ってんだが、ルミの奴は"そんな、なよっちい名前付けられるか!"って言ってな。アイツの案だと、蹴(シュウ)とか蹴倒(シュウト)とか、兎に角"蹴る"の漢字を入れたがるんだよ」
「···悪くないと思うんですけど」
「書くのが面倒だろうが」
「め、面倒···」
「そうだろう。子供が学校行って言われんだぞ、"まだ、自分の名前漢字で書けないんだ~"ってな。んで、言われんだ、"父さん、母さん、何でこんな難しい漢字にしたの?"ってな」
「···は、はぁ」
「そして、挙げ句の果てに、"今度から、伊口おじさんと一緒の秀にするから"って。クソッ、アイツへの祝儀は半分にしてやる」
「そ、そんな妄想で八つ当たりは···」
「なぁ緑谷、月兎の方が良いよな!なぁ!!」
「えぇっと、そ、それは···あっ!!引いてますよ!!竿!!」
「そんな事よりも、どっちが良いんだ!!答えろ、緑谷ぁぁああ!!!」
▼▼▼
「しっかし、まさか志村の曾孫の顔が拝める事になるたぁな」
「長生き、してみるものですね」
「たく、志村への土産話がまだ増えやがる」
「何の、師匠には私の孫を抱いて貰わなければ」
「おいおい、俊典。これ以上は、ワシには覚えきれんわい。お前の土産話にしろ」
「···師匠」
「そんなしょげた声出すな、元No.1。別に、どっか悪いって訳じゃねぇよ。単純に、お前さんらのガキが子を産む頃にゃ、ワシはよくても呆け爺だ」
「···」
「出来ることなら、そうなる前に志村に会いたいもんだ」
「お墓、何処に建てましょうか?」
「冬花!」
「志村の隣に頼む。ワシには、弔ってくれる縁者なぞおらんしな、カッカッカッ!」
「師匠!」
「···俊典、こんなもんは順番だ順番。よっぽどの何かが起きでもしなけりゃ、確実にワシが先に逝く。おめぇさんもそうだ。嬢ちゃん達より先に逝く。そういうもんだ、なぁ、俊典」
「···はい」
「ほれ、そろそろガキンチョ共が、腹空かして帰ってくるぞ。シャンとせんか、馬鹿弟子が」
「は、はい!!」
「ふふふ」
▼▼▼
「星、綺麗やね」
「うん、綺麗だね」
結局、僕と転弧は一匹も釣れなかった。
お茶子さんと八木さんが釣り上げた魚達は、オールマイトが綺麗に捌いてくれて、BBQのおかずになった。
オールマイト達は、お酒も入って昔話に花を咲かせている。八木先生は、帰りの運転があるからと、八木さんとテントに。僕らは、潮風に当たりながら、夜の砂浜を歩いている。
「釣りん時、どんな話しとったん?」
「え、まぁ、色々?」
「色々?」
「うん、色々」
「そか。デク君やったら、自分の子供に何て名前付けるん?」
「ひょえっ!?お、お茶子さん?!こ、子供?!?!!」
「何変な声出しとるんよ。別に、妊娠したとかちゃうから。子供の名前がどうたらって、ちょっと聞こえただけ」
「あ、そ、そうなんだ、ふぅん、えと、何だっけ」
「子供の名前、デク君やったらどんな名前付けるんかなぁって」
「そんなの、考えたこともないよ」
「私、今一つだけ、パッと思い浮かんだ名前があるんよ」
「どんな名前?」
「士郎。緑谷士郎。名前の意味とか何も考えとらんけど、何かパッと頭に出てきた」
「良い名前だね。でも、名字は緑谷なんだね」
「···へっ?あ、いや、パッと思い浮かんだだけやから!!」
今週号読んだ勢いのまま、ただ普通に駄弁る出転を書きたかっただけ。
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