八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第十話「八木雪花と学級委員長と大食い大会」

 

 

 

 

「では、厳正なる投票の結果、A組初代学級委員長は飯田天哉君に、副委員長は八百万百さんに決定致しました。みんな、拍手~」

 

 黒板の前に立つ二人に、大きな拍手と「頑張れよ~」とか「頼むぜ、委員長」などの声援の上がる教室。

 朝もはよから校門に群がるマスコミを躱して、怒りのオーラを纏った焦凍に蕎麦を御馳走する事で手を打ち、かっくんにちょっかいをかけ、百と他愛ない話をしながら男性の好み等の情報を仕入れていると、プリントを抱えた相澤先生がやってきて、学級委員長の選出というとても学校っぽいものを言い渡された、私達A組諸君。

 各々が自薦をする中、飯田君が投票による決定を提案。そこに、自薦無しという条件を付け加えて行われた投票の結果が最初に繋がる。

 

「皆に選んでもらった以上、全力を持って学級委員長の任を全うする事をここに宣言する!」

「私も、副委員長として頑張りますわ」

 

 順当と言えば順当な二人。百と緑谷君が同票だったけど、女子も居た方が良いという事で百になった。もちろん、私は百に投票した。

 

 

 

 

「なんで、ついてくんだよ半分野郎」

「?席がそこだからだが?」

 

 昨日言った通り、かっくんにご飯奢って貰う為に食堂に来てる私。今日のランチラッシュスペシャルは、ファットガムリクエストのお好み焼き+たこ焼きセット。

 右手にそれを、左手に激辛麻婆丼を持ってきたかっくんが、後ろでざる蕎麦定食とカツ丼大盛り定食を持つ焦凍に怒鳴る。何を当たり前の事をという表情で答える焦凍を、そういう事ではないと、私の隣に座って苦笑いする百。

 

「別にいいじゃん、誰がどこに座ろうと。ほら、冷めると勿体ないから早く食わせろ~」

「ち、たこ焼き半分寄越せや」

 

 そう言って、机に料理と調味料を綺麗に並べていくかっくん。立ち上るソースの香り、湯気に煽られて踊る鰹節、ファットガム厳選の食材を使い、ランチラッシュ自らの手で丁寧に焼き上げられたそれらは、最早至高と言う言葉以外出てこない。

 

「いただきます。ん~~!!美味!!!」

 

 流石、ランチラッシュ。この食事だけでも、雄英に来た価値はあると言っても過言ではない。

 

「で、さっきの続きだが、来週土曜は暇か?八百万」

「ええ、今のところ何の予定もございませんわ」

 

 焦凍が、百に一枚のチラシを見せる。轟家の近所にある蕎麦屋が行う大食い大会のチラシだ。

 

「一緒に出て貰えないか?」

「私がですか?」

「ああ、最初は雪花に頼んだんだが、八百万の方が良いと薦められたから」

「それ、参加条件が男女ペアでさ。優勝賞品目当てらしいから、私じゃ戦力にならんのよさ。因みに、賞品はヒーロートレカ。一位がオールマイト、二位がエンデヴァー、三位がホークスのサイン入り限定蕎麦打ちSSR。副賞に、本人との写真撮影もついてくるとの事」

「頼めるか?」

「なるほど、そういう事でしたら私八百万百、万難を廃してご協力させて頂きますわ」

 

 優勝賞品の欄に目を通した瞬間、戦士の目付きになった百。流石お父さん、人気者ですな~。

 

「ねえ、それってまだ応募間に合うかな?」

 

 背中合わせで飯田君やお茶子と食事を取っていた緑谷君が、体をバチバチさせながら焦凍の肩を掴んでいた。目がマジだ。

 

「お、おう。申し込みは木曜までで金曜に抽選だが、協賛特別枠で後二組位は確保出来るぞ」

「炎司おじさん達がスポンサーしてるから、参加費無料の特別枠が一応用意してあってね。でも、今の所焦凍以外参加しないそうだから、枠余ってるんだって」

「麗日さん、一緒に出よう!」

「えっ、ウチ!?でも、ウチあんま食えへんよ?」

「一応、参加賞でお蕎麦10食分貰えるから、出るだけでも損はないよ」

「10食!!デク君、一緒に頑張ろう!!!」

 

 ガシッと固い握手をする緑谷お茶子ペア。こうなってくると···。

 

「おい、八木」

「やっぱりか~。言っとくけど、百に勝てる気しないよ?」

「俺が食えば問題ねぇだろうが。おい、半分野郎、俺もコイツとペアでその特別枠に入れやがれ」

「分かった、伝えておく」

「覚悟しとけとよ、出久。テメェにはぜってぇ負けねぇからな」

「僕も、負ける気はないよかっちゃん」

 

 ギンっと緑谷君に対して火花を放つかっくん。緑谷君も、いつもの気弱さはどこへやらと力強い目で受ける。いや、一番のライバルは、私の隣で青春ですわねぇなんて微笑んでいるお嬢様なのだが。

 

「正々堂々戦いましょうね、雪花さんお茶子さん」

「お腹壊さない程度に頑張ろうね、お茶子」

「うん、そやね」

 

 こうして、無駄に気合いの入った昼食が終わった。胃薬買っとこ。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「···やり過ぎんじゃねぇぞ。壊しすぎて弁償代で首が回んなくなっても、助けてやんねぇからな。ああ···おう、マスターに宜しく言っといてくれ、また今度飲みに行くからってよ。おう、じゃあ程々にな」

「だぁれと電話してるんだい?燈矢。まさか、私という者がありながら浮気!!」

「ちげぇよ、重てぇんだよ馬鹿。トムラだよ」

「なんだ、つまらん。それより、雪花ちゃんから大ニュース!!焦凍君にも春が来た!!」

 

 風呂上がりの石鹸の匂いを纏いながら、後ろから覆い被さってきた俺のシャツ一枚の萌が、自分の携帯の画面を見せてくる。送り主は雪花。そこには、昨日母さんや冬美に散々問い詰められていた焦凍が、件の女子と例の大食い大会に出る事が書かれていた。成り行きで、クラスの男子と出る事になったと怨み節も添えて。

 

「これは、茶化しに行くっきゃない!!」

「せめて、応援しに行くって言え」

 

 まぁ、こういった方面で一切話題の無かった焦凍が、雪花以外の異性となんて珍しいにも程があるからな。兄として、しっかり見守ってやるか。

 

「悪い顔になってるぞ、燈矢」

「お前こそ、冬美をからかう時と同じ顔だぞ。それはいいとして···」

 

 久方ぶりに骨のある奴と戦って昂ってる男に、んな格好でのこのこと近付いてきたドラ猫に躾してやんねぇとな。

 

「と、燈矢?わ、私、今さっき、し、仕事終えたばかりで疲れてるんたけど···そ、それに、まだ日も高いし···」

「お前はいつも通り、大人しくしてりゃいいんだよ」

 

 

 

 

 翌日、すっきりとした顔の長男と、腰をさすりながらげっそりしている部下が一緒に出勤してきたのを見たエンデヴァーは、部下の予定を待機にこっそり変更するのであった。強く生きろ、バーニン。

 

 




因みに、うちのバーニンは社宅で一人暮らし(半同棲)の設定。

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