「諸君、由々しき事態である」
「左様、未だかつてない危機である」
夕暮れ時の教室。
わざわざ机を円状に並べて、深刻な表情で会議をしている生徒の姿がそこにあった。
「議長、副議長、それ程までになのですか?」
「···現状、参加申込み者は······0なのです」
「我らが、偉大なる先達から引き継いだ、栄えある雄英ミス·コンテスト大会が、最早開催すら危ぶまれている。そう、諸君には認識して貰いたい」
そう、ここに集まる者達は、雄英文化祭において一大イベントである、ミスコンの運営委員会のメンバーなのである。
「ぜ、ぜろ···」
「いったい、何故···去年の参加者達は?」
「···有志を募って、全女子生徒を極秘に調査した所、皆文言は違えど、ある一つの理由を口にしていた」
「···その理由とは」
「雄英高校ヒーロー科二年だ」
副議長が徐に立ち上がり、カーテンを閉め、電気を消し、プロジェクターを起動させる。そして、四人の女子生徒の写真が投影された。
「···彼女達が···何を」
「八木雪花、八百万百、拳藤一佳、小大唯。容姿、知名度において、今の雄英高校トップに君臨する方達。勿論、他の二年ヒーロー科女子も高水準。他科、他学年で、彼女達に対抗出来る可能性があるのは、二年サポート科の発目明さん位であろう」
「故に、皆尻込みしているのです。彼女達が出れば勝ち目は無く、彼女達が不参加で勝利したとて、王者無き勝者という不名誉な肩書きを背負う事になる、と」
「···その四名に、参加を打診しては?」
「···既にしている。しかし、全員色好い返事は頂けなかった」
「去年の参加者である、拳藤さんもですか?」
「···ああ。今年は、クラスの演し物に参加したいとの事だ」
「それは···仕方ありませんね。他三名の方は」
「八木雪花氏は、『参加表明したら、当日文化祭にすら参加出来ない位にされそうだから、かっくんに。だから、パス』と。
八百万百氏は、『申し訳ありません、クラスの演し物の準備で忙しく、ミスコンへの参加は難しいですわ。それに、焦凍さんが怖いですし、色々な意味で』だそうです」
「···まぁ、両名の恋人は独占欲が強いと有名ですからね、仕方ありませんか。小大さんは?」
「そもそも、ミスコンに興味の欠片も持っていなかった。すげなく断られました」
「他の二年ヒーロー科女子生徒に声を掛けてみても、殆どが、恋人を理由にお断りされた」
「···手詰まりですか」
「しかし、偉大なる先輩達が築き上げてきた、伝統ある雄英高校ミスコン大会を、我々の代で終わらせる訳にはいかん!何か、策を思いつく者は居ないか!?」
議長の悲痛な叫びも虚しく、教室には重苦しい沈黙が降りる。
「······絢爛崎先輩の時は、こんな事にはならなかったのに」
「絢爛崎先輩は、確かに偉大な方ではあったが、ミスコンにおいて、彼女のパフォーマンスは異質でもあったのだ。故に、敗者にも+となる評価を得られる土壌があった」
「しかし、件の四名が参加した場合、全うな方法での勝負となるでしょう。そうなれば、明確なる勝敗が付けられてしまう」
「···よっぽどの自信家じゃないと、二の足踏みますよね。よっぽどの自信家が居ても、彼女達が誰も出ないとなると、出る気は失せるでしょうし」
「···男子のミスコンとかどうでしょう」
「···難しいだろうな。そっちもそっちで、二年ヒーロー科がネックになってくる。というか、轟焦凍に誰が勝てる?そもそも、今の二年三年は、去年の小大唯争奪腕相撲大会で、二年ヒーロー科男子にトラウマを持っている者が大半だ。誰も参加しようとは思わんだろう」
「ボディビルコンテストならワンチャン、といった所が関の山でしょう」
「それに、裏で女子有志による、雄英高校男子品評会なるものが開催されている。そちらの領分を侵す事は出来ない。元締めが、あのミッドナイト先生らしいしな」
「···どうすりゃいいんだよ」
全員が頭を抱える。ただ、無為に時間だけが過ぎ去っていく。その時、静かに扉が開けられた。
「お困りのようですね」
「あ、貴女は!!」
▼▼▼
「···カップル·コンテスト?」
「ええ、今年はミスコンの代わりに、カップルでのコンテストを開催するそうです。初めての試みですので、参加者が集まらないかもしれません。故に、学年主任命令で、八木雪花と爆豪勝己、八百万百と轟焦凍、麗日お茶子と緑谷出久の3組には、大会への出場をして貰います」
「「「ええーーー!!!」」」
「何で、んなもんに出なきゃなんねぇんだよ」
「爆豪に同意だ」
「ぼ、僕とお茶子さんよりも、他の人達の方が···」
「これは、決定事項です。B組にも、3組出場して貰います」
「「「はいーーー!!!」」」
「貴方達は、プロとしてデビューしたら、より一層世間の目に晒されます。当然カップルとしても。これは、その予行練習です。自分達がどの様に見られているか、見られているとはどういう事か、しっかりと体感してきて下さいね」
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