「仁君早くするのです!!」
「んな急がなくても、まだ時間はある」
「ダメです!!一番良い席で見るのです!!」
映画撮影に協力したお礼にと、八木からチケットを貰ったので、トガと連れ立ってやってきた雄英文化祭。
他の奴は、奥さんと一緒にで別行動。マグネは、
『お邪魔虫にはなりたくないわ。居残りしとくから、楽しんできて頂戴。ちゃんと、レディとしてヒミコちゃんをエスコートするのよ、トゥワイス』
と言って、送り出してきやがった。どこから入れ知恵されてくるのか、トガのアタックを、前みたいにあしらえなくなってきた。ホント、こんな冴えないおっさんの何処が良いのやら。トガはまだ若い、もっとずっと良い出会いがあるってのに。
「仁君!!何してるのです!!!」
「はいはい、今行きますよ」
ま、トガが酒飲める位になるまでは、頑張ってのらりくらりしますかね。
『これは、僕が、僕達が、最高のヒーローになるまでの物語だ』
「はぁ~~~グスッ」
「落ち着いた?はい、水分補給」
「ありがとうございます、瀬呂さん」
瀬呂さんに、映画作ったから見に来てよとチケットを渡され、喜び勇んでやってきた雄英文化祭。第一部は、受付を担当されていたので一人で。二部から瀬呂さんと一緒に鑑賞したのだけど、もう感動の余り、恥も外聞もなく号泣してしまった。恐らく、瀬呂さんが居なければ、一時間位はその場で動けなかったと思う。
「いやぁ、あそこまで号泣してくれると、作った甲斐があったってもんだわ」
「凄かったです。それに、色々考えさせられました」
「八木先生の原案からして凄かったからな。流石、長年ヒーローやって、あのNo.1を誰よりも長く、誰よりも近い所で見てきたってだけはある。俺らも、それに負けないよう頑張ったよ」
「もう一度見たいです」
「完成品のDVD持ってるから、貸してやるよ?」
「本当ですか?!」
「おう、つっても家にあるから、また後日になるけど」
「で、では、その、あの、こ、今度は、二人だけで···」
「···それって」
「お、瀬呂と···赤外さんじゃん。映画見てくれた?!凄かったっしょ!!内容もさることながら、響香の歌も最高だったっしょ!!!」
「ちょ、電気!!邪魔しちゃダメだって」
「···空気読めよ、上鳴」
「ウェイ!?!」
「うむ、その、何だ、良かったぞ」
「そこは素直に褒めろや、クソ親父」
「まぁまぁ、そこがお父さんだし」
「そうだぜ、燈矢兄。叫ぶか歯切れ悪いかじゃない親父とか、ありえねぇって」
「そうね、昔から不器用だものね」
「だって、お前のお爺ちゃんは不器用な口下手の強面だって」
「だあ!」
「プッ!擁護出来ないっすよ、お義父さん」
「お前達···」
「ありがとう、親父」
「皆さんも、見に来てくださって、ありがとうございます」
食事スペースで、机一つを丸々占拠している私達轟一家(一人は予定)。一応、お父さん達はお忍び姿でいるけど、もうバレバレの大注目。
まぁ、これまでも、色々な視線に晒されてきたのだから、今更誰も気にしない。女子生徒達が、色紙を持ってチラチラと夫を見てる。でも、ごめんなさい、ファンサは禁止って言ってあるの。ここでファンサを始めちゃったら、大変な事になりそうだから、また今度にしてね。
「でもホント、学生が作ったとは思えないクオリティだったよ。次は、俺も参加したいなぁ」
「ぬ!抜け駆けは許さんぞ、啓吾。出るなら、No.1の俺が先だ!!」
「いえ、あの、来年もやるか分かりませんし、それに···」
「八木先生の原案だと、兄貴死んでるしヴィランだし親父最低だぞ?」
「「何!!?!」」
「あら、そうなの?」
「何でも、八木先生が、御自分が存在しなかったら、という世界を想像して書かれたそうなのです。そうしたら、恐らくこうなるだろうと」
「···確かに、冬花さんが居なかったら、赫灼の冷を習得してねぇって事だからな。高確率で焼け死ぬか」
「まさしく、今と真反対の、地獄の轟家だったかもってか」
「あの子が存在しないでこの人と結婚···私、病院の精神科に入院してるかしら」
「燈矢居ないなら、当然緋衣も産まれてこない」
「だう?」
「私も、多分色恋とかにかまけてる余裕は無さそう」
「俺も、そんな余裕無さそうっすね~」
「私も、焦凍さんとは、只のクラスメートでしたでしょうか」
「···どうだろうな」
「······ふん、下らん。所詮は義妹の妄想だ、考えた所で何もならん」
「もう、それを言ったらどうしようもないわよ、貴方。でも、皆と今こうしていられる、それは幸せな事なんだって、心に思っていましょうね」
「まさか、お忍びで来られていたとは」
「少々、興味がありましたので、オールマイト」
「貴方の目には、どう映ったかな?赤黒議員」
「···英雄回帰を望むヴィラン"ステイン"。アレは、政治の道に進めなかった、私の姿なのかもしれない。あの人物は、貴女がお考えに?アイスメイカー」
「······はい。どう、思われましたか?」
「信念は、認めましょう。確かに、彼の思いに共感する所はあります。私の目指す世界と似ている。しかし、やり方は間違っている。どんなに崇高な志を持っていようと、ヴィランは犯罪者だ。罪を犯して、良い方向に変えられる世界は無い」
「···議員」
「ただ、ヒーローを完全なる偶像に。この考えも、少し変えなければならないかもしれません」
「それは、何故かな?」
「···少し、見てみたくなりました。あの子達が、最高のヒーローになる所を。あの子達だけじゃない、最高のヒーローを目指し歩んでいる若者達を」
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