雄英高校大講堂B、カップルコンテスト会場。
「このカップルでラストだ!!エントリーNo.15!!巷じゃ、コイツらの写真持ってりゃ告白が上手く行くって有名だ!!俺もあやかりたいっての!!緑谷出久、麗日お茶子!!!」
ステージのカーテンが開くと、真っ暗な中、スポットライトに照らされた緑谷ちゃんが、映画の終盤のボロボロでヴィランと見間違う様な格好で現れ、ステージの先まで幽鬼の様に歩いてくると、周りを警戒する様に黒鞭を出して蹲った。
すると、そっと上から光が差して、その光を辿るように、お茶子ちゃんがゆっくりと緑谷ちゃんの後ろに降りてきた。優しい手付きで、マスクを脱がし、包み込むように優しく抱き締める。
『デク君、私は、君を止めたい訳でも、邪魔をしたい訳でもなくて、ただ、君の隣に』
『麗日さん···』
黒鞭が引っ込み、死んでいた緑谷ちゃんの目に光が戻って、お茶子ちゃんと見つめ合う。
『戻ろう、デク君。皆が待ってる』
立ち上がり、右手を差し出すお茶子ちゃん。恐る恐る、その手に自分の手を伸ばし、握る。そして、迷子で泣いている子供の手を引いていく様に、カーテンの向こうへと消えていった。
瞬間、大きな拍手が会場に響き渡ったわ。『良いのです!カアイイのです!最高なのです!!お茶子ちゃーん!出久くーん!アンコール!!!』何て声も聞こえてきたわ。
「うむ、良い演技だったな、梅雨」
「ええ、お手伝いした甲斐があったわね、踏影」
映画をオマージュしたパフォーマンス。物間ちゃんや爆豪ちゃんによるスパルタ教育で、メキメキと演技力を向上させた緑谷ちゃんだけども、本番で緊張と羞恥でトチらないか心配だったわ。でも、練習以上の物を見せてくれて、アドバイスをした私達も鼻高々ね。
因みに、爆豪ちゃんと雪花ちゃんは、白雪姫の王子様が白雪姫を目覚めさせる場面を。轟ちゃんとヤオモモちゃんはシンデレラの舞踏会の場面を演じたわ。あれも、中々のクオリティだったのよ。
「皆、甲乙着けがたいな。梅雨はどのカップルに入れる?」
「そうね、誰にしようかしら」
「ふっ、そう言って、もう書いているではないか」
「踏影ちゃんもでしょ?」
「···もし、来年もあったら、俺達も出てみるか?」
「いえ、遠慮しておくわ」
「···そうか」
だって私、好きな人は独占しておきたいタイプだもの、ケロケロ。
「レイ子、お疲れ~。とっても綺麗だったよ」
「ん!」
「···めっちゃ恥ずかった」
コンテストが終わり、制服に着替え直したレイ子がグデーっとなっている。
レイ子と心操君のパフォーマンスは、言うなれば、心操君がレイ子をお姫様抱っこして歩いただけ。本当に、ただそれだけ。まぁ、心操君が白のタキシード、レイ子が美しいウェディングドレスを着てだけど。
「ん」
「え?ああ、あのドレスは貰い物。Mt.レディにドレスのモデルの仕事が来てて、それに付き添ったら、私までモデルする事になって、何か貰った」
「ん?!!」
「確か、来月発売の女性誌に載る予定。ミルコとかリューキュウとか、有名女性ヒーローの結婚が相次いでるからか、密かに結婚ブームらしくて、それに乗っかってって感じらしい」
「へー、まぁ確かに、最近ヒーローに限らず、芸能人とかも結婚報告多いもんね」
「···ねぇ、唯は砂藤と将来結婚するつもり?」
「ん?···ん!!」
「そっか···」
唯の返答を聞いたレイ子は、自身の左手薬指に嵌まって、光を反射して輝く指輪をジッと見つめる。
「···これ、給料三ヶ月分だって」
「ん?!?」
「へっ?!?」
きゅ、給料三ヶ月分って、それって、確か、
「て言っても、インターンのだから安物だってさ。私ら、まだ高二だよ?男性のモデルと一緒に撮影したからって、馬鹿だよね、ホント」
「えと、おめでとうございます?」
「ん」
「···ブーケが欲しかったら、ちゃんと言ってね。ちゃんと届くように操作するから」
「ん!!」
「取るのにそんな気合い入れなくても、唯なら大丈夫でしょ」
目をキラキラメラメラさせる唯と何だか幸せそうなレイ子。私も、いつか···
『一佳、君が好きだよ』
「っ!!!」
今、私は誰を想像した?!いやいや、だから私は別にアイツの事なんてそういう目で見てる訳じゃないから違うから雪花達にからかわれる事が最近多かった所為なだけだから!!
「お待たせ」
「素晴らしいパフォーマンスだったよ、柳さん。おや?どうしたんだい?拳藤」
「うっさい物間!今話しかけんな!!!」バチコーン!!
「拳藤ーーーー!!!!?!?」キラーン
「ケッ」
「ほらほら、いい加減機嫌治しなさいな。別に、競うもんでもないんだから」
今年も開催されたプロムナード。かっくんと躍り終えて、中庭のベンチにて逢瀬を楽しんでいる雪花ちゃんです。
コンテストの結果は、大方の予想通り、お茶子と緑谷君がぶっちぎりの優勝。映画効果も相まって、最早敵無しな得票率だったらしいよ。
「つか、かっくんや。キスするふりだって言ったのに、がっつりディープなのしてくれた所為で、口周りが偉い事になったのも、票が伸びなかった原因だと思うんですけど?」
「···チッ、知るかよ」
「しかも、然り気無く胸に手を置いて、あまつさえ揉みやがりましたよね?爆豪発情期君?」
「誰が発情期じゃゴラァ!!」
「じゃあ、この手は何ですか?」
「イッ!!」
腰からどんどん下がっていって、言い訳のしようもない位お尻の位置にあるかっくんの手を、思いっきりつねってやる。
「······良いだろうが、減るもんじゃねぇ」
「時と場所を弁えろって話。後一時間位なんだし、」
むくれるかっくんの頬っぺたに、軽くチュッと唇を当てる。
「今はこれで我慢。後は、帰ったら、ね」
「······ケッ」
「ニヒヒ。···ねぇ、かっくんはお母さんの原案読んでどう思った?お母さんが居ない世界、お父さんが死にかけて漸く倒せる位の凶悪ヴィランが生きている世界。そんな世界で、私が隣に居ないかっくんは、いったいどうしてるかな」
「···ハッ!変わんねぇよ。変わらず、オールマイトを越えるNo.1ヒーローなるだけだ。どんだけ凶悪だろうと、俺がぶちのめしてるさ」
「そっか···そうだよね」
「つ~か、んな下らねぇ事考える暇があるなら」
「んんっ!!」
顎を掴まれ、唇が塞がれたと思ったら、かっくんの舌が口内に侵入してきた。いや、侵入を超えて蹂躙してきた。
「ふはっ!!はぁはぁはぁ···」
「俺を腰砕けにする方法でも考えとけや」
こんにゃろめ、絶対、もう出ません許してくださいって、土下座さしてやっからな。そう、酸欠で回ってない頭で決意した私でした。
結果?···朝日を浴びて清々しく伸びをするかっくんと、白目を剥いて呻き声をあげながらベッドに横たわる私が居た、とだけ伝えておくよ。
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