八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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「八木冬花の章 act2」

 

 

 

 

「俊典さん、お昼のお弁当です。夕飯の時間に戻れない様なら、田沼さんに晩御飯用のお弁当を渡しておきますので、受け取って下さい」

「ああ、ありがとう、氷叢君。では、行ってくる」

 

 

 オールマイトから、一先ずの信頼を勝ち取り、協力して動いていない様に見せかけつつ、AFOの影響力を削る為に動く事早数年。私は、オールマイトのおさんどんをしていた。

 何故かというと、半年前、警察のオールマイト担当者の方から連絡があり、活動報告をちゃんと出す様に言ってくれと頼まれたのがきっかけ。最初は、グラントリノの方に話を持っていったらしいのだけど、「ワシじゃ無理だ、兄弟子の面倒は妹弟子がみろや」、と私に丸投げされたので、仕方なく、オールマイトの所を尋ねた。

 そして、溜まりに溜まった洗濯物、ゼリー飲料だらけの冷蔵庫、菓子パンやコンビニ弁当の空だけが入ったゴミ袋を目撃したのである。いや、原作知識として知っていたし、実際に体感していたけども、あの人は、ヒーローに特化し過ぎてて、普通に生活破綻者だ。

 まぁ、原作開始時辺りの、活動時間の制限+ヒーロー飽和状態と呼ばれる位治安が良くなる状態になれば、ちゃんと身の回りの事をする様になるんだろうけども。もしかして、原作でAFOと戦った時、過労と栄養の偏りとか不足で、調子良くなかったから大怪我負ったとか無いよね?

 という訳で、ヒーロー活動から帰ってきたオールマイトを拘束し、問い詰め、グラントリノとかに説教して貰いつつ、一日三食栄養バランスの整った食事と、ゆっくりお風呂に入る事と、連続五時間以上の睡眠を約束させた。

 ただ、どこにAFOのシンパが居るか分からないので、下手に家政婦とかを雇う事は出来ないとの事で、私が食事等の面倒を見る事になった。マジで、え~(;´д`)である。

 

 

「あの···そんなに見つめられると食べづらいんだけど」

「また、弁当放り投げてかっ跳ばれたくありませんので」

「う、うむ」

 

「むっ!誰かが助けを求める声がした!!」

「キャー!!パンツも履かずに風呂場から出てこないで!!」

「あっ!!ごめんなさい!!」

 

「あ、あの、アイスメイカー?」

「今はヒーロー活動していないので、呼ぶなら氷叢か冬花で。こうしていれば、貴方が布団から出ようとするのがすぐ分かりますから、八木俊典さん」

「だからといって、君のような若い女性が、男に抱きついてベッドを共にするのは···」

「朝まで凍り付けと、どっちが良いですか?」

「···こちらで」

 

 

 みたいな事が起こりつつ、オールマイト真人間化計画がスタートしたのである。因みに、名前呼びには、公私の区別をつけるという意味しかありませんから。何か、奥さんみたいだなぁとか思ってませんから!!

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「···オールマイトの家政婦をやっているそうだな、義妹よ」

「誰から聞いたんですか?」

「···先週、奴が妻を貴様と見間違えて話しかけてきたそうだ。そこで、妻が色々と聞き出したそうだ」

「···オールマイト、何やってるんですか。だから、最近姉さんからちょくちょく、オールマイトの事を聞かれるのですね」

 

 珍しく、義兄さんから飲みの誘いがあった。

 そろそろ、燈矢君にヒーロー諦めろ宣言する時期だと思い、OKして指定されたお店に来てみれば、開口一番そんなことを言われた。マスコミにもバレてないのにどうして?と思ったら、普通にオールマイトがやらかしてただけだった。

 

「···何かあるのか?お前の事だ、何かしらの大きな理由があるのだろう?まさか、奴を好いて押し掛け女房している訳ではあるまい」

「···義兄さん、いえ、エンデヴァー。最初に言っておきます、ここがターニングポイントです。私がオールマイトの側に居る理由を知れば、後戻りは出来ません。最悪、姉さんや子供達にも危害が及ぶ可能性があります。私としては、このまま何も聞かず、家に帰ってほしい」

 

 正直、私は今になって、エンデヴァーをAFOとの戦いに巻き込む事を躊躇っていた。オールマイト達と共に、AFOの調査を進める内に、AFOの、原作知識として知っていた以上の強大さと狡猾さを肌で感じた。

 今の私に対する世間の評価は、若さと見た目で票を集めるだけで、女性ヒーローにしてはそこそこやる程度といった所。AFOからしても、取るに足らない存在だと思わせている筈。しかし、デビューしてすぐにトップランカーに名を連ねた義兄さんは、AFOの警戒域に入っている。

 原作で、轟燈矢を死柄木弔のスペアにしようかと思う程度には、轟家を見ていたのがその証拠だろう。そんな人物が、オールマイトと手を組んでいると知られれば、何かしらのアクションを起こされるかもしれない。

 頼むから、このまま帰ってくれ。そう願いながら、コップを満たすお酒で口を湿らす。

 

「貴様、どのぐらい強くなった?」

「えっ?」

 

 しかし、私の思いとは裏腹に、義兄さんはそんなことを問うてきた。ビックリして、義兄さんの目を見ると、その奥にある決意の色に気付いてしまった。

 

「···大分鍛えましたから、オールマイトに大怪我負わせる位にはなったかも、なんて」

「ふん、それなら、奴にいつ挑むんだ?」

「そうですね、4、5年したら挑もうかな」

「···その時は呼べ、付き添ってやる」

「······」

「では、俺は帰る。それと、余り無理はするなよ、妻や子供達が悲しむ」

「···先輩は、悲しんでくれないんですか?」

「俺に出来る事は、燃やすだけだ」

 

 私は、店を出ていくエンデヴァーの大きな背中を、ただ見送った。あんな一瞬で覚悟決めちゃうなんて、やっぱ、No.1ヒーローって凄いや。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「それで、ヒーロー様が俺達ヤクザに何の用だ。正義の名の下に、俺達を成敗しようとでも?」

「いえ、今日は商談に来ました」

「···商談?おめぇさん、俺達がどう呼ばれているかわかってんのか?帰んな、嬢ちゃん、ひでぇ目に合いたくなければ今すぐにな」

「私は今、一つの事業を立ち上げようと動いています」

「···おい、聞こえなかったのか?」

「その事業、貴方方と共同経営していきたいと思っています」

「ワシは、帰れと言っているんだが?」

「口頭で説明するよりも、先ずは、此方の資料をお読みください」

「テメェ、クソアマァ!!親父の言う事分かんねぇのか!!」

「ッスぞオラァ!!」

「お読みください」

「···オメェら、下がれ」

「で、でも、親父「下がれっ」へ、へい!!」

「···最近老眼でな、んなちっこい字は読みづれぇんだ。テメェの度胸に免じて、話ぐれぇは聞いてやる」

「では、オールマイトはご存知ですよね?」

「はっ!知らねぇ訳ねぇだろ。奴さんの所為で、裏の連中は商売上がったりだ」

「そして、そのオールマイトが、バカスカとヴィランを捕まえてしまうから、留置場や刑務所がパンク状態なのもご存知ですか?」

「···いや、知らねぇな」

「この社会が、個性社会になって日が浅く、ヴィランに対する法整備が不十分。一度ヴィランに落ちた者を、再び表の世界へ引っ張り上げる機構が無いのが社会の実情です」

「それで?」

「あくまで、更正の余地有りと判断した者に限りますが、そういった人達の受け皿になって頂きたい。これは、そういう話です」

「···ワシ達に、犯罪者を受け入れろって事かい?ワシ達に何のメリットがあるってんだ?」

「上手く行けば、いえ、上手く行かせますが、安定した収入と、日陰を歩かなくてすむ立場です」

「······おめぇさん、何かどでけぇ事をするつもりだな?」

「少なくとも数年は、刑務所の中は豪華になる事でしょう。木っ端なチンピラにやるスペースが無い位に」

「···二日、時間をくれ」

「分かりました。ですが、女神には前髪しかない事を覚えておいてください、組長」

 

 

 この三日後、将来"ヴィラン連合"という社名となる会社が、アイスメイカーと指定ヴィラン団体"死穢八斎會"の連名で起業されたのだった。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

 

 

 

「やぁ、良い夜だね。悪いけど、かの少年は僕が先に目を付けていた、大事な少年なんだ。それを、横取りされたくはないと思ってね。少々目障りになっていたし、ここで退場して欲しいんだ、アイスメイカー」

 

 

 

 

 

 

 

 




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