「おいおい、なんだよ。あの雄英ヒーロー科って言っても、所詮はガキって事か」
「何やってんだ!クソ雪女ぁ!!」
「八木さんを、離せ!!」
ボロボロになって、膝をついても尚、目に闘志を宿して吠えるかっくんと緑谷君。
他の皆も、支え合いながらも立ち向かう気力を失っていない。ヴィランに胸元を掴まれ宙吊りにされ、もう指一本動きそうにない私は、その様子をただ眺めるしか出来なかった。
何でこんな事になっているのかというと、時間は午後の授業開始まで遡る。
▼▼▼
「今日のヒーロー基礎学はこれ、RESCUEだ」
その一言で始まった午後の授業。
皆、各々のヒーローコスチュームに着替えて、訓練場へ向かうバスに揺られている。緑谷君だけ、修理に出してる関係で体操服だけど。ついでに、笛まで持参して気合いを入れてた飯田君が、座席の配置で項垂れている。
「私、思った事を何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」
「は、はい、蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで。貴方の個性、オールマイトに似てるわね」
「へ?そそそそそそそうかな!?いや、でもそのえー「待てよ梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ」
唐突な梅雨ちゃんの言葉に、すっごい狼狽える緑谷君。私やかっくんも、バレない程度にビクッとなる。OFAの事やオールマイトとの関係は、一応秘密って事になってるし、説明しようがないからアレだけども、態度に出過ぎだよ。
「派手で強えっつったら、やっぱ爆豪と轟だよな」
「爆豪ちゃんは、キレてばっかで人気でなさそ」
「んだと、出すわコラ!!」
「そういう所だよ、かっくん」
ホントに、あの口調だけでも取り繕う事が出来れば、顔は悪くないし、強さに惹かれて人気も出そうなのに勿体ない。まぁ、ヴィランっぽいヒーローランキングで炎司おじさんの後釜に座るのは確実でしょうな。
そうこうしていると、バスが目的地に到着した。
「ここが、僕が設計して作った演習場。その名も、ウソの災害や事故ルーム!!」
スペースヒーロー「13号」の案内で中に入った私達の前に、ありとあらゆる事故や災害を再現した訓練場が広がっていた。USJってネーミングは、大丈夫なのかと不安になるけど。そして、13号先生のありがたいお言葉を頂戴して、いざ実習へとなった時それはやってきた。
「なんだ?火災ゾーンの煙か?」
「・・・違う、煙じゃなくて雲」
「全員動くな!!」
階段を立ち上る様に流れてくる白い煙。私達の足元を流れていくそれは、出入り口の前で積乱雲の様な雲へと形を整え、ズアっと消え去ると、そこには8人の人間がいた。
「初めまして、俺達はヴィラン連合。今回、ヒーローの巣窟な雄英高校に入らせて貰ったのは、今後脅威となる卵達を抹殺し、雄英の評判を地の底に叩き落とす為さ」
その中の、顔を雲で覆った車椅子の人物が放った言葉に、皆一斉に身構える。
「各エリアに、俺達の仲間が待ってる。さぁ始めよう、ヒーローとヴィランのデスゲームを」
「く!みんな!!」
車椅子の人物から放たれる濃密な雲に巻かれ、視界が真っ白に染まる。そして、皆が姿を消していた。残っているのは、相澤先生と13号先生。車椅子の人物と、手の剝製を顔にくっつけた人物と、ガスマスクを付けた大男。
「さて、何人戻ってこれるかな?」
「決まってる、全員だよ」
▼▼▼
「チッ、どこだここは!」
「多分、倒壊ゾーンだ」
「んで、こいつらがあいつらの仲間って事かよ」
「いったい、何人いんのよ!!」
倒壊ゾーン:爆豪、瀬呂、切島、芦戸
「囲まれちまって、どうすんだよ!!」
「落ち着いて、峰田ちゃん。でも、大変な事になったわね」
「デク君、どうするん?」
「・・・僕らが今すべき事は、戦って勝って皆と合流する事!!」
水難ゾーン:緑谷、麗日、蛙吹、峰田
「く、やりますわよ!耳郎さん、上鳴さん」
「やるっきゃないか」
「ちょっ!何でそんなやる気なんだよお二人さん」
「泣き言言うんじゃねぇ、来るぞ!」
山岳ゾーン:八百万、耳郎、上鳴、砂藤
「く、早く皆と合流しなければ」
「落ち着け、委員長。今は、己の安全を確保してからだ」
「(コクコク)」
暴風、大雨ゾーン:飯田、常闇、口田
「葉隠さん、これを。素肌よりはマシだから」
「ありがとう、尾白君」
火災ゾーン:尾白、葉隠
「周囲に動く敵はいなさそうだ」
「そうか、呆気ないな」
土砂ゾーン:轟、障子
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「取り敢えず、最初の分散は予定通りいったようね」
「ええ、順次交戦に移行してますよ」
「初めてにしちゃ、中々動けてるじゃないか」
『しかし、本番はここからだ。強敵と相対した時こそ、彼らの真価が問われる時だ』
「大丈夫さ。彼らなら、きっと何かしらの成果を見せてくれるよ」
USJの各ゾーンが映し出されたモニタールームで、複数人の教員が様子を観察している。プロの目からすれば、まだまだ荒削りな所は多々あれど、将来に期待出来る才能を見せてくれている。
「あたしが出なきゃいけない事態にならない事を祈るよ」
やり過ぎるなと一応注意はしたけど、どうなるかねぇ。
この訓練が、無事に終わる事を願いつつ、お茶菓子に手をのばすリカバリーガールであった。