八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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震災の描写があります。苦手な方はご注意ください。



「岳山優はヒーローである」

 

 

 

 

「では、第四位の発表です。チームラーカーズの一員にして紅一点。初のトップ10入りにして、女性ヒーロー歴代最高位に一気に駆け上がったのはこの人!!Mt.レディ!!!」

「あ、あははは···が、かんばりま~す

 

 

 

「はぁ···」

「ん」

「大丈夫ですか?優さん」

「ん···ああ、ごめんなさいね。連日のメディア対応でちょっと疲れてて」

「ランク外から、一気にゴボウ抜きでしたからね。おめでとうございます」

「ん!!」

「レイ子ちゃんも唯ちゃんもありがとう。でも、結局休業したミルコやリューキュウ、プッシーキャッツの二人とかの男性票が流れてきたってだけの、一過性の物に過ぎないわ。私には、まだ分不相応な順位よ。誰が見ても、エッジショットやシンリンカムイ先輩の方が上なんだから」

 

 私は今、東北で行われるイベントに出演する為、インターンで来ているエミリーとルールを連れて、新幹線に乗っている。

 この前の、下半期ヒーロービルボードチャートJPは、自分にとって、まさしく青天の霹靂だった。ネットとかで、自分の名前を見かける事が増えてニヤニヤしてたけど、まさかここまでになるとは思わなかった。

 知名度の為に、積極的にメディアに出て、ドル売り的な事をしてきたけど、正直これは行きすぎとしか言えない。エッジショットや先輩、他のランカー達から、"おめでとう"や"期待に応えて頑張れよ"何て祝福や応援の言葉を貰ったけど、もうプレッシャーで胃が痛い。

 今回の仕事も、殆どリフレッシュ休暇みたいな物だ。

 

「もうすぐ着くわね。今日は、ホテルで軽い打ち合わせするだけだから、それが終わったら自由にしていいわ。もし、ヒーロー活動を行う場面に遭遇したら、私とここの地域担当ヒーローに、必ず報告する事、いいわね」

「「はい/ん」」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

『はい、今回のトップ10入りは、自分としても予想外過ぎて、達成感よりも不安の方が大きいです。それでも、応援してくれている皆さんの為にも、No.4という肩書きに負けない様頑張っていく所存です』

 

 イベントのトークショーに出るMt.レディを、舞台袖で見守る私達。打ち合わせが終わった後は、食事やお風呂の時間以外ずっと眠っていたMt.レディ。疲れててとは言ってたけど、大分溜まっていたみたい。日課のエゴサを一度もやってないのがその証拠。体で順位を買った何て誹謗中傷も沢山目にするし、精神的にもキツイんだろう。

 エッジショットやシンリンカムイからも、仕事よりも彼女の気分転換に付き合ってやってくれと言われた。自分達より、同性の私達の方が、彼女も気を抜けるだろうからと。

 

「···取り敢えず、このまま何事もなく終わりそうね」

「ん」

「うん、分かってる。スーツを脱ぐまで気は抜かないよ」

「ん!!」

 

 晩御飯に向けて、評判の良いお店でも探しとこうかな。海の近くだし、お寿司なんてどうだろう。そんな事を思ってたら、それは突然私達を襲ってきた。

 最初は、カタカタと物が動いていなければ、気のせいかな?と思う程度だったけど、そのすぐ後に、立っているのもやっとな位の大きな揺れが起こった。地震だ。

 

『全員私の下に隠れて!!』

 

 Mt.レディが、瞬時に個性で巨大化し、観客やスタッフに覆い被さる様に四つん這いになった。私と唯も直ぐに動いて、Mt.レディの屋根の外に居る人達を移動させる。

 揺れは、強く、長く続いた。こんな強い地震は、初めて経験する。歴史で習った大震災も、こんななのだったのだろうか。

 

「エミリー!報告!!」

「全員避難完了です!怪我人は、男の子が一人、転倒によって擦りむいた程度です。ルールが応急処置をしています」

「ありがとう。揺れが収まったら、直ぐに高い所に避難しなさい。こんな大きな地震だもの、モタモタしてると津波が来るわ!!私は、取り残された人達を探すから、この人達の誘導はアンタ達に任せるからね!!今まで習った事をキチンとやりなさい!!いいわね、エミリー、ルール!!」

「「はい!!」」

「皆さん、この子達はまだ子供だと不安に思うかもしれませんが、彼女達も立派なヒーローです。二人の指示に従って、落ち着いて避難してください、お願いします」

「ああ、分かった」

「ありがとう!Mt.レディ!!」

「文句言う奴が居たら、オラがぶん殴ってでも黙らせてやっから安心しな!!」

「何調子の良いこと言ってんだい!若くて別嬪だからって、鼻の下伸ばしてんじゃないよ、まったく」

「いてっ!母ちゃんそりゃねぇだろ」

 

 恐怖と不安でいっぱいだった人達に、引きつりながらも笑顔が浮かんだ。やっぱり、Mt.レディは尊敬出来る立派なヒーローだ。決して、見た目とかの下種な男性人気で成り上がった、張りぼてのNo.4なんかじゃない。

 

 

 

『こちら、○✕市上空です。ここからでも、沢山の家屋や建物が崩れているのが分かります。地震の強さを表すマグニチュードは8。ここ○✕市含む一帯の地域では、最大震度7強を記録しているとの発表がありました。現在、緊急対策本部が設立され、災害救助に派遣するヒーローや自衛隊の振り分けを決めているとの事です。あっ!アレは!!Mt.レディです!!No.4ヒーローのMt.レディです!!Mt.レディが救助活動を行っています!!あっ!!たった今、倒壊した建物の中から、民間人が救助されました!!』

「Mt.レディ···」

「対策本部からラーカーズに指令が届きました!エッジショット、シンリンカムイはMt.レディのいる○✕市の応援にとの事です!!」

「了解した。行くぞ、シンリンカムイ。セロハン、チャージズマ、グレープジュース、一分一秒の勝負だ!心してかかれ!!」

「「「はい!!」」」

「頑張れ、Mt.レディ、今行くからな!!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「全員乗ってる?!残ってるのが居たら承知しないわよ!!」

「はい、生徒及び教職員全員居ます!!」

「OK!!じゃあ、ちょっと揺れるけど辛抱してね」

 

 まだ、高台に避難出来ていない小学校の生徒や職員を、途中で拾ってきた大型バスに乗せ、脇に抱えて高台に向かう。最早、無事な建物を探す方が大変な位どこもボロボロ、人を踏み潰さない以外の事は気にせず、思う存分巨大化出来る。私が個性を十全に使えるって事は、私が起こす破壊を気にしなくてもいいって事、マジで嫌になるわ。

 

「はい、これでこの地区の人達は全員?」

「ああ!」

「Mt.レディ!!西地区で道路が寸断されて、介護施設からの避難者が立ち往生してるらしい!!」

「分かったわ!!場所は分かる?!」

「俺が知ってる!!案内する!!」

「さっさと乗って!!津波はもうすぐそこまで来てるわ!!」

「大変だ!!!✕✕市の奴らが避難してる建物の高さじゃ、津波に飲み込まれるって!!更に高い所は、今からじゃ間に合わないって!!!」

「なっ!!確か、あそこには500人近くが避難してるだろ!!」

「どうする!!今から行っても、500人を一辺に運ぶなんて」

「私が、避難者救助して戻ってくるまでに、ルールとエミリーを呼んでおいて!!後、兎に角頑丈な板も!!良いわね!!」

 

 ああもう!!手が足りない手が足りない手が足りない!!それでも、一人でも救わなきゃ!!ヒーロー何だから!!

 

 

 

「エミリー!準備はいい!!」

『いつでも!!』

「ルール!!」

『んっ!!!』

 

 もう、津波は上陸している。今から、ここに避難してる人達を移動させるのは不可能。でも、このままでは避難所が沈む。だったら、高くすればいいんでしょうが!!

 建物は三階建て。三階と屋上部分に、ギリギリ全員が入れた。後は、三階の床下でルールに、持ってきた板を大きくして貰い、二階と寸断。それを、巨大化した私が持ち上げる。板の上に乗った三階から上の部分は、落ちないようエミリーに頑張って貰う。今出来る最善はこれしかない。

 

「んぐっ、ぁあああああ!!!重いわねクソッタレーー!!!」

『うわっ!!Mt.レディ!!右側下がってます!!抑えきれない!!!』

「こちとら!持ち上げとくだけで精一杯だっての!!何とか耐えなさい!!」

『ルール!!兎に角、捨てられる物は全部捨てて!!少しでも軽くして!!』

『んっ!!』

「こういう時!雄英だと何て言うんだっけ!!?」

『『Plus Ultra!!!!』』

「そうよ、限界を超えなさい!!!」

『Mt.レディ!!津波!!』

「全員、踏ん張ってなさい!!!」

 

 

 

 

「···ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ·····」

『ま、Mt.レディ、大丈夫ですか?』

「···ルールちゃん、きょ、今日はえらい、饒舌じゃない。私より、エミリーは」

『い、いしきとびそう』

「声が、出せるだけ、マシね」

 

 地震発生直後は、真上よりちょっと斜めだった太陽も、大分陰りだした。もう、何時間こうしているか分からない。腕や足が震えてきそうなのを、気合いで抑えてるけど、それも限界が近い。エミリー同様、私も意識が朦朧としてきた。でも、波はこの感じだと、もう二回位寄せてくる。まだ下ろせない。

 あ~あ、私も彼氏欲しかったなぁ。せめて、処女位は捨てたかったなぁ。

 

『がんばって』

 

 急に、幼い子供の声が、耳を打った。

 

『が、がんばって、Mt.レディ』

『頑張れ!!Mt.レディ』

『Mt.レディ、お願い!!僕達を守って!!』

『助けて!!Mt.レディ』

 

 何よ、もう。

 

「ええ、守るわよ、坊や達。私はヒーロー、Mt.レディ。No.4ヒーロー、Mt.レディよ!!山が、この程度で潰れる訳ないでしょ!!いい?そこで私の活躍をじっと見守ってなさい!!」

 

 応援の声に、ヒーローが応えない訳にはいかないじゃない。

 

 

「···わたしにも、せいえんほしい······」

「頑張れ、レイ子」

「···ありがと、ゆい」

 

 

 

 この日、多くの命が失われた。しかし、救えた命も沢山あった。そして、あの光景を私達は忘れない。最後まで、人々を守る為に立ち続けた、あのヒーローの姿を。

 

 

 

 




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