「今度こそ···って、またやってしまった」
「······くっ!!」
ここは、全国工芸品作り体験フェアの会場。
その中でも、一際ギャラリーを集めるのは、ろくろ体験ブース。そこでは、産まれたばかりの赤子以外知らない人などいない、新旧No.1ヒーローが、似た様な顔立ちの妙齢の女性二人に側で見守られながら、何度目かの失敗に肩を落としていた。
スタッフ、観客、我々報道陣、皆がもうハラハラしている。スタッフの人なんて、顔が青ざめるを超えて土気色になってしまっている。
「全く、何をやっているんですか。ほら、少し下がってください」
「あなたもですよ。ほら、これで熱を下げて」
見るに見かねた女性二人が、新旧No.1それぞれの足の間に座って、旧No.1には自身の手の上に手を重ねさせ、新No.1は自身の手を新No.1の手の上に重ねて、再度挑戦された。
そして、時折叱咤されながらも漸く、握り潰す事も乾燥させる事もなく、ちゃんとお椀の形を形作る事に成功されたのだった。周りから盛大な拍手が巻き起こり、安堵からか、スタッフは泣きながら抱き合って喜んでいた。プライベート故、直接の取材等は禁止と厳命されていたが、生放送中に何とか良い絵を撮れて、こっちも一安心である。
そして、出来たお椀をスタッフに預け、仲睦まじげにブースを後にする新旧No.1ヒーロー夫妻を見送り、我々も次に紹介するブースへと足を向ける。やっぱり、No.1ヒーローと言えど、奥さんには敵わないんだなぁと、感想を思い浮かべながら。
▼▼▼
「HA~HAHA!!いやぁ、時間がかかってしまって申し訳なかったね」
「くっ、次こそは一人で完成させる」
「二人とも、ムキになるからですよ」
「今日は、もう私と冬花がやっているのを、横で見ているだけにしてください」
「ぬっ!横暴だぞ、冷!!」
「義姉さん、それはないんじゃないかなぁ!?」
「元々、私と姉さんだけで来る予定を、あなた方が勝手についてきたんですから当然の処置です。嫌なら、お二人でデートして来てください。私達は私達で好きに回りますので」
「「うぬぬ」」
「姉さん、行きましょう。先ずは、ガラス工房で吹きガラス体験です」
「ええ、その後は手芸ね」
「そして、最後は氷細工!!フフ、氷系個性最強と吟われた実力、見せつけてあげましょう」
「程々にね、冬花」
肩を落とす夫と義弟を後ろに、横にいるウキウキな冬花と地図を見ながら、お目当ての場所へと向かう。
何故、私と冬花が夫婦でここに来ているのかというと、話はそんなに長くない。
連休で、長男夫妻は娘を連れて上路家へ、次女夫妻は上司に妊娠の報告を、次男は彼女とお泊まりデート、末っ子は補習で雪山へ。皆出払って暇になると伝えたら、妹が折角だから、泊まりで温泉にでもと誘ってくれたの。久しぶりに姉妹だけでお出かけも悪くないと、前日に夫にその旨を伝えて準備をしていたら、突然、"有給を取った。俺も行く"と言ってきたの。冬花の方も、オールマイトが一緒に行きたいと言ってきたらしく、それなら夫婦水入らずで、という話の流れに。
新旧No.1を伴ってとなると色々とあるので、冬花が方々に根回ししてお疲れ気味だったけど、姉妹夫婦揃ってお出かけなんて、何気に初めてだったから、本当に楽しみ。
「では、ゆっくり息を吹き込んでください」
「はい。スゥ···フゥーーー(パリン)あっ!!」
「冬花···氷の吐息になってるわよ。それは、氷細工の所までとっておきなさい」
「あ、アハハ(;゚∇゚)、姉さんパス」
「もう。あなた、冬花の二の舞になってもイケナイから、私が冷えないようにしてちょうだい」
「う、うむ」
「冬花さんだって、人の事言えないじゃないか」
「うるさいですね。少し浮かれていただけです、あなたみたいに、何度も失敗はしません」
背中に夫の掌の熱さを感じながら、言い合う妹夫婦を横目に、息を吹き込んでガラスを膨らましていく。上手く出来たら、緋衣へのプレゼントにしましょうか。
手芸コーナー
「ほら、ここはこうですよ、あなた」
「う、うむ」
「だから、力で無理矢理しようとしないでと言っているじゃないですか!!」
「いや、つい···」
刀鍛冶コーナー
「義兄さんが熱して、僕が叩いて、冬花さんが冷やせば、設備無しでも出来るかな?」
「やらんぞ」
「やりませんからね」
「···その様子、ちょっと見てみたいわね」
「「冷/姉さん!!」」
木工コーナー
「HA~HAHA!!どうだい?木彫りの僕とのツーショット」
「···職人、これのモチーフはビネガースーサイド事件ですね?ならば、ここの目元を後0.02mm削るべきです。そして、この左上腕二頭筋のこの部分、0.37mm削りすぎです。後···」
「冬花、落ち着きなさい」
「···俺のは無いのか」
石膏コーナー
「雪花含めた、二年ヒーロー科女子全員ね」
「これは、若い頃の冬花かしら?」
「こっちには、ミルコ、リューキュウ、Mt.レディ」
「バーニンにプッシーキャッツか···何故虎がいない」
「女体こそVIVA!!!」(石膏作者)
そんな感じで、色々なブースを巡り、最後にやってきたのは氷細工コーナー。そこでは、皆が思い思いの大きさの氷を、自由に削って作品を作っていた。
そんな中で、私達も、
「姉さん、どう思う?」
「もうちょっと右。そう、そこ。啓悟君を後1cm位上に、うん、そんな感じで良いと思うわ」
「じゃあ、後はこうしてああして···出来た!!」
出来たのは、轟家と八木家が勢揃いした1/10スケールの氷像達。中央に私と冬花、その両サイドに夫と義弟、夫の横に長男一家、義弟の横に次男と三男と姪、夫と長男一家の間位に長女夫妻が飛んでいる。そんな構図。
「いずれは、これに夏雄君の奥さんが加わって、爆豪君や八百万さんも加わって、」
「その子供達、そのまた子供達が加わっていく」
「私達が生きている間に、どこまで増えるのかしら。本当に、楽しみね、姉さん」
「あの~、冬花さん···出来れば僕は、一番格好いい時で固定しといて貰えると、うれしいなぁ~」
「ふん、こんなもので見栄を張ってどうする」
「あら、義兄さん。私達に、自分の小皺やくすみを鮮明に再現しろと?」
「じゃあ、あなたはしっかりと老いた姿で更新していきましょう」
「ぐむっ···悪かった、せめてそこで固定しておいてくれ」
「「プッ!アハハハハ!!!」」「HA~HAHAHA!!」
「笑うな!!!」
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「「ただいま」」
「おかえりっス」
「あら?爆豪君が夕食を?雪花は?」
「······部屋で横になってます」
「···爆豪少年、君が原因かい?」
「·········ッス」
「後で、ちょっと付き合いなさい。ああ、動きやすい服装でね」
「···八木先生、こっから入れる保険、あるっすか?」
「···雪花が起きて止めてくれる事を祈りなさい」
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