大決戦と書いて、蹂躙とも読む
「あ?ここはどこだ?」
目が覚めると、俺は見知らぬ···いや、なんとなく見覚えのある天井を見上げていた。
おかしい。昨日は、明日に控えたトガの二十歳の誕生日の為に、プレゼントとケーキの手配の最終確認を済ませて、自分の家の自分の部屋の自分のベッドで横になった筈だ。
決して、こんなホテルの様な天井と内装をした部屋では無かった筈だ。
「···取り敢えず、起きるか」
布団をはねのけ、携帯や着替えになりそうな物を探すが見付からず、パジャマのまま、唯一あったスリッパを履いて部屋を出る。
「あ、思い出した。ここ、群訝山荘か」
ヴィラン連合が持ってる別荘だ。トムラ事務所は、ヴィラン連合に入ってから、ヒーローにスカウトされた奴らが多いから、割引価格で使わせて貰えるから、時折社員旅行的な感じで使わせて貰ってる所だ。
「いや、つっても何でこんな所に」
取り敢えず、山荘から出ようと玄関に足を進める。そして、エントランスが見下ろせる場所に来ると、そのエントランスに佇む一人の少女···いや、もう女性か、の姿があった。
「あ、仁君!おはようなのです!!」
「···トガ」
「さぁ、仁君。これにサインして、お茶子ちゃんと出久君みたいに、トガとイチャイチャ子作りするのです!!」
遠くて、トガが掲げる一枚の紙に何が書かれているか見えないが、それが何かは察しがつく。婚姻届。こりゃ、事務所や知り合いは全員グルで、トガの味方だな。孤立無援てとこだ。
「拒否したら?」
「力付くでサインさせるのです!!」
「やれるもんなら、やってみろ」
トガの輝かしい未来の為に、行こうぜトゥワイス。戦いの時間だ。
▼▼▼
「そろそろ、トゥワイスは起きる時間っすかね」
「だろうな、ホークス」
「ボツボツ、トガちゃんと対峙してるんじゃない?」
「はてさて、トゥワイスはどうするだろうねぇ」
「分かりきってんだろ、ミスター」
「絶対、トガの幸せの為とか思って、徹底抗戦するに俺は賭けるぜ」
「全員、そっちに賭けるんだから成立しないでしょ、秀一君。ま、取り敢えず、トガちゃんの勝利を願って、乾杯」
「「「乾杯」」」
▼▼▼
「「サッドマンズパレード」」
初手から数の暴力でと、幾十幾百の自分を複製したら、トガが俺に変身して、同じ数の俺を複製しやがった。トガはこの前、俺の血のストックは使いきった筈。なのに、何処から調達しやがった?まさか、寝てる間に吸われてたのか?
「仁君なら、そうすると思っていたのです」
「へ、そうかよ。でもよ、俺と違ってテメェは時間制限ありだ。だからよ、お前の時間が過ぎるまで、粘らせて貰うぜ!!いけっ!!」
俺の合図で、大多数の俺達がぶつかり合う。どっちも俺だから、優劣などなく。只互角に潰しあっている。千日手だ。トガが持ってる俺の血が尽きるまで、何時間だって付き合ってやるぜ、トガ。
···俺と俺が殴り合ってる光景は、昔を思い出して何かアレだな。
「むぅ~、出来れば、大人しくやられて欲しいのです」
「悪いが、それは出来ねぇ相談だな」
「そうすれば、痛い思いをしないで済んだのです」
「···そりゃ、どっちがだ?」
「当然、仁君なのです」
そう言って、顔の上半分から下を俺にしたトガが、ポーチから5本の試験管を取り出した。中には、赤黒い粘性のある液体が入っている。
「今日の為に、皆に頭下げて協力して貰ったのです」
「トムラ達の血か?なら、俺もアイツらを複製させてもらうぜ?」
トムラ、マグ姐、ミスター、荼毘、ホークス、ついでに治崎を複製し、隣に立たせる。
「違うのです」
「違う?」
「足りないのです。私は、皆って言いました」
「···雄英のガキ共か」
「それ以上です!!」
トガが試験管をばら蒔いた。次々にポーチから取り出し。その数、恐らく50本以上。
「それは、反則じゃねぇか?」
「使えるものは何でも使うのです!仁君を手に入れられるなら、トガはちうちうしたくない人の血もちうちう出来るのです!!」
『HA~HAHA!!もう大丈夫!!何故って?私が来た!!』
『分倍河原君、年貢の納め時よ。大人しく、トガさんのモノになりなさい』
アイスメイカーに協力求めるのは反則だろ。そりゃ、オールマイトの血も入手出来るわなぁ。ガチで、ヒーローオールスターじゃねぇか。
「さぁ、仁君。降伏するなら今ですよ」
「駄目だ、出来ねぇ。俺なんかより、もっとお前に相応しい男が、絶対に現れるんだ。俺は相応しくない!!」
「それは仁君の都合です!!ぶっ倒されて下さい、仁君。トガに相応しくないとか、勝手に決めんなです!!トガは、仁君と一緒にいれて、とても幸せなのです!!!」
「人の名台詞パクってんじゃねぇ!!!」
「安心してください。原作みたいにズタボロになっても、命だけは取らないのです。さぁ、皆!!やってしまうのです!!!」
『『『うおおおお!!!!!』』』
▼▼▼
「お~、見事にボロッボロだな」
「跡形も無いとはこの事っすね」
先行して、群訝山荘に飛んできた俺とホークス。
眼前に広がるのは、木々の中にぼっかりと空いた更地。ここに、でかい別荘が建ってたとは思えない位、何もない大地。キッチリ長方形に地盤沈下してるから、地下も消え去ってんだろうなぁ。
「二人は、あそこっすかね」
「多分な」
ホークスが指差す先には、ポツンとキャンプ用のテントが一つ張られていた。中に人の気配も感じる。
近くに着地し、歩いてそのテントに近付いていく。すると、
『あっ♥あっ♥あっ♥あっ♥』
『トガ、もう···』
『最後の最後まで、絞り尽くすのです♥♥』
肉と肉がぶつかり合う音とトゥワイスの苦しげな声、そして、トガの喘ぎ声が漏れ聞こえてきた。
「······出直すか」
「······そっすね」
その後、艶々で満面の笑みを浮かべるトガと、そこかしこに殴られた跡のある、げっそりと窶れたトゥワイスと顔を合わせるのは、太陽がもう一周した頃だった。
お幸せに、トゥワイス。
トガ軍の面子
オールマイト、アイスメイカー、エンデヴァー、トムラ事務所、荼毘、プッシーキャッツ、ミルコ、リューキュウ
麗日世代の元雄英高校ヒーロー科AB組
因みに、オールマイト達の血は、現役時に献血等で採取していた物を使用しています。
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