「親父、凄かったんだな」
「夏君?」
「夏兄?」
「唐突にどうした?夏雄」
冬美達弟妹全員が、家族を連れて帰省してきて、久方ぶりに兄弟が揃った轟家。兄弟水入らずで、縁側に座って酒飲みながら、昔話に花を咲かせていると、唐突に夏雄の口から、そんな言葉が零れた。
「子供が学校に通うようになってさ、学校行事とか行く様になって思ったんだ。そういえば親父、一度も欠席した事ないなって」
「···そうだね」
「入学式も運動会も合唱祭も卒業式も、ちゃんと居たな」
「だろ?昔は良く分かってなかったけど、兄貴達見て、今はヒーローがすげぇ不規則で、大変な仕事だって理解してる。そんなヒーローのトップに居るのに、ちゃんと来てくれてて、すげぇなって。普通の会社員やってる俺でも、時々しんどいって思うのにさ」
「授業参観は、生徒教員保護者が萎縮するからって、お母さんから出禁にされてたな」
「それに、家族サービス、結構ブッチしてた」
「あったあった。遊園地行くっていうのに、要請があったからって、何回中止になったことか」
「キャンプ行って、途中で緊急出動かかったからって、放置されたりな」
「BBQするのに、皆で四苦八苦しながら火をおこしたっけ。お兄ちゃんに燃やして貰えば良かったのに、誰も気付かずに」
「焦凍が、まだ木に燃え移ってないのに、団扇で一生懸命扇いで、新聞紙灰にしてたっけか」
「···覚えてねぇ」
「「「あっはっはっはっ」」」
もう三十路なったってのに、ガキの頃と変わらない拗ね方をする焦凍に皆で笑いながら、改めて、親父の偉大さを思いしる。
ヒーローと家庭の両立。その難しさ。殆どのヒーローは、家庭を犠牲にしてヒーローをやっている。数年前の結婚ブームで、そこの問題が取り上げられる様になってから、少しずつそっちの制度も整ってきて、両立しやすくなってきてはいる。それでも大変だと思うのだから、親父の時は言わずもがなだった筈だ。
「親父、そろそろ引退するんだって?」
「···ああ、来年を目処に引退するんだとさ。ちょっとずつ、事務所引き継ぎの準備してる」
「やっぱ、兄貴が継ぐんだな」
「流石に、日本で最大のヒーロー事務所は無くせねぇよ。でも、コイツは兄貴が書類やら何やらで大変な時に、独立するなんて言い出しやがって」
「え?焦凍、お父さんの事務所出ちゃうの?」
「八百万家の仕事をする配分が増えてきたから、ヒーローとの両立がしやすい様に、百と事務所を立ち上げる事にしたんだ。兄貴に迷惑かけたくねぇし」
「気にしなくていいって言ってんのに。テメェ一人程度で、どうにかなる程、親父から柔な鍛え方されてねぇよ」
「どうせ、本音は百ちゃんと一緒の時間を増やしたいだけだろ?」
「···んな事ねぇ」
「あ、図星だ。千代ちゃんが千翼(チヒロ)に言ってたよ、"両親が仲睦まじいのは良い事ですが、娘の前では少し自重して欲しいです"って。焦凍、いったい千代ちゃんの前でどんな事してるの?」
「大した事してねぇ。抱き締めたり、頬とか額にキスしたりする程度だ」
「焦凍にとってはそうでも、千代ちゃんにはそうじゃないって事だ」
「そうだ。子供の前で、あんま男と女で居んな。すげぇ気まずいからな、アレ」
「···実感籠ってるけど、お兄ちゃん何かあったの?」
「······」
冬美に聞き返され、あの時を思い出して口がモニョモニョする。
「お兄ちゃん?」
「兄貴?」
「燈矢兄?」
「······昔、見ちまったんだよ、親父と母さんがヤってるの」
「「「ブッ!!!」」」
三人とも、綺麗な位揃って酒を吹き出した。
「まだ、焦凍が産まれる前だ。夜中にトイレ行きたくなってな。トイレ済ませて部屋に戻る途中、母さんの声が微かに聞こえたんだ。それが、聞いた事もない様な声で、気になって、コッソリと親父と母さんの部屋に向かったんだよ。その声は、どんどん鮮明になってきて、お母さんに何かあったんじゃって、子供心に思ってよ、ソッと覗き見たら、お母さん組強いて腰振る親父が目に飛び込んで来たんだよ」
「うわぁ···」
「当時は、何やってんのか分かんなくて、でも、何かすげぇ気まずいってのだけは感じて、バレない様に部屋に戻ったんだよ。はぁ···あん時見た親父のケツは、今でも時々悪夢に出てきやがる」
「···俺らは遭遇した事ないけど、そういう意味じゃ、親父も母さんも、よく四人も仕込んで産んだよな」
「うん、だね。私も、千翼を産む前は、子供三人位欲しいなって思ってたけど、色々忙しくて、中々妊娠とはいかないんだよね。する時に限って安全日だったり、じゃなくても命中しなかったり」
「ヤろうかって時に限って、子供の寝付きが悪かったり、夜泣きが凄かったりするんだよなぁ」
「そうそう、一回お母さんスイッチ入っちゃうと、奥さんには戻れないんだよねぇ」
「本当、親の立場になって、親の偉大さを思いしるわ」
「···そういう事で、偉大さを感じられても、コメントに困るぞ、お前達」
「「「親父/お父さん!!!」」」
「あ、母さん、どうしたの?」
「私達も、混ぜて貰おうかなぁって思って。貴方達を仕込まれた時の事、赤裸々に語ってあげてもいいわよ?」
「「「それは勘弁してください!!!」」」
「あらあら」
「冷、俺にもダメージがくる」
そうして、親父とお母さんを加えて、あんなことがあったこんなことがあったと、盛り上がるのであった。
「焦凍だけズルい!!私だって、準轟家の一員なのに!!!」
「居なかったんだからしょうがないだろ、雪花」
「勝己との真っ最中、しかもフィニッシュ直前に、裂花がおもいっきしドア開けて入って来て、二人で大慌てしたエピソードを披露してたのにぃぃぃい!!!!」
「すんな馬鹿」
鷹見千翼(タカミ チヒロ) 個性:氷翼
ホークスと冬美の息子。父親に似て楽観主義。夢は、父親より速く飛べるようになる事。
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