八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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「心配性なのは、誰?」

 

 

 

 

 鷹見冬美は、イライラしていた。

 それは何故か、夫が、ことある毎に何もさせてくれないからだ。

 例えば、

 

 

「おはよう、啓悟君。朝御飯」

「あ、もう出来てるから。食べたら、流しに置いといて」

「···うん、ありがとう」

 

「あ、洗濯終わったみたい、干さなきゃ」

「ほい、もう終わらしたよ」

「···うん、ありがとう」

 

「ちょっとお掃除でも」

「窓も換気扇もエアコンも完璧、チリ一つ許してないから」

「···うん、ありがとう」

 

「そうだ、お買い物」

「昨日、仕事帰りに買っといた」

「···うん、ありがとう」

 

「そろそろ、お風呂に」

「滑ったら危ないから、俺が運んであげる」

「······うん、ありがとう」

 

 

 

「うがあああああ!!!!」

「冬美のうがあ、初めて聞いたわ」

「いやいや、お義母さん。そんな呑気に言ってる場合じゃないでしょ。燈矢よりも酷い過保護。なまじ速いから、出来る範囲が広すぎる」

「ううう、心配なのは分かるけど、分かるけど!動かないと赤ちゃんにも悪いって知ってるでしょ!!」

「マタニティスイミングは、許してくれてるのよね?」

「後、誰か付き添いでの散歩も」

「それだけ!!家事やら何やらぜーーんぶ!!先を越されてやること無さすぎてあああああ!!!!!!」

「···世話焼きだものね、冬美は」

「世話焼きあうならまだしも、一方的に世話焼かれるのには慣れてないもんなぁ」

「臨月が近付くに連れて、どんどん酷くなってるし、何か動作をしようとすると、シュバッてやってくるのはどうなの?!ただ立ち上がるだけだよ!!?」

「「常に視界に収められてるよりマシ」」

「そうだけど~~~。ねぇ~、早く元気に産まれてきて~、一緒にパパ叱って~~」

 

 自身の、大きく膨らんだお腹を擦りながら、中でスクスクと育っているであろう我が子に泣きつく冬美お母さん。自分達も体験し、同じ様な心境になったなぁと、その様子を苦笑しながら眺める母と義姉。

 正直、注意した所で改善はされないのが分かっているので、最早諦めるしかないのだが、それを言ってもストレス溜めるだけなのは経験則として知っているので、こうして愚痴を聞いてあげるしか出来ないのである。

 

「ふーうー?」

「緋衣ちゃ~ん!!私の味方は緋衣ちゃんだけだよ~~~!!!」

 

 一才を越え、一人で歩ける様になった姪を抱きしめる冬美。因みに緋衣ちゃん、轟家それぞれの事を個別に呼べる様になっており、両親の事は"ぱぁぱ""まぁま"、炎司の事は"じぃじ"、冷の事は"ばぁば"、冬美は"ふーう"、夏雄は"なーう"、焦凍"うーと"、百は"もーも"と呼んで、皆の目尻をとろんと下げさせている。

 

「予定日、もう再来週なんだっけ?」

「うん。だから、いつおしるしがあるか、陣痛が始まるか、破水があるか、表情には出さなくても、内心ハラハラしてるの分かりやす過ぎるの、啓悟君」

「旦那が勝手にハラハラ落ち着かないから、逆にこっちは落ち着けるって所もあったけどね。まぁ、お義母さんとかが側に居たってのも大きいけど」

「言葉通り、案ずるより産むが易し、よ。勝手にハラハラさせとけばいいのよ。いざ本番になったら、男の出る幕は皆無なのだから。というより、冬美。貴方が落ち着かないのは、貴方の夫が、気もそぞろな所に何かミスをして、大怪我しないか、最悪、命を落とさないかが心配なのでしょう?」

「···うん」

「あ~、そっちか~」

「それこそ、自分の夫を信じていなさい。ましてや、貴方の夫は、私の夫の次に偉大なヒーローなのだから」

「···お母さん、それ、励ましてるんじゃなくて、お父さんを自慢してる?」

「あら?妻が夫の自慢をして、何か悪いかしら?」

「いえいえ、両親がいつまでも仲良しで、御馳走様でした」

 

 そうして、冬美の愚痴を聞きつつ、下らない話に花を咲かせる母子と姉妹であった。

 

 

 

 その頃のホークスはというと、

 

「···会長、五年を目処にって話じゃなかったですか?」

「ええ、そうね」

「なぁんで、俺が書類仕事手伝わされてるんですかねぇ。しかも俺、了承した覚えないっすけど」

「あら、確かに悩みなさいとは言ったけど、それだけよ?貴方が次期会長なのは決定事項だもの。だから、今から引き継ぎを始めてもおかしくないでしょう?」

「ええ~~、そんなのありっすか?」

「それに、貴方の義父から言われてるのよ。"娘が臨月に入った、出来るだけ現場に出させないようにしてくれ"っとね」

「エンデヴァーさん···」

「良い父親を持ったわね、ホークス。母親としても、安心できるわ」

「だぁれが母親ですか」

「あら、貴方が小さい頃から面倒を見てあげているのよ。母親と言っても過言じゃないわよ?」

「過言でしょうが」

「あらあら、そんな親不孝な事を言う息子には、私の愛が足りないという事なのね。じゃあ、私の愛を受け取ってちょうだい」

「いやいや、それ今日中にやんなきゃいけない書類でしょうが!!」

「期待してるわよ、最速のヒーローさん」

「いやーーーー!!!!」

「後、残業は許しませんからね。ちゃんと定時にあがって、義娘の所に帰ってあげなさいね」

「エンデヴァーさんに怒られろ!!!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「お義母さん!夏雄さん、どうにかして下さい!!アレは危ないソレは危ないコレは俺がって、何にもさせてくれないんですよ!!」

「あらあら」

「夏雄君も、轟家だったみたいね」

「夏君、心配でも、見守るだけの事も必要だって、アレ程言っておいたのに」

「···焦凍さん、お願いですから、反面教師にして下さいね」

「············努力する」

「「「(あ、これ無理な奴だ/ね/ですわ)」」」

 

 

 

 




夏雄君の彼女さん、チラっとだけでも出てこないかなぁ。せめて、名前だけでも。

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