「クラスメートの八百万だ」
「は、初めまして、八百万百と申します。焦凍さんには、いつもお世話になっております」
「初めまして、焦凍の母の冷です。どうぞ、ゆっくりしていって下さいね」
「ち、父の炎司だ。焦凍の事をよろしく頼む」
家と会場が遠い百を轟家に招待した学校終わり。お茶子達も誘ったんだけど、No.2の実家は恐れ多いと丁重に断られた。
で、何でか知らないけど、居間で机越しに向かい合う轟夫妻と焦凍百ペア。やってる事は紹介と挨拶なのに、この変な緊張感はおじさんの所為だと思う。焦凍を貰いに百が来たみたいな雰囲気出してどうするよ。
「緊張し過ぎだろ、親父」
「確かに、焦凍のタイプの子ね」
「燈矢兄が、初めて上路さん連れてきた時を思い出すよ」
「でっか!何食べたらあんな育つのさ」
それを、襖の隙間から覗き見る長男長女次男長男彼女。長男彼女がまだ同級生だった頃に、遊びにやってきた時もこんな感じだったなぁ。
「もういいよね、百は私の部屋で面倒見るから。ほら、百行くよ」
「え、あ、はい」
「ジャージは、布団の上に置いてある」
「ありがとね~焦凍」
ど緊張してる百を連れ出して、轟家での自室に案内する。あっちに引っ越しはしたけど、いつでも帰ってきていいよと、ある程度の服や物は残してくれている。
「ここが、雪花さんのお部屋なのですね」
「珍しい物なんて無いよ。ほら、早く着替えよ。百はこれ使って、焦凍のだけどちゃんとクリーニングしてあるから新品と変わらない筈」
プリっプリした顔で部屋を見渡す百に、ジャージを渡して制服から着替える。友達の家にお泊まりなんて初めてですなんて言って、海外旅行にでも行くんかいって感じの大荷物を携えてきたお嬢様を説得して、下着と化粧品類だけ持参させ、着替えは全部焦凍から借りる事になっている。要するに、彼(予定)シャツ百ちゃんである。
「と、殿方の服を着るというのも、何だか恥ずかしいですわね」
「殿方って···。流石に、私のじゃ小さいからね~いろんな意味で。キツかったら燈矢さんとか炎司おじさんから借りてくるけど」
「い、いえ、大丈夫ですわ」
うむ、とある部分がパッツパツである。あれが手元に戻ってきた時、焦凍はどんな顔するのだろうか、今から楽しみである。
「雪花、いいか?母さんが、晩御飯の準備手伝ってくれって」
「あ、は~い。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
「あの、私も何かお手伝いを···」
「······百って、料理の経験は?」
「いえ、あの、余り···」
「(ふむ、花嫁修業といくか)おし、じゃあこの雪花さんが、百に料理の手解きをしてあげようじゃないか。いつか、百が愛する男性に手料理をご馳走しようとして失敗しない様に」
「あ、愛する!?!もう、雪花さん!!」
「あっはっはっは!さぁ、行くぞ百!未来の旦那の為に!!」
「···明日に響かねぇようにな」
呆れ顔の焦凍を残して向かった台所で、事情を聞いてすんごい張り切る冷さんのお料理教室が開催されました。アシスタントは、私·冬姉·萌さん。取り敢えず、嫁姑及び兄嫁弟嫁関係は大丈夫そうである。因みに、献立は唐揚げ·大根とゴボウの煮物·アサリの味噌汁·漬け物。
食卓ですんごい不安そうな百が、焦凍の「うまい」の言葉でパァアっと笑顔になる様を、生暖かい目で見守った事をここに記しておく。
▼▼▼
「おかわり」
「私も、おかわりをお願いいたしますわ」
「おかわり、お願いします!」
「次だ!次持ってこいやぁあ!!」
「うっぷ···お、おかわりや」
「せ、せめてお茶子には勝つ、おかわり!」
『さぁて、大会も終盤戦。トップ争いは三組に絞られた模様です!ペースを落とさず食べ続ける轟八百万ペア。それを追いかける緑谷麗日ペアと爆豪八木ペア。ペースの落ちた麗日選手と八木選手をカバーする様に男性陣がスピードアップ!!この展開、どう思われますか?解説のオールマイトさん、エンデヴァーさん』
『やはり、唯一個性によって食べた物を消費できる八百万少女に分があるだろうね。ただ、スピードに関しては緑谷少年や爆豪少年が勝っている。これは、最後の最後まで縺れるんじゃないかな、HAHAHA!···.あの大量のマトリョシカ、八百万少女はどうするつもりなんだろうか』
『どうした、焦凍!!ペースが落ちているぞ!!根性を見せろ、焦凍ぉおおお!!!』
『だから、個人的な応援は無しですってエンデヴァーさん!!』
『HAHAHA(私だって、本当なら今すぐ雪花に駆け寄って応援してあげたいのに)』
参加者20組40人で始まった、老舗蕎麦屋「そば丸」主宰のお蕎麦大食い大会「オールエンデヴァークス杯」。制限時間は一時間。冷温選択式の掛け蕎麦(薬味使用無制限)を、より多く食べたペアの勝利。出汁は飲まずとも良い。他ペアへの妨害、食べる以外で蕎麦を消費する、回りを著しく汚した等のルール違反が発覚した場合即失格。それ以外での個性使用は自由。
テレビカメラも数台入ってて、開始前にインタビューなんかも受けた。専ら撮影してるのは、実況席に座るホークスと解説席に座るオールマイトとエンデヴァーの姿なんだけども。
「···ぷ、ぷるす···うるとら···」ガクッ
「かっくん···後は、頑張って」ガクッ
『おおっと!残り時間五分という所で、麗日選手八木選手ダウン!!』
『うん、良く頑張ったよ、二人とも』
『チャンスだ焦凍!!ここで、決めきれ!!!』
『この親馬鹿解説呼んだの誰よ!?』
「麗日さん!!くっ、負けられない!!」
「ちっ!まだ終わってねぇ!!!」
「フゥー、行くぞ八百万」
「ええ、行きましょう!焦凍さん!!」
『さぁ、勝負を決めにかかる轟八百万ペア!相方の思いを背負って、必死に食らい付く緑谷選手と爆豪選手!!勝利の栄光はどのペアに輝くのか!!』
「そこまで!!全員器から手を離して、箸を置いてください。10分後、結果発表と表彰式を行います。それまで、ゆっくりとお休みください。皆様、お疲れさまでした」
▼▼▼
週が明けての月曜日。教室には、女子に囲まれて顔を真っ赤にするお茶子と、峰田君上鳴君を中心に一部の男子から詰め寄られる緑谷君の姿があった。
「まさか、緑谷ちゃんがあんな大胆だったなんて、意外だったわ」
「テレビで見た時、私一瞬目を疑っちゃったもん」
「あの時の麗日、すっごいうららか~な感じですっごい良かった!!」
「うん、テレビ越しなのに凄い微笑ましくて、ウチ何回も見直したよ」
「現地でも、女性陣を中心に皆さん暖かい目で見ていらっしゃいましたわ」
「ネットも、モテない男の僻み以外でネガティブな反応無かったし。良かったね、お茶子」
「何が?!?お父ちゃんからの追及凄かったんよ!!なんべん言っても全然納得してくれへんのやもん」
「オイオイ緑谷よ~、なんて事してんだよテメェはよ~」
「お前、やっていい事と悪い事あんだよ、分かってんのかコラ」
「み、峰田君上鳴君、えと、あの、その、僕何かした?」
「ああん!!!公衆の面前で女子をお姫様抱っこして記念写真以外の何があるってんだチキショーめ!!!」
「あのうららか~な膝裏に手ぇ差し込んで、あのうららか~な肩抱いて、あのうららか~な顔があんな間近にあって、お前は何も感じなかったってぇのかよ!!!」
「うえっ!えっと、あの、えぇっと、あ、あの時は、写真撮影の時間が迫ってて、でも麗日さん動けそうになくて、ホークスもこの後予定があるって聞いて、咄嗟にというか何というか。撮影場所に運ぶだけで、麗日さんには座って貰う予定だったんだけど、ホークスがそのまま撮っちゃおうよって、だから、あの、麗日さん、個性使わなくてもいい位軽くて、逆に個性使ったら壊れてしまいそうな位柔らかくて、でもちゃんと鍛えられた筋肉も感じられて、髪から凄い良い匂いがして、パンツルックなのがとても新鮮で、真っ赤にした顔がとても可愛く「デク君、もう喋らんといて!!!!」」
この日、私達は暗黙の協定を結んだ。この二人、静かに見守りつつ良い感じにからかって遊んであげようと。
順位及び撮影風景
一位:轟八百万ペア
焦凍の肩に百が座る。百の発育の暴力が焦凍の頭にRIDE ONで炎上。
二位:爆豪八木ペア
かっくんにおんぶして貰ってピースサイン。押し付けられた胸と生足太腿タッチにプチ炎上。
三位:緑谷麗日ペア
緑谷君がお茶子をお姫様抱っこ。顔真っ赤でガッチガチな様子に応援コメント多数。
感想と評価をよろしくお願いします。