八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

202 / 244
「シンデレラもとい、ウララレラ···語呂悪!!」

 

 

 

 

 むか~し、むかし。

 遠~い、遠い、とある国のとある街に、一人の女の子が居ました。名前は、お茶子。優しくて働き者な、とっても可愛い女の子。そんな彼女は、義理の母親と義理の姉妹の女四人で暮らしている(全員同い年)。

 えっ?何で全員同い年なんて奇妙な事になってるかって?しょうがないなぁ、一回だけ簡単に説明するから適当に聞いてね。

 義母は、他国のとある名家のお嬢様なんだけど、色々あって、とある好色老貴族の後妻になる事が決まったの(当時若干14歳)。んで、書類やら何やら事務手続き済ませて、戸籍上その老貴族の妻になって、さぁその方の下へと馬車に揺られてたら、なんと!その老貴族は、囲っていた愛人(複数)に殺されてしまったのだ!!

 その愛人達も、争いあって皆共倒れ。残されたのは、義母と同い年の、愛人達のどれかが産んだ娘が二人。14の年端もいかない、世間も知らない少女(義理の親子)三人。あれよあれよと、財産やら土地やらを奪われ、途方に暮れていた所を、妻を早くに亡くしていたお茶子の父親が、可哀想に思って義母と再婚したのである。しかし、その父親も流行り病でぽっくり。

 ここに、全員同い年の母子が誕生したのである。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「お茶子、これ、三番テーブルにね」

「はーい」

 

 ここは、女将の一佳が営む宿屋。その食堂で、お茶子は働いている。いつも笑顔で、お客さんに料理を運ぶその姿は、訪れる人を魅了している。

 そんなお客さんの中に、緑色のもじゃもじゃ頭な、ちょっと気弱そうな一人の少年が居た。

 

「あ、デク君、久しぶりやね。お仕事、忙しかったん?」

「え、あ、うん、お茶子さん、ちょっと色々あって」

「いつものカツ丼定食でええ?」

「う、うん、お願いします」

 

 自分と同い年で、街の警邏隊で働いているその少年に、お茶子は親近感を持ち、彼が来ている時は余裕があれば良く話しかけている。何なら、常連客は彼が来ている時、お茶子が忙しくならない様にゆっくり飲み食いしたりしている。

 まぁ、このデクと呼ばれている少年は、お茶子を前にすると、余り口が回らなくなってしまうのがアレなのだが。

 

「そ、そういえば、お茶子さんは···えと、」

「ん?何?デク君」

「あの···ぶ、舞踏会には、行くの?」

 

 デクの言う舞踏会とは、国中の年頃な女性(恋人、婚約者、夫が居ない)を集めて行われる、この国の第二王子の婚約者を決める舞踏会の事だ。何でも、その第二王子というのが専らの暴れん坊らしく、長年お相手が見つからず、もう身分は問わないからと、王様の命令で開催が決定したんだとか。

 勿論、お茶子とその義姉妹、未亡人である義母にも、その招待状が届いている。

 

「ああ~、例の舞踏会」

「う、うん。も、もし、王子に見初められたら、こうやって働かなくてもいい暮らしが出来るよ」

「でも、王子様が相手やろ?こんなただの庶民には無理無理。レイ子ちゃんみたいに勉強できひんし、雪花ちゃんみたいな度胸もあらへん。そもそも、私踊れへんし。それに、舞踏会に行くにはドレスが必要やん?百ちゃ···お義母さん達は何枚か持っとるけど、私は一枚も持っとらんもん。しかも、たった一回の舞踏会の為に、あんな高いもんよう買えへんよ。やから、私は行きません」

「そ、そ、そうなんだ···もし、ドレスがあったら、行く?」

「ん~、まぁ、お城の豪華な料理は、ちょっと食べてみたいとは思う、それだけかな。お義母さんがな、ドレス貸したげるって言ってくれたけど、色々とな、サイズとかデザインがな···」

 

 チラッと、自身の胸部にある膨らみを、哀愁の籠った目で見下ろすお茶子。安心して、義母の御立派なアレは、殆どの女性が敵わないから。

 

「······あ、僕そろそろ行かなきゃ。···また、ね」

「うん、またね。お仕事頑張って」

 

 お茶子、そして常連客の生暖かい目で見送られながら、食堂を後にする少年。警邏仲間と思われる屈強な兵士達と合流すると、足早に何処かへ向かうのであった。

 

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「お茶子さん、本当によろしいのですか?」

「こんな事ならもう一着、ドレスを売らずに残しておけば良かった」

「色々ちょっとずつ切り詰めれば、お茶子のドレス買えるんだよ?」

「もうその話何回目?私は大丈夫やって言っとるやろ?私の事は気にせんで、舞踏会楽しんできて」

 

 後ろ髪引かれる面持ちで、何度も心配そうに此方を振り返るちょっと年期の入ったドレス姿の義母や義姉妹を見送り、静かになった家で、フンスと気合いを入れて、暖炉の掃除に取りかかるお茶子。

 お城で出るご馳走、どんななんやろなぁとか思いつつ、灰にまみれながら掃除をしていると、玄関のチャイムが鳴った。こんな時間に?と驚きつつ、最低限灰を落として玄関に向かった。

 そこには、ローブを纏った複数の女性達と、大きな箱を抱えた男性が立っていた。

 

「貴女が、お茶子ちゃんで間違いないかしら?」

「え、えと、はい、私がお茶子ですけど、どちら様で?」

「私は梅雨、梅雨ちゃんと呼んで。とある高貴な方から、此方を贈るようにと言われて来たの。中に入ってもよろしいかしら?」

「は、はぁ、どうぞ」

 

 高貴な人て誰!?!?と頭を混乱させながら、彼女達を招き入れる。そして、大きな箱を床に置くと、その中から真っ白に輝く美麗なドレスが姿を現した。

 

「ひょえっ!!!」

「出久ちゃ···コホン、高貴な方から、これを着てお城の舞踏会に参加して欲しいと言われて来たの」

「わ、わ、わ、わ、私がこれを!?!?!?!無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!!!」

「大丈夫大丈夫、汚しても弁償しろなんて言われないし、何なら舞踏会が終わったら売っ払ってもいいし」

「そうそう。それに、舞踏会に行くだけで良いから」

「で、でも···」

「お願い!お茶子がこれ着て舞踏会行ってくれないと、ウチらお給料減っちゃうの!!ウチらの為に、どうか!!!」

「「「お願いします!!」」」

「うっ!!······給料は、大事やもんね。分かりました」

「「「ありがとう!!!」」」

「さぁ、皆急ぎましょ」

 

 蛙顔の女の子、紫肌の女の子、透明な女の子、耳の先がプラグみたいになってる女の子に頭を下げられて、了承してしまったお茶子。

 すると、箱を抱えてた男性が、今度は大きな姿見を運び込んで出ていき、女性陣にあれよあれよと服を脱がされ、濡れタオルで灰の着いた肌を綺麗され、物凄い手際でドレスを着せられ、髪を整えられ、メイクを施されたお茶子。

 

「最後にこれを」

 

 差し出されたのは、なんとも精巧に作られた硝子の靴。正直、まともに歩ける気はしないけど、勢いに圧されて硝子の靴を履くお茶子。自身の姿を見て"わぁ~すご~い"と、もうどうにでもなれな心境のお茶子。

 そうして、外に止めてある馬車に放り込まれ、煌びやかな光を放つお城へと、ドナドナされて行くのであった。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「お茶子さん、大丈夫かしら?」

「大丈夫なのは大丈夫でしょ。それより聞いた?何でも、第二王子だけじゃなくて、第三王子のお相手も選ぶらしいよ。レイ子ならどっちがいい?」

「興味ないわ、雪花。そんな事よりも、この料理、余ったら貰って帰れないかしら。お茶子にも食べさせてあげたい」

「そうですわね、後で聞いてみましょう」

 

 お茶子が大丈夫だけど大変な目にあっている頃、義母と義姉妹は、ダンスフロアなぞ興味ありませんというオーラバリバリに、お食事エリアで食いだめしとかなきゃとご馳走を食べていた。尚、義母の隣に積み上げられた皿の高さに、"食べた物は何処へ?胸か!?その胸に全部行ってんのか!!?"と、周りの人達はドン引きしている。

 

「あ、王子出てきた。うわ!何あの人殺してそうな凶悪面、そりゃか弱い貴族のお嬢様は、皆ビビって御近づきにはなりたくないわなぁ」

「第三王子は、逆にオドオドして頼りなさそうね。···うわっ、何でアイツもいんのよ。宰相の跡取りだから?」

「あら、あの方は···」

 

 主賓である王子が、王子の周りで賑やかしの為やらなんやら踊る男性陣を引き連れて、その姿を現した。前評判通り、お前はどこのヴィランだと職質されそうな鋭い眼光で、会場に来た女性陣を睨む第二王子。第三王子は、恥ずかしそうにしながら、誰かを探すようにキョロキョロしている。

 うん、主賓の王子二人より、その後ろに居る、見事に紅白半々な髪をした、遊学でうちの国に訪れている隣国の末っ子第四王子(婚約者無し)に、皆熱い視線送ってるよ。

 はてさて、無事に終わるのかねぇ。

 

「···誰も動きませんわね」

「主賓の王子が踊り始めないと、他の人達も踊れないから仕方ないでしょ」

「かといって、あの思いっきりふんぞり返ってる王子が、自分から相手を見つけて声かけるなんてのも期待薄な感じ。仕方ない、ここはいっちょ、この雪花様が一肌脱いであげましょうかね。こんな重苦しい空気じゃ、ご飯が美味しくないもん」

「そ、行ってらっしゃい」

「え~!レイ子も行こうよ~!第三王子でいいからさ~!!」

「絶対嫌」

「ブー。私の分のデザート、ちゃんと確保しといてよ」

「見守っていますわ、雪花さん」

「よ~し、ヴィラン退治に行ってきま~す」

 

 お前は何しに行くつもりだ?と、腕まくりしながらズンズン歩いていく義娘·義妹を見送る二人。そして、皆がどうしようかとザワザワしている中を、颯爽と歩いて第二王子の前に立った。

 

「あ?んだテメェ」

「アンタが踊んないと舞踏会始まんないの!見てよ、このお通夜みたいな空気。私は美味しくご馳走食べたいの。だから、私がアンタと最初に踊ったげる」

「はっ!俺なんぞ眼中にねぇってか?テメェ、名前は?」

「雪花、以後お見知り置かなくて結構ですよ、勝己第二王子様。で、私と踊っていただけますか?」

「はっ、おもしれぇ。いいぜ、踊ってやるよ。ただし、俺はテメェに合わせるつもりはねぇ。精々、無様にこけねぇ様ついてきやがれ」

「上等!!吠え面かかせあげるよ」

 

 こうして、なんとか舞踏会はスタートを切ることが出来たのであった。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「あ、あの、私、遅れてもうて、は、入れますか?」

「···可憐だ······ハッ!ど、どうぞ、まだ舞踏会は終わっていませんよ」

「ありがとうございます」

 

 入り口で立っていた兵隊さんに頭を下げ、開けられた扉から中に入るお茶子。

 そして、目に飛び込んできたのは、ダンスを見守っている参加者全員から、心配そうな目で見られている、ダンスホール中央でお偉いさんと一目で分かる煌びやかな衣装を着た凶悪面な男の子と、見るからにヘロヘロになりながらも踊っている義妹の姿だった。

 

「凄いわね、あの娘まだ踊ってるわ」

「王子、曲が終わっても全然ホールド解かないもの」

「もう何曲踊らされているのかしら。可哀想で見てられないわ」

「誰か、助けてあげなさいよ」

「無理よ!!」

 

 時間的には、舞踏会も後半半ば。そう、ファーストダンスから今まで、ずっと踊っているのであった。え?義母と義姉はどうしてるんだ!って?当然、義妹を助けようと二人は動いたのだけど、義母は幼少の頃に一目惚れして、彼女の行方を探していた紅白頭の王子に、義姉は毎回学校のテストで争っているライバルの、紫髪の宰相子息にそれぞれ捕まり、そりゃもうガッチリ確保されてしまっているのである。

 義妹は私が助けなきゃと瞬時に判断し、演奏が止まりそうなのを見計らって、人垣を掻き分けて猛然と第二王子の下へ走った。

 

「雪花ちゃんを解放して!!」

「あ?丸顔が何の用だ。今楽しんでんだ、邪魔すんな」

「ハァ···ハァ···お、お茶子」

「大丈夫?!雪花ちゃん!!私は雪花ちゃんの義姉です!!雪花ちゃんがこんなんなるまで踊るなんて、王子だからって許せへん!!!」

「だったら何だ?テメェみてぇなちんちくりんが、コイツの代わりになろうってか?」

「っ!!!そ、そう「待ってかっちゃん!!!」···え?」

 

 自身と第二王子の間に入ってきたのは、見慣れた緑のもじゃもじゃ頭。

 

「今度はテメェか、クソデク。弱虫のテメェはすっこんでろや!!」

「い、嫌だ。こ、こ、こ、この人は、ぼぼぼぼ僕が招待したんだ!!」

「···はっ?·········良くみりゃ、そのドレス、王妃御用達の店のじゃねぇかよ。たく、そうならそうと早く言えや。つか、んな下らねぇ催しに参加してねぇで、端から迎えに行けやボケ!!」

「そ、そ、そ、その、か、か、彼女には、正体を明かしてなかったから···」

「んなの知るか。チッ、興醒めしちまった。後はテメェで何とかしろや」

「キャア!!ちょっ!!どこ連れてくつもり?!?」

「この舞踏会の目的は何だ?答えてみろや」

「あ、アンタ達のお嫁さん探しでしょ」

「もう、逃げられねぇからな?雪花」

「ヒッ!!離せ!!コラ!!胸揉むな!!尻撫でんな!!イーヤーだ~れ~か~!!!!」

 

 会場の全員から合掌されて見送られる、第二王子にお姫様抱っこされて運ばれる雪花。何ともグタグタな空気の中、取り敢えず皆の視線は、第三王子とお茶子に向けられた。

 

「デク君···なんよね?」

「え、えと、はい、ほ、本当は、出久って言います。この国の第三王子です」

「い···ずく···。何で、警邏隊やって嘘ついとったん?」

「け、警邏隊所属は嘘じゃなくて、その、僕、オールマイトみたいな、困ってる人を助けられる人になりたくて、その、皆に相談したら、まずは、警邏隊に入って、街の人達を助けられる様鍛えて貰えって」

「そ、そうなんや。えと、このドレス、デク···出久王子様が用意してくれたん?」

「デ、デクで良いよ。うん、その、お茶子さんと舞踏会で踊りたくて、ドレスが有ればって、言ってたから」

「えと、あ、ありがとうございます」

「う、ううん、僕が勝手にやった事だから」

「···」

「···」

 

 シーンとなるダンスホール。もう、皆の心は"行け!!押せ!!告れ!!"の大合唱である。

 

「あ、あの!お茶子さん!!」

「は、はい!!」

「すすすすす好きです!!!!踊ってください!!!!」

「······踊るだけでええん?」

 

 こうして、舞踏会の目的は、無事完遂されたのだった。めでたし、めでたし。

 え?義母と義姉?そりゃ、第二王子に連れてかれた義妹同様、どちらもその日にベッドに連れ込まれて、美味しく貪られてしまいましたよ、当然。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「どう?今度幼稚園児に披露する劇の脚本なんだけど」

「···どこがシンデレラ?」

「要素薄すぎ」

「というよりも、かっくんと私要らんでしょ。主役の二人は?ってなるよ」

「私と焦凍さんの関係も唐突過ぎます」

「このト書きに、私を腰砕けにする位イチャイチャする事って、冗談よね?人使、絶対幼稚園児に見せちゃいけない様な事してくるから今すぐ消して」

「というか、最後の方確実に力尽きてるでしょ」

「結論、書き直しです。希乃子さん、透さん、三奈さん」

「「「ええ~~」」」

 

 

 

 




元ネタは、大分昔に、短編でなろうに投稿しようとして、設定だけ考えた所で力尽きたモノです。掃除してたら発掘してしまったので、供養がてら。
因みに、それのタイトルは「ざまぁられないシンデレラ」でした。


評価と感想をよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。