「少なくとも普通科は、調子のってっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」
「隣のB組のモンだけどよぅ!!敵と戦ったつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」
相澤先生から、二週間後に迫った体育祭についての説明があったり、お茶子の顔が阿修羅になったり、緑谷君がお父さんに発破かけられたりしてた一日。
お喋りしながら帰り支度をしてると、扉の方で峰田君が叫んで何事かと思ったら、他科の生徒がすんごい群がってた。ここで、我らがかっくんが予想通りに煽り散らかしていくのだが、まぁ気持ちも分からんではない。宣戦布告何てしてる暇があるなら、体を鍛えた方が断然有意義だし、あの紫髪の男子以外からヒーロー科に取って変わってやろうって気概を感じないもん。
「ヒーロー科に居るのも、プロになる近道ってだけで在籍する事が目標じゃないもんね」
「···それで、俺をわざわざ訓練に誘った理由はなんだ?」
「え、ああうん。常闇君、空飛ばない?」
「!?飛べるのか!俺は!!」
訓練場で一緒に柔軟をしている常闇君の顔が、驚愕と歓喜の入り交じった色を浮かべてこちらを見てくる。やば、すっごい目がキラキラしてる。結構可愛い。
「ん~、あくまで私の推測何だけどね。間違ってなければ、常闇君は空を自在に駆ける事ができる筈」
「して、その方法は!!!」
「常闇君のダークシャドウって、実体はあっても重さは無いよね。行動範囲も常闇君を中心とした一定距離。人一人は簡単に持ち上げられる力もある」
「ああ、その通りだ」
「私って、空飛べるけど飛行してる訳じゃないの。実際は、雪で体を持ち上げてるだけ。それと同じ事を、ダークシャドウにやって貰えばいいんだよ。それが出来れば、君は闇と空を統べるすっごいヒーローになれる···筈」
「闇と···空を···。やれるか!!ダークシャドウ!!!」
『ヤッテヤロウゼ、フミカゲ!!』
やる気があってよろしい。お茶子も浮く事は出来るけど、飛行は無理だからねぇ。これで、飛行仲間が増えるなら、私も張り合いが出るってもんさ。
「まずは、ダークシャドウに持ち上げて貰う所からだね。取り敢えず、常闇君を1m位持ち上げてみてよ、ダークシャドウ」
「やってくれ、ダークシャドウ」
『マカセトケ!』
幼児を高い高いをする様に、後ろから脇に手を入れてゆっくりと常闇君を持ち上げるダークシャドウ。
「おお!!これが、空を駆ける者の世界か!!」
「大丈夫そうだね。じゃあ、次は横移動だね。私が手を引くから、常闇君はその状態を維持する事に集中してて」
「了解した」
常闇君の前に浮遊して、常闇君の手を引いて歩く程度の速度で場内を周回する。地に足ついてない状態で流れていく視界に、興奮を抑えきれていないのが見て取れる。スピード出したくてウズウズしてるし。
「感覚は掴めた?じゃあ、ラスト一周は一人で行ってみて」
「行くぞ、ダークシャドウ。俺達は風になるのだ!!」
『ガッテン!!』
「あ、ちょっ!そんな飛ばしたら「ぬおおお、止まれダークシャぐほっ!!」···あちゃ~」
曲がりきれずに壁に激突した常闇君の姿がそこにあった。ダークシャドウが、とてもすまなそうに安否を確認している。私も、最初の頃は調子に乗って速度出しすぎて曲がれずによくぶつかってたなぁ。
「くっ、不覚を取った」
「最初は皆そうなるよ。だから、少しずつ練習していこ。君は、夜の闇を切り裂く翼を手に入れたんだから」
「···ああ、俺は必ずこの力を我が物にしてみせる」
「その意気その意気、てな訳でもう一本行ってみよ。今度はぶつからないように」
「ああ!行くぞ、ダークシャドウ」
『オウ!コンドコソマカセロ!!』
常闇君はそらをとぶを覚えた。黒の堕天使と名付けるのは、もうちょっと後の出来事。
▼▼▼
死穢八斎會本邸組長の間。
「こちらが、今回の依頼料と治療費になります。どうぞ、御確認下さい」
「···確かに、いつもすまねぇな。治崎のおかげで、稼げるツテは大分増えてきたが、やはりあんたとの仕事が一番儲けになる」
「貴方方のお陰で、私達も随分楽をさせて頂いていますから。持ちつ持たれつ、という奴です」
「裏で悪事働くしか無かった俺達ヤクザ者が、お上に睨まれずにこうして表の連中と全うにシノギを行える様になったのも、あんたのお陰だ。それに、孫娘の件もある。あんたにゃ返しきれねぇ恩がある。何でも言ってくれ、貰うもんは貰うがな」
「こちらこそ、頼りにさせて貰いますよ。我々ヒーローでは、見ることの出来ない景色というのはどうしても存在しますから。最近はどうです?」
「コソコソとヤク売ってる連中やこそ泥紛いな事をしてる連中は相変わらずだ。ヴィラン連合に引っ張ってこれた奴もいるが、誰も彼もが全うな世界で生きられる訳じゃねぇ。馴染めねぇ奴はどうしても出てきちまう。まぁ、その程度のチンピラ位だ···国内じゃな」
「というと、外から···」
「···ここ最近、とある組織の名前を耳にするようになった。ヒューマライズ、どこの国からやってきたか知らねぇが、『個性終末論』てのを掲げて人類救済を謳う宗教団体みてぇな奴ららしい。何を目的としてるか分からねぇが、家の傘下に入ってねぇ指定団体や、あの異能解放軍の残党と渡りをつけてるって話だ」
「···確かに、キナ臭いですね。此方でも、調査を進めてみます」
「頼む。義燗達も動いてはいるが、中々尻尾を掴かめん。目的が分からねえと、動きようがねぇからな」
「はい。では、私はこれで。あ、そうでした、これを」
「···これは?」
「最近出来たスイーツ店の割引券です。そこのお店、何でもリンゴを使ったスイーツが絶品なんだそうですよ」
「そうか、ありがとうな」
「いえいえ、ではお元気で」
「お前さんもな、アイスメイカー」
「お爺ちゃん、ただいま!」
「只今帰りました、親父」
「おう、よく来たな、壊理。治崎も、忙しいのにいつもすまねぇな」
「今日ね、学校で絵を描いたの、見て!!」
「どれどれ···こりゃ、俺と治崎か?!よく書けてるじゃねぇか、凄いな壊理は。そんな壊理にご褒美だ。帰りに、ここ行って好きな物買ってきな」
「これは?」
「ああ、最近出来たお菓子屋ですか。リンゴを使った奴がウリとか」
「リンゴ!!!お爺ちゃん、ありがと!!!」
「治崎、頼めるか?」
「お菓子屋なんて、俺以外に付き添える人居ないですからね、ウチの組に」
「そういうこった。壊理の事、よろしく頼むな」
「はい、親父」
「お爺ちゃん、聞いて聞いて!!」
「おうおう、このじいじに何でも聞かせておくれ」
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