八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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「下着を追え」

 

 

 

 

「待ってくださいまし!!」

「くっ!すばしっこいんよ!!」

「皆どいてどいて!!」

 

 それは、雄英高校始まって以来の事だった。

 

「皆一回止まって!!」

「んな格好で走り回ってんじゃねぇ!!」

「記憶を消すか凍るか選べ」

 

 騒動終結後、戒厳令が敷かれる程の出来事。

 

「待てーーー!!」

「あっちだ!!」

「うおおおおお!!!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい僕は何も見てません何も見てません何も見てません何も見」ピキーン

 

 これは、後に都市伝説的に語り継がれる事になる珍騒動、その全貌である。

 

「「「八百万先輩のブラジャーーーー!!!!!」」」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ああ~、今日も訓練疲れた~」

「先生達も、本免近いからって熱入りすぎ~」

「まぁ、本免落ちたら色々アレだからしょうがないって」

 

 私達は、厳しい訓練を終えて、コスチュームから制服に着替える為に更衣室に居ます。皆さん、口々に疲れたとおっしゃいつつも、とても充実した顔をして、各々のロッカーを開けて着替えておられます。

 私も、日々の充実感に顔を緩ませながら、自分のロッカーを開けました。

 

「キュッ?」

「···キュッ?」

 

 すると、私の服の上に鎮座する、両手サイズの丸いフォルムをした緑色の謎生物と目が合いましたの。

 

「キュイッ!!」シュタッ スルリッ ツタタタタ

 

 その謎生物は、ロッカーから飛び出て、どう考えても通れないと思われる扉下の通気孔を、軟体動物の様にスルリと抜けて行かれました。口に、何やら赤い物を咥えて。

 

「···今の何?」

「···てか、あの赤いのって」

「···ヤオモモの」

「···ブラだよね」

「···見間違いでなければ、恐らくそうだと思うわ」

「···持ってっちゃったね」

「···確かに、ロッカーの中にありませんわ」

 

 余りに予想外な出来事に、全員の思考がフリーズしておりましたが、それが解けてくると、漸く頭が事態を把握しましたの。

 

「「「下着ドロボーーー!!!」」」

「「「なにぃ!!!ってブッ!!!!」」」

 

 全員で大慌てで更衣室から出て、遠くでピョンピョンヒラヒラとしている緑と赤を追いかけました。後ろから、男子の皆さんの声が聞こえた気がしますが、そんな事を気にしている余裕はありませんでしたわ。だって、あの謎生物が持っていっている下着は、その、焦凍さん以外の男性に見られるのを憚られる、しょ、少々際どいデザインの物ですので。

 ああ、二週間ぶりに焦凍さんと二人で家に居られると浮かれて、あの下着を選んだ朝の自分を呪いたいですわ。

 

 

 

「今日、自主練どうする?」

「テスト近いし、勉強の方したい」

「じゃあ、図書室で勉強会しようぜ」

「いいな、それ」

『待ってくださいまし!!!』

『雪花!雪!!』

『駄目!!何か知んないけど掴めない!!』

「「「ん?んなっ!!!!」」」

 

 ヒーロー基礎学を終えて、友達と駄弁りながら教室に戻ってると、向こうから何やら騒がしい声が聞こえてきた。そっちに目をやると、何か緑の物体が赤い何かをパタパタさせて、足元を駆け抜けて行った。そして、それを追いかける様に、ヒーローコスチューム姿の八百万先輩を先頭に、ヒーロー科三年A組の女子先輩方が、何故か皆下着姿(市販のではなく、コスチュームの下に着る奴)で走ってきた。

 

「「「そこ避けて!!!」」」

「「「ヤオモモのブラ返せーー!!!!」」」

 

 慌てて廊下の端っこに寄り、先輩方を通す。

 

「···プルンプルンしてたな」

「···バルンバルンしてたよ」

「···鼻血出そう」

「···つか、八百万先輩のブラジャーって言ってなかった?」

「···言ってた」

「···もしかして、あの赤いパタパタしてたのって」

「···つまり、下着泥棒?」

「「「捕まえなくては!ヒーローとして!!」」」

 

 恐らく、この時の俺達の目は、絶対ヒーローじゃなかったと思う。だって、俺達の頭の中には、あの現雄英生で最大級のモノをお持ちなお方の、そのモノを実際に包んでいた物をしっかりと拝んでみたい、何なら触ってみたい持ってみたいという、とっても健全で邪な思いしか無かったのだから。

 まぁ、その第一歩は、思いっきり掴まれた肩によって、踏み出しただけで終わったんだけども。

 

 

 

「···何の騒ぎだ」

「さぁ?何かあったのでしょうか」

「警報は、鳴っていないわよね?」

「大変だ、イレイザー!!お前さんのクラスの生徒の下着が盗まれたって大騒ぎしてやがる!!!」

「「「はっ?」」」

「しかも、その下着泥棒を、3A女子があられもない姿で追ってやがる!!アイツら、自分らがどんな格好してっか気付いてねぇ!!ついでに、他科他学年の男子も大捕物に加わって、ソイツらを止めようと3A男子が大暴れしてやがる!!」

「···消太さん」

「···相澤君」

「···」アタマカカエル

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「···なんだか、校舎の方騒がしいね」

「···何かあったのかしら」

「で、どうします?シリルさん」

「何とか、皆に見られない様に保健室に行って、服を借りるしかないわ、蘭花」

「···ですよね」

 

 私の名前は李蘭花(リー·ランカ)。雄英高校普通科の一年生です。こっちは、お友達のシリル·ノルムさん。

 私達、今ちょっと困った事態になっていまして、その、色々ありまして、シリルさんがほぼ裸なんです。かくいう私も、ギリ隠せる程度の布しか無くて。携帯も壊れちゃって、途方に暮れているんです。

 

「···ねぇ、騒ぎの音が大きくなってない?」

「え?···確かに。何か、こっちに近付いてきてません?」

「やっぱり、そう思う?」

 

 二人で扉に耳を当てて、外の様子を探ると、大勢の足音が確実にこっちに近付いてきてる。何事?!と扉から離れて身構える。すると、見慣れた緑色のフォルムが、何やら赤い物と一緒に入ってきた。

 

「アイ君!!」

「キュイ!!」

「これ?シリルさんに?」

「キュイッキュイッ!!」

「アンタ、どっから持ってきたのよ」

 

 その赤い物は、なんとブラジャーだった。結構際どいデザインで、大きいシリルさんが着けても余るサイズの。どう考えても、生徒に貸し出す用の物じゃない。

 

「そこかーーーー!!!!!」バガンッ!!

「「ヒィっ!!!」」

 

 扉が乱暴に開けられ、大勢の人達が雪崩れ込んできた。

 一番先頭には、"ああ、このサイズのブラジャーなら、確かにこの人しか居ないよね"、と納得出来る人が立っている。

 

「さぁ、私の下着を返して下さいまし!!!」

「アイ君ーーー!!!!」

「このおバカーーー!!!!」

「キュイ?」

 

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

「お前ら、こんな大事な時期に要らん大騒ぎを起こすんじゃない」

「「「···すみませんでした」」」

 

 百の下着を取り返し、下着泥棒の謎生物の飼い主?に事情を聞いて、取り敢えず一件落着したと思いきや、私達を待っていたのは、超が付く程怒髪天な我らが担任でした。

 当然、正座でお説教を食らっている。かっくんや焦凍達男子も一緒に。

 何でも、男子達を爆破して気絶させたり、氷漬けにしたり、痺れさせたり、ちょっと動けなくなる程度に殴る蹴る脅す等したからって。校舎も少々破壊したってのもあるみたい。

 

「聞いているのか!!八木!!」

「はい!!聞いてます反省してます申し訳ありませんでした!!!!」

 

 

 

 あ、もう予想はついてると思うけど、この後女子皆、彼氏に叱られた上で、きっちりかっちり己の体で代償を払う事になりました。いやぁ、あの切島君ですら、三奈を寝不足腰抜け膝ガク足プル、服の下にはキスマークの嵐な様相になってんだから、私達なんて推して知るべしだ。つか、誰一人として同情してくれないのは薄情だとは思わんかね?え?思わない?くっそー。

 

 

 

 




 
 李蘭花 個性:バジュラ
アイ君と名付けた不可思議な生物を誕生させる個性。まぁ、ロディの鳥と一緒である。脱皮はしない。ご主人が困ってるから助けようと勝手に行動した。

 シリル·ノルム 個性:衣服変換
衣服(厳密には繊維)を、別の衣服に変換する個性。要するに、早着替え出来るって事。それに失敗して、衣服消し飛ばしちゃったのが、今回の事件の発端。

 尚、この二人は以後、登場予定はございません。



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