八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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「山に木々は生い茂る」

 

 

 

 

「あ゛~~~面倒くさ~~い」

 

 Mt.レディこと岳山優は、ラーカーズ事務所内にある自身のデスクに突っ伏して呻いていた。

 

「今回は、大御所俳優が相手か」

「火の無い所に煙は立たぬとはよく言うが、湯気まで煙と言われてはな」

「Mt.レディの精神的疲労と声明文を出すだけで、ヒーロー活動に支障が出ていない事だけが救いか」

「世間も、慣れてマンネリ化してきた感もある」

 

 そんな彼女を、ため息混じりに見つめるのは、チームを組んでいるシンリンカムイこと俺、西屋森児とエッジショットこと紙原伸也さん。その手には、十把一絡げな三流ゴシップ雑誌。そこには、大御所俳優と共に店から出てくる優の写真が掲載されており、デカデカと"熱愛"の文字が踊っている。

 まぁ、優の出演した番組の打ち上げで、たまたま店を出るタイミングが重なっただけで、全くの事実無根なのだけど。

 彼女がNo.4になってから、こう言った記事は溢れる程書かれた。大半はこじつけだが、自身の注目度を上げたい底辺芸能人が、優を出汁にしたパターンも幾つか。

 

「Mt.レディ、君は結婚願望とかは無いのか?」

「え?何ですか急に。そりゃ、いつかはしたいと思ってますよ。でも、漸くNo.4の肩書きが地に足着けてきたってのに、恋愛云々にかまけてる余裕無いですよ」

「因みに、理想の相手像とかはあるのか?」

「え?えーっと···優しくて頼り甲斐があってヒーロー活動に理解があって尊敬出来る人···でしょうか。あ、後お金持ち!!だからって、助平ジジイとかはノーセンキューです!!」

「見た目は?異形だとかは気にしないのか?」

「ラーカーズに居る時点で、そんなの気にする人間じゃないって証明になりません?今でも、先輩は私の目標であり憧れなんてすから」

「···フム、ではラーカーズのリーダーとして提案する。何なら、命令でもいいか。シンリンカムイ、Mt.レディ、お前達付き合え」

「「はい?!?」」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「な、な、な、な、な、な、な、」

「いきなり何を言い出すんですか、エッジショット」

「···そんなに驚く事か?」

「驚くに決まってるじゃないですか!!そりゃ、先輩の事は尊敬してますし、優しいし頼り甲斐もあって、ヒーロー活動に理解もありますよ!!私の順位なんてあっという間に追い抜いてしっかり稼ぐでしょうよ!!だからって」

「落ち着け、Mt.レディ。意図を話して下さい、エッジショット」

「別に、本当に交際しろと言っている訳じゃない。こんなゴシップが、Mt.レディに集中している大きい理由は、話題に出来る人間が居ない事だ。昨今の結婚ブームで、下手に突っつくと事実無根の名誉毀損だ何だと騒がれる。現に、結構な賠償金を払わされた出版社も居る。その中で、No.4なんて肩書きも背負ってるし一般人人気も高い上に、完全なるフリーだ。なら、相手を用意してやれば良いだけだろ。世間でも、Mt.レディとシンリンカムイの交際を望む声はあるしな。

 それに、来年になれば、チャージズマやセロハン、ルールやエミリーの世代がプロデビューする。世間が一番注目している、ルミナイネン達の世代だ。そうなれば、こういうゴシップやら何やらの対象は、大分分散するだろう。

 だから、それまでの間、世間もマスコミもそう思わせる様に匂わせておくのはどうかと提案しているんだ。チーム内なら、対応も楽だ」

 

 エッジショットの言葉に、色んな意味で沸騰していた頭が落ち着いてくる。

 

「つまり、偽装しろと」

「いや、別に本当に交際しても構わんぞ?リーダーとして、祝儀はしっかり包ませてもらう」

「···話は分かりました。どうする?Mt.レディ。当事者のお前が決めるのが筋だろう。ああ、俺は幾らでも協力するからな」

 

 先輩が、私の方を向いて、そう問うてきた。

 いや、確かに私の理想の相手に先輩はピッタリだけども。この前のチャリティー参加の報酬で、温泉旅館に一緒に泊まった時も、私をスマートに気遣ってくれてキュンとしたりもしたけども。事務所に帰ってきて、先輩に「お帰り」って出迎えて貰った時に、ああコレ良いなぁと一瞬思ったりもしたけども。若い女性のファンに囲まれてファンサしてる先輩にムッとした経験もあるけども。

 

「···Mt.レディ?」

「ハッ!!」

「クックックッ、顔が湯だって頭から湯気が出ているぞ、Mt.レディ」

「っ///」

 

 にやけ面を浮かべるエッジショットを、今すぐ踏み潰してやりたい。

 

「で、どうするんだ?」

「···ご協力、お願いします」

「分かった」

「良し、じゃあ先ずはお互いを名前で呼ぶ事からだな」

「はいぃぃ?!?」

「その方が、信憑性が高まるだろ?」

「そ、そうですけど···」

「気恥ずかしいが、追々慣れてくるだろう、優」

「い、いきなり下の名前!!?」

「駄目だったか?」

「い、いえ、だ、だめじゃ···えと、し、し、森児さん」

「···う、うむ」

 

 駄目だ、恥ずかしくて先輩の顔が見れない。

 

「セロハン、出勤しました···って、何ですか?この空気」

「ああ、セロハン。いや何、この度めでたく、Mt.レディとシンリンカムイが結婚を前提に交際する事が決まってね」

「「そうだけどそうじゃない!!!というか飛躍しすぎ!!!!」」

 

 

 

 




因みに、世間に公表したら、九割の人間が「やっぱりね~」という反応で、そこまで大騒ぎにはならなかったそうな。


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