八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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「YourNext」

 

 

 

 

『次は、君だ』

 

 

 かつて、世界中の誰もが憧れた最高のヒーローが、その物語の幕引きに告げた言葉。彼が、どんな思いで、誰に向けて告げた言葉なのかは分からない。しかし、確かに皆に届いた。

 

 

『次は、僕/俺/私だ』

 

 

 ヒーローじゃなくても、胸の内に灯った火を燃やし、日々を過ごしていった。

 これは、偉大な英雄から受け取った者達の、アンサーを叫んだ物語である。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ねぇかっくん、タイタニックごっこしよ!!」

「縁起わりぃだろうが、ボケェ!!!」

「こんな所に流氷なんて流れてこないでしょ。あ!焦凍に出して貰えば」

「アホか、そろそろ船ん中戻るぞ」

「はーい···その前に、私ちょっとお花摘み」

「さっさと行ってこいや」

 

 私とかっくんは今、巨大豪華客船の上に居る。

 あ、別に旅行とかじゃないよ、授業の一環。この豪華客船で、日本からスタート出港して世界一周旅行するから、そのオープニングパーティーに参加して欲しいって依頼が、学校にあったらしいの。

 そこそこのVIPとかも居るから、デビュー前の顔見せとか顔繋ぎとか予行演習的なアレで、私達雄英高校ヒーロー科三年生が派遣されたのです。だから、ドレスじゃなくてヒーローコスチューム。

 他の皆も、パーティーが始まるまで、船の色んな所で思い思いに過ごしてる。

 

「世界一周は別にだけど、船で新婚旅行とかもいいかもねぇ」

「あら、お気に召して頂いて光栄だわ、オールマイトの娘さん」

「えっ?」

 

 

 

 トイレに行ってるお茶子さんを待っていると、赤い髪をした、眼帯義手義足燕尾服という、なんとも属性過多な男性に声を掛けられた。その手には、長い金髪の綺麗な女性が写った一枚の写真があった。

 

「申し訳ありませんが、この女性をお見掛けしませんでしたか?」

「ご、ごめんなさい、見ていないです。その、何かあったんですか?」

「いえ、大した事ではごさいません」

「あ···行っちゃった」

「デクく~ん、お待たせ。どしたん?」

「あ、ううん、ちょっと尋ねられただけ。パーティー会場行こっか」

「うん。あ~、どんなご馳走が出るんやろ~ジュルリ」

「あはは、楽しみだね」

 

 先程の男性に、なんとなく後ろ髪を引かれる思いを感じながら、お茶子さんと会場に向かう。会場にはもう皆来ていて、最初の乾杯のドリンクを受け取りながら、複数のグループに別れて旅行客の人達と交流したりしていた。妙に周囲を警戒しながら。

 

「···デク、来たか」

 

 その様子に、怪訝な思いを抱いていると、扉のすぐ横に立っていたかっちゃんに声を掛けられた。

 

「かっちゃん、どうしたの?八木さんは?」

「···このツアーの主催者に、オープニングで共に挨拶をしてくれって頼まれて、その打ち合わせだとよ」

「あ、だから不機嫌そうなんやね」

「···ちげぇよ、丸顔。デク、お前何か感じねぇか?」

 

 そう聞いてくるかっちゃんの顔は、とても真剣だった。

 

「···少なくとも、危機感知は発動してないよ、かっちゃん」

「···そうか」

「何か、気になる?」

「雪花の奴、メールで送ってきやがった。いつもなら、電話で伝えてくるのにだ。こっちから掛けても、出やがらねぇ」

「マナーモードにしとるんと違う?」

「···だったら良いんだがよ、なんか胸糞わりぃのが消えねぇ。俺の杞憂だってんなら笑い話で済む。全員には伝えてある。お前は、西側のグループに入れ。瀬呂·尾白·耳郎·葉隠だ」

「う、うん、分かった」

 

 かっちゃんと別れ、他の乗客の人に気取られない程度に愛想を振り撒きながら、尾白君達と合流する。僕ら以外に、こっちに居るのは、B組の拳藤さん·取蔭さん·凡戸君·鎌切君·泡瀬君·吹出君の六人。何事も起こらなければ良いけど。

 

「っ!!」

 

 突然電気が消えた。思わず警戒態勢を取るけど、直ぐ様ステージにスポットライトが当たり、タキシードにマント姿の男性を照らしている。外見で疑っちゃ駄目だけど、顔上半分を覆う革マスクとか、怪しすぎるんだけど。

 それに、危機感知が今までに無いレベルで警告してくる。

 

『皆様、ようこそ我がゴリーニ号へ』

 

 何処かでとても聞いた事のある様な、でも何かが決定的に違って、思い当たる人物を思い出せない声で、マイクに向かって話し始める男性。

 

「えっ?」

「デ、デク君、アレ···」

「嘘だろ···」

 

 革マスクを外し、大仰に手を広げて宣言したその姿は、とても見覚えのある顔だった。

 

 

 

『自己紹介をしよう。俺は"オールマイト"、新しきオールマイト、次代の象徴となる男だ』

 

 家で書類仕事をしていると、テレビのチャンネルが突然切り替わり、何とも違和感のある夫の顔がドアップで映し出された。

 大仰な身振り手振りで、自己陶酔のお花畑な戯れ言をほざきやがるコイツは何だ。

 

「っ!?あれは···雪花?」

 

 男の足元から、二人の女の子が競り上がってきた。その内の一人は、まごうことなく自身の可愛い娘の姿だった。

 

『ここにいるのは、かのオールマイトの娘。俺は彼女を娶り、新たな象徴として、オールマイトの理想を引き継ぐ事を誓おう!!そう!!!』

 

 生気の無い顔の娘の肩を抱き、カメラに向かって左手の人差し指を突きつけて、反転させた親指を自分に突きつけた。

 

『次は、俺だ!!』

「だーーれーーー!????」

 

 

 

 




劇場版第四弾YourNext編スタートです。
ただし、ジュリオ辺りのアレはほぼスルーするかと思われます。あの主従カプは、映画本編と流れ変わらん予定なので。
ついでに、主人公はほぼほぼ囚われのお姫様です。


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