「···どうしたっすか?二人とも」
「「···別に、何でもねぇよ」」
公安の用事で遅くなり、たまには外で晩御飯済ませようかと、マスターの店を訪れたら、見事なまでにボロボロなトムラと、凄い焦げ臭い荼毘が先客で居た。
「いらっしゃい、ホークス。何飲む?」
「あ、今日はお酒無しで。適当にお腹に貯まるのをお願いっす」
「ん、了解。あ、因みにその二人、うっかり娘の裸を見ちゃったんだってさ」
「「マスター!!!」」
「···あらぁ」
これは、皆に話すネタとして、キッチリ仕入れとかんといけんばい。
▼▼▼
轟燈矢の場合
「ただいま」
「あ、おかえりなさいませ、燈矢お義兄様」
仕事が終わり、家に帰宅した俺を出迎えてくれたのは、エプロン姿の弟の奥さんだった。
両親は、町内会の集まりに行ってるし、萌はPTAの会議に出席中。学校帰りの娘がいるだけかと思っていたので、多少驚いた。
「ああ、来てたのか。百一人だけか?」
「いえ、焦凍さんも千代も一緒ですわ。ご飯までもう少々掛かりますので、ゆっくりしていて下さいませ。あ、焦凍さんは、緋衣さんと道場に居られますわ」
「そうか、分かった」
そう言って、台所に引っ込む義妹。萌には及ばないが、焦凍も良い娘と結婚したな。そんな事を思いながら、雄英で揉まれている娘の成長を見てやるかと、道場に足を向ける。おっと、その前に洗濯物を出しとくか。
「最近、あんま訓練に付き合ってやれてねぇからな。どんだけ強くなってんのか、楽しみだ」
親の贔屓目と言われるだろうが、妻に似て美しく強く育った自慢の娘。好きな人が出来たせいか、更に磨きが掛かってきて、父親として少々複雑な思いもあるが。
「親父も、冬美に対してそんな思いを抱いてたのかねぇ」ガラッ
「えっ?」
「はっ?」
「あ、おじさま、おかえりなさいませ」
今度、親父と酒でも飲みながら話してみるかな、など考えながら、洗濯機が置いてある風呂場の脱衣所の戸を開けたら、予想外の光景がそこに広がっていた。
「···」
「···」
恐らく、二人でお風呂に入っていたのであろう、体から湯気を立たせ、緋衣に体を拭かれている千代ちゃん。当然、体は何も纏ってはいない。
···初めて出会った時の萌位か。
「······上半身に比べて、下半身の筋肉が少々足りてないな。スクワットを多めにした方が良いな」
「娘と姪の裸を見て言う台詞かーーー!!!!」
「ごはっ!!!」
顔を真っ赤にした緋衣が、右腕を炎の拳にして飛ばしてきた。うん、お父さんが悪かった。その一発は甘んじて受けるから、皆には内緒だぞ。
「燈矢兄、俺、今なら燈矢兄を燃やし尽くせそうだ」
「ちょっ!待て焦凍!!それは洒落になんねぇ!!!」
「ご安心下さい。超耐火耐熱仕様のお部屋をご用意しましたので」
「叔父さん、ヤっちゃえ」
「おとうさまー、よくわかりませんが、がんばってくださいまし~」
「萌ーーー!!!ヘルプーーーーー!!!!」
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志村転孤の場合
「···んん······今何時だ?」
たて込んでいた仕事が一段落し、久しぶりの休日。
家族サービスでどこか出掛けようかと提案したが、それぞれ予定があると言う事で、仕方なく家で一人留守番。暇だしやる事も無いので、リビングのソファに寝転がっていたら、どうやら眠ってしまっていた様だ。
時計を見ると、もう夕方近く。結構ガッツリ寝入ったな。
「昼飯、食い損ねたな」
空腹感を訴える腹を擦りながら、ソファから体を起こし、固まった筋肉をほぐすように伸びをする。すると、二階から何やら騒がしい音が聞こえてきた。
「あ?誰か帰ってきてんのか?」
ルミはまだの筈だから、三姉妹のどれかだろうな。位置からして、俺とルミの寝室だな。
「たく、人の部屋で騒ぐんじゃねぇよ」
これは説教だなと、ため息混じりに気配を消して二階へと上がる。キャーキャーと、姦しい声がどんどん大きく聞こえてくる。
「コラ!!何やってんだテメェ···ら······」
「ひゃっ!!」
「ヤバッ!!」
「うわぁあっ!!」
勢いよく扉を開けてみれば、案の定取っ組み合う三姉妹が居た。しかし、その格好が予想外だった。
全員、下着姿なのだ。しかも、自身のではなく、ルミの下着を着けて。ルナ(長女)は、大分ルミのプロポーションに近付いてきているので、何とかギリギリサイズが合っている。しかし、ルニ(次女)とルネ(三女)は、完全に色々な所が足りていない。もう、プラプラのズレズレである。
恐らく、ルナがそんな二人を見て笑い転げ、怒った二人が襲い掛かったんだろうな。
「「「み、」」」
「み?」
「「「みん、」」」
「みん?」
「「「見んじゃねぇーーーー!!!!」」」
母親譲りの兎の脚力で、姉妹らしくほぼ同時に、俺に向かって飛び蹴りをしてくる。流石に、娘の下着姿にフリーズしていた俺は、何の反応も出来ずに、顔·胸·腹に、娘達の足が突き刺さったのであった。
「「「忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ」」」
「やめっ!ぶっ!おちっ!!つけっ!!!」
そして、半狂乱になった娘達のストンピングは、帰ってきたルミが、娘達に踵落としを決めるまで続いたのであった。
▼▼▼
「て、事があったみたいなんすよ」
「···そうか」
「あれ?何か歯切れ悪いっすね」
「···」
「···エンデヴァーさんも、何か心当たりがあるんすか?」
「···まだ、燈矢が三歳位の時だったか。その日は、家に冬花が来ていたんだ。そして、冷の代わりに燈矢を風呂に入れてやっていた」
「ええっと、それって···まさか···」
「仕事から帰ってきた俺に、風呂から上がって体を拭いてもらっていた燈矢が気付いて、風呂場から飛び出してきたんだ。それを、反射的に冬花が追い掛けて出てきた、裸でな」
「出会しちゃったんですか?」
「···ああ」
「···それで?」
「···初めて、凍死するかと思った。お前も、気を付けろ、義息子よ」
「···ういっす、お義父さん」
世のお父さん、扉を開ける時は、ちゃんとノックをしましょうね。
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