『スターーーーーート!!』
最後のシグナルが消灯したと同時に、ミッドナイト先生の声が響き渡る。そして、人数に対して明らかに狭いゲートへ、皆一斉に走り出す。
案の定、詰まるゲート内を颯爽と抜けていく一つの影。足元を凍らせながら滑走していく焦凍。予想通り、周囲を凍らせて動けなくする妨害をして、いの一番にゲートから飛び出していった。
「あっはっはっはっ!!足止めご苦労!!」
「舐めてんじゃねぇぞ、半分野郎!!」
「その程度じゃ、僕達は止められないよ、轟君!!」
「アレで止められるなんて、端から思っちゃいねぇよ」
雪を纏い飛翔する私、爆破でかっ飛ぶかっくん、体を緑色にスパークさせながら疾走する緑谷君が直ぐ様追い付く。クラスの皆も、焦凍の妨害を難なく躱してゲートを抜けている。
『開幕からド派手なやり合いで競技がSTART!!実況はこのプレゼントマイクが、解説のイレイザーヘッドとお送りするぜ!!盛り上がってけよな、リスナー!!』
『何で俺なんだよ』
『さぁ、先頭集団は早くも第一の障害に突入だ!!まずは手始め、第一関門はコイツだ、ロボ·インフェルノ!!ロボット軍団が、選手達を存分に妨害するぜ!!』
入試で相手にしたロボット達が、私達の前に立ちはだかる。ちゃんと、あの0ptロボも複数体ご用意されてらっしゃるのよさ。
「皆が見てんだ、もっと張り合いのある奴用意してくれよな」
『おおっと、1-A轟、自慢の氷結であっちゅう間に巨大ロボを凍り付け!!悠々と駆け抜けて行ったぁああ!!』
しかも、倒れやすい角度で凍らせてね。まぁ、飛べる私にゃ無問題なんだっての。羽生やして出直してきやがれってんだ。
『あの四人に障害なんてナッシング?!一番の障害はお互いってかぁあ!!』
『まぁ、アイツらにとっては有って無いようなもんだろ。現に、緑谷、爆豪、八木は入試でぶっ倒してるしな』
『後ろも第一関門に到着しだしたが、A組の奴らは躊躇する事なくロボに挑んでるぞ!!他のクラスも遅れんな!!』
後ろからボッカンボッカン聞こえてるけど、多分百が大砲でもぶっ放したのかな?何気に百って大艦巨砲主義なんだよなぁ。ん~、あんま後ろとの距離離せてないな~。
『先頭集団四人は、早くも第二関門到着だ!落ちればアウト、それが嫌なら這いずりな、ザ·フォール!!』
「あっはっはっはっ!!お先ーーー!!!」
「待てや!クソ八木ぃぃいい!!!」
「ロープ使わなくても、飛び石の要領で!!」
「向こうまで渡りゃいいんだろ!!」
『ああもう、分かってましたよ!!せめて緑谷みたいに足場使う位しろよな!!』
『次からは、対空兵器がいるな』
個性で飛べる私とかっくん、苦もなく飛び越せる緑谷君、自前で道作れちゃう焦凍。この面子に、穴があるだけでどうにかなる訳がないってもんよ。まぁ、私らに合わせると他の子らが最悪無理ゲーになるから仕方ないんだろうけどもさ。
第一回戦、恐らくヒーロー科以外の生徒を落とす為の場なんだろうけど、それでも彼らにチャンスの余地を残すには、この位のレベルになっちゃうんだろうね。
『気を取り直して最終関門、足の置き場に気を付けな!一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!!』
「地に足着けなきゃいいんでしょうが!!」
少々凍えてきた体に渇を入れてラストスパートをかける。いや、厳密にはかけようとした。
「勝つのは俺だ!!!テメェは落ちてろ!!!」
「ぐぺっ!(カチッ)どわふっ!!」
私の頭上を取ったかっくんが、容赦のよの字もなく足蹴+爆破で私を地面に叩き落としやがった。しかも、ちゃんと地雷のある所に。
確かに音と光だけでダメージはほぼ無いけど、目はチカチカするし、耳もキーンてして平衡感覚が可笑しい。
「踏んでも、爆破する前に駆け抜ければ!!」
「俺だって、跳ぶ位なら出来る!!」
「こなくそ、私はまだ飛べるぞーー!!」
「一位は、誰にも渡さねえ!!!!」
『女子を踏みつけてでも一位が欲しいか爆豪!爆発を置き去りにして追い掛ける二位緑谷!親父ばりに炎で大跳躍、三位轟!フラフラしながらも根性で飛ぶ紅一点、四位八木!さぁ、最後のデッドヒートを征して、最初にこの会場に戻ってくるのはいったい誰だぁぁあああ!!!!』
『正直、俺いらねぇだろ』
「「「「勝つのは、俺だ·僕だ·俺だ·私だ!!!」」」」
▼▼▼
「く、ふがいないですわ···」
「いっ、一石二鳥よ、オイラ天才」
本当でしたら、もっと上の順位でゴール出来た筈ですのに。途中峰田さんが個性を使って背中に張り付いてきた所為で、最後には麗日さんにゴール前で追い抜かれてしまいました。
「おい、凍死と焼死···どっちが好みだ」
「と、と、と、と、轟!!!!」
先程まで、順位の映し出されていたスクリーンをじっと見ていた筈の焦凍さんが、いつの間にか後ろに来て峰田さんの顔を両手で挟むように掴んでおられました。
「なぁ、どっちがいい?」
「う、う、うわああああ、ごめんなさーーい!!!!」
「···ちっ」
峰田さんは、悲鳴を上げながら、服に着いたもぎもぎを大急ぎで回収して、緑谷さんもかくやという速さで駆け去って行かれました。それを見送る焦凍さんの目は、ガチでしたわ。
「助かりましたわ、焦凍さん。幾ら峰田さんと言えど、人一人ぶら下げているのは辛かったので」
「ああ、別に気にす(ピキーン)(バンッ)」
「キャッ!焦凍さん?!」
お礼を言う為に、焦凍さんに向き直って軽く頭を下げると、突然私の真後ろに氷壁を出して顔の両側に手をつかれてしまわれました。か、顔が近いですわ。
「しょ、しょうとさん??!いったい···」
「閉めろ」
「···はい?」
「前を閉めろ」
「···まえ?」
「ジャージの前を、早く閉めろ」
はい?···ああ、個性を使用する為に開けていたジャージを閉めろと。え?それだけの為にこのような事を?きちんと学校指定のインナーを着ていますのに。
「そういえば、焦凍さんは何位だったのですか?最後まで競っておられたのは実況で分かっているのですが、結果は第三関門の爆発音で聞こえなかったもので」
「···ああ、結果はな······」
▼▼▼
「この手だけは使いたくなかったけども、これも勝利の為。全員止まれーーー!!」
「ちっ!!八木ぃぃいいいい!!!」
「くっ!体が!!これは、八木さんの雪!!」
「右だけとか、器用な真似してんじゃねえ!」
「勝てば官軍、勝てば良かろうなのだーーー!!」
最後の最後に、自分で纏っていた雪を俺達に纏わせて動きを止めにきやがった。その所為で、自分の足で進まなければならなくなってはいるみたいだが、早く解かさねえとゴールされちまう。
「くっそぉぉおおお!!ふざけてんじゃねぇぞ八木いいい!!!!」
コントロールされていない、ただ前に進む為だけに全力で放たれた爆破。
「ちょっ!こっちくんな!!」
「テメェが避けろやぁぁあああ!!!」
「無理だどあほーーーー!!!!」
走る雪花に向けて一直線にかっ飛んでいく爆豪。俺らの動きを止めながらだから、当然避けれる訳もなく、二人こんがらがりながら会場内へと消えていった。
雪花の拘束が無くなったから、再び走り出したんだが、スピード勝負じゃ緑谷に分があった。アイツに先を越され、俺は四位という結果に終わってしまった。
まぁ、そんな事よりも···、
「ムグググ、ムガギガガ!!」
「だから、動くな!下ろせないってば!!ちょっ!インナーん中手ぇ入ってる!!ブラずれる!!!胸掴むな!!!!!」
どうやったらそんな事になるんだと、雪花のジャージの腹側から顔突っ込んで踠いている爆豪の姿を見て、純粋に疑問に思った。
「見てないで助けて、焦凍!!」
「···俺が雪花抑えとくから、緑谷は爆豪を引っこ抜いてやれ」
「あ、うん、分かったよ、轟君。痛い!大人しくしててよ、かっちゃん」
「行くぞ」
「いいから早く!」
「せーのっ!!」
「ぶはっ!!!はぁ···はぁ···、殺す気かテメェは!!」
「ふざけんな!!元はと言えばかっくんが······」
「言いたい事があるなら最後まで言いやがれ」
「はわわわ、かかかかっちゃん···」
「爆豪、とりあえず左手に持ってる奴、返してやれ」
「ああん?左手ぇ······」
爆豪の左手に握られているのは、黒のレース布で作られた女性用胸部補正下着。要するにブラジャー。姉さんや萌さんとお揃いで買ってた奴だな。
「くかきけこかかきくけききこくけきこきかかかーーー!!」
「あ!返せバカーーーーー!!!!!」
▼▼▼
「それで、雪花さんの姿が見えないのですね。峰田さんが居ない時で良かったというべきか何というか。大丈夫でしょうか、雪花さんは」
「新しいのに着替えてるだけだし、八木先生が付き添ってるらしいから大丈夫だろう。まぁ、A組の更衣室に居るらしいから、心配なら見に行ってやってくれ。二回戦は、アイツが帰ってくるまで待ってくれるって話だ」
「そうですね、ちょっと行ってきます···あの、手をどけていただけますか?
「あ、すまん」
ラブコメの主人公なら、一回はラッキースケベられとくべきだと思う。私は、爆豪君に謝りません。
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