『先日発表されました上半期JPヒーローランキング。やはり注目は、初のトップ10入りを果たした、第八位の"爆心地ヒーロー"ダイナマイトでしょうか』
『ですねぇ。デビュー当初は、ルミナイネンやデク、ショートといった同期と比べて、一般市民への乱暴な対応で順位が下でしたが、ルミナイネンによる"ダイナマイト翻訳講座"なる動画が、若者を中心にヒットした事で、エンデヴァーに似た人気と知名度を獲得したのが、今回のランクインの要因でしょうな。元々、解決数や貢献数は郡を抜いていましたからな』
『ですね。では、改めてランキングを100位から見ていこうと思います』
店内に設置されたテレビから流れるニュースをBGMに、アルコールをチビチビと飲む。
俺の隣には、トレードマークの前髪が力なく垂れ、丸まった背中にどよーんとした空気を背負って、ブツブツと愚痴を垂れながら、グラスに口をつける愚弟の姿。
「しかし、時間が掛かったと思うべきか、案外早かったと思うべきか、正直コメントに困るな、アイツのトップ10入りは」
「·········はぁ~~~」
「···さっきからため息ばかり。貴様の最初の教え子の一人だろうが、おめでとうの一言位出せ」
「そうだけど~~、雪花がお嫁に行っちゃう~~」
「端から分かっていた事だろうが」
くだを巻く愚弟に、少々の共感と多大なイライラを感じながら思い出す。ダイナマイト···爆豪に請われ、証人という立場で同席した去年のあの日の事を。
『俺が、ヒーローランキングトップ10入りした上で、雪花より上の順位に上がったら、俺に、雪花を下さい』
そう言って、頭を下げた爆豪。そんな条件を付けずとも、お前以外の誰がアイツを貰えるのだと内心思いはしたが、あれは奴にとって譲れないライン、男の意地なのだろう。
「雪花~~~」
「シャキッとしろ。そんな腑抜けた様子なら、俺が雪花の手を引いてバージンロードを歩くぞ。正直、貴様よりもアイツの親代わりをしていた俺の方が、接してきた時間は長いのだからな」
「それダメ!!!歩くの私!!!」
「だったら、堂々とくれてやれ、愚か者」
「うう~~~」
まぁ、今日位は付き合ってやる。娘を貰われる父親の気持ちは、先に味わっているからな。
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「フフッ、まさか一年で抜かれちゃうとは。まぁ、ホークスさんの記録は抜けなかったみたいだけど」
かっくんのトップ10入りを祝して、二人で簡単にお祝いパーティー開いて、当然の如く肌を重ね合わせた私達。
「うるせぇ」
「おめでとう、かっくん。取り敢えず、夢のNo.1に一歩前進だね。まぁ、すぐに抜かし返してやるけどさ」
「···雪花」
「ん?何」
かっくんの腕を枕にして、かっくんの胸板に頬を寄せていた顔を上げると、いつになく決意に満ちた、珍しく緊張しているかっくんと視線が合う。
ゆっくりと、優しく、しかし深く、唇で唇を塞がれ、私の左手をかっくんの右手が絡み合う様にして握り、そのまま押し倒された時みたいにかっくんが上にくる。唇が離れた。
「ぷはっ···何?まだしたりないの?もう、しょうがない彼氏だな~」
「ちげぇよ、茶化すな」
「もう、場を和ませようとする彼女の健気な行動をそんな風に言うんだ」
「いいから、俺の言う事を黙って聞いてろ」
「うん、聞く」
この、ヒーローなのにヤンキーみたいな口調の、ブライド摩天楼な恋人が、どんな言葉を紡いでくれるのか、視線を外すことなく大人しく待つ。
「······」
「···」
「······」
「···」
「······」
「···まだ?」
「っ///俺のモノになれや雪花!!!」
「·········はぁ~~、いやですば~か」
「んなっ!!」
「私は物じゃありませ~ん、物になんてなりたくありませ~ん」
「ぐぐぐ」
「落ち着いて落ち着いて、はい深呼吸。もう一回チャンスあげるから、今度はちゃ~んとした言葉でよろしく」
「·········雪花、お、俺と、俺と···」
「かっくんと?」
「俺と···け、け、」
「け?」
「だあああ!!!俺の嫁に来やがれ!!!!」
「·········まぁ、及第点としてあげましょうか」
「ちっ、んで、返事は」
「喜んで。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
「···雪花」
「ん?まだ何かあるの?旦那様」
「愛してる」
「············プッ!!あっはっはっはっ!!ヤバいお腹よじれる!!!あのかっくんが"愛してる"って!!似合わないーーー!!!!」
「テメェ!!ふざけんな!笑うな!ちゃんと言葉しろってテメェが言ったんだろうが!!!」
「だって!!だってぇ!!!」
「(ピキピキ)···よ~し、いい度胸だ。テメェはもう俺様の女だ。なら、しっかりと仕込んでやらねぇとなぁ!!朝まで寝かさねぇから覚悟しとけや」
「うげ!まだ子供は待ってーー!!具体的には25歳になるまでーーー!!!!裂花が長女じゃなくなっちゃうーーー!!!」
取り敢えず、命中はしなかった、とだけここに記しておきます。
▼▼▼
「そうか、プロポーズしてOKを貰えたんだね」
「はい」
「うん、おめでとう。娘を、よろしく頼むよ、爆豪少年···いや、義息子よ」
「はい!」
「ところで、ちょっと小耳に挟んだんだけどね。君、雪花に言わずに婚姻届にサインだけさせてずっと放置してたらしいね。娘の体を好きなだけ蹂躙しておいてずっっと放置してたらしいね。娘に、不安を抱かせたまま何もしなかったらしいね。他にも何かあったっけ?義兄さん」
「俺から言う事はない。ただ、ランクインのきっかけが、雪花の動画からというのに、さも自身の功績だけでという顔をするのはいかがな物かと思うがな。一応、貴様を鍛えた者の一人として、今一度鍛え直してやってもいいかもしれんな」
「······」ヒヤアセダラダラ
「「さて、新旧No.1による特別講習と行こうか」」
ガチの表情で追いかけてくるオールマイトとエンデヴァーから、見た事ない程必死の形相で逃げるダイナマイトの姿は、彼が伝説(笑)として、ずっと語り継がれるのでした。
「ねぇねぇ、結婚式さぁ、·········てしたいんだけど、どうかな?」
「···好きにしろや」
「うん、好きにするね!」
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