「やぁ、待たせてしまったね」
「大丈夫、私もさっき終わった所だから、青山君」
「頼まれてた件、大丈夫そうだよ」
「良かった~、ごめんね、色々と我が儘聞いて貰って」
「何、あの人にはウチも大分お世話になってきたからね、これ位なんて事はないさ。それに、僕よりもママン達の方が張り切っててね。何なら、君のより豪勢になりそうなのを止める方が大変さ」
「せめて、ウェディングドレスの枠には収まる様にしてね。後、絶対バレないようにね」
「勿論さ」
「じゃあ、当日の流れなんだけど······」
▼▼▼
「貴方、準備は出来ていますか?」
「ああバッチリさ!!娘の晴舞台、しっかりと見届けてあげないとね」
「張り切りすぎて、トチらないで下さいね」
「ああ、任せなさい!!」
今日は、雪花と爆豪少年の結婚式。
仕事の事や、諸々の準備や招待する方々の関係で、一年とちょっとの婚約期間を経て、正式な夫婦となる二人。
親として、あの子にしてあげられた事は、正直少ない。エンデヴァー、義兄さんの方が、僕なんかよりもずっと雪花の親だ。それでも、雪花は僕の事をお父さんと呼んでくれる。
そんな娘が、とうとう僕らの下から巣だって行く。
「しかし、雪花も思いきった事をしたね。まさか、結婚式を雄英高校でなんて」
「セキュリティの面で考えれば、あそこ以上の場所は中々無いですからね。招待された方々もそうですが、そもそも貴方という存在を前に、利益よりも何かが起こった時のリスクを考えて、尻込みしてしまう会場が殆どだったのだから、仕方ありませんよ」
「根津校長には、もう一生頭が上がらないね」
「あら、一度でも頭を上げた事が?」
「HAーHAHAHA!!無い!!さぁ、行こうか」
「はい」
そうして、僕達は家を出て、式場へと向かった。
『目標、家を出ました。作戦を開始して良いっすよ』
『分かった。GOサインを出してくれ、お前は引き続き監視を頼む』
『皆さん、よろしくお願いします』
『正念場ですわ!わが家が誇る精鋭の力、存分に発揮しますわよ!!』
『『『はい!お嬢様!!!』』』
なんてやり取りが、行われているとも知らずに。
▼▼▼
リーンゴーンリーンゴーン
臨時改修が施されたUSJに、厳かな鐘が鳴り響く。
入り口から中央の噴水まで、一直線に敷かれたレッドカーペット。その左右にズラッと並ぶ、親族や招待客達。
新郎新婦の同級生や親族、付き合いのあった先輩や後輩、ヒーローだけでも結構なアレなのに、各国の政財界等の大人物達まで列席しているもんだから、ここにいる人達を一網打尽に出来れば、冗談抜きで世界が傾くだろう。まぁ、やれるもんならやってみろという話ではあるが。
「パパ!!」
「おっと!!おいおい、メリッサ。元気そうで嬉しいけど、もう少し落ち着きなさい。もう、君一人の命では無いのだから」
「分かってるわよ、パパ」
「御無沙汰してますなんだよね、博士」
「ミリオ君も、久しぶり。活躍は聞いているよ」
「ハハッ、まだまだ何だよね。この子の為にも、もっと頑張らないと」
「ああ、応援しているよ。しかし、あの話は本当なのかい?トシ達が···」
「それは、もうすぐ分かるわ、パパ。私達は、素直にお祝いしましょ」
「···まぁ、そうだな。フフッ、今からトシの顔を見るのが楽しみだ」
「もう、パパったら」
久方ぶりに顔を合わせた、ちょっとお腹周りがふくよかになった娘や義息子と共に、始まりの時間を待つ。
しばらくすると、噴水前に設置された祭壇に、牧師の格好をした根津校長が立ち、開始の儀を告げた。入り口の門が開き、二人の新郎がやってくる。
「ヒューヒュー!!おーい爆豪!!笑顔笑顔!!」
「隣見習えー!!」
「緊張してっからって、顔恐すぎんぞ!!」
「じゃかぁしぃわ!!!黙って見とけやゴラァ!!!!!」
賑やかな声に、彼らを良く知る人達から苦笑が漏れる。まぁ、その参考にしろと言われた人物は、大分引きつった笑顔を浮かべているんだけどね、実は。多分、頭の中大混乱中なんだろう。
そうして、真っ白なスーツに身を包んだ爆豪勝己君と、同じく真っ白なスーツを着させられたトシ、オールマイトが、祭壇の少し手前に立つ。あ、トシと目があった。うん、事情を知っているなら説明してって、目で訴えてるね。でも、スマン。私も全然知らないんだ。大人しく流されてろよ、親友。悪い事にはならないんだから。
「続きまして、新婦の入場です。仲人は、轟炎司氏が務めます」
アナウンスの声に反応して、視線は再び門の方へ。目に飛び込んでくるのは、エンデヴァーを真ん中に、それぞれ彼の腕に手を沿わせて歩く、二人の新婦。
ベールで顔はよく見えないが、片方はしてやったりな満足顔っぽく、片方は困惑と羞恥に染まっている。あんな顔の彼女は、初めてだなぁ。
「(な、な、な、な、な、何故私は、ウェディングドレスを着て娘と一緒に義兄さんと歩いているのですか?!いや、そもそも、何故サイズピッタリなドレスがあるのですか?!)」
式場に着いてみれば、姉さんにあれよあれよと誘導されて、雪花ではなく、歴戦の猛者を思わせるオーラを纏ったメイド集団に、訳も分からず服をひっぺがされてウェディングドレスを着せられ、メイクやら何やらを施されて、凄く得意気な表情で胸を張る、似たようなデザインのウェディングドレスに身を包んだ、とても綺麗な娘の前に引っ立てられ、満面の笑みを浮かべる姉さんにベールダウンされ、こうして義兄さんにエスコートされて、同じく混乱の真っ只中にいる夫の下へと歩いている。
「(青山君が雪花にサムズアップしている!青山夫人も、良い仕事したわぁって顔をしてらっしゃる!そりゃ、私のヒーロースーツを扱っているから、私の身体データは分かってらっしゃるでしょうて。あ、ナイトアイ!口元ニヤニヤし過ぎです。笑いを堪える位なら、いっその事大笑いして下さい!!アレは組長!!貴方もグルなんですね!!警備にヴィラン連合の人が結構居ると思えば!!赤黒議員!!?号泣し過ぎです!!お付きの人がオロオロしてるじゃないですか!!グラントリノ師匠、主役は娘です!!志村三姉妹を愛でるのは後にして下さい!!!)」
「···冬花」
「···はっ!!な、何ですか?義兄さん」
「混乱しているのは分かるが、そろそろ戻ってこい。お前の夫が手持ち無沙汰だ」
「あっ!す、すみません」
「気にするな、冷もそうだが、俺もお前のウェディングドレスを見たかったからな。お前には、本当に感謝している」
「義兄さん···」
義兄さんに導かれ、夫の手を取る。
「結婚、おめでとう。義妹を、よろしく頼むぞ、義弟よ」
▼▼▼
「ねぇ、母さん。これ、本当に母さん達が主役で、お祖母ちゃん達がおまけの結婚式なんだよね?母さん達、影薄すぎない?」
「ん~、まぁそれだけお母さんとお父さんが偉大だって話よ」
「父さん、怒んなかったの?」
「·········まぁ、フラストレーションは全部お母さんが受け止めたから」
「······さいですか」
はい、雪花の結婚式でした。雪花と冬花さんの親子合同結婚式は、初期の頃から思っていた事でした。
ただ、ここまで雪花の影が欠片も無くなるとは。
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