「·········」
「何をやっている、貴様」
ヒーローを引退して久しく、特別講師等の仕事も辞め、孫達や曾孫と戯れながら、時折くる取材や講壇の依頼を受けつつ、妻と共に始めた菜園や盆栽の手入れをする日々を送る轟炎司。
その日は、妻や息子夫婦達、孫や曾孫全員が屋敷を空けて、家には炎司一人だった。やる事もなく、だだっ広い屋敷に一人ぼっちなのが暇で、年末も近いしと、なんとなく物置等の整理を始めた。
そこに、同じく暇を持て余していた八木俊典(御年百歳)がやってきた。相手をするのも面倒臭いので、掃除を手伝わせた。そろそろ休憩でもと、様子を見に来てみれば、座り込んで年季の入ったアルバムを捲る、すっかり小さく細くなった背中が目に入った。
声を掛ければ、ギギギと、油の切れたブリキの様に首を動かして、自身の方を向く義弟に、一瞬気味が悪くてビクッとした。薄暗い中、頬の痩けた顔が骸骨に見えたのも拍車をかける。
「エンデヴァー···」
「な、なんだ」
「君···雪花を乗せ過ぎじゃないか」
「はっ??」
▼▼▼
「これもこれもこれもこれもこれも、肩乗っけたり抱っこしたり抱えあげたり、ズルイズルイズルイズルイズルイ!!!」
「···知るか、馬鹿が」
鬱陶しく唾を飛ばしてく迫ってくるコイツを、胡乱な目で睨みながらあしらう。
「俺は、冬花に世話になった恩を返すと思って、精一杯見守り育ててきたんだ。父親代わりとして、我が子同然の様にして何が悪い。そもそも、貴様が面倒を見てくれと頼んで来たんだろうが。今更何をほざく」
「だって···」
「だっても何もあるか!!その歳でイジイジするな、みっともない」
「······無いんだもん」
「あっ?」
「小さい頃の雪花と私が写った写真!!家のアルバムには一枚も無いんだもん!!!」
「·········知るか!!!!」
撮らなかったのは貴様の勝手だろうが。どこから世間にバレるか分からんと、無駄に警戒して撮らなかったんだろうが。
「本当に、何故今更」
「だって···雪花と爆豪少年が、この前裂花が産まれてからの写真を収めたアルバム開いて、楽しそうにしてたのが羨ましかったんだもん」
「·········貴様、もしかして、貴様と雪花が写っている写真を探す為に、家に来たんじゃないだろうな」
「·········」
「随分あっさりと、掃除の手伝いを了承したと思えば、ハァ······」
「そんな、心底呆れたって感じのため息つかなくても」
「心底呆れているんだ、馬鹿が。ん?···おい、貴様」
「な、なんだい?」
「そこ···不自然に空いたスペースはなんだ」
「ギクッ。H、HAHAHA、な、なんだろうね~」
チラッと見えたページに、丁度写真が一枚入りそうな、とても不自然に空いたスペースがあり、ジロッと睨んで問い詰めたら、あからさまに胸ポケットのある位置を手で押さえて、慌てて後退りする愚弟。
他の写真を見る限り、家族で海水浴に行った時の写真だろうか。あの時は確か、冬花も共に来ていた筈。
「···出せ」
「な、なにをかなぁ~?」
「···」
「···はい」
愚弟が胸ポケットから取り出したのは、まだ若かりし頃の冬花が、雪花と共に撮ったツーショット写真。当然、その格好は水着だ。
「······ハァ·········」
俺は、懐から携帯を取り出し、電話を掛ける。
「エ、エンデヴァー?」
「······『義兄さん?』ああ、冬花」
「ちょっ!!お義兄様!!?!」
▼▼▼
「フフフ、随分と楽しかったみたいですね」
「フンッ、何が楽しいものか。結局、掃除が予定の半分も終わらなかった、愚弟め」
「あら、本当かしら」
「······」
ばつ悪く、鼻を鳴らしてそっぽを向く夫に、歳を取っても変わらないと、自然と笑いがこみあげてくる。
「···調子はどうだ?冷」
「大丈夫ですよ。ちょっと体調を崩しただけで、入院なんて大袈裟なんですから」
「···」
「本当に何もありませんてば。安心して下さい、炎羅(荼毘の娘の子供)がお嫁さんを貰って、玄孫を抱くまで逝ったりしませんから」
「···そうだな」
「それで、持ってきてくれましたか?」
「ああ、持ってきたぞ」
夫から、我が家で一番古いアルバムを受けとる。表紙を開けば、まだ白髪の一本も無い、紋付き袴姿な夫と、白無垢を着て白粉を塗った自分が写った大きな写真が一枚。
ページを捲れば、まだ高校生の私と夫の写真。肌に皺も染みも無く、照れ臭そうな表情を浮かべる嘗ての自分に、こんな頃もあったなぁと、笑みが溢れる。
「···懐かしいですね」
「···ああ」
「この時の自分に、今貴女の隣に居る人と結ばれて、四人の子供を産んで育て、その子達の子供を抱いて、その子供の子供を抱くなんて、幸せな未来が待っていると言ったら、信じるかしら」
「···少なくとも、この時の俺は、何を馬鹿なと鼻で笑いそうだな」
「そんな事はありませんよ。···あら?」
「ッ!!」
ふと、とあるページで手が止まった。
そのページは、丁度写真一枚分不自然にスペースが空いていた。写真の流れ的に、結婚する前の夫と出掛けた時の写真だと思う。いったい、何を入れていたのかしら。
「ねぇ、あなた」
「な、なんだ」
「ここに、何か写真がありませんでした?」
「···知らん」
「···本当に?」
「···」
「ほ·ん·と·う·に?」
「······お前だ」
「え?」
「···海に行った時の、水着を着た、お前だ」
「···あっ!!冬花に勧められて、私にしては頑張って攻めたデザインの水着を着た時の」
「···」
「···あなた」ジトー
「た、他人に、妻の水着姿を見せたい夫が何処に居る!!お、俺は悪くない!!!」
「明日、炎羅が恋人を紹介しに来てくれる予定ですけど、あなたはお留守番したいですか?」
「なっ!!!聞いてないぞ!!!!」
「曾祖父ちゃんは、恋人が萎縮しちゃいそうだから、だそうですよ」
「炎羅ーーー!!!!!!」
「ちょっとお父さん!!病室では静かに!!!」
「そうだぜ、親父。いい歳して、騒いでんじゃねぇよ」
「幾ら個室だからって、周りに迷惑だろ」
「母さん、お見舞い。これ、百達から」
「と、燈矢、冬美、夏雄、焦凍、お、お前達、いつの間に」
「クソ親父が、母さんの水着写真を抜き取ってたのが発覚した頃」
「お父さん、正直娘として恥ずかしいよ」
「···恥ずかしいのか?俺も、百が水着とか着てる奴は、全部俺しか見れない様に除いてるけど、普通だよな、夏兄」
「焦凍、少し黙ってようか」
オールマイト、流石に百歳になれば、原作位に老いて居る筈。原作で、あんな大怪我なのに普通に生きてるなら、怪我無しの本作なら、余裕で三桁生きてると思う。
そして、アニメ終わっちまったけど、アーマードデクが活躍して、お茶子と結婚式をあげる劇場版第五段がある事を、私は信じている。バトルはデク達無双で良いから、兎に角出茶の結婚式を、二人の子供をーーーー!!!!!
評価と感想を、よろしくお願いします。