「···」
「···」
国際会議にも使われる建物の大会議場。
その中央で、互いに真剣な目で見つめ合う老齢の男性と女性。互いに、仕立ての良い高級なスーツに身を包み、庶民とは隔絶したオーラを放っている。
同じ様に、高級なスーツを身に付ける人物達が、固唾を飲んで二人を見守っている。
「お二人とも、宜しいですかな?」
その二人の間に、純白の法衣に身を包み、十字架を首に掛けた老齢の男性が立ち、二人に問い掛ける。
二人とも、静かに頷いた。
「では、せーのっ!!」
「最初は」「グー!!」
「じゃんけん」「ポンッ!!!」
▼▼▼
「今年はイギリスか~」
「彼方は、匿名のメッセージを送るという文化でしたわね」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
テレビの向こうで、右手をVサインの様に掲げるイギリス首相な女王陛下と、膝から崩れ落ちて項垂れるアメリカ合衆国大統領の様子を、百とお茶子の三人で、茶をしばきながら見ている私。
まぁ、呑気に茶をしばいているのは私と百だけで、お茶子は頭を掻き毟って、乙女が出しちゃいけない声を出しているけど。
なんで、お茶子がこんなになっているかと言うと、このテレビの向こうで各国のトップが争っている内容が、来る二月十四日、バレンタインデーの日に、お茶子と緑谷君を招く権利を巡る争いだからである。
「···おかしいやろ、なんで、こんな大事になっとるんよ」
「そりゃ、実績があるんだからしょうがない」
「それだけ、世界が平和という事ですわ」
事の起こりはアメリカ。
あの修学旅行の時点で、恋愛成就のお守り的扱いで有名だった緑谷君とお茶子のカップル。それが、実際に御利益を得られたと、実際に交流したMHAの方々が話すもんだから、ガチで恋愛を成就させる力があるのではと、アメリカヒーロー界で更に盛り上がった。
そこに、仕事の関係で、たまたま、バレンタインデーをアメリカで過ごす事になった出茶。本人達は、普通にバレンタインデートをしたつもりでも、周りはそうは問屋が卸さず、二人の回ったデートスポットで、二人にあやかって思いを伝える人達でごったがえしたのだ。そしてなんと、その年のアメリカ結婚率と出生率が前年から15%増したのだ。
それから、毎年なにかにつけてアメリカ側が、バレンタインに引っ掛かる様に二人を呼んだのである。その度に、効果を発揮し、なんならあやかったカップル及び夫婦の破局率は驚異の小数点以下。
ヴィランによる治安悪化と情勢不安で、年々減少していた既婚率と出生率は、国家規模で頭を悩ませる事柄だった。それをどうにか出来る存在として、アメリカでは無くてはならない存在として崇められたのである。
で、そうなると、各国も黙っちゃいません。
うちも恩恵に預からせろと、出茶招待状が全世界から日本政府に届けられたのである。政府も、余りの事に上から下への大騒ぎ。お父さんまで引っ張り出して、各国首脳とお話し合いの結果、各国代表によるじゃんけん勝ち抜き大会が開催される運びとなった。審判は、儀礼上の最高位であるエンペラーと同列な地位にある、ローマ教皇が勤める事に。
優勝した国は、国内の安全を国連が確認し、参加権を五年放棄した上で、二人を国賓相当として招待できる。ただし、密着報道等の行為は禁止。あくまで、一般の旅行客として接する事が厳命されている。
「別に、私らなんもしとらんよ。御利益なんて無いのに、偶然なのに」
「まぁ、恋愛って雰囲気が大事だから」
「データを見れば、一目瞭然ですわ。開き直って、旅行を楽しんできて下さい」
「プレッシャー半端ないんよ。恋愛の秘訣なんて知らんよ。私の恋愛経験、出久君しかいないんよ」
「まぁ、端から見たら運命の出会い過ぎるからねぇ。入試前に転けそうなのを助けて、試験で危ない所を助けられて、同級生になって、そのまま一直線にゴールインだもんねぇ~」
「お二人を題材にした思われる小説や漫画、ドラマも制作される予定だとか」
「なんでなん、雪花ちゃん達でもええやん。私より絵になるんだし」
「かっくんとじゃ、絵面的にヤンキー漫画にしかならん」
「私と焦凍さんでは、余り共感は得られませんわ」
「ぅぅ~」
ゴンッと、テーブルに突っ伏して項垂れるお茶子。
まぁ、かっくんも焦凍も、恋愛とかそっち方面の取材やらなんやらを、躱して往なして回避するから、その分が緑谷君に集中してるってのもあるんだろうけどさ。それでも、平和の象徴の娘だとか、財閥のお嬢様だとかよりは、断然一般受けするってもんよ。
「ま、お茶子は普通に緑谷君とイチャイチャしてればいいんだから、そんな気負わず気負わず」
「そうですわ。最早、行かないという選択肢は無いのですから、新婚旅行の下見と思えばよろしいですわ」
「飛行機代と宿泊費はあっち持ちなんだし」
「タダより高いもんはないんよ。まぁ、でもそうだね、お腹括って、出久君と観光楽しんでくる」
そう言って、気持ちを持ち直したお茶子は、バレンタインデーの三日前に、緑谷君と共にイギリスへと旅立って行った。
因みに、その年のイギリスでは、結婚式場と産婦人科が悲鳴を上げる程にてんてこ舞いになったとか。お茶子と緑谷君の元に、"お付き合い出来ました/結婚できました/妊娠しました"と、感謝の言葉を添えてのご報告ファンレターが、国際便でドサッと送られてきたとか。
うん、平和だね~。
▼▼▼
余談ではあるが、緑谷出久·お茶子夫妻の死後、二人の結婚記念日を各国が「恋愛の日」と定めたり、オールマイトと並んで"平和の象徴"として各国の教科書に乗ったり、本当に恋愛の神様として奉られそうになったりした(当時の親族一同で止めた)とかかんとか。
因みに、時期の近さもあってか、お内裏様とお雛様の顔を緑谷君とお茶子にした雛人形が販売され、世界規模で一家に一組あると言われる位売れたらしい。
後、雄英高校が恋愛の聖地扱いされ、雄英で運命の出会いをと、全中学生が勉学に励み、軒並み学力が上がるという珍事も起こった。優秀な生徒達を前に時の校長は一言、「雄英は婚活会場ではない」と愚痴を溢したとかかんとか。
一応、デクは平和の象徴を、名実共に継げたのかな?
各国でベビーブームが起こったら、正直色々と社会問題が凄そうではある。
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