「これは、何ですか?グラントリノさん」
「見て分からんのか?志村の」
志村転孤宅で、志村孤太郎とグラントリノこと酉野空彦は静かに対峙していた。。
それを、呆れた目で見守る転孤·ルミ夫妻と、ウズウズワクワクした顔のルナ(長女)、不思議そうな顔のルニ(次女)ルネ(三女)。
孤太郎とグラントリノの間にあるテーブルの上には、ピカピカの真新しいランドセルが置かれていた、二つ。
「何で、赤の他人である貴方が、ルナのランドセルを買っているのかと聞いているんです」
「志村の曾孫は、儂にとっても曾孫じゃ。老い先短い老人が、曾孫に少しでも何か残してやりたいと思って何が悪い」
「わ·た·しの!!孫娘です。貴方はた·だ·の!!近所に住む知り合いの赤の他人です!!!」
「「うぬぬぬぬ!!!!」」
盛大に火花を散らす太郎とグラントリノ。
「ねぇ、お母さん。じっちゃんとお祖父ちゃんは何してるの?」「してるの?」
「···私に聞くな、ルニ、ルネ」
「ねぇねぇ、父さん!!ランドセル二つ背負ったら、母さんみたいに強く見られるかな!?」
「···黙って大人しくしてろ、ルナ」
これは、おじいちゃん同士の、端から見たらしょうもないが、当人達からは譲れない戦いの、その一幕である。
▼▼▼
「そもそも、ランドセルは転孤の親たる私達が。制服等をルミ君のご両親がと、話し合って決めてあったんです。貴方の出る幕は、最初からありません!!」
「なんじゃと!?!儂に黙って何を勝手に」
「だから、そもそも貴方は無関係なんですよ!!幾ら、貴方が私の親と親交があったとしてもね」
「ぬぐぐ」
「なので、このランドセルを持ってお引き取り下さい」
「まぁ、正論だな。今回は、転孤の親父さんの圧勝か?」
「···どうかねぇ」
「···確かに、儂は血縁関係の視点からすれば無関係じゃ。じゃがの、志村の」
「何ですか」
「忘れとりはせんか?お主、転孤を勘当して絶縁しとったじゃろ」
「っ!!!」
「つまり、幾ら血縁関係があろうとも、お主も無関係の人間という事じゃ。そして、お主よりも儂の方が、ルナ達と長く直に付き合っとる」
「ぬぐぐ」
「じゃから、ルナのランドセルを儂が用意しても、何らおかしくは無い。そのランドセルは、お前さんの長女の子供にあげるんじゃな」
「あ~、そうだったっけか」
「法的手続きは一切してないけどな」
「貴方という人は、誕生日も初宮参りもお食い初めも初節句も七五三も入卒園式もお遊戯会も運動会も、私よりも祖父面して参加して写真に写るだけに飽き足らず、暇があれば転孤の家に上がり込んでお菓子買ってきたり買い与えたり遊んだり散歩に出たりご飯食べたりと、傍若無人過ぎるんですよ!!!!」
「年寄りの道楽じゃろうが。ちゃんと許可も貰っとるしな」
「そう言えば、この前アイスメイカー氏から偶々聞いたんですが、貴方の家に、女の子趣味なお人形や玩具が妙に沢山あるそうですね。アレ、もしかして、転孤達には内緒で買ってあげた奴じゃないんですか?」
「な、何の事じゃ?あ、あれかの、雛人形かの?アレは厄除けの意味もあるからの、キチンと許可を貰って、保管設置は儂の家でという約束で、ルニとルネの分を買ったんじゃよ」
「ほ~、そうなんですか~、では、このミッ○ィーやシル○ニアファミリー、今子供達に人気なアーケードゲームのカードやシールがたっぷり貼ってあるシール手帳は、全て貴方の趣味の物なんですね?」
「なっ!!」「げっ!!」
「おい、ルナ。"げっ!!"ってなんだ"げっ!!"て」
「え?あぁ···いやぁ···別にぃ···」
「正直に話せ。そしたら、」
「そ、そしたら?」
「尻叩き百発の所を、十発で済ませてやる。しかも、足じゃなくて手でな」
「じっちゃんが、母さん達には内緒でって買ってくれました!!!」
「よし、よく言った。ケツを出せ」
「ひぃっ!!!うぅ···はい、母さん」
「何を買って貰ったか、全部母さん達に報告しろって約束だろうが!!!!」
「びぎゃああああああああ!!!!!!!」
「おやおや、貴方の身勝手のせいで、ルナが可哀想な目にあってしまいましたねぇ」
「くっ、すまん、ルナ」
「そういう事ですので、ルナにランドセルを贈るのは私という事で、よろしいですね」
「···待て、志村の」
「···まだ何か?」
「一番大事な事を忘れとらんか?」
「一番大事な事とは?」
「儂のとお主の、どっちのランドセルが欲しいのか、当人の意見を聞かねばならんじゃろう」
「なっ!!!」
「儂の用意したランドセルはの、儂の伝を総動員して作って貰った特注品じゃ。まず丈夫さ、ルナは活発な子じゃからの、俊典の全力SMASHでも、その威力を99%吸収する特殊素材を使っておる。それでいて、動きを阻害しない柔軟性も兼ね備え、もしもの時は盾にもクッションにもなる優れ物じゃ。
GPS機能も内臓しておるぞ。しかも、ナノテクノロジーとやら使っておるでな。このランドセルがもし破壊されたりして、ルナが身に付けていなくとも、ナノマシンがルナに引っ付いて、いかな状況でもルナの居場所が分かる。しかも、防犯ブザー機能もあって、ブザーが鳴ると同時に、警察·公安·トムラ事務所は勿論、登録したヒーローに通報が行くように設定しておる。
軽さも、自由自在じゃ。軽くする事も可能じゃし、逆に重くしてトレーニングにも使える。人体に被害を与える重さにはならんよう、セーフティもキチンと整えられておるから安心せい。
後は、色をその時の気分で変える事も出来る位かの。で、お主の用意したランドセルは?」
「···私のは、市販の、普通のランドセルだ」
「クックックッ、さぁ、どちらのランドセルを選ぶんじゃ?好きな方を選べ!!!」
「「「いや、普通でいい(グスッ)」」」
「何故じゃーーーー」
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「それで、そのランドセルは結局、どうなったんですか?」
「予備として、師匠が家に保管しておく事にしたらしいよ。あ、GPS機能だけは、普通のランドセルに移して?おくんだってさ」
「防犯というよりも、寄り道しない様に見張る、という理由でですかね」
「うん」
「これで、師匠も少しは落ち着いてくれると良いんですが···はぁ」
「何かあるのかい?」
「自分の遺産を、転孤君達に遺す手続きを手伝ってくれと頼まれたんですよ。法的に一切不備がなく、相続した転孤君達が支払わなければならなくなる税金を、現金でキッチリ用意した状態で、遺してやりたいと」
「あぁ···うん、師匠ならそうするだろうね。何か、手伝える事ある?冬花さん」
「師匠の暴走を、兄弟子として少しでも減らして下さい」
「···うん、頑張ってみる」
「やっぱり、小学生になったら自転車がいるじゃろ。知り合いに作って貰ったんじゃ、特注じゃぞ」
「「「いい加減懲りろ、グラントリノ!!!」」」
入学式シーズンなので、ちょいと。
因みに、志村三姉妹は、グラントリノを「じっちゃん」、孤太郎を「お祖父ちゃん」と呼んでおります。そして、二人を同時に呼ぶ時は、ほぼほぼ「じっちゃん、お祖父ちゃん」と、グラントリノの方が先に来ます。孤太郎ファイト。
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