八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第二十二話「心操と緑谷と麗日大爆死」

 

 

 

「やほ~、平常心かい?心操君」

 

 選手控え室で待機している俺に、二回戦で共に戦った···いや、俺は何も出来ずにそこにいただけか、八木雪花が声をかけてきた。

 

「···あんたか。俺みたいな落ちこぼれと違って、エリートのあんたは余裕ってか?そんなエリート様が、俺に何の用だよ」

「捻くれてるね~。ちょっとお話にね」

「俺にはねぇよ、帰れ」

「まぁまぁ、とある所にとある少年がいました。「おいっ!」彼は、オールマイトの様なヒーローになる事が夢でした。しかし、彼は無個性でした。それでも、彼は夢を諦めきれませんでした。ニュースや新聞、ネット、現地観戦とあらゆる方法で情報を集め、ヒーロー一人一人の情報を事細かにノートに書き記していったのです。周りに馬鹿にされながらもひたすらに。そんな彼に転機が訪れました。中学三年生の時です。友人がとあるヴィランに襲われピンチ。駆け付けたヒーローは手をこまねいて、このままでは友人はヴィランにやられてしまいます。彼は、周りの制止を振り切って、友人の所に駆けていきました。当然、彼は無個性なので、ヴィランに返り討ちにされそうになったけど、そこは平和の象徴オールマイトによって二人とも助けられました。そして、彼はオールマイトに聞きました"僕はヒーローになれますか?"オールマイトは言いました"君は、ヒーローになれる"。彼は泣きました、嬉しくて泣きました。そして、ここ雄英高校ヒーロー科に入学する為に猛特訓を始めたのです。運が良いことに、試験当日、彼は個性を手に入れました。自身の体を壊す程の力を発揮する凄い個性を。そんな彼は、無事雄英に合格し、今は別の控え室で君と戦う準備をしています」

「···長ったらしい昔話どうも。それと俺に何の関係があるんだよ」

 

 オールマイトに認められた男だから、諦めて降参しろとでも言うのかよ、ちくしょう。

 

「君と同じだよ」

「どこがだよ」

「君も緑谷君も、何があろうと、何を言われようと、ヒーローになるって夢を諦めなかった。だから、君を指名したんだ。そして、君は最後まで逃げなかった。手を放す事なく最後まで一緒に立ち向かった」

「···」

「私に出来るのは、君をここまで連れてくるだけ。だから、君の今を、君の全てをもって緑谷君にぶつかってきなよ。そうすれば、見てくれる人は見てくれる。まずは、ヒーロー科編入の切符をもぎ取ってくる事。ねっ、未来の同僚さんっ!!」

「イッテ!!···緑谷の弱点とかは教えてくれないんだな」

「教えない、フェアじゃないもん。だから安心して、君の個性も緑谷君に教えたりなんかしてないよ」

「そうかよ、集中の邪魔だからさっさと出てけ」

「はいはい、ほいじゃ健闘を祈ってるよ~」

 

 そう言って、手をヒラヒラさせながら部屋から出ていく八木の背中を見送った。その背中に、オールマイトを感じたのは、きっと気のせいだ。

 

 

『顔が硬いぜ、少年。君の目指すヒーロー像は、そんな暗い顔を浮かべるのかい?笑っちまえよ、緑谷少年。どんなに怖くても、どんなに不安でも、自分は大丈夫だって笑うんだ。世の中、笑ってる奴が一番強いんだぜ!!』

 

「···はい、行ってきます」

 

 

  ▼▼▼

 

 

 

『一回戦!!

 トップの一角が早くも登場!その超パワーで何を見せてくれる?!ヒーロー科緑谷出久!!

 

   対

 

 普通科唯一の決勝戦進出者!だが、目立った活躍はまだなし!普通科心操人使!!』

 

 

 俺達は似た者同士か。だけど、昔は無個性でも、今のお前は行きたい所に行けるじゃねぇか。ヴィラン予備軍扱いなんてされた事ねぇだろ。悪いが、正々堂々何て期待すんなよな。

 

『そんじゃ、早速始めよか!!』

「観客の声が聞こえるか?緑谷。皆、お前が俺をどうやって倒すのかにしか関心がねぇ。まぁ当然だよな、二回戦なんて離されない様にするのが精一杯だったからな、俺は」

『レディィィイイイ』

「そういや、お前の騎馬にも一人居たか。良いよな、見てくれさえ良けりゃ、将来有望な男捕まえてソイツに守って貰って決勝まで行けるんだもんな。名前何だっけ?」

『START!!!』

「思い出した、麗日お茶子って名前だっけ?」

「麗日さんはそんな人じゃない!!!」

 

 俺の勝ちだ。

 

 

『緑谷、開始早々完全停止!?アホ面でビクともしねえ!!心操の個性か!!?』

「緑谷ちゃん、どうしたのかしら?」

「心操君の個性"洗脳"だよ。トリガーは、心操君の問いかけに答えたら。まぁ、本人が洗脳するぞって思わないと発動しないけどね」

「じゃあ、デク君は・・・」

 

 初手は心操君の勝ち。でも、このまま終わらないよね?君は、お父さんが認めた人なんだから。

 

 

「振り向いて、そのまま場外まで歩いていけ」

『ああーーー!緑谷!ジュージュ<バキッ!!>・・・ン??』

「・・・は?」

 

 何で?何で?何で・・・

 

「体の自由は効かない筈だ・・・何で勝手に自分殴ってんだよ!!」

 

 俺の催眠は完璧に決まった筈。なのに、指示してねぇのに左手で自分の頬を思い切り殴りやがった。確かに、俺の催眠は何らかの衝撃で解けちまうが、そんな事が起こるのは何らかの外的要因でだ。洗脳されてる当人が何てありえねぇ!!!

 

「っ・・・・・・!!!ハァ!ハァ・・・!馬鹿にするな・・・」

「あっ?」

「麗日さんを、馬鹿にするな!!」

 

 赤黒く腫れた頬に顔をしかめる事なく、流れ出る鼻血を拭う事もせず、緑谷が怒りに満ちた眼で俺を射抜いてくる。すぐに攻めてこない所を見るに、殴った衝撃で脳震盪にでもなって、まともに動けねんだろ。なら、今の内にもう一回。

 

「取り消せよ、取り消せっつってんだよ!!!」

 

 焦点合ってない目で組み付いて来やがった。焦んな、兎に角口開かせろ!

 

「ぐっ!!恋人悪く言われて鶏冠にでもなったのか?いい御身分だな」

「麗日さんは、僕なんか足元にも及ばない凄い人だ。麗日さんは、個性を使えば消耗してしまうのに、入試前に転げそうになった僕を個性を使ってまで助けてくれた。自分も限界間近だったのに、手も足も壊して落ちたら只じゃすまない高さから落下する僕を助けてくれた。騎馬戦だって、麗日さんが居なかったら八木さんに挑めなかった。麗日さんは凄いんだ!!だから、取り消して麗日さんに土下座しやがれ!!」

 

 ダメだ、意識がちゃんと戻ってねぇから、俺の言葉を認識してねぇ。俺の言葉に答えてるんじゃなく、ただ独り言言ってるだけだ。つうか、個性使って無くてもこのパワーかよ。

 個性を使わず場外へ出そうとジリジリ押してくる緑谷。予選で見せた、あの超パワーの個性は使われたら一瞬で叩き出されちまう。チャンスは今しかないんだ。個性が効かなくったって、俺は勝つんだ!!!

 

「うおおお!!」

「がっ、つああっ!!」

「ぐふっ!」

 

 腫れた頬を狙って拳を振るう。お前らみたいに訓練されたパンチじゃない、不恰好な拳だ。そうだよ、左脇に突き刺さるお前の拳みたいに、芯に響く重さはないさ。でも、これが今の俺なんだよ。

 

「お誂え向きな個性で、好きな所に行けるお前が羨ましいよ!おらぁっ!!」

「んだらぁあ!!」

「ぎっ!!俺は、こんな個性でスタートから出遅れちまったよ!それでも!!憧れちまったんだよ!!憧れちまったもんは仕方ねぇだろうが!!」

「うがあ!!」

 

『大方の予想を裏切って、泥臭ぇ殴り合いだああ!!腰入れて振り抜け心操!!性根入れてぶち込めや緑谷!!お互い、気合いで負けんじゃねぇぞ!!!』

『緑谷の奴、意識がはっきりしてねぇな。個性を発動出来る様子じゃねぇが、それでも、日頃培い積み上げてきた経験で、体が反応して動いてやがる』

『おら、観客共!!声援が足んねぇぞ!!!』

 

「いい加減倒れろ!!」

「でああああ!!!」

「くはっ!しまっ!!」

 

 前蹴りを防がれ、そのまま押し倒されてしまった。見上げた視界には、青い空と、腹に馬乗りになって右拳を振り上げる緑谷。うっすらと、個性を発動している時の発光とスパークが見える。

 

「SMAAAAAAH!!!!」

『ちょっ!緑谷、それはマズイって!!セメントス!!』

『いや、大丈夫だ』

 

 振り下ろされた緑谷の拳は、俺の顔を避けて床板に突き刺さった。砕かれ飛び散る細かな破片が顔に当たる。

 

「取り消せ、麗日さんに言った言葉、取り消せ。僕の大事な人を馬鹿にした言葉を取り消せよ!!!」

「最後までそれかよ···参った、降参だ」

 

『心操君ギブアップ!緑谷君の勝利!!』

 

 あ~あ、話題選びミスったなぁ~。

 

 

 

「うわぁああ、緑谷君大胆!!」

「あれ、テレビにも載ったのよね!!確実に!!」

「やば、ウチまで顔赤くなった。あんなん告白も同然じゃん」

「緑谷さん、催眠にも打ち勝つ程にお茶子さんの事を。私感動しましたわ!!」

「緑谷ちゃん、自分が何を言ったか分かってないわね」

「ねぇねぇ、お茶子ぉ。今どんな気持ち?どんな気持ち?ねぇねぇねぇ」

「う、う、う、う、ウチ試合に備えて控え室行ってくるーーーーーーー!!!!!!」

「「「「「あっ!逃げた!!」」」」」

「皆、弄りすぎよ」

 




本当は、爆豪麗日戦まで行きたかった。かっちゃん口調のデク君ムズイ。

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