八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第二十三話「八木雪花と頑張れお茶子とごゆっくり」

 

 

 

「うおおおおおお!!!俺の勝ちだぁぁああああああ!!!!」

「ち・・・くしょう・・・・・・」

『個性ダダ被り組!!!鉄哲VS切島。真っ向勝負の殴り合いを制したのは、B組の鉄哲だ!!!』

『騎馬戦での消耗が、切島の方が激しかったのが勝敗を分けたな』

 

 上鳴君の瞬殺で終わった上鳴VS塩崎戦を挟んで、緑谷VS心操とはまた違った、暑苦しい殴り合いを演じた切島君と鉄哲君。爆豪チームで前騎馬務めて、多くの攻撃をその身で受け止めていたもんね。

 

「次、ある意味最も不穏な組ね」

「ウチ、なんか見たくないなー」

 

 不安そうな表情の梅雨ちゃんや腕を擦る響香。他の皆も、暑い戦いの後とは思えない程静かに、ステージへと上がるお茶子の背中を見つめている。

 

 

 

『一回戦Aグループ最後の組だな・・・』

『トップの一角二人目!!一位宣言は自信の表れ!!それがヒーローのする顔か!?ヒーロー科爆豪勝己!!

    

    対

 

 浮かして浮かして浮かしまくる!可愛い顔してド根性!!俺こっち応援したい!!ヒーロー科麗日お茶子!』

 

 

「お前、浮かす奴だな丸顔。退くなら今退けよ、痛ぇじゃすまねぇぞ」

 

 多分、これは爆豪君なりの優しさなんかな。名前じゃなくて丸顔呼びにちょっとカチンと来るけど、切島君の個性を覚えてなかったのに比べれば、爆豪君の中ではそれなりに評価してくれてる部分があるんだと思う。

 でも、今の私に、

 

「退くなんて選択肢ないから!」

 

 だって、デク君と約束したんだから。準決勝で会おうって。凄いって言ってくれたデク君の言葉を、噓にしないって。

 

 

   ▼▼▼

 

 

「麗日さ・・・・・・ん!?顔!眉間が凄い事になってるよ!!」

「みけん?・・・・・・っつ!!デ、デク君、も、も、もう大丈夫なん?」

 

 控え室で漸く顔の熱さが引き、もうすぐあの爆豪君と戦うんだという事実に恐怖している頃、控え室にデク君が訪ねてきた。

 ヤバい、デク君の顔直視出来へん。

 

「そういえば、僕心操君との戦いで何かやったのかな?心操君に洗脳されてから、リカバリーガールに治療されるまでの記憶が殆どなくて、すれ違う人とかに「大切にしてあげなよ」とか「お幸せに」とか言われるんだけど。「頑張れ」も試合の応援て雰囲気じゃないし···」

「え、あ、そ、そうなん??ウ、ウチも、よ、よう分からんなぁ。き、き、気にせんとええんちゃう?」

「そっか。あ、そんな事よりも麗日さん!」

「は、はい!!」

 

 デク君が真剣な表情で一冊のノートを差し出してくる。いつもメモしてるノートとは別の、まだそんなに使われてない新しいノート。

 

「僕は、麗日さんにたくさん助けられた。だから、少しでも助けになればと思って、麗日さんの個性でかっちゃんに対抗する策、付け焼き刃だけど···考えて来た!」

「デク君···」

「かっちゃんは強い。相手が誰でも手加減なんてしてこない。やるとなったら全力で個性を使ってくる。正直、どこまで通用するか分からないけど、少しは手助けになればいいんだけど···」

 

 自分の試合もあったのに、本当に君は···。

 

「ありがとう、デク君······でも、いい」

「え·········わっ、う、麗日さん?!??」

「解除···ごめん、ちょっとだけ勇気を下さい」

 

 デク君に近付いて、個性でちょっとだけ浮かして後ろを振り向かせて、背中に額を、お腹に手を回す。

 

「デク君は凄い、どんどん凄いとこ見えてくる。騎馬戦の時···仲良い人と組んだ方がやりやすいって思ってたけど、心操君が言った通り、デク君に頼ろうとしてたんだと思う。デク君は否定してくれてたけど、ウチは否定の言葉が出んくて恥ずかしくなった」

「麗日さん···」

「だから、いい。ウチはウチの力で爆豪君に挑むよ。凄いって言ってくれたデク君の言葉を本当にする為に」

「···うん、応援するよ」

「···デク君、準決勝で待ってて」

 

 

  ▼▼▼

 

 

『START!!』

「速攻!!」

 

 開始の合図と共に低姿勢で駆け出すお茶子。

 近付いて触れる以外に出来る事が無いなら、そうするしかない。ないんだけどもさ、

 

「ぶわっ」

 

 かっくんの遠慮なしの爆発で吹っ飛ばされるお茶子。

 爆風に紛れて上着を囮にしたり、フェイントを入れたりと、何度も何度もアタックを敢行するけど、かっくんの反射神経を越えられずに吹き飛ばされ転がされる。響香とか顔青くしてるし、観客席も騒然としてる。

 自棄糞で突撃してる訳じゃないだろうけど、動かず迎撃してるかっくんよりも、貴女の方が先に息切れするよ。

 

「何を狙ってるの?お茶子···っ!そういう事なのね」

「···頑張れ、麗日さん」

 

 ブーイングしてた観客に対して、相澤先生がキレる何て事を挟んで、お茶子の準備が終わった様だ。

 

「ありがとう、爆豪君。油断しないでくれて」

「あ···?」

 

 わざわざ言わなくてもいいのに、何でそこで今から何かやりますよ~って言っちゃうかなぁ。口角がちょっと上がってるのを自覚しつつ、仕方ないなぁと思いながら、両手の指先を合わせるお茶子を見る。

 

『流星群ー!!!!』

『気付けよ』

 

 かっくんの爆発で出来たステージの破片を、個性で上空に待機させていた物が、重力に従って二人に降ってくる。

 解除と同時にかっくんへと駆け出すお茶子。かっくんは、降ってくる瓦礫を見上げながら左手に力を溜めている。

 

「うわっ!」

「うわっはぁ!!」

 

 巨大な爆音と爆風が私達を襲う。左手から放たれた一撃は、降ってくる瓦礫全てを吹き飛ばした。お茶子が、身を削って用意した物をあっさりと。

 流石に、これで決まったかと目を開けた視界には、思いもかけない光景が広がっていた。

 

「麗日さん···行け!麗日さん!!」

「お茶子ちゃん!!」「お茶子さん!!」「やれるぞ、麗日君!!」

 

 高威力の爆発を放った反動で、動きの止まったかっくんの左足にしがみついているお茶子。多分、あの流星群は防がれると分かってたんだろうね。だから、這いつくばってでも爆風で飛ばされるのを耐えて、対処で隙が出来た所を狙ったのか。でも、

 

『何と麗日ぁーー!!何度も何度も跳ね返された壁を乗り越え、遂にその手が爆豪に届いたーー!!!やっちまえ、麗日ーーー!!!!』

『···終わったな』

 

 会場のボルテージが最高潮に上がる。だけど、かっくんもお茶子も動かない。お茶子はともかく、普通ならすぐにでも引き剥がさないといけないのに、かっくんはお茶子を睨み付けるだけで何もしない。

 

「ペース配分、間違っちゃったね」

 

 足にしがみついていていたお茶子の体が、ズルッと地面に落ちる。地面に倒れこんでプルプルと痙攣するお茶子に、直ぐ様ミッドナイト先生が近付いて様子を確認している。

 

『麗日さん···行動不能。二回戦進出、爆豪くん!!』

 

 

  ▼▼▼

 

 

「お疲れ様、いや~見事なヒールっぷりだっねぇ」

「うるっせぇんだよ黙れ!!」

 

 緑谷君と一緒にお茶子の所に向かってたら、かっくんとバッタリ出くわしたので、緑谷君を先に行かせて相手をする事に。

 

「どうだった?お茶子は」

「けっ!クソデクが入れ知恵でもしたんだろ、面倒な事しやがって」

「断ったらしいよ」

「あ?」

「最初から最後まで、かっくんに勝つ為に、お茶子が自分で考えて行った事なんだってさ」

「···そうかよ」

「お茶子、強かった?」

「···フンッ、テメェこそ麗日みてぇに調子のって倒れる様な真似すんじゃねぇぞ」

 

 そう言い残して去っていくかっくん。ホントにもう、素直じゃないんだから。

 さぁて、お茶子の様子でも見にいきますかね。

 

 

「おっ茶っ子ー!おつかれ~···えっ?」

「「······」」

 

 控え室の扉を開けた先には、抱き合いながら、涙の跡がくっきり残る潤んだ眼で見上げるお茶子を、優しい眼で見つめる緑谷君の姿があった。もうちょっと後だったら、雰囲気に流されて熱い口付けでもしてたんじゃないのかな。

 

「···(カシャ)、ごゆっくり~」

 

 スマホのカメラで二人を写真に収め、私は静かに扉を閉める。さて、三奈と透に画像付きメールを。

 

「「待って、八木さん·雪花ちゃん、誤解だから·やからね!!」」

「あっはっはっはっ!!!私は何も見ていませ~ん!」

「やったら、今すぐさっき撮った画像消させぇ!!行け!デク君!!」

「あ、はい!!」

 

 この後、滅茶苦茶追いかけっこした。画像は、私のスマホから消去された。私のスマホからは。

 




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