「デク君、ちょっといい?」
「う、麗日さん、うん大丈夫だよ」
「話したい事があるんやけど···」
「奇しくも、戦闘訓練と同じ組み合わせだね~。脇いるかい?」
「いらねぇよ!テメェはテメェの事に集中してやがれ!···今度は、助けに行けねぇんだからよ」
「ふふ、心配してくれてありがと。大丈夫、決勝で待っててよ」
「焦凍さん!」
「八百万?麗日なら中で緑谷と話してるが」
「いえ、あの、ご、御武運を。頑張って下さい、焦凍さん」
「···ああ、頑張ってくる」
▼▼▼
『テメェら、盛り上がる準備は出来てるか!!トーナメントも大詰め!準決勝の時間だぁああ!!最後までトップ争いはお前らなのか!!同率一位なんて存在しねぇ!!その身で一位を勝ち取りやがれ!!』
『その前にルール変更だ。協議の結果、こっからは場外勝利は無い。厳密には、場外判定のラインが客席最前列になった。お前達にそのステージは狭すぎる。それで力発揮出来ませんでしたじゃつまらねぇからな。ただし、制限時間は10分だ。それを越えりゃあ、腕相撲なりなんなりで決着をつけてもらう、以上だ』
「よう、今度は手ぇ抜くんじゃねぇぞ、出久」
「僕の全力で君に勝つよ、かっちゃん!」
『準決勝第一試合!緑谷対爆豪!!START!!!』
「OFAフルカウル8%!!」
「テメェの動きは読めてんだよ!!」
「そうしてくるって思ってたよ!!」
「舐めんなぁ!!」
「ブハッ!」「グガッ!!」
『おおっと!!今まで以上のスピードで肉薄した緑谷の右ストレートを読んで、緑谷の勢いを利用した一本背負いを放った爆豪、の対処を読んで爆豪の頭を左手で掴んで倒立反転からの膝蹴り!!しかし、爆豪も負けじと爆発をぶち当てる!!目まぐるしく変わる攻防戦!!立ち位置が変わって仕切り直しだぁああ!!!』
『互いに手の内が分かってるからこそだな』
たった一度の攻防、観客はそれだけで魅了された。二人が再び向かい合った頃に、漸く呼吸を思い出したかの様に歓声が上がる。
「へっ!今度はこっちの番だ!!爆速ターボ!!!」
「こっちも!CAROLINA SMASH!!」
爆破の勢いを使った高速の跳び蹴りとクロスチョップが激突。空気が震え、余波が観客の顔を打つ。
誰かがポツリと溢した。"笑ってる"。真剣勝負をしている筈なのに、まるで、友達同士でじゃれあってるような、こうしてるのが楽しくて嬉しくて堪らない、そんな風に見える。
次はどうする?次は何をしてくれる?視線が、動きが、振り抜かれた拳が、蹴り上げられた脚が、相手への期待とそれを超えてやろうとする気概に満ち溢れている。
「落ちろや!エクスカタパルトォォオ!!!」
「ガハッ!!」
「TEXAS SMASH!!」
「ウゴッ!!」
「いい加減ぶっ倒れろ!!」
「そっちこそ!!」
「役立たずの弱虫泣き虫デクがぁあ!!」
「今は、頑張れって感じのデクだって言っただろ!!」
「テメェに言いてぇ事が山程あんだよ!!」
「もう、昔みたいに言われっぱなしじゃないぞ!!」
「どんなに遠ざけようとしても、変わらず後ついてくるテメェが気色悪かったんだ!!」
「君が!最初に憧れた人だったから!!」
「無個性で何も出来なかった癖に!オールマイトに憧れて!ヒーロー諦めなかったテメェが!意味不明だったんだよ!!」
「憧れたんだ!!どんなに困ってる人でも、笑顔で助ける凄いヒーローに!!なりたいって思ったんだ!!」
「なら!テメェ自身を勘定に入れやがれ!!自己満野郎が!!」
「は?何の事だよ!!」
「自分も助からねぇと、笑顔で助ける意味がねぇだろうが!!ヒーローは、勝って助けるんだよ!!」
「うわあああ!!」
爆豪の爆破が、連続で緑谷の腹に決まり、ステージを転がっていく。
「これで、しまいだ。オールマイトもどきが」
これまで以上に高く飛び上がる。爆発音が連続し、錐揉み回転しながらどんどんと速度を上げて、緑谷へと落ちていく爆豪。
『デク君、私は、デク君が好きです。
心操君との戦いで、大事な人って言ってくれて、ホンマは嬉しかった。雪花ちゃんにどんな気持ちって聞かれた時、めっちゃ嬉しいって叫びたかった。
でも、塩崎さんとの戦いを見てて、デク君の事、遠いなぁって思っちゃったんよ。私が最初に憧れたのは、泣きそうな目をしながら、手足ボロボロにしてまで飛び出して行ったあの背中やから。
このままやと、ウチ、ずっとデク君に守られてばっかになる。ずっとデク君に頼ってしまう。だから、この気持ちはしまっとくって決めたんよ。ウチは、誰かに守られたくてヒーロー目指しとる訳やないから。
勝手に好きって言って、勝手にしまっとくなんて、訳分からん事言ってごめん。でも、ちゃんと言わんとって思って。
お詫びやないけど、次爆豪君に勝ったら、ウチの好きな所貸したげる』
『ウチにまた、格好いいとこ見せてな、デク君。あ、もし負けても、膝位ならええよ』
「OFAフルカウル10%!!!!」
「ハウザーァァアア!!インパクト!!!!!」
「DETROIT SMAAAAASH!!!!」
▼▼▼
「んん···」
「あ、デク君目ぇ覚めた?」
「うら···らか······さん?えっ?!?アイタタタ!!」
「急に動いたらあかんよ、デク君。体力の消耗が激しくて、全部はよう治っとらんってリカバリーガールが言っとったから」
朧気な意識が、麗日さんの声に呼び起こされる。後頭部に感じる、枕とは違う柔らかい感触。視界に映る二つの丘と麗日さんの顔上半分。
僕はつまり、麗日さんに膝枕して貰っているのか。そう理解した瞬間、反射的に体を起こそうとしたら激痛が襲い掛かってきて、頭部は麗日さんの膝にポスっと収まった。
「······試合は···」
「まぁ、そういう事やね」
「そっか···負けたんだ」
「うん、デク君の負け」
「そっか······今度こそ、勝ちたかったなぁ」
「でも、格好良かったよ、デク君」
「うあああああーーーー!!!」
「···お疲れ様、ウチの大事な人」
麗日さんの膝に顔を埋めて、大声をあげて泣く僕の頭を撫でる麗日さんの手は、とても優しかった。
「緑谷君の様子を見に来たのだが、どうするべきか···」
「流石のオイラでも、あの空気に突撃する勇気はねぇよ」
「今すぐ写真に納めたい、でも、この光景は心の中にだけ残していたい」
「分かるよ、三奈ちゃん。雪花ちゃんにも見せてあげたい!!」
「お茶子ちゃん、大人になったのね」
「蛙吹よ、お前は麗日の何だ」
恐らく、今話が一番ノリと勢いで書いた気がする。
取り敢えず、出茶はこんな感じで。しまっとく宣言したのに溢れ出ちゃうお茶子とか、初めて自分が好きだと言ってくれた異性の気になる子にわたわたするデク君を妄想したいじゃん。因みに、写真は撮って雪花に送信済み。
評価と感想を、よろしくお願いします。