八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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明けましておめでとうございます。
本年も、本作をどうぞよろしくお願いします。


第二十九話「八木雪花と指名とヒーローネーム」

 

 

 

「やほ~みんな~、おっはよ~」

「あ、雪花、おはよう」

「一日で世界中から注目される有名人!握手してくれ!」

「上鳴君、貴方が握りたいのは、右のホークス?左のエンデヴァー?それとも、オールマイトの両手?」

「何なら、ウチのジャックもおまけするよ」

「いや、どれもいらねえよ!!」

 

 休み明け、いつもよりも賑わう教室。皆、登校する時に周りの人から大なり小なり声を掛けられたみたい。私は、お父さんの車で来たから、声こそ掛けられる事は無かったけど、視線はすっごい感じたよ。

 

「お父ちゃんがごめんな、デク君」

「ううん、お茶子さんが大事にされてる証拠だよ」

「お、同伴出勤とは朝からアツアツだね~。おはよ~、お茶子、緑谷君」

「ちゃうから、ただ下駄箱で会っただけやから」

「あはは···」

 

 赤くなることなく、仕方ない子やなぁみたいな目をしながら平然と言い返してくるお茶子。緑谷君も、頬をかきながら苦笑するだけ。今までなら、二人とも顔真っ赤にしてワタワタしてたのに···この落ち着きようは何!?つか、緑谷君、さり気無くお茶子の事を名前呼びしてなかった?

 

「かっちゃん、おはようって!どうしたのその顔!?」

「うっせぇ、ほっとけ!!」

「三奈!透!目標捕獲!!」

「がってん!」「らじゃ!」

「ちょっ!もうチャイム鳴っとるよ!!」

「麗日の言う通りだ。さっさと席につけ」

 

 お父さんとおじさんから可愛がられて、体育祭の時よりもボロボロになったかっくんの様相に驚く緑谷君を他所に、尋問の為に三人でお茶子を持ち上げて廊下に出ようとすると、髪を逆立てた相澤先生とバッティング、大人しく席に戻る。仕方ない、今はその命預けておいてやろう。

 

「皆、おはよう。体育祭お疲れ様。今日からまた普通の授業に戻るんだが、今日のヒーロー情報学はちょっと特別だ」

 

 クラスの何人か、主に座学の成績が芳しくないのが、相澤先生の特別という言葉に身構える。

 

「"コードネーム"ヒーロー名の考案だ」

「「「胸ふくらむヤツきたああああ!!」」」

 

 何か恒例となった皆で叫ぶ奴。先生の髪がザワッとした瞬間シーンとなるけど、やっぱ楽しいんだよねぇ。で、先生がプロヒーローからのドラフト指名に関する説明をした後、A組に届いた指名を集計したものが黒板に映し出される。その結果に、クラスがザワッとする。

 

「一位が爆豪で二位が緑谷かよ」

「焦凍さんと雪花さんが一桁!?」

「何で?!」

 

 4416件のかっくん、4013件の緑谷君、7件の焦凍、4件の私。体育祭入賞組で凄い明暗が別れた。決勝戦に出た面子には、大体二桁か三桁の指名が入ってる。私や焦凍だけ極端に低い。まぁ、これはある意味当然な事ではあるのだけど。

 

「焦凍が、エンデヴァー事務所に行くのはほぼ確定してるからね。私なんて、オールマイトの娘だよ?体験先に選ばれれば注目されるけども、下手な事すれば炎上して廃業なんて事も考えられる劇物だよ?よっぽど自信があるか、リスク度外視じゃないと指名されないって」

「そっか、最終的には自分の事務所に入って貰う事が目的だもんね」

「もしウチが指名する側だったら、確かにNo.1とNo.2の子供に指名出す勇気無いわ」

「これを踏まえ···指名の有無関係無く、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らは一足先に、ヴィランと戦うという事は体験したな。今度は、現場で実際にプロ活動を体験して、より実りのある訓練をしようってこった」

 

 職場体験とはいえ、やるのは歴としたヒーロー活動。本名じゃ格好つかないもんね。んで、命名センスの無い相澤先生に代わり、ミッドナイト先生が査定してくれるとの事。はてさて、皆どんなヒーロー名をつけるのかなぁ。

 

 

「爆殺王」

「そういうのはやめた方が良いわね」

 

 どう考えても、ヒーローがつける名前じゃないのを発表して即却下されたかっくんが、何でだよと肩をいからせながら席に戻る。

 三奈のエイリアンクイーンで、大喜利みたいな空気が微かに漂ったのを、梅雨ちゃんのフロッピーでちゃんとした空気に戻したヒーロー名発表。パスした緑谷君と却下されたかっくんを残して、遂に私の番。

 

「私のヒーロー名はこれ!氷雪ヒーロー"ルミナイネン"」

「ルミナイネン、フィンランド語で雪女って意味の言葉ね。まさに、名は体を表すね」

 

 お母さんを真似てスノウメイカーとか、お父さん真似てスノウマイトとか考えたけども、やはりここは独自路線を行こうと、辞書やら何やら読み漁って見つけたのがこれ。意味も分かりやすいし、何よりお洒落だったからね。

 

「爆殺卿」

「却下」

「何でだよ!!」

 

 取り敢えず、殺の字を使うでないよかっくん。

 

 

   ▼▼▼

 

 

「だああ!!何でダメなんだよ!!」

「だから、ヒーロー名に殺なんて入れるなって言ってんでしょうが!」

 

 結局、授業中にヒーロー名が決まらなかったのはかっくんのみ。今日中に、採用出来るのを提出出来なければ、カツキで登録するとミッドナイト先生に告げられた。皆がお昼に行っている間も、絶対却下される名前を繰り返すかっくん。王も卿も殿も将も候も公も伯も爵も大名も神も、引っ掛かってんのはそこじゃない。爆殺に何でそんな拘るのさ、こやつは。

 

「早くしてよね、ミッドナイト先生に頼まれて、皆どこの事務所に行くか相談を建前にお茶子を尋問しようってのを、態々断ってまで付き合ってあげてるんだから」

「うっせぇ!じゃあ、テメェも何かアイディア出しやがれ!!」

「出してもいいけど、ひとつ条件。提案したの提出してOK出たら、それで行くこと」

「はっ?!ふざけんな!!」

「嫌なら、カツキで職場体験行ってきな!」

「············チッ!ふざけたのだったら提出しねぇぞ」

「分かってるって·········ほれ」

「···悪くはねぇか。あくまで悪くねぇってだけだからな!!!」

「はいはい、ツンデレ乙。さっさと出しに行くよ」

「待てや!勝手に持っていうおっ!!!」

「ちょっ!きゃあ!!」

 

 ヒーロー名書いたボードを提出しに行こうとしたら、かっくんが慌てて立ち上がって、机に足引っ掻けて転んだ。私を巻き込んで。

 

「···ねえ、またお父さんとおじさんに可愛がられたい?」

「···わりぃ」

 

 私に覆い被さり、右手で私の左胸を思いっきり鷲掴みにしているかっくんの顔目掛けて、右手を振り抜いたのでした。

 

 

 その後、真っ赤な紅葉をほっぺたに咲かせたかっくんが提出したヒーロー名は、意味深な視線を送ってくるミッドナイト先生に、無事受理されました。

 

 爆豪勝己、ヒーロー名"爆心地ヒーロー·ダイナマイト"

 

 




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