「デク君はどこに···って、何で空気椅子しとるん?!」
「体育祭で、僕もまだまだ体を鍛えないといけないって分かったから、一分一秒でも無駄にしちゃいけないと思って。僕はまだ、指名してくれた事務所の精査中で、どこに行くか決まってないんだ。お茶子さんは?」
「私は、ここ。バトルヒーロー"ガンヘッド"の事務所に決めたよ」
「え?そこって、ゴリゴリの武闘派ヒーロー事務所だよね?てっきり、13号先生の様な災害救助系のヒーロー事務所にするのかと···」
「最終的にはね!強くなればそんだけ可能性が広がる!やりたい方だけ向いてても見聞狭まる!と!」
「なるほど···」
正拳突きの真似事をしながら語るお茶子さん。やっぱり、お茶子さんは凄いな。将来の事をしっかり考えて、自分の可能性を広げる為に何をすればいいのか分かってるなんて。
「お~ちゃ~こ~!!」
「キャッ!雪花ちゃん、何!!」
「三奈達から聞いたよ~!私にも詳しく教えて頂こうじゃないか!さぁ、行くよ!!」
「ちょっ!!デ、デク君また明日ーー!!」
「あ、うん、また明日···。僕も、帰って色々と考えようかな」
「緑谷少年!!わわ私が独特な姿勢で来た!!!」
「オールマイト!!?」
「早いな、職場体験に行く事務所を決めた生徒がもうそんなに居るのか」
「最初から決まってる奴が多かったからな。その分、他人のアドバイスに回った結果だな」
「···八木雪花は、どこに決めたんだ?」
「ここだな、ヒーローランキング4位ファイバーヒーロー"ベストジーニスト"。個性による物理的拘束では、彼以上のヒーローは居ないだろうからな」
「あの人なら、世間からバッシングを受けるような心配はないか。他の生徒には、しっかり考えさせろよ。3年なんか、今になって後悔してる奴もいるぞ···」
「そうだな···ん?」
とおる生徒の所で、捲る手が止まる。名前欄に、爆豪勝己と書かれた用紙の第一希望欄に書かれているヒーローの名前は、八木と同じベストジーニスト。恐らく、指名された中で一番上位のヒーローだったからだろうが···。
「八木と一緒か······何もなきゃいいけどな···」
▼▼▼
「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。落としたりするなよ」
「はーい!!」
「伸ばすな「はい」だ、芦戸」
教室で、ヒーローコスの受け渡しや職場体験における注意等の説明を受けるオイラ達。例年なら、新幹線駅構内でやっていたらしいんだが、今年は(主に八木関連で)学校でやる事に。その後、送迎バスで駅まで送ってもらって、各自速やかにそれぞれの職場体験先方面に行く新幹線に乗れとの事。
「さぁ行きましょう、ええ行きましょう、飯田さん!!」
「ひっ、引っ張らないでくれ、発目君!公共の場で走っては危ない!それに、もう少し声を落としたまえ!!」
「いい、かっくん。言葉遣いだけでも取り繕ってないと、絶対かっくんが望むヒーロー活動出来ない一週間になるからね!!」
「いちいちうっせぇんだよ!もうタコが出来るわ!さっさと行くぞ」
「調子に乗ってケガとかすんなよ、芦戸」
「切島こそ、ちょっとミスしたからって落ち込むなよ~」
「お互い頑張ろうね、尾白君!!」
「うん、頑張ろう、葉隠さん」
「焦凍さん、お互い実りある一週間にしましょう」
「ああ···スーツの時、気を付けろよ。色々と」
「お茶子さん、行ってらっしゃい」
「うん、デク君も行ってらっしゃい」
「そろそろ時間ね。私達も行きましょう、常闇ちゃん」
「ああ、行くか蛙吹」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「·········」
「何ボーッとしてんだ、耳朗?もしかして、緊張してるのか?」
「···ハァ」
「え?何だよ、そろそろお前の乗る奴来るから声かけてやったってのに、人の顔見て落ち込むなっての!」
「ごめんごめん、ありがと上鳴。アンタ、個性使いすぎてアホ面晒さないようにしなよ。じゃ、お先」
「お、おう、頑張れよー」
「なぁ、何でオイラに声をかけてくれる女子が居ないんだ!!」
「日頃の行いだろ」
▼▼▼
「よし、これが一日の基本的な流れになる。これに、企業からのイベント出演依頼や他のヒーローからのチームアップ依頼、緊急出動の要請等が加わったりする。何か質問はあるか?テンヤ」
「いえ、ありません!ありがとうございました!に、ターボヒーロー"インゲニウム"」
「では、ヒーローの時間はここまでだ。今日は、天哉と発目ちゃんの歓迎会を予定しているから、シャワー浴びて着替えてこいよ。あ、発目ちゃんはまだ開発部にいるらしいから、一緒に行って案内してあげてくれ」
「分かったよ、兄さん。それでは皆様、お疲れ様でした!!」
兄、飯田天晴とサイドキックの方々に頭を下げ、講義をして貰っていた会議室を後にする。
発目君が兄の指名を受けていた事は驚いたが、兄が所長を務めるインゲニウム事務所は、近年サポートアイテムの開発にも力を入れていて、彼女の技術力の高さは体育祭で示されている。事務所に入所してくれるかはともかく、今の内から繋がりを持っておきたかったんだろう。
「開発部は、ここか。失礼し(ボッカーン!!)ッ!!」
事務所の隣に建てられた開発部のラボの扉を開いた瞬間、爆煙に襲われた。眼鏡が何処かへ吹き飛んだと同時に、大きいが柔らかい何かが衝突してきた。僕はその衝撃に抗し切れず背中から倒れてしまった。
「ハ、ハツメちゃん!大丈夫!!?」
「ハツメ!無事??!」
「何の音だ!?被害は!!?」
開発部の方々や、音に反応して駆け付けて来たと思われる兄さんの声が聞こえる。そんな事よりも、
「やはり出力に対して強度が足りませんでしたか。しかし強度を上げれば重量が増えて操作性に難が出ますし燃料効率も···」
「発目君!まずはどいてくれ!!」
「おや、飯田さん!そんな所で何を?」
「君が吹き飛んできたんだ!!というか、何をしたらこんな事になるんだ!?」
「そうです!!現在のインゲニウム事務所では、所長であるインゲニウムの速度に追い付ける人が限られています。事件及び事故現場では、インゲニウム以外の個性が必要な場面もあり、幾らインゲニウムが早く到着出来ても待ち惚けという事も何度かあったそうです。なので、体育祭で飯田さんに使用して頂いたベイビー達にジェット機構やブースターを増設してみたのですが、インゲニウムの速度を出そうとすれば短時間でオーバーヒートして爆発してしまう事が分かりました。ですので、一度飯田さんの体を調べさせてください!」
「何がですのでかは分からないが、女性がいつまでも男の上に乗っている物ではない!!」
その、なんだ、僕とて男だ。峰田君程欲望に忠実ではないが、僕の胸の上で彼女が身動ぎする度に、柔らかそうだがしっかりと弾力のありそうな二つの物が形を変えていくのに興味が無いわけでは無いのだ!!
その後、開発部の方々の手で発目君は回収され、僕は兄達に助け起こされた。その時、諸先輩方に「この役得め!」と肩や背中をバシバシと叩かれた。兄も苦笑を浮かべている。この職場体験、別の意味で無事乗り切れるか心配になってきた。
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