八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第三十話「8:2と密輸船と電話」

 

 

 

「プックックックッ!に、にあってるよ、かっくん」

「わ、笑ってんじゃねぇ(プルプル)」

「君の事はトムラから聞いている。久しぶりに、腕の鳴る子が出てきたと。ウチに来る子達は皆いい子ばかりでね、悪い事ではないんだが、少々物足りなさも感じていたんだよ」

 

 ベストジーニストの事務所で、椅子に座らされてベストジーニスト直々に髪を整えて貰っているかっくん。他のサイドキック同様、8:2に分けられた髪型のかっくんに、私は笑いを堪える事が出来ないです。

 まぁ、私もズボンをジーンズに着替えさせられてはいる。上は民族衣装で下ジーパンて、正直ヘンテコじゃない?

 

「昨日は、講義や力量を計る為の簡単な手合わせで終わったが、今日からは君達も一緒にパトロールへ出て貰う。注意事項は覚えているかな?ルミナイネン」

「は、はい!市民に対して、ヒーローとして恥ずかしくない行動を心掛ける事。同行しているプロヒーローの指示に従う事。プロヒーローが指示を出せず、市民や自身の命が危ぶまれた時のみ自己判断での行動が許される、です」

「よろしい。では、タイトなジーンズの様に心身共に引き締めて、今日もピッチリ平常運行と行こう」

「「「シュア!ベストジーニスト!!」」」

 

 

   ▼▼▼

 

 

「はい、分かりました。では、明日の朝に合流します」

「ハァハァ、ど、何処かへ行くのか?」

「おや、もう追い付いて来たのかい?昨日よりは速く飛べたみたいだね。そうだ、明日は僕と海上旅行しようか」

「ハァハァ···、海上···旅行?」

「そ、ついでにちょっとしたお手伝いもね」

 

 

 

「四日ぶりだな。息災か、あす···フロッピー」

「ツクヨミちゃんも、元気そうね」

「フロッピーの知り合い?」

「クラスメートです、シリウスさん」

「漆黒ヒーロー"ツクヨミ"だ。ホークスの所に職場体験に行っている。以後お見知りおきを」

「シリウスよ。よろしくね、ツクヨミ」

 

 ホークスに付き添って到着した港に、見知ったヒーローコスチュームを見つけた。打ち合わせをしてくるからと、待機を命じられたので、職場体験先のヒーローと話をしている蛙吹に声をかける。

 

「今回の件、フロッピーは何か知っているのか?ホークスは、着けば分かるとしか言わなくてな」

「そうなの、私も全てを把握している訳じゃ無いのだけど、違法薬品の原料を持ち出そうとしている密輸船の拿捕が目的らしいわ」

「違法薬品の原料···」

「個性誘発剤、通称"トリガー"。使用すれば一時的に個性を強化出来る代物だ。使い過ぎれば、個性が暴走して死に至ると言われ、日本では原材料の栽培や所持の時点で大罪になる劇薬だ」

「船長!」

「海難ヒーロー"セルキー"だ。お前の事をホークスから任された、ヨロシクね☆」

「っ!!」

「船長~、だからそれ止めましょうよ」

「···オホン。ホークスは単独で密輸船の捜索に入る。貴様は、何もない海上で飛行するのはまだ早いという事で、俺の指揮下で沖マリナーに同乗し、船直上からの索敵を担って貰う。やれるな、ツクヨミ」

「ああっ!期待を越える働きを約束しよう」

「フッ、さぁ出港の時間だ!!錨を上げろ!!」

「「はい!!船長!!」」

 

 テキパキとロープを外し、タラップを上げているフロッピーの背中は、職場体験に赴く時よりも大きく見えた。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

『うん、今新幹線に乗ってるよ。渋谷で、ヒーロー活動をって。お茶子さんの方はどう?大丈夫?』

「大丈夫!今日の訓練で合格点貰えたら、明日のヴィラン連合との模擬訓練に参加させてくれるって。もう朝から気合い入りまくっとる」

『そうなんだ。皆も頑張ってるし、僕も負けてられないよ。あ、そろそろ着きそうだから切るね。頑張ってね、お茶子さん』

「うん、デクも。今度学校で」pi

 

「ウラビティちゃんの電話の相手、例の彼?」

「いいよな~。強い上にこんな可愛い娘が彼女なんて」

「アンタじゃ、生まれ変わっても無理だろうね」

「あたし、体育祭見て一発でファンになっちゃったもん」

「あはは···まだ、恋人とかと違うんですけどね」

 

 デク君との電話を終えて戻ってきた私を、ガンヘッドさんやサイドキックの人達が、デク君家行った時のお母ちゃん達みたいな、微笑ましい物を見るかの様な目で迎えてくれた

 なんと言うか、この視線に慣れてしまった感はある。だって、A組以外のクラスの人や先生、果ては擦れ違う一般の人からも、同じ様な目で見てくるんよ!むず痒い物はあるけども、それが普通に思えてくる位には吹っ切れましたとも。

 

「ほら、訓練始めましょ!まずは基礎トレですよね!」

「そうだね、じゃあ今日も頑張ろうか」

 

 

 

「お前さんは、俊典と違ってちゃんとそういうのに興味があるんじゃな」

 

 電話越しに耳元で聞こえたお茶子さんの声に、顔に熱が籠るのを感じていると、遠い所を見ているかの様な表情を浮かべてグラントリノが言った。

 

「へっ?」

「まぁ、奴の場合はそんな余裕が無かったのも、拍車を掛ける要因になっちゃいたが、浮いた話なんぞトント無かったからな。俊典とアイスメイカーの嬢ちゃんが、赤子を抱いてやってきた時には腰を抜かしたわい」

「グラントリノも、ご存知なかったんですか?」

「まぁ、あの嬢ちゃんと色々動いてるのは知ってたがな。まさか、ガキまでこさえるとは誰が予想するってんだ。俺も引っ張り出されて、関係各所が大慌てでどうするか会議三昧よ。元教師としても言っとくが、お前さん、卒業するまではちゃんと避妊しろよ」

「うえっ?!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「アッハッハッハッ!!マジか爆豪!!!」

「アッハッハッハッ!!爆豪マジか!!!」

「ちっ、笑うな。クセついちまって、洗っても直んねぇんだ」

 

「へぇー、敵退治までやったんだ!うらやましいなあ」

「避難誘導とか後方支援で、実際交戦はしなかったけどね」

「私も、トレーニングとパトロールばかりだったわ。一度、常闇ちゃんと密輸業者を捕えたくらい」

「それすごくない!!!」

「プロのお零れを貰った様なものだ。己の不甲斐なさを、改めて思い知らされた」

 

「コオ~~~~」

「···お茶子さん、何か目覚めてるね」

「とても、有意義だったよ、デク君」

 

「皆さんが羨ましいですわ。私のやった事と言えば、CMに出演したり、マネージャーの様な事をしたり。ヒーローらしい活動なんて1つも···」

「僕も、後半は発目君の研究に付き合わされてばかりだった。いや、発目君の開発したアイテムが普及すれば、確実に兄さんの事務所にプラスなのは理解しているが、兄さんのヒーロー活動をもっと見ていたかった」

「女ってのは···元々、悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」

「三人共、元気出せって!峰田は、ガジガジすんのやめろ」

 

「焦凍はどうだった?少しは成長した?」

「···ああ、俺が目指す境地。高過ぎる壁だが、手ぇ位は掛けられたと思う。絶対モノにして、今度こそ誰にも負けねぇ」

「そっか。まぁ、私もその分強くなってるから、そう易々と勝たせてあげないからね」

「望むところだ」

 

 職場体験を終えた私達は、久し振りに足を踏み入れた教室で、各々の体験を語り合った。有意義な体験をした人、不本意な体験をした人、何かに目覚めてしまった人等、それぞれ色んな体験をしたみたい。

 プロの世界を肌で感じた経験は、私達を半回り位は大きくしてくれたんじゃないかな。そんな感想を抱きながら、これまた久し振りな担任を、静かにお出迎えするのでした。

 

 




と言うわけで、パパッと職場体験終わらせました。期末テストやってショッピングやってI·アイランドやって林間学校。如何様にもラブコメさせられるが故に、誰にフォーカス当てるか悩む。

評価と感想を、よろしくお願いします。
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