「制限時間は30分。君達は、その間に"ハンドカフスをヴィラン役に掛ける"か"どちらか一人がこのステージから脱出"するのが目的だ。まぁ、こんな条件じゃ逃げの一択になってしまうから、ヴィラン役の教師はこの超圧縮重りを、体重の約半分の重量を装着する!ハンデって奴さ」
そう説明された演習試験。本当に、あのオールマイトと戦う。襲撃訓練の時、思いがけず戦いはしたんやけど、あの時は凄い手を抜かれていたから。
「···どうする、やっぱり僕がオールマイトを何とか引き止めている間にお茶子さんがゴールを目指すべきか。いや、僕のスピードじゃすぐに振り切られる。お茶子さんを守りながらゴールを目指すべきか······ブツブツブツブツ」
「デク君···」
デク君は、ずっといつもの高速独り言。聞こえてくる内容は、殆どがどうやって私をオールマイトから守るか。デク君にとって、ウチは守られるだけの存在なん?何の役にも立たんお荷物なん?
「デクく『それじゃあ、今から雄英高一年期末テストを始めるよ!レディイイーー···ゴォ!!!』」
「行くよ、お茶子さん。オールマイトがどう動いてくるか分からないから、僕の後ろに。僕が、オールマイトを頑張って抑えるから、その間にゴールに向かって欲しいんだ」
「あ···うん」
デク君···、ウチを見てよ。
▼▼▼
「いい、かっくん。お母さんの個性は氷精。氷を生み出し自在に操る私の氷版。んで、自分の戦いやすいフィールドを構築した上でのガチガチのインファイター」
「関係ねぇよ。誰が相手だろうと、俺が全部ぶっ壊して勝つんだ」
「いやだから、それをするにはかっくん一人じゃ相性が悪すぎるって言ってるの!相手は、お父さんと肩を並べて、四位まで登り詰めた歴戦のヒーロー何だよ!」
「うるせぇんだよ!四位だか何だか知らねぇが、んなので逃げてちゃ、オールマイトを越えるNo.1ヒーローになんかなれねぇんだよ!!」Boom!
「あ、ちょっとかっくん!!ああもう!!」
あの爆発小僧、意地の張り所が違うっての馬鹿野郎。一人じゃ駄目なの、二人じゃないと駄目なんだってば。
急いで、かっくんの後を追いかけて飛ぶ。まぁ、その足もすぐに止まるんだけど。
「っ!!!」
「行ったでしょ、あれが、お母さんのフィールドだよ」
私達が目指すべきゴールのある方向に、いきなり荘厳な氷の城が聳え立った。お母さんの一夜城ならぬ一秒城。あの中で戦おう物なら、文字通り袋の鼠。四方八方十六方から、お母さんの操る氷のオンパレード。お父さんですら苦戦する地獄の一丁目へ御招待だ。
「上等だ!あんな城、すぐに跡形もなくぶっ壊してやる」
「だから、ストップ!!」
「んごあっ!!何しやがる、クソ雪女ぁああ!!!」
爆速ターボの構えを取るかっくんに飛び付いて押し倒す。んで、両手両足を雪で地面に縫い止める。ジーニスト直伝の捕縛術だ、動けまいて。
「歯を食いしばれ、爆豪勝己!」
「がっ!!」
「っ~~!!この石頭め!!」
ぎゃんぎゃん吠えるかっくんに向かって、思いっきり頭突きを食らわす。勢いでやっちゃったけど、逆にこっちの頭が割れそうだよ、クソッタレ。
「いい!今突っ込んでも、袋叩きに合うか愉快な氷像になるかの二択!手を氷付けにされたら何も出来なくなるんだから、少しは私の言う事を聞け!!」
「ふざけんな!!体育祭で運良く勝って、ジーニストから直々に指導して貰った程度で、俺より上に行ったつもりかクソ雪女!!俺は、こんな所で躓いてられねぇんだよ!!」
「あんたがいつまでもそうやって人に乱暴な口調で威嚇するから、ジーニストから合格点貰えなくて指導してくれなかっただけでしょうが!!責任転嫁すんな馬鹿!!」
「んだとテメェ!!!ふぐおっ!!」
「っ~~~~!!!!良いから聞いて!!私一人じゃ勝ち目無いの!かっくんの力が必要なの!私だって、こんな所で足を止めたくないの!だから、力貸すから私を勝ちに導いてよ。私、皆と、かっくんと林間学校行きたいんだよ」
頭突きの痛みでなのか悔し涙なのか分かんない物が、目から流れて頬を伝う。
「·········っち、今回だけだ。足引っ張ったらぶっ殺す」
「うん!!で、何すればいい?」
「二分だ、二分脇貸せ。んで、その間にアイスメイカーの戦略戦術全て話せ」
「お安いご用!」
「この状態で脇に挟もうとすんな!!」
「······もしかして、勃「黙れ」···冗談じゃん」
「あら、すぐに爆豪君が突撃してくると思っていましたが、貴女一人?その格好どうしたの?」
ゴールゲートの上に作った玉座に座って二人を待っていると、インナーのみ身に纏った雪花が一人、すいーっと飛んできて眼下に着地した。何の捻りもなく悠々と来るものだから何もせずに居たけど、どうするつもりなのかしら。爆豪君は城内部に居ない様だし。
「おか···八木先生こそ、何もせず、そんな玉座にふんぞり返って余裕ですか?もう若くないんだから、あんまり腰冷やすとアレだよ?そう言えばそのコスチューム、サイズを調整して貰ったんだってね、特にお腹周り」
「(ビキッ)そう···少しは手加減してあげようかと思っていましたが、慈悲は捨て去ってあげましょう」
挑発のつもりなんでしょうけど、ここは素直に乗ってあげましょう。ええ、決して怒っている訳ではありません。あの程度の事で、私が怒る訳ありませんから。ええ、本当に。
「さぁ、みっともなく踊り回りなさい!失礼な事を言う子を、骨の髄まで躾てあげましょう!!」
「ぎゃーー、お母さんガチギレしたーーー!!」
「先生と呼びなさい!それと、私は決してキレてなどいません!!」
「ウソだっ!!!」
玉座から立ち上がり、三対の氷の巨腕を作り出して娘に殴りかかる。娘も、同じように三対の雪の巨腕を作り出して対抗してくる。
「どこまで着いて来れるようになったか、見せて頂戴な」
「八木先生の鬼畜年増ー!!!」
振るう巨腕にしっかり合わせながらも、挑発を忘れない所は、あの人譲りですかね。AFOとの戦いの時も、あの人は見事な挑発をしていましたし。
「じゃあ、もう一対追加ね」
「ちょっ!児童虐待!!」
「いえいえ、愛の鞭よ。ほら、遠慮せずにもう一対」
「んぎゃ!今度、お母さんのタンス下から二段目の奥に隠してある物、週刊誌にリークしてやる!!」
「あらあら、もっと欲しいなんて欲張りさんね。もう、しょうがないから、サービスで五対増やしてあ·げ·る♥️」
「いらないーーー!!!!」
合計十対二十本の巨腕が娘を襲う。それを、半分の五対十本で何とか捌いている。まぁ、捌けるであろうギリギリの速度で攻撃しているのだけど。
「がはっ!!」
まぁ、流石にずっとは抗しきれず、一応防いだものの壁に向かって殴り飛ばされて叩き付けられめり込む娘。爆豪君、本当にどこ行っちゃったのかしら。あの子の性格上、娘に任せてコソコソとゴールを目指すなんて事はしないだろうに、そもそも、この氷城の中にまだ入ってすらいない。
「何を狙っているか分かりませんが、もう貴女にはここで退場して貰いましょう」
「ふんぎぎぎ!!!」
めり込んだ腕や足を、氷で覆って磔にした娘の前に浮遊して、巨腕を思いっきり振りかぶる。
「今だ!行っけーーー!!!」
娘が叫ぶと、人一人すっぽり入りそうな一本の巨腕が、装飾過多だけど薄い屋根を突き破って、私目掛けて迫ってくる。
「甘いですよ」
雪花に向けて放とうとしていた拳を、そちらに向けて振るう。その程度で、私を倒せるなどと思っていたのですか?拳がぶつかり合い、こちらの拳に少し皹を入れた程度で、雪花の巨腕が崩れる。可笑しい、手応えが軽い?
「やれ!八木ィイ!!」
「待ってた、ファイア!!」
気付いた時には、娘の上着を羽織り、娘のズボンに突っ込んだ両手をこちらに向けている、雪まみれの爆豪君の姿がすぐそこにあった。まさか、あの巨腕の中にずっと隠れて待っていたのですか。
両方の篭手から放たれた、物凄い爆風に何もかも吹き飛ばされ、娘の横にめり込みながらそんな事を思う。
「トドメだ!ハウザーインパクト!!!」
「やっちゃえ、かっくん!!」
錐揉み回転しながら迫ってくる爆豪君。ここからでも、何とかする術が無いわけではありませんが、子供達が頑張ったんです。ここは、潔く負けてあげましょうかね。だって、私の右腕には、あのカフスが嵌められているのですから。
「子供の成長というのは、嬉しいものですね。ね、貴方」
衝撃で城を突き抜け、太陽の暖かさを感じながら感慨深く思う八木冬花でありました。あ、今日帰ったら、例のアレは別の場所に移しておかなければ。
『爆豪八木チーム、条件達成!!』
『いいか、本気でやって最後にはゲートと反対の壁にでも叩きつけられろ。そこに、俺が突入して両篭手の爆破を食らわせる。そのタイミングで、死んでもカフスを掛けろ』
『もし、失敗したら?』
『俺が、ハウザーで追撃して更にゲートから遠ざける。そっからは、ゲート潜るか共闘してぶっ殺すかテメェで判断しやがれ』
『お母さんとタイマンか~、気が重いなぁ。ま、死んでも何とかしてみるさ。あ、でも突入の時にかっくん単体だと音でバレるから、私の雪拳に包まれて突入しよう』
『んな事したら、冷えて汗が引くだろうが』
『私のコス使えばいいよ。上は普通に羽織って、ズボンに両手を突っ込んでればイケルイケル』
『ちっ、タイミングミスんじゃねぇぞ』
『頑張ります!!』
因みに冬花ママは、ガチの本気を出せば、城作りの時に纏めて凍らされます。それ避けても、城の氷から腕やら足やら氷の怪物やら無制限に出して二人を完封出来ます。それすら突破出来ても、オールマイトとガチの殴り合い出来る本人が待ってます。これでも全盛期より大分衰えてます。こん位盛っておいても、全盛期AFOさんに善戦出来れば良い方としか思えないのが怖いっすよ。
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