八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第三十三話「演習試験Ⅱ」

 

 

 

『期末テスト、貴方には緑谷麗日チームの相手をして貰う予定です』

『···緑谷少年はともかく、麗日少女には荷が重すぎないかい?』

『緑谷君は、貴方にそっくりです。かつての貴方が、私を庇護対象と見ていたように、緑谷君にとって、麗日さんは守るべき人と思っているでしょう。麗日さんがそれに甘んじるのか、それとも···』

『かつての君のようになるか···か』

『OFAを継いだ人と共にありたいなら、生半可な覚悟じゃ苦労しますからね』

『経験者は語るって奴かい?』

『ええ。貴方達みたいなタイプに置いていかれたくなければ、取っ捕まえるか追いかけるしかないんですから』

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「行くぞ、ヒーロー。真心込めてかかってこい」

「OFAフルカウル8%!!行って!お茶子さん!!」

「でも、デクく「行って!!」っ···っ!」

 

 OFAを発動させ、作戦通りお茶子さんを別ルートでゴールに向かって貰って、砂煙の中を悠然と歩いてくるオールマイトに向かって拳を構える。

 

「オールマイトが相手なんだ、出し惜しみしてられない。DETROIT SMASH!!」

「師匠の所で、それなりに鍛えられた様だな、緑谷少年。だが、余り私を舐めないで貰おうか」

 

 8%のスマッシュを、片手で意図も簡単に受け止められた。襲撃訓練の時には、5%でたじろぐ位はさせられたのに。

 

「くっ、だあっ!!」

「取り敢えず、無謀で勇敢な君にプレゼントだ!」

「オエッ!」

 

 腹にオールマイトの拳が突き刺さり、胃の中の物が逆流してくる。スマッシュですらないただのパンチなのに、僕の8%より断然上。

 

「さて、麗日少女を追わなくてはな」

「い···行かせ、ない!」

 

 麗日さんじゃ、僕とオールマイトの戦いに着いてこれないから。僕が一人でやるしかないんだ。それに、グラントリノの攻撃より遅い。落ち着いて見極めれば、攻撃を捌いて時間を稼ぐ位は、

 

「なんて顔だよ、緑谷少年···」

「っぎ!!」

 

 いつの間にか横に立っていたオールマイトから放たれる裏拳を、ギリギリ腕をクロスして防いだのに防御ごと吹き飛ばされて、柵に叩きつけられた。

 

「おいおい、これでも重りのせいで全然トップギアじゃないんだぜ?」

「っが!!!」

 

 追撃の拳を何とかしゃがんで避けたけど、今度は強烈な蹴りあげが顎をかちあげる。脳が揺れ意識が飛ぶ、気が付けばビルを貫通して道路をバウンドしていた。

 

『報告だよ。条件達成最初のチームは、爆豪·八木チーム!』

「かっちゃん、八木さん······僕だって···」

「僕だってなんだい?もしかして、まだ私を止められると思っているのかい?緑谷少年っ!!」

「うぐあっ!」

 

 何とか起き上がろうとした所に、オールマイトが勢い良く着地し、その余波でまた吹き飛ばされ地面を転がる。後何回吹き飛ばされる気だ、緑谷出久。踏ん張れ、緑谷出久。

 

「もしかして、そうやっている事が君の時間稼ぎなのかい?残念だが、ここからでも私はゴールが見える。麗日少女がゴールするよりも先に、私は彼女の前に立ちはだかるよ」

 

 そんなの分かってる。そんなの、僕が一番分かってる。それでも、やらなくちゃいけないんだ。どんなにボロボロなっても、僕が挑まなくちゃいけないんだ!

 

「緑谷少年、ヒーローってのはね、一人じゃ本当にしたい事は成せないんだよ」

「···?」

「その意味を、彼女は君に教えてくれるかな。私の愛する人の様に」

 

 オールマイトはいったい何を?それに、どこを向いて···陰···?

 

「···流石にそれは予想外かな~、麗日少女」

 

 オールマイトの見上げる先には、オールマイトが最初のパンチの風圧で吹き飛ばしたビルの一部(四階フロア及び屋上部分)が、オールマイトに向かって一直線に降ってきた。

 

「デク君!!」

「お、お茶子さん、何で···」

「ええから、行くよ!!」

「えっ?で、でも、オールマイトが···」

「黙っとれ」

「は、はい!!」

 

 

「ふぅ~···HAHAHA、まさか自分で武器を提供してしまうとは、私も調子に乗っていたようだ。さてと、先生頑張っちゃうぞ!」

 

 

   ▼▼▼

 

 

「やるね~、お茶子。お父さん相手に別行動する程、無謀な事はないんだから」

「俺らに勝った事もねぇのに、何でオールマイトとやりあえるなんて思ってんだ、クソデクが」

「そこは、仕方ない。緑谷君の相方が、私やかっくんとかだったら、何するにしても協力してたと思うよ」

「けっ、あの麗日が誰かに守ってもらうようなタマかよ!」

 

 緑谷君をファイヤマンズ·キャリー(お米様抱っこ)して、ゴールに向かって無重力スライドしていくお茶子。あ、ビルの下敷きになってたお父さんが、ビルぶん投げて出てきた。

 

「頑張れお二人さん、本番はこっからだよ」

 

 

   ▼▼▼

 

 

「···うっ!っっっっ!!!」

「お茶子さん!!下ろして!!これ以上はお茶子さんが!!」

「っっっっ!!!」

 

 昔から、人の喜ぶ顔が好きだった。ヒーローが活躍しているのより、それを見て喜ぶ周りの人々の笑顔の方が好きだった。

 

「お茶子さん!!」

 

 いつも疲れた顔で帰ってくる、父ちゃんと母ちゃんを見るのが辛かった。二人を、皆を笑顔にしたくて、ウチは、

 

「っつあ!!」

「くっ!お茶子さん!!」

「······うええ···」

 

 足に力入らんくて、デク君投げ出してしもうた。あ、近付かんといて、もう胃の中全部ひっくり返す感じやから。入試の時にも見られたけど、流石に恥ずかしい。

 

「···お茶子さん」

「ペッ···行こう、デク君。今度は一緒に。爆豪君も轟君もきっと、雪花ちゃんや百ちゃんと力合わせて突破しとる筈から」

 

 途中で、轟君と百ちゃんが突破したって放送があった。二人はやっぱり凄い。二人と比べたら、私が全然なんは分かっとる。でも、私も手助け位はしたいんだ。

 

「お茶子さん、でも···」

「見たやろ、私、オールマイト出し抜いたんだよ」

「それは···だけど···」

「デク君は、オールマイトみたいなヒーローになるのが夢なんだよね。デク君、組み合わせが発表されてから、一度も笑ってないの気付いとる?ほら、こんな強ばっとる」

「いっ!!」

 

 デク君の頬っぺたを、ちょっと勢い強めに両手で挟んでグニグニする。体育祭の時は、心操君戦除けば、真剣な顔だけど笑顔でもあったんだよ。

 

「一人でいいって言うんだったら、笑ってないと安心出来んよ」

「···ごめん」

「謝らんといて。私が、君の後ろじゃなくて隣に居たいだけだから」

「お茶子さん···」

「二人で突破して、皆に自慢しよ」

「···うん、二人で」

 

 

「このまま、制限時間まで来ないのかと思ったよ、緑谷少年。···麗日少女、大丈夫?流石に、ヤバそうだったらストップしなきゃいけないんだけど、教師として」

「大丈夫です、オールマイト先生」

「これも作戦なので、オールマイト」

「あ、そうなの」

 

 ゴール前に先回りして二人を待っていると、制限時間残り10分という所で、麗日少女をおんぶした緑谷少年が姿を現した。麗日少女の顔色が、ちょっと心配する程度には悪いので、一応続行するかの確認はしたけど大丈夫そうだ。何故なら、二人が笑っているから。

 

「「行きます、オールマイト」」

「来い、若人よ!」

 

 麗日少女を背負ったまま、OFAを発動させて駆けてくる緑谷少年。さて、両手も塞がった状態でどうするつもりなのか。ワクワクしながら、右腕を引き絞る。

 

「行くよ、麗日さん!」

「うん、デク君!」

「えっ?!そっち!!?」

 

 麗日少女の個性で緑谷少年が突進するのかと思っていたが、まさか、緑谷少年が麗日少女をこちらに向けて投げて来るとは。緑谷少年も、そのままこちらに向かって走ってきている。何の意図が···。

 兎に角、麗日少女に触れられる訳にはいかない。襲撃訓練の時に味わったからね。急いで後退して、拳圧で吹き飛ばす。

 

「この距離なら、S「デク君!!」んなっ!」

 

 緑谷少年が、麗日少女の両足裏を殴り押し、ヘルメットが勢いで吹き飛ぶ速度で突っ込んで来た。マズイ、もう拳が止まらない。彼女が行った職場体験先は、

 

「取った!ガンヘッド·マーシャル·アーツ·スロー!!」

 

 右手を取られ、首の後ろを持たれ、彼女の個性で無重力状態にされ、彼女自身に掛かっていた個性を解除した時の反動とパンチの勢いを利用され、物凄い勢いでゴールから遠くへと投げ飛ばされる。

 

「まぁ、及第点かな···」

 

 外壁に三点着地し振り返った先に、崩れ落ちた麗日少女を抱えて、ゴールを駆け抜ける緑谷少年の姿を目に映しながら、口角がより上がっていくのを自覚する。頑張れよ、二人とも。

 

 

『緑谷·麗日チーム、条件達成!!』

 

 

 




ガチ難産でした。

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