八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第三十七話「I·アイランド Ⅱ~お見合い逃避行録~」

 

 

 

 

「次やりゃ、テメェの記録なんざすぐに塗り替えてやったんだ!」

「はいはい、そうですね。明日また挑戦して、堂々と一位になって下さいな」

「ねぇねぇ、あの二人ってもしかして···」

「まだです。お互い、意識はしてるんだと思うけど」

「最近、あからさまに距離近いんよね、雪花ちゃん」

「先程までの、貴女と緑谷さんみたいにですか?」

「な、な、な、何を言っとるん!!?発目さん!!」

「へぇ~」

 

 ヴィラン·アタックという、ステージに出現するロボを全て破壊する時間を競うアトラクションに参加した私達。先に挑戦していて、私の記録を抜くまで何度でも挑戦しそうなかっくんを拘束して、付き添ってた上鳴君も加えた9人で、峰田君がバイトしてる喫茶店で一息ついている。

 そんな折、唐突に私の携帯が電話の着信を知らせてきた。

 

「焦凍?どったの、そんな落ち込んだ声して。お見合いはどうした?はっ?百が居なくなった?もしかして誘拐?!はい?自分から出ていった?走り去る百らしき人物が監視カメラに映ってた!携帯は?!持ってってない?!取り敢えず、百の服装を教えなさい!出来れば写真も!シャキッとしろ、轟焦凍!!好きな女に一回逃げられた位でメソメソすんな!!えっ?じゃない!!あんだけ独占欲出しといてすっとぼけてんじゃないよ唐変木!!このまま百が居なくなってもいいの?!だったらさっさと動きやがれ、このクソボケ!!!ハァハァハァ···」

「···半分野郎に何かあったんかよ」

 

 肩で息する私に、かっくんが怪訝な表情で尋ねてきた。私は、大きく深呼吸をして皆を見渡す。

 

「逃げた」

「逃げた?何が?」

「百が、逃げた」

「「「「「「はっ?」」」」」」

「今日、焦凍とお見合い予定の百が、お見合い拒否って逃げた!!」

「「「「「ええーーーっ!!!」」」」」

「百って···どちらさま?」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「···何をしているんでしょうか、私は」

 

 お見合いなど、これまで何度もしてきているというのに。個性を誰かの役に立たせたくて、ヒーローを目指してはいますが、私も八百万の家に産まれた身。いずれは、会社の益となる男性と結婚し、跡継ぎを産まなければならないと覚悟しておりました。

 しかし、ホテルで偶々焦凍さんのお姿をお見掛けし、焦凍さんの顔が此方に向きそうになっているのに気付いた瞬間、私は走り出していました。

 この姿を、焦凍さんに見られたくない。それしか、頭にありませんでしたわ。

 

「···今頃、皆さんに大騒ぎでしょうか」

 

 両親やお相手の方に申し訳なく思いますが、今はお会いする気にはなれません。見つからないように、着ていたドレスや装飾品を創造した鞄に詰め、地味だけど動きやすい服装を創造して着替え、帽子、サングラス、マスク、ローラー付きジェット内蔵ブーツも作った所で、お腹が空いてきたので出店のある方へ行こうとしましたが、お財布も携帯も持っていない事に気付いて断念しました。

 なので、人混みに紛れながら、一般客を装ってプレオープンされているエキスポを見て回る事に。雪花さんや響香さんも回っているのでしょうか。お見合いから逃げて来たと言ったら、どんな顔をするのでしょう。

 

「っ!あれは···お茶子さんと緑谷さん」

 

 遠くに、見慣れたヒーローコスチュームに身を包んだ二人が居ました。誰かを探しているご様子ですが、もしかして私を?いえ、まさかそんな事は···ですが、両親が捜索依頼を出したのかもしれません。ここで見付かる訳には参りません。二人の死角に入る様に動き、すれ違う事なく背後に出る事が出来ましたわ。

 

「···お茶子さん、貴女が羨ましいですわ」

 

 何の柵もなく、ただ己の好いた方と添い遂げる事の出来る貴女が、憎らしい程に。もし、この産まれでなければ私も···、

 

「···馬鹿ですわね。この産まれでなければ、出会う事すらなかったというのに···」

 

 推薦入試会場で、圧倒的な力を見せたあの背中。体力テストで、最後デッドヒートをしたあの横顔。氷を背に、吐息が掛かる程に近づいたあの真剣な顔。私の応援に、微笑んで頑張って来ると言ったあの笑顔。私の胸に顔を埋めて、幼い子供の様に安心仕切った無防備なあの顔。

 

「···焦凍さん······」

「ヤオモモ、やっと見つけた」

 

 雄英に入学して、産まれて初めてつけて貰った渾名。その名を呼ばれて振り返ると、膝に手をついて荒い息をする響香さんの姿がありました。

 

「···響香さん?」

「俺も居るんだけど···」

「上鳴さんも···何故」

「皆、ヤオモモの事探してるよ。心配したんだからね、ヤオモモって変に世間慣れしてないからさ」

「す、すみません」

「いいっていいって。あ、俺、おう、見つけた。おう、轟が来るまで一緒にいるわ、場所は···ってあっ!!」

「待って、ヤオモモ!!」

 

 誰かへ電話をしている上鳴さんの口から、焦凍さんの名前が出た瞬間、私は無意識の内に、ブーツのジェットに火を入れてその場を駆け去っていた。

 

「···私は、いったい何がしたいのでしょうか」

 

 建物の脇に入り、光学迷彩仕様のローブを被って周囲を確認しながら、自問自答する。

 あれは、飯田さんと···背負ってらっしゃるのはサポート科の発目さんという方でしたか。これで、先程のお茶子さん達を含めれば六人。恐らく、焦凍さんも捜索メンバーに加わっているのでしょう。という事は、確実に雪花さんと爆豪さんも居られますわね。A組で参加されている方は九人という所でしょうか。

 

「あ···」

 

 初めて見る正装姿で必死な形相を浮かべる焦凍さんが、目の前を駆けていった。焦凍さんから逃げたというのに、今度は会いたいだなんて···。

 

「······お腹、空きましたわね」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「ゴメン、見失った」

「まさか、あんなの用意してるとは思わなかったぜ」

「聞く感じ、飯田君に追いかけられても逃げられる様にしてたんだろうね、百」

「僕達が捜索に加わる事を予期していたと?」

「いや、無意識の内にA組を基準に考えただけだと思う」

 

 I·アイランドの地図を広げながら、八百万の動きを予測して皆の配置を決めている雪花。アイツに電話越しに怒鳴られて、何がしたいのか分からずただ走っていただけの俺は、何も出来ずに突っ立ったままだ。

 

「ねぇ、轟君」

「緑谷か···なんだ」

「轟君は、八百万さんの事、どう思ってるの?」

「···どうって······」

「君を八百万さんに合わせるのかどうか、それ次第な所もあるから。思った事、悩まずに全部口に出してみてよ。心操君と戦った時の僕みたいに」

「···すげぇ奴だと思った。入試の時、雪花以外に、俺と張り合おうとする女は初めてだったから。俺は、力任せな個性の使い方しかしてこなかったから、その場その場で的確に判断して必要な物を用意していくアイツに目を惹かれたんだ。委員長決めでも、俺はアイツに入れた。そういう事に長けた奴だと思ったから。

 体育祭の時、アイツの肌が衆目に晒されてるのが、何故かすげぇ嫌だった。騎馬戦、アイツが居れば勝てるとおもったのは確かだが、アイツが他の奴と組むのも何か嫌だった。チア姿、似合ってて可愛かった。準決勝の時、アイツに応援されてすげぇ嬉かった。アイツに抱かれてると、安心して眠れた。

 アイツの出てたCM、アイツにしか目が行かなかった。期末の実技演習、アイツの機転と作戦が無かったら相澤先生に勝てなかった。モールで男に絡まれてるって聞いた時、何でちゃんと傍にいなかったんだって怒りが湧いて、誰にも渡したくないって思って。でも、アイツ、俺とのお見合い、逃げる位嫌だったなんて、すげぇショックで、頭ん中真っ白になって、いっそのこと、アイツを氷漬けにして誰の目にも触れさせない様に「轟君ストップ!!ごめん、ありがとう、轟君の気持ちはよく分かったよ!!うん」···そうか」

 

 緑谷の奴、何に焦ってんだ?他の奴も、苦笑いというかドン引いてる様な表情してるのも何故だ?俺は、何か変な事言ったのか?

 

「同級生が犯罪者とか、ウチ嫌だよ」

「顔真っ赤やったのが、一気に血の気引いたんよ」

「流石の私でもドン引きです。八百万さん、強く生きてください」

「マイトおじさまの生徒さん、個性的な人ばかりなのね」

「これ、冷さん達がサプライズなんてしてなかったら、すんなり終わってたでしょ。母親達を恨んで頂戴、百」

 

 何で俺に向かって手を合わせているんだ?本当に訳が分からない。誰か教えてくれ。

 

「と、とにかく、八百万を探そうぜ」

「そ、そうだな、上鳴君の言う通りだ。ここに来る道中で騒ぎになっていなかった事から、そのローラージェットブーツで遠くまで行ってはいないのだろう。別れて、包囲の輪を縮めていけばまた見付けられるさ」

「ご飯あんま食べてないのに加えて、お金持ってないらしいから、個性に使える脂質もそんな無いだろうし、見つけたら押さえ付けてでも確保する事。いいね!」

「では、改めて行動開始!!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 (グウ~~~)

「お腹、空きました···。ここは、どこなのでしょうか」

 

 A組の皆さんや、家の捜索員らしき方々を避けて避けて隠れて逃げてしていましたら、よく分からない場所に来てしまいました。

 どこかの倉庫の様ですが、出口はどこでしょうか。

 

「あちらから、人の気配がありますわね。良かったですわ、スタッフの方なら道もご存知でしょう」

 

 廊下を曲がった先、開け放たれた扉の向こうで電話をしている男性の背中が見えた瞬間、聞こえた怒鳴り声の内容に反射的に隠れる。

 

「物は受け取った、隊長と合流して作戦の第一段階に···中止ってどう言うことだ?オールマイトがいる?だからなんだ、今さら怖じ気づいた所で、俺達を侵入させたアンタの罪は消えねぇ。もう後戻りは出来ねぇんだよ、俺達は。いいか博士、俺達に依頼した時点でお前も俺達と同じヴィランなんだよ!!」

 

 咄嗟に、小型集音マイクと録音装置を創造して、男の言葉を証拠として残しておきましょう。規模も個性も分からない相手に、今の状態で確保に動くのは愚策です。

 そして、創造した装置のスイッチを入れた瞬間、

 

『違法機械の反応を検知!違法機械の反応を検知!!』

 

「誰だ!!」

「やってしまいましたわーーー!!!」

 

 

 




今さらですが、細かいことは気にしないでください。

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