『それで、二人は···』
「ホテルに戻ったよ。百の治療もあるし、事情聴取やらは明日以降にするからって」
後処理はお父さん達がやるという事で、私達はそれぞれの宿泊先で待機を命じられた。勿論、事件に関しては箝口令が敷かれ、誰にも言いませんってきっちり誓約書書かされた。
今は、ビデオ通話で皆と会話中。百は無事だと伝えると、皆胸を撫で下ろしてた。焦凍が、クラス全員に送ったもんだから、そこはちゃんと報告したげないとね。
『何はともあれ!皆無事で良かった』
『そだね、あ~疲れた~』
『何か、夜のレセプションパーティー出るの面倒なってきた』
「ああ、それ明日に延期だってさ。つか、全部の日程を一日ずらすんだって。絶対に手引きした人間が居る筈だし、そいつの調査とか他にもヴィランが潜んでないかの調査もあって、それ所じゃないとの事で」
流石に、ヴィラン捕まえたんだね、じゃあいつも通りにって言う程平和ボケしてない。I·アイランドにヴィラン侵入なんて、正直前代未聞だよ。
「伸びた分の宿泊料とかその他諸々は、I·アイランドが払ってくれるらしいから、明日ゆっくりのんびりお休みタイム。百のお見舞いは、明後日以降でお願いね。んじゃね~」
そう締めくくってビデオ通話を切る。
「かっくん、もういいよ~」
「ちっ、俺ぁこのままシャワー浴びる」
「へいへ~い」
二人で一つの部屋にってのを知られたくないと、浴室に隠れてたかっくんに声をかける。いや、かっくんがミスったんだから舌打ちすんな、馬鹿。
「あ゛あ゛~、もう何も起こんないといいな~」
そう願いながら、ベッドに体を投げ出す雪花ちゃんなのでありました。
▼▼▼
あの後、再び気を失った私は、その間にホテルに運び込まれて、医師の診察と治療を受けて居たようで、気がついたら、病衣に着替えて自室のベッドで点滴を受けていました。
点滴の刺さっていた左手を優しく握りながら、ずっと付き添ってくれていたらしい両親も、私が目を覚ましたのに気付くと、目に涙を浮かべて安堵の表情を浮かべられました。
「お父様、お母様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「いや、百が無事でなによりだよ」
「そもそも、私が面白がって秘密にしていたのが原因ですもの。貴女がこうして無事に帰って来てくれただけで十分よ」
「···お父様、お母様」
「それに、一番に感謝しなければならないのは彼だ」
「ええ、本当に」
両親の視線の先、反対側のベッドサイドには、私の右手首をしっかりと握りしめ、右手を焦凍さんの頬に添えている用な形でベッドに突っ伏して、安らかな寝息を立てている焦凍さんがおられます。
「彼、本当に百を大切に思っているのね」
「父としては、少々複雑なのだかね。お見合い、どうする?お断りしてもいいし、日を改めてでもいい、全ては百次第だよ」
「私は···」
両親から視線を外し、焦凍さんを見る。あの時、あまり明瞭ではない意識の中で口走ろうとした言葉を思い出し、顔から火が出たかの如く熱くなる。
「あらあら、口に出すまでもないですわね。本当に、サプライズなんて考えるんじゃありませんでしたわ」
「先方には、百の体調が戻り次第改めてと伝えておくよ」
「え?あ、あの、お父様お母様!焦凍さんはこのままに?!?」
私と焦凍さんを残して、部屋から出ていこうとされる両親に慌てて声をかける。今、二人っきりにされるのはなんというか気恥ずかしいというか。
「んん···スゥスゥ······」
「百の為に頑張ったのよ。彼にもご褒美がありませんとね」
「何かあれば、そこのボタンを押しなさい。待機している使用人が駆け付けてくれる様になっているから」
「燃え上がっちゃ、ダメよ」
「······っ!!あ、あ、あ、上がりませんわ!!!」
お母様の言葉の意味を理解した瞬間、体の隅々から火が上がる様でした。そんな様子の娘を、お母様は面白そうに、お父様は複雑な表情で見ながら退室していかれました。
「全く、実の娘をご褒美扱いなんて···」
「んっ、···んぁ···やおよろず···」
「あら、起きられましたか?焦凍さん···しょうとさん?」
焦凍さんがうっすらと目を開けられ、ゆっくりと体を起こして私の存在を認めると、今度はゆっくりとこちらに体ごと寄せられ、自然な動きで右手を私の左肩に持っていき、ベッドに押さえつける様にしっかりと体重をかけられました。右手も同様にベッドに押さえつけられて、寝ぼけ眼の焦凍さんの顔がどんどん近付いてくる。もう、鼻と鼻がくっ付きそうですわ!!
「八百万、お前は誰にも渡さない」
「しょうンンッ!!」
昔、お母様が言っていました。ファーストキスはレモンの味だと。お母様はウソつきでしたわ。
▼▼▼
「···それは本当なのか、オールマイト」
「ああ、証言も証拠も揃っている。残念な事だが、まず間違いないだろう」
「サムが···ヴィランをここに···」
「ああ、招き入れた者の一人だ。奴らの目的は、君が研究の途上で開発した個性増幅装置、その現物とデータ、そして開発者である君自身。それと引き換えに、協力者達は莫大な金を手に入れる予定だったらしい」
「なんと愚かな事を···」
夜遅く、重苦しい空気を纏って現れたトシから聞かされた事は、私を大いに打ちのめした。長年、苦楽を共にして沢山の研究や開発をしてきたサムが、まさかヴィランと通じていたなんて。
あの装置は、個性を抑制する機械の研究·開発の過程で生まれた物だ。試作はしたが、あれが世に出回った時のリスクを考えた上層部と私は、現物一つだけを残してデータ等は全て削除したんだ。サムを含めた数人は、最後まで反対していたが、まさかこんな事になるなんて。
「黒幕は、誰だ?まさか、AFOが復活?!」
「いや、それはない。奴は完全に消滅した。それに、奴が荷担した計画なら、あの程度の輩な訳がない」
「では、誰がこんな大それた事を」
「···近頃、トリガーの原材料を運ぶ密輸船の拿捕が増えているのは知っているかい、デイヴ」
「いや、初耳だ。しかし、トリガーか」
「ああ、君の装置と同じ効果を持つが、使用には倍以上のリスクを持つ違法薬だ。恐らく、どちらも黒幕は同一人物。何かを目的として、個性を強くする方法を集めているのは確かだ」
「···また、狙われる可能性があるな。すまないが、一つ頼み事を聞いてくれないか」
「他ならぬデイヴの頼みだ、何でも言ってくれ!!」
「なら···」
▼▼▼
「ンンんンぷはぁ!しょうムンア!!んん!」
感じるのは、焦凍さんの舌が私の口内を蹂躙していく感触だけ。唇が、舌が、触れ合う度に、甘く切ない衝撃が脳を貫いていく。
「やおよろず」
「しょうと···さん、ももと、よんで」
「···もも」
「っ!!」
押さえつけていた手が離れ、ゆっくりと胴体側へと下がっていく。病衣をはだけさせ、その隙間に侵入してくる。ヴィランに触れられた場所と同じ所を、焦凍さんの右手が触れている。嫌悪しか感じなかったあの時と違い、甘い痺れが下腹部を熱くさせる。
そして、その下腹部を覆う下着の中に、焦凍さんの左手が入ってくる。私の右手も、無意識の内に、焦凍さんの下腹部、ズボンを大きく押し上げて膨らんでいる場所へと伸びておりました。
「百」
「焦凍さん」
お母様、今日の百は、とことん悪い子の様です。もう、私は焦凍さんはおろか、私自身を止められません。
そして、焦凍さんの手が私の大事な所に触れそうになった瞬間、
「おイタはそこまでですよ、お嬢様」
ブレーカーの様にバツンと意識が落ちた。最後に聞いたあの声は、産まれた頃からお世話をしてくれている女中頭の···。
翌朝、ベッドの上で、悶え苦しみ暴れまわる全身真っ赤なお嬢様の姿があったとかなかったとか。
因みに、お相手の方は、なんて夢を見てんだと頭を抱えていたそうな。
R18判定されないよね(((^^;)
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