八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第四十一話「I·アイランドⅤ~響香は見た~」

 

 

 

 

「あ~、早くシャワー浴びて横になりたい」

「飯は···ルームサービス頼むか」

「たのむ~」

「部屋までもうすぐなんだ、シャンと歩け馬鹿」

 

 昨日、付き合いのある会社の方々に挨拶回りをしてたら、いきなりエンデヴァーから緊急出動かかって、何事かと思ったらヴィランが侵入してたらしい。

 ヴィランは、偶々居合わせた焦凍君や雪花ちゃん達とオールマイト達が捕まえたとの事で、私らは他に潜んでないか夜通し見回りを命じられた。それもさっき漸く終わって、荼毘と一緒にホテルに戻って来た所。

 

「あー、歯磨きしたのに、まだ苦味が残ってる気がする。顎は痛いし、胸思いっきり握ったでしょ、かっくん。朝見たら軽く跡残ってたんだからね」

「悪かったって言ってんだろうが!!」

「早く口直ししたい、朝御飯何かな?」

「バイキングって書いてあったろうが」

 

 部屋の扉を開けようとしたら、隣から宿泊客であろうカップルが出てきた。とっても見た事のある二人だった。

 

「「「「あっ!」」」」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ワリィ、待たせた」

「私も今来たとこだから、まぁでも、お昼はよろしく」

「遅刻した訳じゃないのに、そりゃないって耳朗さん」

「冗談だって、じゃあ行こっか」

 

 午前中まで、トラブル対応の為という名目で閉鎖されてたエキスポも、午後からまた無事に再開された。皆どうする?って聞いたら、百はお見合いのやり直しで、雪花は事情聴取とか色々、お茶子は緑谷とデート、発目さんはメリッサさんの計らいでアカデミーを見学するんだそう。三奈達は明日にならないと入れないし、一人で回るのもつまらないので、同じくボッチだった上鳴と回る事に。

 今日なら、二人で居る所を見られて茶化される事もないしね。

 

 

「で、耳朗はどこ行きたいんだ?」

「別にここってとこはないかな。昨日、回れなかった所中心でいいんじゃない?」

「んじゃそれで。捨ててくっから、ゴミ渡せよ」

「ん、ありがと」

 

 途中の露天で買った、二人分のホットドッグの包み紙やジュースのカップを持って行く上鳴。いつも峰田とかと馬鹿やってるけど、こういうトコはしっかりしてるんだよなぁ。モールで助けてくれた時も、予想より力あったし胸板もがっしりしてたし···って何思い出してんだ私。

 

「ウチも、お茶子達に当てられたか?」

「ただいま···顔赤いけどどした?もしかして、体調悪い?!熱?!」

「違うから気にすんな!!ほら、行くよ!!」

「あちょっ!耳朗さん?手ぇっ!!!」

 

 勘違いして、額に手を当てようとした上鳴の手を取って走り出してしまった。どうやら、百雪花お茶子の恋愛三人衆に、ウチも当てられている様である。

 

「ん?ちょいストップ、耳朗!」

「うわっ!い、いきなり何!?」

「あれあれ、見てみろよ」

 

 いきなり腰を抱かれて、建物の陰に連れていかれた。上鳴に促されて、建物の陰から覗き込んだ先には、しっかりと腕を絡めて歩く百と轟の姿があった。

 

「···えっと、あれ轟と八百万だよな?そっくりさんとかじゃねぇよな?」

「少なくとも、あんなきっちり紅白半々な髪色は他に居ないでしょ」

「だよなぁ」

 

 笑いあう姿はとても幸せそうで、思わず携帯で大連写したよ。んで、一番良い奴を女子皆に送る。すぐに返信があって、雪花三奈透から追跡·観察しろと指令が下った。

 

「······はぁ」

「···もしかして、追いかける流れ?」

「せーかい。上鳴は別に付き合わなくてもいいよ」

「そんな寂しい事言うなよ。ちょっと楽しそうだし、俺も付き合うって。ほら、行こうぜ」

「···言っとくけど、何も出ないかんね」

 

 そう言って、差し出された手を取った。

 

 

  ▼▼▼

 

 

「では、正式な発表は二人が卒業して以降という事で」

「ええ、それまでは、我々は関知していない、本人達の自由意思に任せているというスタンスでいる、という方向で」

「ああ。···不出来な息子の事、よろしくお願いします」

「こちらこそ、娘の事を、どうぞよろしくお願いいたします」

 

 そう言って、お互いのサインをした契約書を交わしあう夫達を見守る私達。

 改めて行われた焦凍と百さんのお見合いは、形式的な挨拶だけをして、二人をデートに送り出し、本当の目的だった両家の対応の擦り合わせに移りました。

 No.2である夫の事務所には、多くの企業がスポンサーとなってくれています。その中には、当然八百万家のライバル企業も含まれています。そういった企業から、焦凍のお嫁さんにという話も幾つかありました。私達とオールマイトの関係が世間に知られてからは、より一層そういう動きが活発になっていて、体育祭での二人を見られた方達が、どういう関係性なのか探りを入れられたり調査をされたりもあったそうです。

 下手に動いて、スポンサー企業同士でいざこざがあっても、我々にとって百害あって一利なしという事で、轟家と八百万家の話し合いの場を設けて足並みを揃えましょう、どう対処するつもりか意志疎通及び統一をしましょう、というのが今回お見合いを開いた真相でした。ここなら、下手なパパラッチに引っ掻き回される心配もありませんからね。

 

「これで、ウチとは将来的に家族となりますわね」

「ええ、ウチの子が見放されない限り、ですけど」

「大丈夫ですわ。百は、もう逃げられない位雁字搦めになってますもの」

「長男で分かってましたけど、ウチの男子共はどうも独占欲が強いようで。百さんには、苦労をかけます」

「あの子には、その位が丁度いいですわ」

 

 そう言って、オホホと笑う百さんのお母さんに釣られて私も笑みを浮かべる。

 

「そういえば、ウチの女中頭が言っていたのですけど、焦凍君、ウチの娘のファーストキスを、とても情熱的に奪ったらしいですわ。そのまま、二人で燃え上がりかけたとも」

「ウチの子が、本当に申し訳ありませんでした!!」

 

 初孫もすぐですわね~、何て呑気におっしゃられてるけど、後で焦凍にはお説教をしなければ。頭を下げながら、私は心に誓うのでした。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「っ(ゾクッ)」

「?どうかなさいましたか?焦凍さん」

「いや、なんでもねぇ」

 

 楽しかったデ、デ、デートも、もうそろそろというお時間。お母様達から、最後に必ず乗りなさいと言われていた巨大観覧車に乗り込んだ私達。

 何組か前に、お茶子さんと緑谷さんらしき二人組が乗り込んでらっしゃいましたわ。ホラーハウスから、緑谷さんの腕にしがみついて出てくるお茶子さんと遭遇した時に、小さくデートだと仰っていらっしゃったので、デートの最後に観覧車に乗るというのは定番なのでしょう。

 

「···今日は、楽しかったか?八百万」

「ええ、とても楽しかったですわ。焦凍さんは?」

「俺も···楽しかった」

 

 そう言って笑いあい、夕日に染まりかけている景色を眺める。楽しかったのは確かなのですが、実は一つ不満があります。焦凍さん、昨日のあの事を覚えてらっしゃらないというか夢だと思っておられるみたいで、私の事を百と呼んで下さらない事です。正直、アレを無かった事にされるのはオイと思います。夜中に目が覚めて、行き場を失った情動を慰めるのに結構かかったというのに。

 

「焦凍さん、このお見合いが進めば、私達は婚約者という事になります。焦凍さんは、それでよろしいのですか?」

 

 なので、素面でおられる今、もう一度あの言葉を言って頂こうと思います。

 

「···お前は、どうなんだ」

「私の事はいいですわ。貴方がどうなのかと問うているのです」

「······俺は···」

 

 焦凍さんは、口を閉ざされ外に視線を移されました。その瞳は、不安に揺れていました。仕方ありませんね、胸元を引っ張って差し上げましょう。

 

「では、私が他の殿方の所へ行っても良いのですか?」

「それは駄目だ!!」

「何故?私には、貴方以外にも多くの殿方から結婚の申し込みが来ておりますの。いずれ八百万を継ぐ者として、余り時間を無駄には出来ませんの」

「それは···許さない」

 

 私の唇を奪ったあの時と同じ色を宿した目が、私を射ぬいてきました。

 

「別に、焦凍さんに許されなくても構いませんわ。これは、私の問題ですもの」

「······そうだよな」

 

 え?そこで捨てられた子犬の様な顔をされるの?さっきまでの熱い眼差しは?!?

 

「···そろそろ天辺ですわね。焦凍さん、最後に貴方に問います。貴方は、私をどう思ってらっしゃるのですか?天辺を過ぎる前に、教えてください」

 

 こうまでお膳立てしてあげたのです、漢を見せて下さい、焦凍さん。ここでヘタレたら、もう知りませんわよ。

 

「···八百万、俺は······好きだ。俺はお前が好きだ。誰にも渡したくない。俺だけを見ていてほしい。俺と、結婚を前提にお付き合いしてください」

「お断りします」

「え?」

「昨日言いましたわよね、百と呼んで、と」

「···え?アレは夢じゃ···夢じゃなかった?俺はお前に···」

「あら、もう天辺ですわね」

「百!!俺はお前を愛している!!」

「私もですわ、焦凍さん」

 

 火照って真っ赤になっているであろう頬に、焦凍のひんやりした右手が添えられる。私は目をつむり、ちょっとだけ唇を付き出した。

 

 

 

「アレ!アレ!アレ!!絶対アレだよね!!!」

「お、おう!それ以外に見えねぇよ」

 

 こっからじゃ、百の後頭部と轟の頭頂部しか見えないけど、あの近さは絶対キスだ。そうに間違いない。

 

「うわ~、何か知り合いのああいう場面見ると、こっちが恥ずかしくなってくるね」

「そ、そうだな」

「···何?赤くなりすぎでしょ、アンタ」

「···あのですね、耳朗さん。ご自分の体勢を良く見て貰ってですね」

「体勢?」

 

 窓に手をついて、ガラスに額を押し付ける位のり出してる。それがどうしたと思ったら、予想よりも上鳴の顔が近かった。それこそ、鼻と鼻が擦れそうな位。体も、上鳴に押し付けているというか、ほぼほぼ抱き付いていると言っても過言ではない。

 

「···俺らもする?アレ」

「っ!!!!」

「ちょっ!冗談だって!暴れないで!!イヤホンジャックも駄目え!!!」

 

 降りる時、係員から生暖かい目で「余りはしゃがれませんように」と注意を受けた。回りの客も、クスクス何か言ってる。

 この後、パーティーにコイツと出なきゃなんだよ!クッソハズいんだけど!!

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「話は分かった、爆豪勝己。いいか、あの愚妹はあの馬鹿の影響を諸に受けてやがる。自覚してっかどうか分かんねぇが、アイツの中ではお前を手に入れる事は確定してる。アイツが、気に入った奴なら誰にでもそういう事する尻軽に見えるか?違うよな、お前だからした。んで、今アイツのハードルは確実に下がった。次は最後までノンストップになる可能性が高え。念の為にコイツを渡しとくが、ガチで覚悟しとけ。もうお前には、アイツの全てを受け入れるか、全てを拒絶するかの二択しか残されてねぇ、分かったな」

「···アンタの時は、どんなだったんだ」

「俺は一年の林間合宿の時だ。流石に、思春期の男子だからな、貯まるもんは貯まる。夜にこっそりと外に出て解消ってのが当時の暗黙の了解だったんだが、二日目の夜に、俺が外に出るのを自主連だと勘違いした萌は、こっそり後をついてきてやがった。当然、その場面をバッチリ見られた。んで、あろう事か"私がやってあげる!"何て言い出して、こっちもそういうのに興味がある健全な男だ。最初は手だけ、そっから日を追う毎に他の所でもってなって、六日目の夜にはめでたく童貞卒業だ」

「···」

「何かあったら、構わず俺に相談しろ。俺も通った道だ、アドバイスはしてやれる。一人で悩むんじゃねぇぞ、爆豪勝己」

「···っす」

「お前に渡したそれ、この島出るまで未開封である事を祈ってる」

 

 

「いいかい、初めての時はこっちでしっかりと誘導を···」

「フムフム、なるほど···」

 

 

 俺の祈りは、届かねぇかもな。強く生きろ、爆豪。

 

 

 




長くても四話位で終わらせる予定だったのに、島から出られねぇ。まだ書きたいシチュが一杯あるけど、早く合宿にも行かせたい。ノリと勢いも大概にせんといかんです。

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