「ぴぎゃーー!!」
「うぎゃーー!!」
「うにゃーー!!」
「すげぇ悲鳴だな」
「最初から乗り気ではなかったからな、耳朗は」
「お陰で、脅かしてくる場所が分かって怖さ半減だな」
「その分、耳朗が驚いてくれていると思おう」
前方から届く耳朗の悲鳴。俺と障子の前に出発した上鳴耳朗ペアなのだけど、本当に怖いのはダメらしく、定期的に脅かす側冥利に尽きる悲鳴を届けてくれている。
つか、あいつらの歩みが遅くて、準備出来てないから待ってってB組に言われる始末。そうなってしまえば、怖いもへったくれもない。
「あ、来た来た」
「君らを待ってんだ、頼みがあるんだけどいいか?」
「拳藤に骨抜?小大に何かあったのか?」
「それがさー」
道の真ん中に、拳藤と骨抜が立っていた。意識の無い様に見える小大を支えて。話を聞くと、小大が骨抜の個性で地面に潜って、いきなり顔を出して脅かすってのやったら、恐怖の限界を超えた耳朗が、小大にイヤホンジャックぶっ刺してしまったらしい。小大は気絶、攻撃した本人である耳朗も意識を失ったとの事。流石に、上鳴も気絶した女子二人は運べないから、次来るのが俺達だと伝えて、耳朗を抱えて行ったんだそうだ。
「唯の事、お願いできる?」
「そん位ならお安い御用だが、途中で目を覚まして戻るって言い出したらどうすりゃいい?」
「ライトも無いし、危ないからそのまま帰って待機しといてって伝えといて。こっちは、俺と拳藤で頑張るからって」
「分かった。耳朗には俺達からも叱っておく」
「うん、攻撃するのはヴィランだけにしてってね」
「じゃあ、乗っけてくれ」
「ほい、うちのお姫様をよろしく」
骨抜に、小大を背中に乗っけてもらい、障子に先導してもらって先へ進む俺達。今度、B組にお菓子の差し入れでもするかな。耳にかかる寝息と、背中に感じる鼓動を意識しないように、俺はどんなお菓子がいいか考えるのだった。
▼▼▼
「皆さん、凄い凝ってらっしゃいますね」
「ああ」
「私達も、頑張って脅かして差し上げなければいけませんね」
「ああ」
「次は、どなたがどんな事をされるのでしょうか」
「···百」
「はい、なんでしょうか、焦凍さん」
「今更だけど、俺で良かったのか?」
ラグドールのいる中間点を過ぎ、宿泊施設へ戻る道を進む私と焦凍さん。腕を組むのは初めてではありませんが、クラスの皆さんやB組の方々に見られていると思うと、まだちょっと恥ずかしいですわ。その恥ずかしさを紛らわせる為に、積極的に話掛けていたのですが、唐突な焦凍さんの問いに、私は足を止めてしまいました。
焦凍さんの、寂しそうな目が私を見下ろしています。
「···どういう意味ですか?」
「俺は、雄英に入ってから何も成せてねぇ。最初の体力テストで一位になっただけで、戦闘訓練で負け、USJで何も出来ず、体育祭じゃ、一位を取るって言っときながら同率三位。俺にあるのは、No.2の息子って肩書きだけだ。そんな俺が、本当にお前に相応しいのか、あの日からずっと、心の中で囁くんだ」
「焦凍さん···」
「あの時、百に言った言葉は俺の本心だ。俺は百が好きだ。でも、お前には俺何かよりもっと良い男がいるんじゃないか、ソイツが現れれば、百はソイツの所に行くんじゃないか、んな事ばっか考えちまう」
「···はぁ、今更何を仰るのかと思いましたら、その程度の事で」
「そ、その程度って」
「その程度はその程度ですわ」
やっぱり無かった事にしてくれとでも仰るのかと思えば、何とも可愛らしい事でお悩みになられていたのですね。
「次、いつあのホテルでの続きを求められるのか。私は、そればかり気にしておりましたわ。もし、合宿中に求められたら、私はどうするべきなのか、私はずっと悩んでおりましたのよ」
「···っ!」
私の言葉に、ボッと顔を赤くさせる焦凍さん。私は、組んでいる腕を外し、焦凍さんの頬を包むように両手を当てる。
「私はしっかりと言いましたよね、私もですと。もう一度、しっかりと言葉に致しましょう。轟焦凍さん、私は貴方を愛しております、私を貴方の一生のパートナーにして下さいますか?」
「百······俺と、ずっと一緒にいてくれ」
そして、ゆっくりと唇を近付けて、
「盛り上がってるトコ悪いけど、そういうのは誰も居ないトコでやってくれない?」
「キャッ!」「っ!」
いつの間にか、B組の取陰さんが真横に来て、ジトーっとした目で見ておられました。
「付き合い立てなのは分かってるよ、でもさ、時と場合を考えな、分かった?」
「はい、申し訳ありません」「···すまん」
「不満そうな顔しないでよ、轟。独り身で今の見せられる、こっちの身にもなりなさいよね。推薦入試で見た時とは偉い違いじゃないか。ほら、さっさと行って、私らの目の無い所で存分にイチャついてきなさい」
そう言って背中をドンと押され、バイバイと手を振る取陰さんに、再び頭を下げて道を歩き出す私と焦凍さん。再び組んだ腕は、さっきまでより密着してる様な気がします。
「あ~あ、私もアタックしてみるかなぁ」
桃色の空気が見える二人を見送る取陰切奈の頭には、気配り上手な骸骨顔が思い浮かんでいたとか。
▼▼▼
「むふ~、いいねーいいねー!私達が脅かす番が楽しみだよ!!」
「こういうの大好きだよね、葉隠さん」
相変わらず、顔は見えないけど服の動きと声音で、しっかりと感情表現する葉隠さん。B組の脅かしも、楽しんでいる風だけども、わざとらしくなく大袈裟に驚いている。
「まぁ、こんな個性だから。脅かしても、反応が分かんないからつまんないって言われてたからね」
「そうなんだ」
「わざとらしいって言葉も良く聞いたなぁ」
「そんなこと無いって、見てれば分かるのにね」
「その台詞は、あんまり言われた事ないなぁ」
葉隠さんは、嬉しそうに俺を中心に跳ねる様に回る。
「ねぇ、尾白君」
「何?暗いから、こけちゃうよ」
「もし、私が居なくなっても、見つけてくれる?」
彼女が、どんな顔で、その言葉を発したのかは分からない、どんな言葉を待ってるのかも分からない。でも、不思議と迷う事なく口が動いた。
「見つけるよ、例え透明でも、君はそこに居るんだから」
「···そっか。じゃあ、ちゃんと見つけてね」
懐中電灯に照らされた一瞬、葉隠さんの満面の笑みが見えた気がした。多分、気のせいだね。
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