八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第五十六話「八木雪花と水着と爆豪勝己」

 

 

 

 

「な、なぁ緑谷」

「何?円場君」

「八、八木さんて、居る?」

「あ~、八木さんなら、「テメェらと遊んでられるか、クソが」って言ってかっちゃん来てないって言ったら、「私の水着拝んでから行けーー!!!」って探しに行っちゃったよ」

「んなっ!!」

「デクく~ん、何しとる~ん?」

「あ、今行くよ、お茶子さん!じゃあ、僕は行くから」

「あ、ああ、楽しんでこいよ」

「···円場氏、ドンマイですぞ」

「···今日は、雨だな」

「いや、晴天だから」

 

 

 

 

『え?訓練してほしい?心意気は買うが、体を休めるのも大事だぜ、爆豪少年。それに、今の私はプライベートだ。久しぶりに、妻とゆっくりさせて貰っていいかな?』

「···ちっ」

 

 夫婦お揃いで、"釣り馬鹿"とプリントされた白Tを着て、釣竿やバケツを掲げられれば、唯我独尊を地で行く爆豪と言えど、引き下がらざるおえなかった。

 他の教員や外部講師に頼みに行っても、同様に断られた。乱波や今筋ならと思っていたが、出直してこいと摘まみ出されてしまった。しかも、担任から「自主練したら除籍な」と言われてしまい、本当に何も出来ない。

 皆の所に行く気は毛頭無く、時折小石を蹴っ飛ばしながら、当てもなく森の中を歩いている爆豪勝己君なのであった。良い感じの滝に出くわしたので、ここで昼まで寝てやろうかと考えていたら、

 

「見ぃーつーけーたーー!!!」

 

 ドドドドーー!!っという効果音を背負って、色んな意味で会いたくなかった八木雪花が、全力疾走してきていた。そして、ー部分をひっ掴んで真っ向唐竹割りの如く振り下ろしてきた。

 

「チェストーー!!!」

「危ねぇ!イメージじゃなくて実物とかふざけんな!!」

「避けんな!ツーショットの変わりに、吹出君に頼んで作ってもらった!!」

「んな下らねぇもんの為に、安売りしてんじゃねぇ!!」

「かっくんが素直に川遊び来てれば払わんですんだわ!!」

「知るかぁあ!!」

 

 飛来してくるドや!を個性で粉砕しようと思ったが、担任の除籍発言に使用を躊躇してしまった。

 

「隙だらけだーー!!」

「ごふっ!」

 

 腹に思いっきりタックルを食らい、二人して水の中にドボンした。

 

「ぶはぁ!かっくん確保ーー!!」

「ちっ、何しに来やがった。アイツらと遊んでりゃいいだろうが」

「決まってるでしょ、さぁ褒めろ!!」

 

 そう言って、羽織っていたパーカーをバッと脱ぎ去る八木雪花。その下には、純白のビキニに身を包んだ、峰田が居れば条件反射でルパンダイブしたであろう肢体が隠されていた。

 上はクロスデザインで、動く度にプルンと揺れるそれは、下手すれば溢れそうな位凶悪。下も、腰部分のリボンで可愛らしさをアピールしているつもりなのかもしれないが、そのリボンをほどいてしまいたくなる衝動に駆られる程の強烈さを誇っていた。

 裸とはまた違った衝撃に、爆豪少年は言葉を発する能力を喪失していた。

 

「何よ、黙ってないで何か言ってよ。そしたら、心置きなく遊びに行けるから」

「······行かせねぇよ」

「えっ?きゃあ!」

 

 上に乗っていた八木雪花を、逆に岸辺にうつ伏せで押し倒す爆豪勝己。

 

「言っただろうが、俺に相応しいのはテメェだって。他の奴らに見られてんじゃねぇよ」

「その発言が意味わからんて。褒めるなら素直に褒めろ、言いたい事は分かりやすく言え、馬鹿。つか、早くどけ!」

「分かんねぇなら、体に刻んでやるよ、雪花」

「かっくんっ、痛っ!」

 

 八木雪花を逃げられないように押さえつけ、首筋に吸い付くように唇を寄せる爆豪勝己。彼が唇を離した後の彼女の皮膚には、くっきりと赤い内出血が出来上がっていた。

 

「なっ!ちょっ!まさか、キスマーク付けた!?虫に刺されたで誤魔化してくれる皆じゃないよ!!」

 

 現に、轟焦凍の愛を体中に刻まれた八百万百の肌は、全然虫刺されに見えなかったのだから。

 

「···ねぇ、どういうつもり?」

「···ちっ、だからテメェと顔会わせたくなかったんだ。会ったら、前みてぇに情動に流されちまうって分かってたからな」

「お尻に当たってるそれ、凄く熱いもんね。まさか、合宿中一度も発散してないとか言わないよね?」

「···悪いかよ」

「ああもう!我慢のし過ぎは体に良くないっての、馬鹿。されんのが恥ずかしいなら、せめて自己処理位しなさいよ」

「うるせぇ」

「ねぇ、かっくん」

「何だよ、雪花」

「これの意味、ちゃんと言葉にしてよ。ちゃんと、分かりやすく」

「······俺は、テメェにどうしようもなく惹かれてんだよ。テメェを誰にも渡したくねぇ位惹かれてんだよ。分かったかよ、雪花」

「······はぁ、そこで「好きだ」の言葉が出てこないのがかっくんだよねぇ。ねぇ、かっくん。これについては許してあげるから、変わりに、次はここにちょうだい」

 

 勝己に見える様に身を捩り、自身の唇に指を当てる雪花。一瞬たじろいだ勝己であったが、雪花の顎に手を添え、唇を近付ける。

 

「私は、かっくんが好きだよ。私の全てを捧げても良いぐらい」

「···端からテメェは俺のもんだ」

 

 そうして、二人の距離は0となった。

 

 

 

 

「雪花ちゃん、戻ってこないね」

「もしかして、爆豪とよろしくやってるのかもよ?ヤオモモに当てられて」

「まさか···ね」

「まぁ、お昼まで戻って来なかったら、問い詰めればいいんじゃん」

「そうね、私達は私達で楽しみましょう」

 

 

 

 俺にとって、オールマイト以外の人間は有象無象だった。出久は、俺を苛立たせる存在ってだけで、俺の道を阻む存在とは思ってなかった。

 でも、ヘドロ事件で出久に助けられて、入試で俺と同等の強さを持って、俺と同じ夢を追いかける奴に出会って、俺の中にある何かが揺らいだ。

 体力テストで、半分野郎、轟の凄さに圧倒されて、コイツには敵わねぇって打ちのめされてた所に、出久とオールマイトの関係を知ってしまった。あのクソナードが、オールマイトに認められて、個性を受け継いだなんて、じゃあ俺は何なんだって腸煮え繰り返った。

 

「んんっ!んくっ、ゴクッ···どう?バーニンさんから色々教わったんだよ」

「変な、知識仕入れてんじゃ、ねぇよ」

 

 雪花、そしてオールマイトと話をして稽古つけて貰って、出久と初めて殴りあって、雪花の胸に抱かれて、少しは霧が晴れて地に足着いた気持ちになった。

 

「かっくんて、結構胸好きだよね、いっ!噛むな、馬鹿」

「テメェが余計な事言うからだ」

 

 USJで、トムラの野郎とやり合って、今までオールマイトっていうとてつもない壁だけだったのが、まずはコイツを越えるっていう短期目標が出来た。地に着いた足の踏み出し場所が分かった気がした。

 

「んっ!ダメ!そこは!んあっ!ダメダメっ!!イッ!!!」

「···甘いんだな」

 

 体育祭。俺が勝つんだと、絶対誰にも負けねぇって気持ちで臨んだ。でも、雪花に負けた。最後に勝敗を分けたのは、ただ勝つという事しか考えてなかった俺と、勝って成したい事があった雪花との意識の差だったんだろう。

 

「うわぁ、全部入ったらここまで届くの!?人体の神秘だよ」

「本当にいいんか?」

「今さら、ここまでやってお預けなんてしないでよ。というか、ゴム一個しかないけど、一回で終われる?」

「···」

「···萌さんに言われて、合宿中、ピル、飲んでるの、私」

 

 I·アイランドのホテル。俺は、本当に一人一部屋で申込用紙に書いた。ただ、予備の用紙に、あの部屋の予約を書いただけだ。それが、母親に見つかりそうになって、慌てて申込封筒の中に入れてた用紙と入れ替えて隠したら、忘れてそのまま投函してしまっただけだ。

 それが、あんな事になるとは思わなかった。俺は、もうちょっと辛抱強いし、流されねぇと思ってた。

 

「んぐ、痛っ!ふ···っとい···」

「大丈夫かよ」

「ん、だい···じょうぶ···だから、やっ···ちゃって」

「力、少しでも抜いとけや」

「うあああっ!!!」

 

 俺が雪花のお荷物だ、そうトムラに言われた時、納得しちまった自分が居たのは確かだ。でも、それ以上にコイツを守ってやる存在になりたかった。青山とかいうクソ気障野郎やアイツの後ろしか見てねぇ奴らに渡すなんて死んでも御免だ。

 でも、まだ俺は強くねぇ。コイツを守ってやれる位強くなってねぇ。だけど、もう後には退けねぇし、退かねぇ。俺が雪花を護って、勝っていくんだ。

 

「っ!っ!っ!!」

「もう···限界だ」

「いっ!いよっ!来てっ!!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「「「「「「雪花(ちゃん·さん)、それ···」」」」」」

「にゃはは~、V?」

「人の事は言えませんが、随分激しかった様ですわね」

 

 自由時間も終わりに近付いてきましたので、宿舎に戻ってきた私達を、水着のままぐったりとしている雪花さんが出迎え?て下さいました。

 私達が注目しているのはその背中。もう至る所に鬱血した痕。焦凍さんもアレでしたけど、爆豪さんも独占欲強めなのですね。

 

「とりあえず、もうすぐお昼ですから、着替えた方がいいと思いますわ」

「うん、分かってるんだけどね···かっくん凄すぎて、腰が抜けて動けないの」

「···何回されたんですの?」

「······八」

「は、八!···私、三回ですら大分消耗しましたのに···」

「因みに、入れる前に三回出してる」

「···よく生きておられましたわね」

「うん、頑丈に産んでくれた両親に感謝だよ、ガチで」

「すぐに動けるようにはならないでしょうから、皆さんで着替えさせてあげましょう」

「ありがと~、ヤオママ~」

 

 

 

 オールマイトの宿泊部屋に、八木俊典と八木冬花が並んで座り、机を挟んだ向かい側に、深く土下座する爆豪勝己の姿があった。

 

「···娘が君を受け入れたのなら、私が言う事ははない。君達が未成年であるという事を忘れず、最低限の節度を守っている間は、娘と君の関係に口を出すつもりもない。初めてで抱き潰してしまったのも、次からは自重しなさいとしか言えない。まぁ、要するに、君達の好きにしなさいという事だ」

「あの子には、私達という存在が今後も付いて回ります。特に、No.1の娘という肩書きは、纏わりついてどうしようもないでしょう。あの子の横に立つという事は、それに貴方も巻き込まれるという事です」

「それは、君の想像を遥かに越える重荷になる事もあるだろう。君のプライドの高さは承知しているよ、でも、例えそれが些細な事でも、大人に相談してほしい。君の為でもあるが、娘の為でもあるんだ」

「後は、当然の事ですし、心配はしていませんが、学業を疎かにしない事です。私達が、今貴方に言いたい事はそれ位ですね」

「はい」

「父親として、僕はあの子にしてあげた事なんて殆どない。そんな僕が言えた義理じゃないけど、娘を頼むよ」

「はい!」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「皆、一週間という短い期間だったけど、良く頑張ったわね。来年も、誰一人欠ける事なくここに来てくれる事を願ってるわ」

「ついでに、仮免持ってやってこーい!!」

「我ーズブートキャンプpart2でお出迎えしてやろう」

「合宿が終わったからって、ダラダラするんじゃないわよキティ達!!」

「「「「一週間、お世話になりました!!!」」」」

 

 プッシーキャッツにお礼と別れを告げ、一週間汗と涙が染み込んだ合宿所を後にした私達。未だ回復の兆しを見せず個性で立ってた私は、皆(女子陣)にかっくんと共に最後尾へ押し込められ、かっくんの膝を枕に横になっております。

 

「···悪かったな」

「···次からは、回数セーブしよっか」

「······」

「悩むな、毎回だと私持たんて」

「·········努力する」

 

 長い葛藤だなぁ、そんなに私の体は良かったのかい?まぁ、女冥利に尽きるけども。そんな事を思いながら、落ちてくる瞼に抗う事なく、夢の中へと意識を旅立たせた。

 

 

 こうして、私達の林間合宿は終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 




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