八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第六十話「八木雪花と仮免試験·Ⅳ」

 

 

 

 

『諸君、一次試験お疲れ様。これより、二次試験の内容について説明を行う』

「かっくん、あの~、離してもらっていい?」

「黙って聞いてろ」

「···はい」

 

 私、八木雪花は、一次試験を通過した人達で溢れる控え室で、壁の一角に備え付けられた、巨大スクリーンに映る筒美さんの話を聞いている。かっくんの膝の上で。

 こ奴、周囲の目を気にすることなく、私を膝に乗っけてお腹に腕回して、しっかりガッチリホールドしてやがるのよ。通過者が入ってくる度に、えっ?て顔で見てくるから、流石の私も恥ずかしいですわ。ニヤニヤした顔で見てくる三奈や透の立場で居たい。

 

『諸君らが一次試験を戦った五つのエリアは、見ての通り何かの要因で崩壊してしまっている。君達はバイスタンダーとして救助活動を行ってもらう。開始位置は、こちらでランダムに選ばせてもらった。

 救助対象者は、HUCの方々が現地に入っている。その方々と我々による減点方式で、試験終了時に一定の点数を保持していた者を合格となる』

 

 うわ~、エグいな~。個性も分からない相手と一緒に、災害地域で救助活動ですか。私ら、基礎的な訓練は受けてるけど、経験値的な物は圧倒的に不足してるからなぁ。HUCの方々のお眼鏡に敵うかどうか。

 

「かっくん、要救助者に暴言なんて吐かないでよ」

「···わあってるよ」

「後、ちゃんと皆と協力して救助に参加すること」

「···ああ」

「多分、ヴィラン役も用意されてるだろうけど、それ探すのに集中しないこと」

「···ちっ、分かってるっての」

「······心配だなぁ。まず、かっくん探しからしようか?」

「要らねぇよ、テメェはテメェの心配してろや」

「そう、ほら、説明も終わったんだから解放しなさいな」

 

 かっくんの腕をペシペシと叩くと、名残惜しげに渋々と腕を外したかっくん。まぁ、お互い合格した時には、色々と期待してるからね。

 

「受験番号1038番、M-6だ。外に地図が掲載されているので確認し、開始時間までに配置につくように」

「はい、了解です」

 

 さ~て、どこかなぁ~。

 

 

 

『敵による大規模破壊が発生!規模は○○市全域、建物倒壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく、救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでは、救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮をとり行う。一人でも多くの命を救い出すこと!!!』

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「いでぇよぉおおお!!たすげでよぉおおお!!」

 

 俺の今回の担当場所は山岳エリア。下手に動かすとマズイ岩の隙間に生き埋め、右足が挟まれ骨折、頭部からの多量出血、その他小さな裂傷って設定だ。

 む、人の気配。さぁ、来いよ受験者、採点してやるぞ。

 

「要救助者はこの中だよ、雪花」

「了解。響香はそのまま捜索、透は光をお願い」

 

 む、岩が動き出したな。音からするに、きちんと周囲が崩れないようにしているな。とある岩を動かすと、連鎖的に落石が起こる様にしてあったのだけど、まずはよしだな。

 

「居た!要救助者発見!坊や、もう大丈夫!!何故って?私が来たからさ!!」

 

 広がった隙間から覗き込む影、女子か。オールマイトの真似をした声掛けをする奴らを沢山見てきたが、ソイツらと違って、この子の声には絶対的な自信と安心感がある。

 

「透、もう少し上を照らして!頭部出血を確認!応急処置の準備をお願いします!!よく頑張ったね、坊や。さぁ、お姉ちゃんと一緒に、こんな暗い所とはおさらばしようね」

 

 声にも表情にも震えはない。大抵、自分も生き埋めにならないか等の不安で、声や表情等に不安が表れるものだが。体が少しヒンヤリするのは、彼女の個性か。殆ど負荷もなく宙に浮かせるとは、ふむ、これがオールマイトの娘···か。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「自分、やっぱアンタみたいな野蛮な男に、彼女は任せられないっす!だから、アンタよりいい成績で合格して、彼女に選んで貰うっすぅぅううう!!!」

「···ふざけてんのか、アイツは」

「あの···かっちゃん」

「ほっとけ、爆豪。それよりも、さっさと救助に行くぞ」

「俺に命令すんな!クソ半分野郎!!」

 

 スタートと同時に、よく分からない事を言って飛んでいった夜嵐。雪花に告白したと聞いたが、アイツあんなキャラだっのか。

 

「ひっひっ、うあ゛あ゛あ゛ん!ひっ、お、お爺ちゃんが、ひっ、潰されてぇ!!」

「ええ!大変だ!!どっ「アホかクソデク!頭から血ぃ流してんが見えねぇのか?!呼吸も可笑しいだろうが!!おい、半分野郎!氷解かして布か何か濡らせや!!」

「轟君、このガーゼを」

「ああ、分かった」

 

 泣き叫ぶ子供を発見して、緑谷がいち早く駆けつけて声を掛けたが、直ぐ様爆豪が押し退けて子供の様子を見る。俺は、言われた通りに、緑谷から渡されたガーゼを濡らして爆豪に渡す。

 

「お前の爺さんは、何処にいる?」

「ひっ、ひっ、あ、あっち」

「向こうに避難所があるんだけど、歩いて行けそう?」

「あ、あ、ひっ、足が痛くて、ひっ、動けないよーー!」

 

 濡らしたガーゼで血を拭い、手早く包帯を巻いていく爆豪。応急処置は爆豪に任せ、俺と緑谷て必要な事を聞いていく。しかし爆豪、舌打ちはどうかと思うぞ。

 

「ちっ、いいか坊主!テメェの爺は俺がキッチリ助けてやる。それまで大人しく待ってろや。行くぞ、テメェら」

「ちょっと待て。君、動きや対処は悪くないけど、もうちょっと安心させる言葉遣いをしなさい。私達は、怖くて痛くて不安でたまらないんだから。まぉ、"ええ!大変だ!!"何て減点対象の論外よりマシですけど」

「うっ···」

「けっ、分かってるよ」

「居たぞ、要救助者発見!」

「···君は、もうちょっと空気読もうか」

 

 救助活動していただけなんだが、何故そんな目で見てくるんだ?

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「ヴィラン連合だ!!」

 

『災害現場に敵が現れた。現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ、救助を続行してください』

「救護所が狙われるのは予想しておりましたが、まさかこんな近くに出現されるとは」

 

 再び展開された控え室を、臨時の救護所と設定されていたので、簡易ベッドや毛布、ガーゼや包帯等を同じ創造系の方々と用意しておりましたら、すぐそこの壁が吹き飛びました。

 そこから、ペストマスクの男性に率いられてゾロゾロと入ってこられました。

 

「皆を後ろに避難させろ!奥へ!ヴィランから出来るだけ距離をおけ!!」

 

 傑物高校の真堂さんが一人、ヴィランに向かって駆けていく。一次試験同様、地面を崩壊させて足止めを試みる様です。

 

「出来れば、女の子が良かったんだがなぁ。殿するには力不足だよ、君」

「ぐあっ!」

「ヨー君!!」

 

 しかし、ペストマスクに踏み潰されてしまわれました。マズイですわ、戦闘系の個性を持った方々は出払っていません。ここは、少しでも時間を稼がなければ。

 

「すみません、この方をお願いします!クリエティ·アームドモード!スケルトン展開!!真堂さん!!」

 

 体育祭で常闇さんに負けた時から、色んな人達に相談して生み出した、強化外骨格となるパワードスーツに、多数の装備を装着させた戦闘用装備。欠点は、展開するだけで2/3近くの脂質を使ってしまう事。それによって、経戦能力が低い事。

 

「しかし、仲間を見捨てる訳には参りません!!」

 

 ペストマスクに向かって、右腕の破城槌を振りかぶります。肘のブーストによって、緑谷さんの5%相当の威力が出ますわ。倒せなくとも、真堂さんを解放する位は。

 

「おお、カワイ子ちゃん発見!やっぱ、触るならカワイ子ちゃんだよなぁ!!」

 

 何ですかこの方は!私を見て気色悪い事を。正直、お近づきになりたくない方ですわね。

 

「素なのか演技なのか分かりませんが、遠慮は無しですわっ!!」

「ハッハッハッ、少し元気が入ったぞー!」

 

 ペストマスクの拳と、破城槌がぶつかります。先程よりも、一回り体が膨らんで、まるで個性を使った砂藤さん様ですわ。

 

「おお!中々のパワーだ!」

「くっ!真堂さん!!」

「だ、駄目だ、力が···抜けて···」

 

 ぶつかった衝撃で、真堂さんを踏みつけている足を退かす事は出来ましたが、真堂さんは動くことが出来ない様ですわ。

 

「中瓶さん、受け止めて下さい!」

「ヨー君!!」

 

 真堂さんを挟んで手四つ。足にアームを創造して、真堂さんを掴んで中瓶さんに向かって投げる。真堂さんに気を付けながら戦うなんて余裕は、私にはありませんので。

 

「ちょっと元気がなくなったぞー。しっかり触らせろよ」

「ご遠慮しますわ!!」

 

 幾ら試験といえど、セクハラで訴えますわよ!

 

「セメントガン、発射!!すぐ固まるぜ!」

「くっ!」

「おっと、逃がさないぜ、カワイ子ちゃん」

 

 くっ、セメントで身動き出来なくなる前に、どうにかしなければなりませんのに、ペストマスクの手が離れませんわ。

 

「アーマーパージ!!やああ!!」

「そりゃ、悪手だぜ、カワイ子ちゃん」

「あぐっ!」

 

 せめて、ペストマスクだけでもと思い、外骨格を飛び出して、胸元にスタンガンを創造して抱き付く。しかし、絶縁体て出来ているのか、全く効いておりません。逆に、鯖折りの体勢を取られてしまいました。

 抵抗しようにも、何故か、力が抜けていきます。逆に、ペストマスクの身体がドンドン大きくなっていきます。まさか、この人の個性は···。

 

「あなた、わたくしの···」

「想像通り、俺の個性は"活力吸収"。人に触れた状態で吸息する事で、相手から活力を奪う事が出来る個性だ。」

「く、わたくしとしたことが···」

「吸い尽くさせて貰うぜ、カワイ子ちゃん」

「しょうとさん···」

 

 

「ウチの従兄弟の嫁に何しとんじゃ貴様ーー!!!」

 

 

 

 




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