八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第六十一話「八木雪花と仮免試験·Ⅴ」

 

 

 

 

「貴方は、ジェントル·クリミナルですね」

「おや、これでも一応変装していたのだがね。当てられるとは思わなかったよ、少年」

「誰だ、緑谷」

「紳士ヒーロー"ジェントル·クリミナル"。個性は、無機物に弾性を付与する個性。元々、ヴィジランテとして活動されていた人で、自身の活躍をネットに動画として上げていたんだ。6年前に、八木先生が推薦者となって特免制度を使い、翌年には正式にプロヒーローとしてデビュー。ヒーロー公安委員会広報という肩書きで、現在も動画投稿をしながらヒーロー活動しているんだ。実力も、八木先生が太鼓判を押すって言えば、かっちゃんなら想像出来るよね。空気にさえ作用する個性で、攻撃防御移動、全てにおいて隙がないんだ」

「へっ、腕が鳴るじゃねぇか!」

「そんな事言ってる場合じゃないよ。ここで、この人を止めなきゃ、確実に凄い被害が出る。少なくとも、救助と避難が終わるまで、耐えなきゃいけないんだ」

「アホか!ぶっ倒しゃいいだけだろうが!!」

「周りの奴らは俺がやる。ソイツは任せたぞ」

「フフフ、掛かってきたまえ」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「おいコラクソヴィラン!ヴィラン役だからって、やっていい事と悪い事あんだろが、ああん!!」

「せっかさん···」

 

 救護所に居た百が、ヴィランのリーダー格に抱き締められてグッタリしていく所が見えたので、速攻で目の前の結晶を出すヴィランをぶっ倒しかっ飛んで来た。アームドモードを使ったとて、あそこまで消耗する事はない筈。確実にアイツの個性だ。

 

「来たか、八木雪花。このカワイ子ちゃんの活力は美味かったぞ」

「あぐっああああ!!!」

「百!!」

 

 また一回り大きくなった体で、より百を締め付ける。百の絶叫、ガチで死にたいらしいな。役だからって容赦しない、情状酌量の余地なく死刑執行してやるよ。

 

「おっと、動くなよ。下手に動くと、このカワイ子ちゃんの体がバッキバキになっちゃうかもしれないぞ?」

「だろうね。だから、上手に動かすよ」

「あ?ぐおっ!!」

 

 上空に待機させていた雪拳を、急降下させて奴の背中にぶつける。百との間に出来た隙間に雪を生み、引っこ抜いてこっちまで運ぶ。

 

「周りの奴らも同罪だ。キチンとヴィランとして葬ってあげるから、そこ動くんじゃねぇぞ」

「ハッハッハッ、テメェも奪って晒してやるよ、オールマイトの娘!!」

「やってみろや、クソヴィラン!!」

 

 百を救護所のベッドに寝かせ、10体の雪像と雪拳を展開して構える。あちらも、ペストマスクはお父さん以上に巨大化して拳を構える。他の奴らは、右手の大砲的な奴をこちらに向けている。救助者を追う気はなく、あくまでも私と戦うつもりのようだ、追う手間が省けてありがたい。

 

「43対11、ハンデとしちゃ丁度良いよね!!」

 

 取り敢えず、雪像を突撃させる。

 ペストマスクの個性は、恐らく他人から吸い取って自身を強化する系。百を鯖折りしてから、急激に身体を肥大化させてたから、発動条件に接触は含まれる。それが、素肌なのか服越しでも良いのか、個性で出した物も対象なのか。先ずは確かめさせて貰うよ。

 

「へ、触るなら生身で来いやぁあ!!」

「そういうのは、そういうお店で金払ってやって貰え!!」

「じゃあ、こっちから行ってやるよ」

「誰も頼んでないっての、変態!!」

 

 腕やら足やらに雪像を抱き付かせても、体力とか気力とか的な何かが抜けていく感じはない。少なくとも、雪像を通して抜かれる事は無さそうだ。

 

「ツレねぇ事言うなって。抵抗しなきゃ、優しく触ってやるからよぉ」

「触られてたまるか、このど変態!!」

 

 10体の雪像に纏わりつかれても、平然と撥ね飛ばして来る。肥大化してるのは伊達じゃないね。単純なパワーなら、お父さんの普通のパンチ一歩手前クラス。やっぱり、自分でやりあうしかないね。でもヤだな~、近付きたくない。

 

「まぁ、百の仇だ。四の五の言っていられない」

「テメェの活力はどんな味だぁ?!」

「ひんやりしてんじゃないの?!DO変態!!」

 

 奴の拳と雪拳がかち合う。雪拳に破損無し、吸引された感覚無し。なら、このまま押しきる。

 

「雪拳阿修羅!」

 

 二対の雪拳を追加で展開。奴に攻撃の隙を与えず、個性がガス欠になるまで殴り続ける。

 

「チィッ、こりゃたまらねぇな」

「今降伏するなら、腹パン10回で済ましてあげるけど?」

「なら、一回ハグしてから白旗上げようかな」

「私の身体は、かっくんだけのもんだ!!」

 

 殴り続けてんのに、防御状態でジリジリ近付いてくる。もしかして、同じヴィラン連合の乱波さん達とかに殴られ馴れてる?!

 

「さぁ、触らせろや!!!」

「気色悪い!!一回振り出しに戻れ!!」

 

 雪拳同時殴りと吹雪をぶつける事で後退りさせる。マジでタフだね。

 

 ポツンッ

 

 どうするか考えていた私の耳に、予想外の音が届いた。それは、水滴が落ちる音。足元。複数ヵ所。そう、展開している雪拳から水滴が落ちている。

 ペストマスクと取り巻きの間に立たせている雪像も、解け始めている。直そうとしても、雪が作ったそばから水になっていく。

 

「······」

「漸く気付いたか、オールマイトの娘」

「···まさか、最初っから私狙いで」

「オールマイトの娘だぜ?!最大の障害として対策立てねぇ訳無いだろ?」

「試験で、特定の受験者狙い打ちにするとか、公平性保てちなさいよ」

「現場に出りゃ、そんなの通用しないって。そら、これでもまだ雪が作れるか?!」

 

 空から、地面から、熱波が全てを解かし蒸発させていく。空気中の水分が消失していく。炎で直接じゃなく、温度操作で気付かれ難くするとか、手が込みすぎ。取り巻きが動かないのも、個性使用に集中してたからか。真夏の暑さが無ければ、もしかしたら気付けたかもしれないのに。

 

「さぁ、大人しく触らせろよ」

「ブレなさ過ぎでしょ、変態大人。だが、断る」

「雪の無いお前に、これ以上何が出来るんだ?肉弾戦するなら、お前の想像通り、活力吸われて本当に何も出来なくなるだけだぞ?」

「オールマイトの娘舐めんな、クソヴィラン」

「なら、抱き壊して、お前の活力で全てを壊してやるとするか」

 

 雪使えなくされる程度なら、焦凍とかによくやられてたけど、直接殴れないのは痛すぎる。試験だからって、油断があったね、どうしようか、

 

「雪花さん!そのヴィランは、接触と吸息です!」

「百?!OK、そう言うことなら」

「分かった所で何が出来る」

「アンタを、殴る事さ!!」

 

 タイミングを見計らい、懐に飛び込んで鳩尾に一発。く、早すぎた。少し持ってかれた。でも、次は完璧に合わせる。

 

「テメェ、俺の呼吸を」

「マスクの中は、湿気たっぷりだもんね」

「ち、だが、それもいつまで持つかな」

「アンタが倒れるまでさ!!」

 

 それか、援護に誰か来てくれるまで。出来れば、かっくんが良いよなぁ。ヒーローなら、ヒロインのピンチに颯爽と現れてこそでしょ。

 あ、でも、今服の下、汗でムレムレだから恥ずかしいなぁ。やっぱ、焦凍辺りでよろしく。

 

 

 

    ▼▼▼

 

 

 

「ん?」

「よそ見してんじゃねぇ!半分野郎!!」

「どうかしたの?轟君」

「いや、誰かに呼ばれた気がしただけだ。すまねぇ、集中する

「いやはや、その歳で中々。ここまで消耗したのは久しぶりですよ」

「映像でも凄かったけど、実物はもっと凄い。流石、ジェントル·クリミナル」

「感心してる場合か、緑谷」

「さっきチラッと見えたが、雪花の奴苦戦してやがる。さっさとぶっ倒して助けに行くんだよ!!」

「あ、かっちゃん!!」

「ふふ、まだまだ、紅茶は漸く飲み頃ですよ」

 

 

 

 

 




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