八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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第六十二話「八木雪花と仮免試験·Ⅵ」

 

 

 

 

「救護所の方、ヤバくない?」

「何人か、応援に行かせるか?」

「さっき、八木雪花が飛んでくのを見たわ」

「な~んだ、オールマイトの娘が行ったならもう大丈夫だろ」

「そうだな、俺達はここに集中しよう」

 

「八木雪花が行ったなら、俺らが行っても足手まといになるだけさ」

「そうよね、オールマイトの娘だもんね」

「よし、俺らは別の場所の援護に行くぞ!」

 

「あんだけ強かったんだ、何もせずに見てるだけで終わるだけ。行っても無駄無駄」

「それで減点されて、仮免落ちましたなんてなったら、堪ったもんじゃねぇよな」

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、暑い···」

「温度操作、熱風、温度上昇、熱移動、水素操作、水素収集、水吸収。どうだ、精鋭達による対八木雪花封殺陣の完成度は」

「何で···ぜぇ···アンタらは平気なのよ···ぜぇ」

「このスーツは、外気温80℃までなら快適に過ごせる特別製だからな」

「用意周到すぎる···はぁ、はぁ」

 

 目がチカチカする、喉が粘つく、汗が止まった、服の下が何かジャリジャリする。

 息を吸う間は回避に専念、吐いてるタイミングで膝裏等の関節を狙って攻撃。素手な上に、脱水やら熱中症で不調を訴える体では、中々骨が折れる作業ですよ。別に、個性が使えなくされるのは、叔父さんや焦凍達にされた事あるからそこまでだけど、迂闊に触れる事さえ危険なのは、余計に神経使って疲労感が半端ないですの事よ。

 

「そろそろ限界か?奪った活力も減ってきたしな、触らせろよ八木雪花」

「···それしか言えない訳?ブレなさ過ぎ」

 

 今、何か吸われたら命の危機にならない?まぁ、ここが本当の現場なら確実に命の危機だけどさ。

 

「もうジリ貧だろ?諦めて触られろよ」

「勝手に決めんな、変態ヴィラン」

「そうかい。じゃあ、動けなくしてから、存分に触らせて貰うとしようか」

「っ!しまっ!!」

 

 ペストマスクが空高く跳び上がり、それを視線で追ってしまった。奴の体で、取り巻きの射線を遮っていたというのに、呑気に上見上げるとか、呆けてんな自分。左足に掛かったセメントや、前方から飛来するセメントを見ながら、迂闊過ぎる自分を殴りたくなる。

 

「ハッハッハッ、避けてみろや!!」

「くそっ、重い!」

 

 その場から離れようにも、着弾の衝撃やへばりついて固まったセメントの重さ、地面と引っ付いた奴をひっぺがすのに時間を取られて、もうペストマスクはすぐそこまで来ていた。

 

「やらせませんわ!」

「ウラビティシュート!!」

 

 突如飛来した砲弾と瓦礫が、ペストマスクに直撃する。吹き飛ばされた奴は、後ろの取り巻きを巻き込みながら転がっていく。

 

「ごめん、遅くなった!雪花ちゃん、大丈夫?!」

「雪花さんは、やらせませんわ」

「ナイスタイミング。本当に、救世主だよ二人とも」

 

 私メタの高温無湿空間が消失していく。直ぐ様セメントを剥がして、体から大砲生やした百の所まで下がる。お茶子も、新装備のワイヤーフックを使って側に着地。顔色がちょっと悪いかな。まぁ、瓦礫の撤去とかで引っ張りだこだったんだろうね。

 

「お茶子一人?」

「他の皆も、今向かってきてる。雪花ちゃんが苦戦しとったから、私だけ先に来た」

「ありがたいありがたい。じゃあ、百を連れて一旦合流しよう。あのヴィラン、消耗した私達抱えた状態で戦うのは、万全のお茶子でも相性悪いから」

「分かった。じゃあ、浮かすよ」

 

 

「おいおい、折角カワイ子ちゃんが増えたのに、どこにも行くなよ。お前ら纏めて触らせろ」

 

 

「ふぐっ!」「がはっ!」「ぎっ!!」

 

 一瞬だった。さっきよりも、三倍以上大きくなったペストマスクが、砂煙を突き破ったと思ったら、私は頭を握り持ち上げられ、百は背中を踏まれ、お茶子は腕ごと胴体を握り絞められた。コイツ、仲間の活力吸ったんだな。ここまで能力上がるなんて、強化の上昇量を見誤った。

 

「漸くだ、全員指一本動かせない位吸ってやるよ」

「つあ···は···なせ······へ···んた···」

「っ~~!!」

「ふぅっ!!!」

 

 体の中から、ごっそりと抜け出ていく感覚。それに反比例して、加速度的に膨らんでいく奴の体。

 

「すげぇな、流石オールマイトの娘。あんだけ消耗してたのに、まだこんなに活力が残ってんのか。おっと、こいつらはこれ以上吸うとやべぇか」

「ヒュー···ヒュー···」「あ···あ······」

「もも···おちゃこ···くそっ·······たれ·····」

 

 ヤバい、もう···いしきが······、

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

 少年達は、見えてしまった、見てしまった。

 

 全身だらんとする八木雪花を。

 小刻みに痙攣する八百万百を。

 白目を向いて天を仰ぐ麗日お茶子を。

 己の愛する者が、薄汚いヴィランによって害されていく所を。

 

「おい、出久、轟」

「ああ」

「うん」

 

 この時、三人と対峙していたジェントル·クリミナルは、後にこう言った。糸が切れたんじゃない、毛玉が爆発したんだ、と。

 

「A.Pショット·クラスター」

「嚇灼熱拳·燐、膨冷轟熱波」

「OFAフルカウル30%、DETROIT SMASH」

 

 ジェントルの張った空気の壁が、爆豪勝己の爆破で引き伸ばされた所を、轟焦凍の熱風に押されて勢いをつけた緑谷出久が思いっきり殴る。緑谷出久の拳は、空気を引き裂き、そのままジェントルのクロスした腕に突き刺さる。

 

「そこを、退いてください」

「ぬおおおっ!!!」

 

 その防御ごと、地面に殴り叩きつける。ついでに、当分起きれないように顎を横殴りして、脳震盪を起こさせる徹底ぶり。

 

「行くぞ」

「ああ」

「うん」

 

 今、大切な者を助ける為に、最凶の三人が行く。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

「毛原先輩!何を騒いでるんすか!?」

「···救護所でヴィランと戦っていた八木雪花が、敗れたらしい。アイツらは、どうするかを揉めているんだ」

「な!!選択肢なんて、助けに行く以外無いっすよ!!」

「あのオールマイトの娘が負けた。その事実に、皆怖じ気付いているのだ」

「毛原先輩もっすか!!」

「舐めるなよ、夜嵐。俺にはまだやるべき事がある。それがなければ、今直ぐ駆けつけたいに決まっているだろう。それが、ヒーローなのだから。夜嵐、お前は先に行け」

「うっす!!夜嵐イナサ、救援に出動するっす!!!」

「···頼むぞ、夜嵐。何をウダウダやっている!まだ救わなければならない人達がいるんだぞ!!!」

 

 

 

 

 

 




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