「あ、おはよう、柳さん」
「···おはよう、心操君。お化け屋敷はいいの?」
「俺は午後からだから。そっちこそ、B組の出番、A組の次じゃなかったっけ?」
「私は、ミスコン出る子の手伝いで劇出ないから」
「柳さんは出ないの?」
「出るわけないでしょ」
「残念、だったら見に行ったのに」
「私じゃ、勝負になんないよ」
「着飾った柳さん、綺麗だろうから見てみたかった」
「···アンタ、からかってるでしょ」
「···バレた?この前の反応が、結構可愛かったからッフ!」
「次からかったら、お化け屋敷で脅かし返す」
「イテテ、それは逆に興味がって冗談だよ」
「まったく·········まぁ、アンタだけになら見せてもいいけど」
「お、そろそろか。今何か言った?」
「···何でもない」
「雄英全員!音で殺るぞ!!」
『よろしくお願いしまーす!!』
▼▼▼
「やぁ、爆豪勝己君。素晴らしいステージだったよ」
「てめえ、青山優雅」
ベンチに座って、雪花を待っていると、島で出会ったクソキザ野郎が立っていた。
「そんな邪険にしないでほしいな、あの時の答えを聞きに来ただけさ。八木雪花は、君にとって何なのかって」
「···」
「情報は色々仕入れてるけど、一応君の口から聞いておきたくてね」
「アイツはもう俺のもんだ、誰にも渡さねぇよ」
「そうかい。じゃあ、八木雪花に、いつもご贔屓にと伝えてくれるかい。では、Au revoir」
「二度と俺の前に現れんな!」
相変わらず、キラキラしたエフェクトを幻視させながら立ち去って行く青山優雅。それと入れ替わる様に、雪花が走ってきた。
「かっくんお待たせ~、誰かと話してた?」
「してねぇよ。無駄話してねぇで行くぞ、ほら」
「にへへ、うん、かっくん」
差し出した右腕に抱きついて、嬉しそうにニヤける雪花。そうやって、ずっとお前は俺の横で笑ってろや。
「はい、ブルーベリーとイチゴ。おすすめの食べ方はダブルベリーだからね、彼氏君」
「え、あ、はい」
出店で注文したクレープを、店員をしてる女子生徒の先輩のアドバイスとウインクを貰って受け取った。ダブルベリーの意味は分からないけど、お茶子さんなら分かるかな。
「はい、お茶子さん」
「ありがとう、デク君」
お茶子さんにイチゴの方を渡して、僕はブルーベリーのをかぶりつく。うん、美味しい。
「美味しいね、デク君」
「うん、そうだね。そう言えば、受け取る時に店員さんが、おすすめの食べ方はダブルベリーって言ってたんだけど、お茶子さんは意味分かる?」
「えっ!?そ、そうやね~、デク君も食べてみたい?ダブルベリー」
「うん、ちょっと興味あるかな」
「···デク君、デク君の一口くれへん?」
「え、あ、うん、どうぞ」
お茶子さんに、僕がかじってない所を向けてブルーベリークレープを差し出す。
「うん、こっちも美味しいね。じゃあ、はい、デク君」
「お、お茶子さん!!」
「ほら、デク君も食べて」
「え、あ、あ、い、いただきます」
お茶子さんがグイッと僕の口元に、イチゴクレープを差し出してきた。恐る恐る食べる。口の中に、クリームと苺の味が広がる。
「えっと···これが、ダブルベリー」
「うん、ベリーとブルーベリーでダブルベリー。シェアして初めて出来る非売品···こ、恋人の味」
「そ、そうなんだ···もう一口、いいかな?」
「う、うん」
「あー!!お茶子ちゃんと出久君が食べさせあいっこしてるのです!!カアイイのです!!」
「「ヒ、ヒミコちゃん!!/トガさん!!」」
「ステージ凄かったのです!私も混ざりたかったのでっ!!!」
「···邪魔して悪かったな」
「ト、トムラさん」
「楽しめたぜ、お前らのステージ。じゃあな」
「良かったよー!焦凍君、百ちゃん」
「うん、凄い興奮しちゃった」
「でも、焦凍。貴方、真剣に踊るのもいいけど、少しは微笑みなさい」
「三奈さんに、最後まで注意されていましたものね。次回への課題ですわね」
「···ああ」
親父や兄さん達は、仕事や予定があって母さん達しか来れなかった。正直、男一人で肩身が狭いので、夏兄位は来てほしかった。
「萌お義姉様、お体の方は大丈夫ですか?」
「全然、結婚式の準備が大詰めで慌ただしかったから、良い息抜きになったよ」
「お父さんもお兄ちゃんも、凄い過保護だもんね」
「あら、冬美。他人事みたいに言ってるけど、啓吾さんも同じ性質だと思うわよ」
「あ、あれが三人に増える」ガクブルガクブル
「···親父も燈矢兄も、ただ心配なだけだろ」
「「「「······」」」」
俺、変な事言ったか?
「百さんも、覚悟しておいた方がいいわ。確実に焦凍は父親似だから」
「頑張ろうね、百ちゃん!」
「アドバイスとか愚痴聞くとかはするから、二人とも」
「はい、お母様、冬美お姉様、萌お義姉様」
「んん~」
「小大も、大分菓子作りの腕が上達したな」
お菓子教室で共に作ったパイを、美味しそうに食べる小大を見ながら、辿々しかった頃を思い出しながら感慨深くなる。
「···ん」
「ん、ああ、流石に歴が違うからな。早々、並ばれてちゃ、師匠として不甲斐ないだろ」
「ん」
「後は、経験を積む事だな」
「ん!」
俺の作ったのと自分のを見比べて、ちょっと落ち込んだ表情になるけど、頭を軽くポンポンしながら励ますと、顔を上げて拳をグッとする。
無口無表情のミステリアスな感じなのに、こういう所は、年相応というか少し幼く見える。
「やっぱ、小大は可愛いな」
「んんっ!?!ゴホッゴホッ」
「大丈夫か?!ほら、ゆっくり飲め」
「んっんっんっ···はぁ~。んん!!」ポカポカ
「いてっ!いてっ!急に悪かったって!!」
「ん!」
「はいはい、仰せのままに、ジュリエット姫」
「ん」
「何でそこで告白しないの!唯!!」
「け、拳藤!く、苦しいし、あ、あ、当たってるんですけどぉお!!」
「···アンタらも大概よね」
「柳さん、見てないで助けてほしいんだけどぉお!」
「ここの機構がウンタラカンタラ、これにウンタラカンタラ、こういうウンタラカンタラ」
集まった企業の方々に向けて、嬉々として自身の製作した物を紹介している明君。今紹介しているのは、俺も開発に協力した、現場に素早く到着する為のサポートアイテム。アレが製品化すれば、兄の事務所も大いに助かるだろう。
「クケケ、色々と迷惑かけてすまないな、飯田」
「パワーローダー先生、いえ、彼女の発明は自分の為でもありますから」
「お前のお陰で、飲まず食わず風呂も入らずの研究馬鹿が、ある程度規則正しい生活をする様になったんだ。今後も、アイツの側で見守ってやってくれ」
「はい!」
共に、明君の発表を見ていたパワーローダー先生にポンと肩を叩かれる。彼女の集中力には目を見張るが、自身の身なりやコンディションに構わず完徹三日四日当たり前にされては、兄の事務所が労働基準法で訴えられてしまうから、在学中に少しでも矯正しなければ。
そうこうしていると、発表を終えた明君が戻ってきた。
「いや~、良いプレゼンが出来ました!!」
「お疲れ様、明君」
「クケケ、お疲れ」
「はい、パワーローダー先生、天哉···さ······ん」
俺の顔を見た瞬間、何故か彼女の足が止まった。
「どうかしたのか?明君」
「いえ、何でもないのでそれ以上近づかないでください!!」
「え、何故だ?」
「何でもです、わ、私、仮眠に入りますのでまたパーティーの時にーーーーー!!!」
「明くーーん!!!」
猛ダッシュで駆け去ってしまった。
「いったい何が···」
「···クケケ、今度、ミッドナイトから女心を学ぶんだな、飯田」
「···はぁ」
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