「いい、物間。絶対A組煽ったり、対抗して無茶な動きしないでよ!やった瞬間、落として会場外に放り捨てるからね。勝手にミスコン申し込んだの、まだ完全に許してないんだから」
「···分かった。プロムが終わるまで、僕は君しか見ないよ、拳藤。では、お手をどうぞ、プリンセス」
「はいはい、そういうのいいから。私は、お姫様なんて柄じゃないわよ」
「そんなこと無いさ、君はとても魅力的な女性だよ」
「んなっ!!!」
「出来る事なら、このまま僕の腕の中に閉じ込めてしまいたい位さ」
「っ~~!!!」
「さぁ、ダンスの時間だ。行こう、拳藤」
「···(コクッ)」
「···ねぇ、柔造。今の、何?」
「···さぁ」
「···一佳の事、褒めてるのと口説いてるの、どっちだと思う?」
「···多分、褒めてるだけなんじゃね?」
「···だよね」
「···拳藤、落ちたと思う?」
「···大分、グラッと来たんじゃない?」
「···だよな」
「···私らも、踊ろ」
「···だな」
▼▼▼
「あの子凄くね」
「マジかよ、あんなでかかったっけ?!」
「おい、誰か声かけてみろよ」
ランチラッシュのケータリングに舌鼓を打ったり、ドレス姿の着飾った女子を眺めたりしながら、友人達と馬鹿話。次のテストで一定の評価を得れば、ヒーロー科への編入がほぼ決まると、相澤先生からお墨付きを貰えた事は、皆に伝えてある。こうしていられるのも、後少しかもしれない。
『俺達で、心操のヒーロー科編入を全力サポートするぞ!!』
『『『おーー!!!』』』
そう言って、勉強や訓練に付き合ってくれた。全力で応援してくれた。
「···ありがとな、みんな」
「···なんだよ唐突に、気持ち悪いなぁ」
「そうだぞ、人使」
「ほら、しんみりした顔してんじゃねえよっ!!」ドンッ
「キャッ」
「あ、すんません···って、柳さん」
「はしゃぐのはいいけど、周りには気を付けて、心操君」
友達の一人に胸をどつかれて、後ろを通りかかった人にぶつかってしまった。慌てて謝罪した相手は、白いオフショルダーのドレスを着た柳さんだった。
「あ、柳さん!お疲れ様っす」
「お化け屋敷のアドバイス、あざました!!」
「ひ、人使、俺ら連れションしてくっから。柳さん、人使ん事たのんます!」
それだけ言って、ドタドタと行ってしまった友人達。アイツら、いきなりどうした?
「···私は何を頼まれたの?」
「さぁ···ドレス、似合ってるな」
「···またからかってる?馬子にも衣装でしょ」
「素直に褒めたつもりなんだけど。似合ってるし綺麗だし、肩とか背中とかうなじとか···谷間とか。結構大胆なの着るんだなぁというか、はっきり言って目に毒というか」
「っ!···はっきり言い過ぎ、セクハラで訴えるよ」
「男の性って事で取り下げて」
さっと、手で胸を隠す様にしてるけど、むぎゅってなって逆にエロい。
「それより、もうダンスはいいの?」
「課題分は踊ったし、パートナーは今婚約者と仲睦まじくやってるから」
指差す先には、一緒に踊っていた宍田が、見知らぬ女性と談笑している姿があった。アレが、例の婚約者なのか。
「心操君こそ、誰か誘って踊ってきたら?もう事前申し込み要らずのフリータイムみたいだし」
「ダンス練習免除で、編入に向けての勉強とか訓練してたから、人前で踊れる出来じゃないんだ」
「次のテスト次第って言ってたね。もし、クラスメートになったらよろしく」
「その時は、お手柔らかに」
『祝杯じゃーー!!』
「···アレ、何やってんの?」
「見守りと称して出歯亀してるだけ。あの様子なら、唯は砂藤君と上手くいったようね」
「あんだけ大騒動起こしといて、まだ付き合ってなかったのか」
「緑谷君と麗日の時に比べたら、可愛いもんだったけどね」
「···何があったんだ?」
「···ヒーロー科に来たら教えてあげる」
凄い遠い目をしている。いったい何やらかしたんだ、緑谷。
「ああ、今思い出しただけでもうらめしい。···心操君、踊りましょう。気分転換に付き合って」
「え、でも俺踊れないって」
「踊れなくていいから、ホールド位は習ってるでしょ」
「そうだけど、ちょっ!」
柳さんに手を取られ、ダンスフロアに連れていかれる。
「ほら」
「いや、近っ!!」
「チークだからこういうものよ。周りを見てみなさい」
ホールドというより、抱きついていると言った方が適切な位近い柳さんにドキマギしつつ、チラッと周りに視線をやると、誰も彼も頬っぺたが触れあう位の近さで左右に揺れている。あの相澤先生まで、13号先生と···。
取り敢えず、見様見真似で右手を柳さんの左肩甲骨辺りに伸ばす。オフショルダーだから、素肌に触れてるんだけど良いのか?!左手は、柳さんの右手と恋人繋ぎみたいに繋がれてるし。
「なぁ、アレも真似した方がいいか?」
「えっ?······アレは無視して」
視線の先には、八百万さんの頬に然り気無くキスをする轟の姿。
「なんだ、残念」
「したら、足踏むから、思いっきり」
「そっちから誘っておいて?」
「アレは、ダンスとは関係ないから」
「···」
「何よ」
「いや、間近で見ても、やっぱり柳さんは可愛いなって」
「んがっ!!」
「ああ、後、下に障りがあっても許してよ。柳さん、いい匂いだし、胸当たってるし、肌スベスベだし、何の反応もしない程枯れてるつもりないから」
「っ~~!!!」
反射で離れようとする柳さんを、鍛えた腕力で逃がさず、より密着させる。柳さんの耳元に口を寄せて、
「最後まで、責任取って付き合ってよ、ね」
「ひうっ!!」
へにゃっとなる柳さんを支え、個性使ってないのに操り人形みたいに大人しくなった柳さんを、曲に合わせて揺らしながら、音楽が鳴り終わる終わるまで堪能させて貰った。
「レイ子、大丈夫?」
「だいじょばない、こしくだけた」
▼▼▼
「母さん、ただいま」
「引子さん、帰りました~」
プロムも終わり、文化祭の全てが無事閉幕し、帰宅した緑谷家は、真っ暗だった。
「あれ?母さん、まだ帰ってきてないのかな?」
「爆豪君のお母さん達と、ご飯食べてくるって言っとったっけ」
「うん、でももう帰ってきてる筈なんだけど」
明かりを灯しつつ、リビングに入ると、家の固定電話が留守電を告げていた。取り敢えず、その留守電を再生してみると、
『出久君、私、光己です。引子さん、感涙の余り酔い潰れちゃって、今日は家に泊まって貰う事にしたから、心配しないで。このメッセージを聞いたら、出来れば折り返し電話をくれるとありがたいわ。それと、ステージ、とても良かったわよ』
「···母さん」
「という事は、今日は私とデク君だ···け······」
「······そ、そうだ···ね」
何気なしに言った麗日お茶子の言葉で、二人の間に変な緊張感が生まれる。
「え、えと、僕、かかかかっちゃんのお母さんに電話してくるね!」
「あ、うん!私、その間にお風呂すませとくね」
目の前に電話があるにも関わらず、携帯を掲げて自室へ駆け込む出久。ギクシャクした動きで、お風呂のお湯を沸かしに行くお茶子。
カポーン
「はぁ~······」
電話を終え、湯船に浸かって天井を眺める出久。彼の脳内では、ヒーローとヴィランが戦っていた。
『おいおい、何を悩んでいるんだい?緑谷少年。こんなシチュエーションは滅多にないんだ、チャンスだろ?』
『何を言っている!変な事はしないと、お母上との約束があるのを忘れたのかい?』
『HAHAHA!別に変な事じゃないだろ?恋人同士なんだから、普通の事さ。さぁ少年!大人への第一歩を進むんだ!!』
『駄目だ、緑谷少年!!一時の欲に負けて、君の大切な私のグッズと、永遠のお別れをしてもいいのかい!!?』
『麗日少女の体と私のグッズ、当然麗日少女が上に決まっているじゃないか、なぁ少年。それに、彼女は待っているんだぜ』
入浴する前、お風呂上がりのお茶子から言われたのである。"デク君の部屋で、待っとるから"、と。そう告げた彼女の顔は、覚悟を決めた戦士の顔だった。
『いいかい、緑谷少年!絶対に断るんだ!!』
『鴨が葱を背負って待ってるんだ、据え膳食わぬは男の恥だぜ、緑谷少年!!』
『このヴィランめ、DETROIT SMASH!!』
『男の子とはそういうものだ!UNITED STATES OF SMASH!!!』
KO!ヴィラン WIN!! コノメニウーツルー
翌朝、麗日お茶子から八木雪花に、一通のメッセージが届いた。寝ぼけ眼で、腰を擦りながらそのメッセージを見た雪花は、直ぐ様、麗日お茶子応援隊にグループ通話する。
『おはようございます、雪花さん、朝早くにどうされたのですか?』
『ウチ、まだねむい』
『モーニングコール頼んでないよ~』
『ふあ~』
『何かあったのかしら?』
「総員伝令!ウラビティ大人になる!繰り返す!ウラビティ大人になる!!」
『本当ですの?!?あんっ!焦凍さん、今はダメですわ!!『百うるさい』んん!!』
『マジ!!』
『本当!!』
『号外じゃー号外じゃー!!』
『お茶子ちゃん···おめでとう』
「ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!!」
「朝から大声出してんじゃねぇよ」
「あ、かっくんあっ!!ちょっ!待って!昨日散々ヤったじゃん!んぶっ!へんわふながっへふはら!!!」
『雪花ちゃん、デク君も、爆豪君負けず劣らず立派やった』
ついに、主役カプ三組とも大人になり申した。何か、感慨深い。さぁ、後は気持ちを切らさずゴールへ進むのみ。
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