八木雪花とほのぼの轟一家ヒーロー録   作:あならなあ

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閑話「No.1」

 

 

 

 

 

「やっと来た、エンデヴァー。遅いじゃないか」

「黙れ、オールマイト。貴様と違って、俺は忙しいんだ」

 

 燈矢と萌君の結婚式も目の前だと言うのに、話したい事があるから飲まないか?等とほざきおって。これでも急いで来たのだぞ、愚弟が。

 しかし、コイツと二人だけなのかと思いきや、隣に一人座っている。その男に目を向けると、相手も視線に気付いた。

 

「I·アイランド以来ですね。お久しぶりです、エンデヴァー」

「シールド博士、御無沙汰しております」

「ほら、早く座って座って。何飲む?」

「チッ、マスター、いつものを頼む」

「はい、御用意出来ておりますよ」

「相変わらず、察しがいいね、マスター」

「長年、御贔屓にして頂いておりますから」

「じゃあ、取り敢えず乾杯」

「乾杯」「フンッ」

 

 グラスの当たる音が、静かな店内に響く。

 

「それで、俺に何の話だ」

「相変わらず、義兄さんはせっかちだなぁ。まぁ、これを見てよ。今日、ヒーロー協会から送られてきた、ヒーロービルボードチャートJPの下半期集計結果だよ」

「···それがどうしたと言うのだ」

 

 オールマイトが、懐から取り出し渡してきた封筒を開け、中にある紙を取り出す。

 

「······なっ!!これは!!!」

「私と同じ反応ですね、エンデヴァー。おめでとうございます」

「······どういう事だ、オールマイト」

「どうもこうも、そのまんまだと思うよ」

 

 その紙には、いつものように、順位順にトップ10に選ばれたヒーローの名前と、指標となる事件解決数と支持率が記載されている。

 驚いたのは、最早、自身の定位置となってしまっていた2位の欄に、俺の名前が無かった事だ。あるのは、隣で、呑気におかわりを注文している奴の名前。自身の名前は、その一つ上にあった。

 

「おめでとう、エンデヴァー。君が、No.1だ」

「···これは、本当なのか」

「ああ、一切不正無しの純然たる結果だよ」

「エンデヴァーには失礼だけど、まさか、君が現役中に抜かれるとは思いもしなかったよ」

「私も、最後までNo.1でいるつもりだったよ、デイヴ」

「しかし、何故だ···。何故貴様の支持率がこうも下がっている?」

 

 俺と天と地ほどの差があったオールマイトの支持率は、俺と一桁台しか変わらない程度に落ちていた。元々、事件解決数では大差を付けていたのだから、そうなってしまえば順位が逆転するのも当然ではある。ただ、ここまで急激に下がる理由が分からん。

 

「···活動を自粛したのも影響してるだろうけど、一番のきっかけは、文化祭での赤黒議員との対談だろうね」

「···オールマイトからの卒業······か」

「ネットやメディアでも、大きな反響を呼んでいたね。いつまでも、トシに頼りっぱなしでいいのかって。とある人のインタビューも胸に刺さったよ。

 

 "俺達は、オールマイトっていう不世出のヒーローの、そのショーを見ている観客じゃ、もういられねぇんだよな"

 

 僕はね、トシ。あの個性増幅装置を君に渡そうかと思ってたんだ。ずっと、君のショーを見ていたかったから」

「気持ちは嬉しいよ、デイヴ。でも、これで心置きなく引退出来る」

「···だから、次のチャート発表にヒーローを登壇させるのか。そこで、引退宣言をする為に」

「ああ、その通りだよ、エンデヴァー。マスター、おかわりを」

 

 いつもよりペースの早いオールマイトを横目に、もう一度、手元の紙に視線を落とす。奴の名前を指でなぞり、次に自分の名前を指でなぞる。

 

「オールマイト、元No.1よ。平和の象徴とは、何だ」

 

 自然と、言葉が口から出た。

 

「···それは、君が君自身で見つける物だよ。それに、正式発表されるまでは、私はまだNo.1ヒーローだからね!No.2には教えられないなぁ!!HA~HAHA!!!」

「貴様ぁああ!!···フンッ、今のうちに、頂点からの眺めを見納めておくがいい。もう二度と、見る事が出来んからな。マスター、とっておきを頼む。コイツを蹴落とした前祝いだ!!そもそもだ、今の日本を守っているのは俺だ。事件解決数では長年トップなのだからな。過去の栄光で居座っていた貴様とは違う!!」

「なにおー、私はそのぶん巨悪とたたかってたんだぞー!!」

「そんなもの、俺もまけておらんわ!!」

「「うぬぬぬぬぬ!!!!」」

「君ら、仲良いよね。あ、マスター、おかわりで」

 

 

 マスターのとっておき、"ヒーロー殺し"をかぱかぱ開けながら、ヒートアップしていく二人を横目に、ちびちびとマスター特性カクテルを嗜むシールド博士。

 翌日、二日酔いの青白い顔で並んで正座させられ、愛する奥さん達にお説教される、No.1とNo.2の姿があったとかなかったとか。

 

 

 

   ▼▼▼

 

 

 

『私、オールマイトは、今年をもって、ヒーローを引退する事を宣言します』

 

『多くは語らん、俺を、見ていてくれ』

 

 

 一つの時代が終わり、また新たな時代へと、進んでいくのであった。

 

 

 

 




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