「ぐうううう!!!!!」
「そんな隠し球、聞いてないよぉ!!緑谷君!!」
「避けろ!!物間!!」
「お父さん···何あれ」
「···アレも、OFAの力なのかよ」
「······あんなの、私知らない」
「「はぁーーー!!!」」
▼▼▼
「フッ、ハッ」
耳朗さんや障子君みたいな索敵要因の居ないけど、メンツ的に、かっちゃん達と同じ戦略を取る事になる。故に、かっちゃん以上に派手に動き回って、僕がB組の注意を惹いて誘い出さないと。
ただ、心操君の催眠とその個性をコピー出来る物間君が居る所為で、ただでさえ数的不利なのに、迂闊コミュニケーション取れないから、より慎重に動かないと。
「デク君!」
お茶子さん···いや、今のはお茶子さんじゃない。声は一緒だけど言い方が微妙に違う、変成機を使った心操君の声。それよりも、
「あらら、見つかっちゃったね」
隠れているつもりの感じられない物間君が、僕を見ている。指揮官であり、何をしてくるか分からない物間君を、序盤で倒す事が出来れば大きなアドバンテージになる。
「爆豪君の活躍を見た後で、君を警戒しないわけがない」
煽る事で此方の動揺を誘うのが、物間君の常套手段だけと、心操君の個性をコピーしてる可能性もあるから、何を言われても平常心を保って聞き流せ。
「しかし、恋人に呼び掛けられて無反応なんて薄情だね。もしかして、違うって確信出来る何かがあったのかな?」
「きゃあ!」
「っ!」
お茶子さん達がいる筈の辺りで、固い物同士がぶつかる音と粉塵、明らかに巨大なネジやナットが見えた。場所がバレた。でも、今の悲鳴もお茶子さんじゃない。あの程度で、お茶子さんを、お茶子さん達をどうにか出来ない。今は、一刻も早く物間君を。
「デク君、大好き」
「えっ?」
余りにすっとんきょうで、でも、さっきまでと違って、ちゃんとお茶子さんの喋り方。頭の片隅で、こんな時そんな事言う筈無いって分かってても、口から声が出てしまっていた。
「今までのが、心操君だと思ってた?残念、あれは柳の声真似だよ、緑谷君」
「お前対策で、麗日のは完璧にしてきたからな、緑谷」
不味い、洗のう···され······、
『やれやれ、世話の掛かる坊主さ。意識は取り戻してやるが、制御は何とかしてみせろ』
『大丈夫、君なら出来る。なんたって、あのトシノリが認めた子なんだから』
瞬間、右腕のグローブが弾けた。
「ぐうううう!!!!!」
「緑谷!!?」
「何だよ、アレ」
デク君の叫び声。そして、デク君の右腕から溢れ出る、今まで見た事のない黒い何か。
「麗日!!」
別に、何か出来ると思ってた訳じゃない。ただ、君の側に居てあげたくて、一緒に居てあげたくて、デク君に向かって一直線だった。
でも、何となく誰かに背中を押されたんだと思う。黄色いマントをした、引子さんに似た髪の女性に。
「デク君!!」
大丈夫、私が来たよ。だから、泣かんでええよ。
▼▼▼
「無事か、物間」
「ああ、ありがとう。しかし、アレはいったい何なんだ?緑谷君の個性って、超パワーじゃなかったっけ?」
「その筈だけどな」
洗脳が成功した瞬間、アイツの右腕から現れた黒い流体。四方八方に触手の様に伸びて、周囲を破壊したりくっついたりしたかと思えば、明確に此方を攻撃する様に伸びてきたり。緑谷の様子を見るに、アイツ自身も想定していない未知の現象なんだろう。
「兎に角、一旦距離を取って···麗日!?」
バイザーを吹き飛ばされながら、荒れ狂う黒を掻い潜り、必死に抑えようとしている緑谷に抱きつく麗日の姿が見えた。すげぇな、あんな躊躇なくいけるって。
「···まさしく、愛の力って奴なのかな?ベタ過ぎると思わないかい?心操君」
「ああ、そうだな。俺の洗脳は、愛に弱いのか?」
「···あの二人のキスシーンを、二度も見せられるとはねぇ」
「···二度目なのか」
抱きつき、緑谷の頬を両手で挟み込んで、ガッチリバッチリ口付けた麗日。それに伴い、暴れ狂っていた黒がシュルルルンと緑谷の腕に戻っていく。
「···これ、訓練続行でいいのか?」
「駄目なら、先生が止めに来るでしょ」
▼▼▼
「お茶子さん···」
「落ち着いた?デク君」
「え、あ、うん···」
「良かった、ホントに良かった」
気付いたら、お茶子さんが目の前に居て、キスしてた。もう何が何だか分からないけれど、また、僕はお茶子さんに助けて貰った事だけは理解した。
「腕、何ともあらへん?」
「···うん、取り敢えず何ともない···と、思う」
「そか、後で診てもらわんとね」
「うん、そっ!危ない!!!」
背筋に嫌な予感を感じて、お茶子さんを抱き上げてその場を飛び去る。さっきまで居た場所に、パイプやら何やらが降ってきた。今度は、背後から嫌な気配。横にズレる。
「今、こっちが攻撃する前から気付いてなかったかい?緑谷君。もしかして、未来視の個性でも目覚めた?」
「···お茶子さん、ここは僕に任せて。峰田君達の援護に」
「···もう、大丈夫なんやね?嘘やったら、グッズ廃棄やからね」
「うん、僕を信じて」
「じゃあ、絶対勝ってね」
「そういうのは、二人っきりの時にしてほしいねえ!!」
何となく、物間君の攻撃タイミングが分かる。それに、さっきのこれも、どう扱えばいいのか何となく分かった。
「もう使いこなしてんのかよ、その黒いの何なんだよ」
心操君が、捕縛布を使って落としてきた瓦礫やパイプを、右腕から出した黒いエネルギー、"黒鞭"で薙ぐ。
「使い勝手よさそうだから、僕にも使わせてよね!!」
殴り掛かってきた物間君の胴体に、黒鞭を巻き付けて心操君に向かって投げる。
「そういうのは、俺の方が鍛えてんだよ、緑谷ぁあ!!」
「っ!!」
物間君を受け止め、入れ替りで心操君が突っ込んでくる。黒鞭と捕縛布が、時に絡めとり、時に弾き合い、僕らの間で生き物のように争う。心操君の言う通り、少しずつ押されている。攻めれていない。
「ナイスだよ、心操君!」
「ぐっ!」
物間君の攻撃を、腕でガードしてしまった。OFAがコピーされる!何も考えずに100%で使ったら、物間君の体が。
「チッ、スカか。でも、それも想定内だよ!」
「ぐあっ!!」
ガードして、勢いは完全に止まってた筈なのに、更に衝撃が。庄田君の個性か。でも、OFAが使えないのは一安心だ。これで、触られても問題ない。
「しっかり、身構えておいてね、二人とも。OFAフルカウル50%!!DETROIT SMAAASH!!!」
「くおおお!!緑谷ぁあああ!!!」
「ぎにゃああああ!!!」
拳を振り切り、その衝撃波で二人を吹き飛ばす。フルガントレットは無事で良かった。後は、地面に倒れる二人を黒鞭で縛って檻にっ!
「心操君!!物間!」
「柳さん!!」
巨大化したナットを掴んで、突撃してきた柳さん。何でインナーだけになっているのか分からないけど、まさかお茶子さん達が···いや、それなら柳さんが突撃してくる必要はない。お茶子さん達は大丈夫だ。
落ち着いて、柳さんの突撃を避けて後ろ首にチョップを決める。
「がっ!」
力を失い、勢いのまま跳ね転がっていく柳さん。柱にぶつかりそうになった所を、心操君が捕縛布を伸ばして自身の胸に引き寄せた。やっぱり、狸寝入りしてたね。
「うう、しん···そう······」
「無茶しすぎだよ、柳さん」
柳さんの髪を優しく撫で、そっと地面に寝かせる。もうボロボロな筈なのに、凄い威圧感を感じる。
「なぁ、緑谷。体育祭で、お前が俺に言った言葉を覚えてるか?」
「(コクッ)」
返事は出来ないから、首を振って答える。記憶には無いけど、ネットで切り抜き動画とかあったから、知ってはいる。
「そうかよ。俺の大事な人を傷付けた落とし前、地面這いつくばってつけろや!!」
避けようと思ったら、簡単に避けれた。でも、何だかあの拳は、避けちゃいけない気がした。
「デク君!!」
峰田君のモギモギで拘束してた柳ちゃんが、コスチューム脱いで逃げてた事に気付いて、慌てて追いかけたら、互いの頬に拳を突き刺したデク君と心操君の姿があった。
「···ホント、お前が羨ましいよ」
ズルりと崩れ落ちる心操君。
不謹慎やけど、さっきの心操君の言葉、誰か録音しとらんかなぁ。柳ちゃんが目を覚ましたら、いの一番に聞かせてあげんと。
『第五セット、A組の勝利よ!!!』
あれ?実況ってブラド先生やなかった?何でミッドナイト先生?
▼▼▼
「んん···」
「あ、心操君、目が覚めた?」
「や···なぎ···さん?」
「目が覚めたなら、体起こしてもらっていい?流石に、足痺れてきたから」
朧気な意識が、柳さんの声に呼び起こされる。左側頭部と左頬に感じる、硬い床とは違う柔らかい感触。首を捻って上を見上げた先に映る、二つの丘と柳さんの顔上半分。
俺はつまり、柳さんに膝枕して貰っているのか。そう理解した瞬間、寝返りを打って柳さんのお腹に顔を埋める。
「柔らかくていい匂いだ」
「っ!!!!降りろ変態!!!!」
「どへっ」
「···心操君、図太い」
「···デク君とは大違いやね」
「離せーー!!!アイツぶっ殺ーす!!」
悩みに悩んで、体育祭の焼き直し的な感じになった。麗柳の中の人一緒だし、後悔も反省もせん。
あ、タイトルの~は当然、柳が入りますですよ。
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