「目標は?」
「全員城山に立て籠り中よ。目標も標的も、揃ってね」
「ちっ、面倒臭ぇ。目標さえ捕まえてりゃ、あんなチンケな城山ごとやっちまえたってのに」
「ごめんなさい、私が手間取らなければ」
「スライスの所為ではない。私が、所詮子供と侮った所為だ。行くぞ、私達の悲願の為に」
▼▼▼
「皆、大丈夫かな」
「信じるしかねぇよ。皆が、憂いなく戦えるように、俺達で町民の人達を守ろうぜ」
「うん!」「(コクコク)」
無事で居ろよ、唯。俺も、頑張るからよ。
「来た!予測経路を、一塊になって向かって来ている!」
「お願い、八百万さん」
「ええ、お任せください!!これが、私の全脂質を使った全力攻撃!アームドクリエティ·フルバーストですわ!!!」
肩部や脚部にマウントされたミサイルランチャー、腕部に装着されたキャノン砲、胸部のガトリング。その全てが一斉に火を噴き、轟音と共に、悠々と歩いてくるヴィラン達に殺到していく。
『作戦の第一段階。先ずは、ボスと手下を分断する。手下を、所定のポイントまで誘導し、それぞれ各個撃破をする』
「ようこそ、ここでアンタを倒す」
「覚悟しろ、今度は逃がさねぇ」
「雪花ちゃんはやらせないし、活真ちゃんも渡さないわ」
「行くぞ!俺達で勝ちを掴みとる!!」
「···ナインの手を煩わせなくても、俺がお前を殺してやる、八木雪花」
『異形系のヴィランは、ここの滝に。メンバーは、敵のパワーに対抗出来る八木さん、炎攻撃に対処出来る轟君、スピードで翻弄出来る飯田君、水場を利用して撹乱出来る梅雨ちゃん。コイツと親玉が連携したら、もうどうしようも無くなるから、せめて足止めをお願い』
「ここは、俺の世界だ」
「アンタの攻撃は、全部俺が受け止めてやる!」
「皆の所には、行かせないよ!!」
「ふっ、侮らないで貰おうかしら」
『女性ヴィランの方は、遮蔽物の多いこの洞窟に。メンバーは、暗闇でこそ力を発揮できる常闇君を、切島君と芦戸さんでサポートしてあげてほしい』
「作戦、第一段階成功!それぞれ戦闘に入った模様」
「ボスヴィラン、第一防衛線に接近!!」
「皆、行くよ!!」
▼▼▼
「ヌッ!グッ!グアッ!!」
「アハハハハ、何が俺の世界よ」
「うおおお!安無嶺過武瑠!!」
「ちぃ、鬱陶しい!」
吹き飛ばされ、地面に倒れたツクヨミに追撃を掛けようとするヴィランの前に立ちはだかり、攻撃を受け止める。微かな光だけの暗闇の中で、技量と手数の差でツクヨミを圧倒するなんて、インターンで出会ったどのヴィランよりも強力なヴィランだ。
でも、だからこそ退くわけにはいかねぇんだ。
「スマン、烈怒頼雄斗。手数で負けるなら、一撃に全てを賭ける。頼む、突破口を開いてくれ」
「おう!烈怒頑斗裂斗ぉおお!!」
「今だ!深淵闇駆·夜宴!!」
「くあああああ!!!」
「食らえ!アシッドショット!!」
向かってくる髪の刃を全て弾き、空いた空間にツクヨミが飛び込んで重い一撃を食らわした。岩に叩き付けられたヴィランに、ピンキーからの追撃。浴びせかけた酸が、奴の武器である髪を溶かしていく。
「くっ!小娘がぁぁあああ!!!」
「きゃあああ!!!」
「芦戸ーー!!!」
「キサマーー!!!!」
「な!常闇!!」
ボロボロで短くなった髪を、反撃とばかりに針の様に芦戸に向かって飛ばした。逃げ切れず、足に何本か食らい落下していく芦戸。また、俺は守れなかった。
額から血を流し倒れる芦戸を見て、常闇の激昂と共にダークシャドウが二倍にも三倍にもでかくなった。
『グオオオオ!!』
「くっ、ナインの···邪魔だけはぁあああ!!!」
ダークシャドウが、今度は逆にヴィランを圧倒した。しかし、苦し紛れ放った髪の針が天井の岩を破壊し、太陽の光が差し込むと、ダークシャドウが苦しみの声を上げて常闇の中に戻っていった。常闇もまた、芦戸に重なるように倒れた。
見上げれば、崩壊し落ちてくる天井の岩達。
「きり···しま······」
「安心しろよ、芦戸。俺は、頑丈さが取り柄だって知ってんだろ。今度はちゃんと、守りきってやるからよ」
俺は、烈怒頼雄斗。皆を守れるヒーローになるんだ。もう守りたい奴が目の前に居るのに、怖気付く自分から卒業するんだ。
「でもよ、早めに見つけてくれよ。芦戸は、明るい陽の下が似合うんだから」
▼▼▼
『おい、半分野郎。雪花に何かあったら、テメェをぶっ殺す』
『爆豪こそ、百に何かあったら只じゃおかねぇからな』
「雪拳阿修羅!!」
「舐めるなクソガキぃ!!」
雪花と真正面から殴りあえる奴相手、爆豪にぶっ殺されるかもな。
「避けろよ、雪花。赫灼熱拳ジェットバーン」
「がおああ!!」
ちっ、ジェットバーンに拮抗するとか、どんだけだよ。
「火力足んないんじゃないの?ショート」
「お前こそ、腰入ってないんじゃないか?ルミナイネン」
「言ったな、コイツ」
「二人とも、ヴィランに集中するんだ!」
「軽口叩ける余裕があるのは、羨ましいわ」
「テメェら、無駄だと言ってんのが分かんねぇのがっ!!」
奴の体、麻痺を起こしたように動きが鈍くなる。漸く効いてきたか、フロッピーの麻痺毒が。
「なにしがった、ガキども」
「私の雪拳やテンヤの装備に、フロッピーの麻痺毒を混ぜてたんだよ。アンタみたいな奴に、真正面から馬鹿みたい戦う訳ないでしょ。ショート、よろしく」
「ああ、赫灼熱拳·燐」
後は、このまま氷付けにして、
「ふざけるなよ。俺が、化け物と呼ばれた理由を教えてやる!!」
「っ!!穿天氷壁!!」
「ウバアっ!!」
奴の体が一回り以上に膨れ上がり、より異形化が進んだ姿に変わった。そして、開いた口から嫌な光が集まる。急いで、分厚い氷の壁を張るのと同時に、奴の口から光線の様な物が放たれた。
「スノウアーミー!テンヤ、ショートを!フロッピー!!」
「ケロッ!」
「くうっ!!」
瞬く間に溶かし貫いてきた光線を、雪花が雪像を出して受け止める。その間に、何とか崖下に避難。
「···怪物というか、怪獣じゃん」
「どうする、レシプロがもうすぐ終わるぞ」
「もう、私の毒は効かなそうね」
「お父さんでも、殴り倒すのは骨が折れそう。ショート、何か策ある?」
「······アイツの懐に飛び込めれば、何とか出来るかもしれねえ」
どんだけタフさや耐久力が上がろうとも、体の内側なら。後は、どうやって近付くかと、俺の体が耐えられるかどうか。
「分かった、焦凍に賭けよう」
「ああ、残りのレシプロ全てで、轟君を奴の所へ」
「ええ、決着をつけましょう」
「あ?わざわざ死にに来たか、八木雪花」
「はっ、お父さんに挑む勇気の無い雑魚が、粋がってんじゃないっての!!スノウアーミー、雪剛阿修羅!!」
十体の雪像と自身に雪の鎧を纏わせ、ファイティングポーズを取る八木雪花。へっ、叩き潰して灰も残らず消してやるよ。
「死ねやぁああ!!」
「やってみろやぁあああ!!」
炎を四体の雪像で受け止め、その間に残りの雪像が、挟み込むようにして此方に向かってくる。
「舐めるなと言ったろうが!」
「そっちこそ、オールマイトの娘を舐めるんじゃないよ!!」
右の三体を炎で横真っ二つに、左の三体を尻尾で薙ぎ払う。しかし、その隙を狙って本体が肉薄し、拳が鳩尾を抉る。
「ぐっ!良いマッサージだよ!!」
「じゃあ、もっと強めにしてあげようか!!」
多少は効いたが、倒れる程じゃない。その反面、奴の雪鎧は俺の攻撃でポロポロと剥がれていく。このまま、鎧を剥がして生身の部分に食らわしてやれば、それで終わりだ。
「雪花ちゃん!!ケェロォオ!!!」
「雑魚はスッ込んでろ!!」
「ケロぉおお」
「くっ、梅雨ちゃん!!」
舌で腕を縛って邪魔してきた蛙女を、そのまま振り回して、八木雪花に叩き付ける。
「お友達と一緒に、消し炭になれや!!」
「委員長として、クラスメートはやらせない!!レシプロターボ·エクステンド!!」
「ぐがっ!!このガキがぁああ!!」
足にエンジン生やした小僧が、目にも止まらぬ早さの飛び蹴りが、横腹に突き刺さる。
「今だ!轟君!!」
「凍てつけ、フリージングディザスター!!」
頭紅白野郎が、右腕を口の中に突っ込んできやがった。コイツ、俺を内側から凍らそうと。
「邪魔させるかっての!大人しく冬眠してろ!!」
腕も足も尻尾も、八木雪花と雪像に抑えられた。駄目だ、振り払えねぇ。
(ナイン···すまねぇ)
「はぁはぁはぁ···」
「おつかれ~、焦凍。はい、貸したげる。うひぃ、ちべた~」
雪花が、自分のヒーロースーツを掛けてくれた。そして、俺の右手を自分のインナーの中に突っ込んで暖めてくれる。···百の方が触り心地は上だな。
「···梅雨ちゃんは」
「気絶してるだけ、時間が経てば目を覚ますよ」
「···緑谷達と合流しねぇと」
「だね。委員長、梅雨ちゃんの事、お願いね」
「ああ。口惜しいが、僕はここまでだ。皆を頼む」
まだ、戦いは終わってねぇ。まぁ、俺達が行く前に、終わらせといてくれてもいいけどな。
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