水鏡律季と爆乳魔女 ~ハングリー・フォー・バスト~   作:黄緑信号

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27. 大団円とお約束(♡)

「――ん? えっ……レイン先生?」

 

「む、律季。こんばんわじゃ」

 

 ロイは奇しくも、自ら待ち合わせ場所に指定した中央公園の林の中に墜落した。奴を追って下りた先で、俺はなぜかレイン先生に出くわす。

 街灯もあまりない、薄暗い道端だ。近くに止まった彼女の車と、ヘッドライトの灯りがなければ、レイン先生の存在に気づかなかったかもしれない。闇の中に立っていて顔もよく見えなかったが、他にいるはずのない胸のお山の輪郭のおかげで、一瞬で彼女だと確信を持てた。

 

「……いや、そんな当たり前みたいに挨拶されても……というか危ないですよ! 近くにロイが落ちて……」

 

「――大丈夫じゃ。奴ならすでにわしが偶然見つけて回収した。たった今、フリーメイガスの魔法使いに引き渡したところじゃよ」

 

「……え? ……ほ、本当ですか?」

 

「ああ。おぬしたちのおかげで弱っていたからな。か弱いわしでもなんなく捕えられたよ」

 

 ――いや怪しい。露骨に怪しすぎる。

 偶然見つけたって、レイン先生はなぜこんな場所にいたんだ? 俺たちの戦いを近くで観察するためか? さっきは俺たちが戦いに行くのを、あれだけ必死に反対していたのに……『観察』を? 態度もすごく冷静で、あの時の慌てぶりが嘘のようだ。

 高いのが怖くてホウキで地上に降りるのに手間取ってしまったが、それでも大した時間はかからなかった。その間にロイを捕えて、誰か別の人に受け渡したというのか? すぐ真上に俺がいたんだから、無理せず俺にロイを任せればよかったはずじゃ……

 

「――『違和感凍結』ッ」

 

「う……っ? ――? えーと、なんでしたっけ?」

 

「ロイをわしが捕まえて、引き渡しを完了したってところまで話した」

 

「ああ、そうでしたね」

 

 ――まあ、別にいいか。レイン先生が無事で、ロイが逃げていないなら構わない。結果は一緒だ。

 

「その……いろいろとすみませんでした、先生」

 

「なぜ謝る? 炎夏と螢視を守り通し、被害も最小限に抑えた。おぬしの完全勝利ではないか」

 

「いえ……俺たち、逃げろって言われたのを聞かないで、危険を顧みず戦いに行っちゃったので。選択が間違っていたとは思いませんが、レイン先生の気遣いを台無しにしちゃったのは……いけなかったな、と」

 

「そんなことは構わんさ。結果オーライじゃ。それより今は……ほかに心配事がある」

 

 レイン先生は俺の手を引いて、車の助手席に通した。テレビに映っているのはニュース映像だ。空撮で、破壊された真序市の映像が流れている。

 

『――これは真序市で起こったテロ事件の続報です! わずか数十分の間に、なぜか人の姿が見当たらなくなりました! 依然として火災が続いているにもかかわらず、なぜか消防や警察は動いていません……』

 

「今まさにこの上を飛んでいる中継ヘリの配信じゃ。ネット上にも同じものが配信されておるが、日本に限らず全世界の視聴者が注目しておるようでな……」

 

 ヘリの高度から見ると破壊の規模がよく分かる。まるで天災でも起こったようなありさまだ。人っ子一人おらず完全な静寂なのが逆に不気味さを増している。

 

(――す、すごいことになっちゃったな。学校のみんなも今頃大騒ぎだろう……)

 

(――マスコミ各社には報道を慎むように命じた。特にこの現場へ足を運ぶことはないようにきつく言ってあるはず……たしかに此度の事件は派手ではあるが、今までマスコミがフリーメイガスの指示に背いたことはなかった。

 ……まさか、教国のスパイがヘリに乗っている? 考えすぎかもしれんが、用心に越したことはないの……特にわしは、顔を見られてはならぬ身じゃ)

 

「――って、やばいじゃないですか! 炎夏さんたちに知らせないと……! 顔が映ったりしたら大事ですよ!」

 

 俺たちが被害者を減らすためにやったことだが、テロ自体より短時間で人が消えていることの方が視方によっては怖いはずだ。事情がわからないと神隠しにしか見えない。

 全世界の視聴者が注視しているニュースだ。どんな憶測が飛び交うかわかったものではない。下手をすれば、炎夏さんや秋月先輩がこの事件の黒幕だと誤解さえされかねない。

 

「わしからも電話したが、炎夏につながらん。あやつスマホを持ってきておらんらしい。車を出すと無人で目立つゆえ、直接行くこともできんのじゃ」

 

「あ、大丈夫です。俺からユウマさんのLINEにかけるんで」

 

「おぬしのコミュ力は一体なんなの? なんで当たり前のように敵とLINE交換しとるわけ?」

 

 ――『キンコンカン、キンコンカン、キンコンカン、キンコンポロン』……通知音が静寂の中に響く。

 レイン先生は遠慮なく俺の肩にほっぺたを載せてスマホの画面をのぞいている。髪の毛が(というか全体的に)いいにおいする。俺は画面から目を離さないまま深呼吸した。すーはーすーはー。

 

「もはや性欲を隠す素振りもないの。でもわしおぬしのそういうとこ好き」

 

「耳元で言うのやめてくれませんか。好きになっちゃうんで」

 

「浮気ものぉ~」

 

「自分から誘惑しといて、このこのっ。――うぉっ、やわらけぇ……っ」

 

「んおっ♡ こ、これっ♡ 当然の権利みたいな顔して、谷間に手を突っ込むなぁ♡

 ――わしのは誘惑じゃのうて、ご奉仕じゃ♡ わしはあくまでも炎夏との健全な交際を助ける、おぬしの『性欲処理係』じゃからの♡ セクハラはいくらしてもいいけど、ガチ恋するのはNGなんじゃ♡」

 

「なんすかその悪女ムーブ。残酷過ぎません? ――ふーっ」

 

「――ひぃんっ♡ く、くすぐったいのじゃぁっ♡」

 

 まだそんなことを言っているのかこの人は……結局彼女の狙いはいまだによくわからないな。

 レイン先生のふかぁい谷間をまさぐったり、耳たぶに息をふきかけたり、セクハラ三昧しながら怪訝に思っていた矢先――ユウマさんとの通話がつながった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――もしもし律季? どうしたの、わざわざボクに電話なんか。ロイは?」

 

『ロイの身柄はこっちで押さえました! ですが上空にテレビ局のヘリが来てます!  俺はしばらく森から出ないので、みなさんも急いで隠れてください!』

 

 ――んおっ……♡ ……きっ♡ そこはぁ♡ 

 

(? 気のせいかな? なんか小さく女の人の声がする……?)

 

「……あぁ、アレか。TVSって書いてあるな」

 

「どんな目してるの朝霧くん? ……あのヘリのパイロットを操って帰したりはできない?」

 

「距離がありすぎる。真正面でおもいっきり集中すればムリじゃないけど、先にカメラに映されちゃうだろうね……ここは素直に隠れるとしよう」

 

 高度が高くてローターの音は聞こえないが、かろうじてまだ隠れ切っていない陽の光で、上空のヘリの姿は見える。おれには点にしか見えないが、レンには表面のロゴまで視認できているようだった。拘束具に包まれ、キユー〇ーのたらこパスタのCMのように顔だけ出たマルスを、ユウマが引っ張っていく。

 

「……おい、なにしてる螢視? お前も早く隠れろよ」

 

「いや、おれはいい。もともと自分の本当の顔じゃないし、見られても構わない。

 ――それにおれには、まだやることがあるからな」

 

「……やること?」

 

 魔法の存在を隠すことは、魔法使いすべてにとってのルールだと、炎夏(ホノー)から聞いていた。

 だがおれは律季たちのように『魔法使い組織』に所属している者ではないから、そのルールに縛られる必要はない。第一ロイの傀儡(パペット)の姿を一般人に見られてしまった以上、もう完全に隠し通すことはできない。

  

 真序市を襲った謎の怪物の正体をめぐって、世界はパニックに陥るだろう。これほどの被害が出てしまい、さらに報道もされてしまった以上、オカルト界隈の噂程度では到底収まらない。

 ならおれがやるべきは、炎夏(ホノー)がこれ以上困らないように、騒動を最小限に抑えることであり――『魔法の力は悪ではない』と、世界に示すことだ。

 

 マスコミが見たがるなら、見せてやればいい。

 ――魔法少女の存在を。

 

「おれが一度ロイ達に与し、律季と炎夏(ホノー)に危害を加えたのはまぎれもない事実だ。 その償いをしなくちゃならない!」

 

「あっ――おい!?」

 

天の聖弓(キュアブルーム)!」

 

 ホウキ形態の天の聖弓(キュアブルーム)を顕現させ、それに乗って飛び立った。

 初めての飛行なのでがたつくが、恐怖はない。炎夏(ホノー)が見てくれている。今のおれに不可能はないのだ。

 

 

 

「――お前らの思い通りになんかさせねえぞ、悪の爪(マーレブランケ)!! 

 魔法少女の宣戦布告だッ!!」

 

 

 

 報道ヘリと同じ高さになって、おれは叫んだ。きっと中継を見ているであろう、律季と炎夏(ホノー)の敵に向けて。

 そして――建物の明かりが一切灯らない暗闇の夜景を、上空から見下ろし、またがっていたホウキを弓に変形させる。

 

 

 

「――天の聖弓(キュアブルーム)、『白い流星群(ミルキーシャワー)』!!」

 

 

 

 ホウキの先端部分にあったすべての光の矢を、ひとつの束にして、空に向けて放った。

 一瞬遅れて、流れ星のような光の筋が空から幾条も降り注ぎ、街のあちこちに落ちていく。白い光の雨が降った場所は、みるみる破壊が癒され、元の街の姿に戻って行った。

 

 

 

「たとえ教国がみんなの日常を壊しても、おれがそのすべてを治してみせる。

 ――お前らにこれ以上、なにも奪わせはしない……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――こ、これはいったい!? 壊された街が、直っていく……!? あの光は天使様なのでしょうか!? 我々は今、神の奇跡を目の当たりにしているのでしょうか!?」

 

 レポーターは興奮していた。目の前で起きている信じがたい現象に。

 突如人影が地上から現れて、高高度に滞空したかと思うと、いくつもの光を放って街を癒してみせたのだ。黄白色に光るそのシルエットは、肉眼ではまさしく天使のように見えた。

 しかしその正体を捉えている者があった――高精度機材を担いだカメラマンだ。ヘリの揺れを手元で補正する見事な腕前で、極限までぶらさずにカメラを構え続けている。

 

「――こちら、『ティリス』。ケージの姿を捉えました。テレビ画面で確認できますか?」

 

『ああ、後ろ姿だがよく映っていル』

 

 ――そのカメラマンは、美しい女性だった。

 ポニーテールに纏められた濡れ烏色の髪が、入って来る強風で揺れている。テレビ局のキャップをかぶってはいるものの、その下からのぞく眼光は明らかにテレビマンの目つきではなかった。

 深い蒼をたたえる、切れ長の目。それは暗殺者の眼だ。

 

 

 

 ――女忍者ティリス・フランベルジュ。イルミナ教国悪の爪(マーレブランケ)末席(トゥエルフス)

 それが彼女の名前であり、正体だった。

 

 

 

『偵察ついでにあわよくば律季(リーファン)炎夏(イェンシア)の姿を曝してやろうと思っていたガ……よもや自分から姿を現すとはナ』

 

「私も螢視に気をとられてしまい、二人の位置を特定しそこねました。捜しておりますがすでに隠れられてしまったようです。

 ――螢視だけなら確保に移れますが、いかがいたしますか? 『ダン様』」

 

『やめておケ。炎夏(イェンシア)螢視(インシィ)も、覚醒直後の魔法使いは本人にも制御できぬ能力のムラがある。予想外の出力をくらう可能性があるということダ。それに、近くにフリーメイガスの魔法使いが集まっているはず……下手をすると火傷を負うことになってしまウ。

 ――いいかラ、そう急ぐナ。ティリスも連日の任務で疲れているだロウ?』

 

「……はっ」

 

 ティリスの装着したインカムからは、奇妙なイントネーションで話す少年の声が流れている。

 若く、甲高く、それでいて奇妙に『枯れた』印象のある声だ。ティリスはこの声の主を『ダン様』と呼んでいる。彼女よりも明らかに年若い声の主を。

 

『奴らは悪の爪(マーレブランケ)の二指をへしり折ったのダ。奴らも、そして我々も、もはや後戻りはできヌ。

 ――我々が律季(リーファン)を討ち取るか、律季(リーファン)とその仲間たちが我ら十二人を総て殺し尽くすか。それのみダ』

 

「勝利するのは我々です」

 

『いずれにしろ、そう遠くないうちに、我々は奴らと戦う機会を得ル。焦らずに時を待つのダ――わがバディ、ティリスよ』

 

「――承知いたしました。わが主様」

 

 

 

 ――螢視が気づく由はない。

 新たな悪の爪(マーレブランケ)の一指は、すぐそこのヘリに乗っていたことを。

 自らが投げかけた宣戦布告は、図らずも次なる敵に受諾されていたことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けーちゃん! 大丈夫!?」

 

「ははっ……さすがに、張り切りすぎちまったみたいだな……」

 

 力を振り絞りきってくたくたになったけーちゃんは、力なく空から落ちて来た。

 受け止めた私の腕の中で、『彼』は無邪気に笑う。

 

「飛びたきゃ私が載せてあげたのに。テレビなんか何度も出てるし、顔映されるぐらいそれこそどうってことないわ」

 

「……おいおい、バカ言うなよ。天道神社の巫女がホウキに乗ってる所なんか映ったら、それこそ大騒動じゃねぇか」

 

「……もう。律季くんもけーちゃんも、ムチャばっかりして……見てる方が怖いわよ」

 

「……ねぇ、こっからじゃ見えないんだけどさ……本当にこれ、街全部直ってんの?」

 

「手の届く限りはやった。壊れた水道管やガス管も塞いで、ばらまかれた書類とかも、ちゃんと元の位置に戻したよ」

 

「なにそれやばすぎない!?」

 

「……結果的には、こっちに味方して大正解だったな。こんな奴らを敵に回してたのかオレ達……」

 

「打算はないんじゃなかったの? 私たちに味方したことに」

 

「いやまあそのつもりだったけどさ。本気出したキミらがこんなに強いなんて思わなかったんだもん。ボクらの助力自体必要なかったんじゃないの?」

 

「……そんなことはねぇさ。むしろユウマが住民を避難させてくれたおかげで、この程度で済んでるんだよ。ケガ人がいた場合はそれも治さなきゃいけないから、疲労度はこれの比にならない。

 ――今回のMVPは間違いなくお前だよ、ユウマ。おれは要するにロイのしりぬぐいをしただけにすぎねぇ」

 

「いやあ、それほどでも……あるけど」

 

「なんでレンが照れてんの?」

 

「……そうね。ありがとう神瀬さん。私も、できたことといえば暴力を振るうことだけ……あなたがいなければ、人々の命は助けられなかったわ」

 

「――!! ふ、ふんっ」

 

 神瀬さんは耳まで真っ赤に染まって顔をそむける。感謝されることに慣れていないように見えた。けーちゃんはそんな彼女を優しい目で見ている。

 

「あ、そんなことより見なよ。ヘリが帰ってくよ」

 

「話のそらし方下手か」

 

「――おーい、炎夏さーん!!」

 

「……え?」

 

「これ、危ないじゃろうが」

 

 歩行者も車も通らない無人の道路に、ゆっくりこちらへ走ってくる一台の車が現れた。

 ――レイン先生の左ハンドルの高級車だ。右側の助手席の窓から律季くんが身を乗り出して手を振っている。

 

「レ、レイン先生!? なんで律季くんと……」

 

「なんでもなにも、さっきそこで合流したんじゃ。わしがいてはダメなのか?」

 

「い、いや……ダメじゃないですけど」

 

「……雹冬先生? そういえばさっきも炎夏(ホノー)が名前を……先生は律季たちとどういう関係なんですか?」

 

「炎夏の上司じゃ。同じ組織のな」

 

「「「――はぁっ!?」」」

 

 けーちゃんと神瀬さんと朝霧くんが声をそろえて驚いた。

 けーちゃんは当然、高校の養護教諭としてレイン先生と面識があるが――特に神瀬さんたちは教国のスパイとして、私についているフリーメイガスの魔法使いを探っていたに違いない。それがこんなに身近にいるとは思いもしなかったのだろう。

 

(保健室の雹冬先生が魔法使い……!? ってことは、律季や炎夏に魔法を教えた張本人でもあるってこと? となれば相当な実力者……)

 

(……そういやオレ達、なんでこんなキャラの濃い人に注目してなかったんだ? 炎夏の親兄弟から螢視のバイト先の人間まで洗ったのに、教師だけはなぜかすっぽり調査対象から抜け落ちてた……。

 ――いや、それ以上にあのロイがこんな美女見逃すか? ――まさかオレ達、この人に『何かされていた』のか……?)

 

「……律季から話は聞いているよ。おぬしら二人とも、教国から離反したそうじゃな」

 

「――! そ、そうだ……です」

 

「……結果的にはそうなりますね。こうなった以上、もう教国に戻るわけにはいかないでしょう。すぐにも追手がかかるはずです」

 

「なので、フリーメイガスの庇護を求めたいというわけか?」

 

「……はい。オレはどうなってもいいので、ユウマ一人だけでも助けてやってほしいです」

 

「――レン!」

 

「……いいや、それはわしが決めることではないよ。なぜなら今回の一件で一番心に傷を負ったのはわしではないからの。

 おぬしらを許すか許さないか――決めるのは、炎夏じゃ」

 

「!」

 

 水を向けられた私は、息を呑んだ。レイン先生がこれまでにないほど真剣なまなざしをモノクル越しに向けてきていたからだ。

 みんなが黙ったことであたりは完全に静まり返る。口を開くのが少しおっかなかった。

 

「……いえ、一番危ない目に遭ったのは螢視(ケージ)です。それを決める権利は、私ではなく螢視(ケージ)にあります」

 

「え? いや……おれは事情よく分からないし、まず雹冬先生の話から詳しく聞きたいって言うか……とにかく、判断はうちらのリーダーに任せるよ」

 

「……リーダー? って俺ですか!?」

 

「お前以外に誰がいる?」

 

「ああそうだ」

 

「うん」

 

「え、えぇぇー……うーん、そうですね。

 ――俺は元々ユウマさんたちを仲間に入れる気だったんで、結論は前から決まってるんですよ。今となってはお二人がそんなに悪い事した印象もないし。

 なにより、俺たちだけじゃロイは倒せず、秋月先輩の本心にも気づけませんでした。今の結果があるのはお二人のおかげです。だから感謝してます。許すも許さないもないですよ」

 

「……! 律季っ」

 

「でも俺は、フリーメイガスに入っていい条件とかはよく知らないんで……最終的には、そのへん詳しいレイン先生に決めてもらう方がいいかと」

 

「!? 一周回って!? ――ま、まあ、今の話を聞いたところ、少なくともおぬしらを拒んでいる者は誰もいないようじゃ。

 ――現在この街にはフリーメイガスの救命班30名が送り込まれ、遭難者の捜索にあたっておる。彼らとともにこの街の被害状況を調査せよ。それをもって、おぬしらの『最初の任務』とする」

 

「――任務? じ、じゃあ!」

 

「おほん。あくまで緊急の措置としてではあるが、おぬしらをフリーメイガスの一員として迎え入れるとしよう。

 確かにおぬしらは途中経過において、いろいろな悪事を働いたが――その結果出た被害はゼロに等しく、救った命の方がずっと多い。

 それに、わしも顔を見られてしまったからな。おぬしらをこのまま野放しにしておいて教国に囚われでもしたら、いささか困ったことになる。管理下に置く方が安全じゃ」

 

「――あ、ありがとうございます……」

 

「……よかったな、二人とも」

 

「――うん」

 

 けーちゃんの言葉に、神瀬さんはうつむいて声を震わせている。朝霧くんはレイン先生に深々と頭を下げていた。

 とりあえずはすべて丸く収まるわけだ。今回の一見は、これにてめでたしめでたし――

 

 

 

 

 

 

 

 

「「――――っっっ~~~~~~~♡♡♡♡♡!!??」」

 

 

 

「「「「――え?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ――とは、いかないようだ。

 私とけーちゃんの両方の瞳(・・・・・・・・・・・)にハートマークが現れる。私の体中から炎によるものではない熱気が「むわむわ♡」と立ち上り、けーちゃんが内股になって胸を抑える。元々性別が男であるためか、その動作によって手が乳肉に「ぐにぃ……♡」といやらしく沈み込むことも、意に介さない。

 

「……ふっ、はぁぅ……っ♡♡ な、なんだよこれっ……♡ 胸の先がむずむずして、お腹の奥がうずく……っ♡」

 

「――き、きちゃったのね……♡ 〝聖痕(スティグマータ)〟の『副作用』が……♡」

 

「あ! そ、そうか……すっかり忘れてた! 秋月先輩からも魔力を貰ったから、二人とも症状が出ちゃってるのか……!」

 

「は……? な、なんだよそれ……っ♡?」

 

 ――そう。みなさんご存じのアレである。律季くんの能力の副作用だ。

 決して慣れたくはない。ないのだが……もうすっかり慣れてしまって、私も慌てない。けーちゃんだけが困惑に目を白黒させていた。

 医療のシンボルを思わせる十字のマークを、ハートでさらに上書きされた瞳を。未経験の快感に戸惑い、うっすら涙さえ浮かべている。

 

「おやおや、一難去ってまた一難というわけじゃな……となれば、ヤることは一つしかないの♡」

 

「ぅぅぅっ……くそっ、どうしてだ……なんでこんな気持ちになるんだっ♡ わけわかんねぇよぉ……っ♡

 ――なんでおまえに、からだをさわられたくなるんだ? おまえのせいなのかよ……律季ぃっ♡♡」

 

「ッッッ!! ……せ、先輩エロぉ……っ!! しかもあれですか、俺に触られたいってことは合意済みですか!? 

 ――俺も秋月先輩のおっぱい触りたいです!! 対戦よろしくお願いします!!!!!!」

 

「じゃないわよ! 知り合いの元男になんで当然のように欲情できるわけ!? やっぱり君、おっぱいおっきければなんでもいいんじゃない!!」

 

「……な、なんていうか……ドンマイ炎夏」

 

「ホントよっ!! ……うぅぅぅ、珍しく綺麗に締まりそうだったのにぃ」

 

 






 【 Malebranche ―― 9/12 】

I:?????
II:Reign Gregorio(Runaway)
III:?????
IV:?????
V:?????
VI:?????
VII:?????
VIII:?????
IX:Roy Stringer(Defeated)
X:Mars Irvine (Defeated)
XI:?????
XII:Tyris Flamberge





TO BE CONTINUED
次回:「28. 炎夏にファーストキスを迫る」
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