水鏡律季と爆乳魔女 ~ハングリー・フォー・バスト~   作:黄緑信号

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28. 炎夏にファーストキスを迫る(♡♡♡)

 

 

 現在、真序市内にフリーメイガスの魔法使いたちの救助班が放たれ、逃げ遅れた人がいないかの捜索にあたっている。ユウマさんたちは最初の任務として彼らとの共同作業に向かった。

 二人と別れた俺たちが、今どうしているかというと――

 

 

 

「――ふぅ~~~~~~っ♥」

 

「きゃぁんっ♡ も、もう……っ♡」

 

「――ふぅ~~~~~~っ♥」

 

「んんぅ……っ♡ な、なんだよ……っ♡」

 

 ――両手に花とは、まさにこのことだ。

 俺は、レイン先生の運転する高級車の後部座席の中央で、二人の爆乳美女を抱き寄せている。左に炎夏さん、右に秋月先輩。二人の腰に手を回しながら、お耳に交互に息を吹きかけた。

 

「……な、なんか言えって……♡」

 

「あんっ♡ ――無言でお尻掴まないでよ♡」

 

 左右にだいぶスペースは余っているが、あえてギチギチに詰めさせている。

 おかげで二人のむっちりと張り出したお尻の肉や横乳が体中に当たる。最高の気分だ。魔装(ペルソナ)姿のままの二人のお尻の下のシートに両手をもぐりこませて、温かさと体重を指で感じる。

 

 ――なでなで♡♡ さわさわ♡♡ もみもみもみ……♡♡♡

 

「ひぃ……っ♥ うひ……っ♥」(うわうわうわ……!! こ、こんなことまでしちゃってるのに、二人とも全然嫌がらないぞ……!! 頭おかしくなりそうだ……ッ!!)

 

「くくくっ、目ギンギンじゃぞ律季♡ でもわかるぞ、紳士ぶる余裕なんかないよなー♡」

 

「おい、もうお尻はやめろってぇ――どうせさわるなら、胸にしてくれよぉ……っ♡♡」

 

「!!!!!!! ――う、うわぁぁぁッ!!」

 

「ちょっ!? 変な意味じゃないからな!? ――んぃぃっ♡♡」

 

「だ、だめよけーちゃん……すっかりお猿さんモードになっちゃってるわ」

 

 秋月先輩の殺人的な誘い文句を受け、俺の理性は吹き飛んだ。

 クリーム色の癖っぽいショートボブヘアに鼻をつっこみ、顔面ごとぐりぐりしながら匂いを嗅ぐ。あたたかくやわらかい女の子そのものの身体に、へこへこと全身をこすりつけ、服の上から乱暴におっぱいをまさぐった。

 

「炎夏さんっ! わ、わきっ、腋見せて!!」

 

「……は? 腋……?」

 

「いやよ! あれ一番恥ずかしいもん!!」

 

「サイコキネシス!!」

 

「!? ――きゃぁっ!?」

 

 烈日の聖槍(ゾーネンランゼ・ヒンメルヴェーク)の巫女衣装は袖が上着と分離していて、腋の部分が丸出しになっている。

 念力で無理やり炎夏さんの腕を上げさせ、すかさず顔をつっこんだ。

 

「んくっ、じゅるじゅるじゅる……♥ ぺろぺろぺろぺろっ♥」

 

「う゛ぅぅぅぅぅ……っ、もぉぉぉぉ……♡」

 

「あー、炎夏さんの腋汗美味ぁ……♥ たくさん運動した後だから、いつもよりほんのちょっとだけしょっぱいです……♥」

 

「知らないわよぉっ♡」

 

 炎夏さんの歯をくいしばって恥ずかしがる顔を、穴が空くほどガン見する。

 女の子の恥ずかしいところから直接舐め取った汗を――『ごくりっ♥』と飲み干す。喉を通るところを本人にまざまざと見せつけた。

 そんな俺の事を、炎夏さんは一瞬驚いたように目を見開いて――『じとぉ~っ……』と、睨みつけてくる。

 

「……変態。さいってぇ~……」

 

「っ! そ、それ、もっと言ってくださいっ。もっと近くで睨んでっ!」

 

「ええ、わかってるわよ。この状態の君は、もう何を言ったってノーダメージだってね――はぁっ。怒られて喜ぶとか、完全にロイと同類じゃないの……」

 

「その割におぬし、ロイにやられるよりは嫌がっておらんように見えるのう」

 

「比較対象がおかしい!!」

 

「お、おい。いい加減に答えろよ。お前らどういう関係なんだ? これからどこに連れてかれるんだよ、おれ達」

 

「俺と炎夏さんは恋人です!」

 

「違うわこのバカぁ!?」

 

 口を拭いながらノータイムで答える俺を、炎夏さんがぽかっと殴った。ありがとうございます!

 ミラー越しに目元だけ見える運転席のレイン先生は、「今向かっているのは――わしの家じゃ」と告げる。

 

「偶然じゃが、わしのマンションはこの市内にある。おぬしらをそこへ連れて行き、必要な処置を行う」

 

「必要な処置、って……?」

 

「律季がわしら三人のおっぱい揉み放題の、ハーレムセクハラパーティーじゃ♡」

 

「――はあっ!?」

 

「炎夏はすでに知っておるが――おぬしらが今発情状態にあるのは、律季の能力の副作用。律季に力を吸われたことで、おぬしらの体が一時的な魔力の欠乏状態に陥り、本能的にそれを取り戻そうとする事で起きる症状じゃ。治す方法は、律季に性感を与えてもらうことで、失った分の魔力を体内で再生産する以外にない。

 ――ちなみに、時間がかかるごとにほてりは強くなるからの。辛いのが嫌なら、さっさと腹をくくることじゃ」

 

「――え、えぇ~~~~~~~~~~……雑ぅ……」

 

「……すみません。俺の『生本能の拳(リビドーナックル)』が変な仕様をしてるばっかりに……」

 

「いや、まあ、そのおかげでマルスに勝てたわけだから、あんまり強く言えないけどさ……。

 ――でも、ちょっと安心したよ。なにもお前ら、自分から好き好んでエロい事をしてたわけじゃなかったんだな。戦いのために仕方なくやってただけか」

 

「! そ、そうよ! 仕方なかったの!」

 

「ああいえ、俺はこの状況をめちゃめちゃ楽しんでますよ。炎夏さんには悪いですけど、大義名分のもとに毎日おっぱい揉めて、最高に幸せです。

 『ホントは嫌だけど仕方なく~』なんてごまかしはしませんよ。そんなの炎夏さんにも失礼です。――すーっ、くんかくんか」

 

「じゃないわよ」(びしっ)

 

本体(おまえ)がそんなこと考えてっから能力も変な仕様になるんだろ!」

 

「うむ、かっこいいぞー♡ 正直なのはいい男の証じゃ♡」

 

 乳暖簾のかかった横乳を嗅ぎながら力説する俺の脳天に、炎夏さんがチョップをくらわせる。レイン先生はいつも通り俺の言動を全肯定する。そんな俺たちを秋月先輩が、頭の上に?を浮かべながら見ていた。

 

「……つーか、お前はいいのかよ律季? おれなんかの体触って、興奮するのか……?」

 

「はい! すっごく!!」

 

「――っ。な、何即答してんだよ……お前、あれだぞ? おれは男だぞ? どうやってこの姿になったのかも、いつ元の姿に戻るかもわからねぇ、得体のしれない奴だぞ。

 そりゃ今は胸もでかいし、多少魅力的に見えるかもしれないけど……男だった時の顔がちらついたりはしないのか?」

 

「だからこそいいんじゃないですか! TSっ娘の醍醐味!!」

 

「ガッツポーズしながら言うな! 上級者すぎて理解できねぇよ!?」

 

「――むぅ……」(ぴしぴし)

 

「うおっ、ありがとうございます。――え? なんで?」

 

 炎夏さんが拗ねた顔で、俺のほっぺたを指ではじいてくる。わけがわからないが、とりあえず無抵抗で受けることにした。ご褒美です。

 するとなぜか秋月先輩まで難しい顔で眉根を寄せ、腕を組んで下を見た。その間もずっと炎夏さんは俺にデコピンをしてくる。びしびしびし。

 

(ったく、とんでもねぇ奴だな……レンたちの方が全然まともじゃないか。信用してたのに、こんな変態性を隠し持っていたなんて。

 戦闘面では頼れるけど、別の意味で炎夏(ホノー)の身が心配になってきちまった……炎夏(ホノー)はこう見えて意外と押しに弱いから、今に大変な事になっちまいそうで怖いな)

 

「ねぇねぇ秋月先輩」

 

「なんだよっ。まだ何かするのか?」

 

「――これ、食べますか?」

 

「……は?」

 

 俺が差し出したものに、秋月先輩は一瞬呆ける。

 それは、炎夏さんが今朝焼いたチョコチップクッキーだ。

 

「戦いが終わったら食べようと思って、ポケットに入れてたんですけど……この通り、ほとんど崩れちゃってるんです。でも、一枚だけ綺麗な形のが残ってるから、どうかなって」

 

「ああ、いいわよ。――ちゃんと、けーちゃんの分も用意してあるから。今朝学校に来なかったから、渡しそびれちゃったけど……ほら」

 

「――あ、うん……」

 

「……炎夏おぬし、スマホは忘れてきたくせに、なぜそういう用意だけはしっかりしとるんじゃ?」

 

「忘れたわけじゃないですよ。迷いを振り切るためにわざと置いてきたんです。両親からの連絡とかが入っちゃうと、決意が鈍っちゃうので」

 

「つくづく不器用なことじゃの……そういや両親といえば、連絡は入れんでいいのか? 学校もあんな事になったし、おぬしの事を心配しておるかもしれんぞ」

 

「――あっ、そっか! やばいなぁ、こんな時間まで帰ってないし、失踪したとか思ってるかも……」

 

「かまわん。ユウマを行かせて暗示をかけてもらおう」

 

「さっそく人遣い荒すぎません!?」

 

「いいっすよそんなの。おれから連絡しときます」

 

 せっかく仲間になってくれた矢先に雑用をやらせるのはユウマさんがかわいそうだ。秋月先輩がスマホを持っていてよかった。電話で話すと声の違いがバレるので、炎夏さんの親御さんにメッセージを打つ秋月先輩に、炎夏さんがクッキーを差し出す。

 

「あーん」

 

「――あ、あーん……むぐ」

 

「……どう? おいしい?」

 

「……うん、おいしい。……ありがとう」

 

「いいのいいの。むしろ急になんだって言われるかと思ったから、気に入ってくれてよかった」

 

 秋月先輩が頬杖をつくふりをして、さりげなく手で顔を隠した。俺は肩が触れているので、先輩の体温が上がって小刻みに震えているのがわかる。

 ――感極まってるな。無理もない。この人が炎夏さんに向ける激重感情は、すでに知っての通りだ。

 

(……間に挟まってるのがなんかすごく申し訳ないな。二人とも尊すぎるだろ)

 

「律季くんも食べてなかったんだね。じゃあ三人で一緒に食べよっか」

 

「……そうですね。いただきます」

 

「おぬしら発情してるの忘れてない? なに普通にアオハルしとるんじゃ。

 ――ほれ、着いたぞ。ここがわしの家じゃ」

 

「――ぶっ!? ごほっ、ごほっ……! こ、ここ……ですか!?」

 

 窓に映る景色を見た瞬間、飲み込んだクッキーで俺はむせた。

 ――まるで駅前の巨大ホテルみたいな、とんでもなく高い建物。車窓からでは頂上が見上げられないほどだ。

 

「タ、タワマンじゃねぇか……。このレベルの物件は市内にもニ、三しかないぜ」

 

「……うそ。わ、私にももっと見せて」

 

「わしの部屋は三十階じゃ。自慢で言うが、最上階じゃぞ」

 

 クッキーをポリポリかじりながら、炎夏さんと秋月先輩があっけに取られてマンションを見上げている。B2まである地下駐車場に車を入れながら、レイン先生がそう語った。

 中に停まっている他の車も、立派なものばかりだ。シルバーやブラックばかりなのが、すごく金持ちの車って感じがする。蛍光色や赤といった目立つ色合いのはあまり見当たらない。

 

 ――レイン先生の車もそうだ。お高いものに違いないとは思っていたが、実際に乗ってみるとさらに凄さが伝わる。舗装のいい都市部の道路とはいえ、今まで乗っていてほっとんど揺れがなかったのだ。

 養護教諭……というか、普通の公務員の収入で、こんなとこ住んだりこんなのに乗ったりできるわけがない。俺たちをここに連れて来た時点で、その不自然さを隠す気もないのだろう。

 ……今まで謎だったレイン先生の素性も、もしかしたら今日聞けるかもしれない……。

 

「さ、行くぞ。エレベーターで部屋まで上がる」(ふにゅっ♡)

 

「っ……! ふぉぉぉ……!!」

 

 レイン先生は車から降りた矢先、自然に俺の右腕を抱き寄せ、おっぱいの谷間で二の腕を包んだ。不意打ちの快感に危うく白目をむきかけた。

 

「心配するな。さっきので住人は避難して誰もいないはずじゃ。見られる心配はない」

 

「そ、そういう問題じゃ――」

 

「う、うぅぅぅ――お、おれもやりますっ!」(むにゅっ♡)

 

「「うぇぇぇぇっ!?」」

 

 突然の秋月先輩の行動に、俺と炎夏さんの声が揃った。

 『彼』は空いていた俺の左腕に回りこみ、レイン先生の真似をしておっぱいを押し付けて抱き着いてきたのだ。

 

 先輩は体中ガチゴチで、耳までトマトのように真っ赤になって、死ぬほど恥ずかしそうだ。

 ――だったらなんで!? 一から十まで意味がわからない!!

 

「は、早く行こうぜ……副作用ってやつの処置をしないといけないんだろ?」

 

「それは……そうですけど。何をしてるんですか……?」

 

「……別に。どうせ体中触られるなら、今のうちから慣れておこうと思っただけだよ……。おれの胸でも興奮するんだろ? もっと喜べよ……」

 

「はっ、はい! それはもうすごく!」

 

 どういう心境の変化だ? 炎夏さんは様子のおかしな秋月先輩の腕を引いて、すごくおろおろしている。秋月先輩は彼女に意識を向けず、ただただ思い詰めた顔で俺の目を見つめていた。

 

「……い、いいんですか? そっちがそうくるなら、もういつもの感じでいきますけど……」

 

「……いい。炎夏(ホノー)にやってる事を、おれにもやってくれ」

 

「――本当にいいんですね? 後から取り消しなんてできませんよ?」

 

「……ひっ♡ い、いいって言ってるだろ……♡ そんなマジな目するな♡ ――はぅっ!?」

 

 目を合わせられたぐらいで怖気づく人に耐えられるとは思えないが――すでに二度念は押した。もう情けをかける気はない。そっちがそのつもりなら俺も本気で行く。

 秋月先輩の魔装(ペルソナ)のスカートに手を突っ込んで、鼠径部のきわどいところを指でなぞった。

 

「っっっ~~~~~~♡♡」

 

 ただそれだけでも感度の上がった肉体は過敏に反応する。ハートの浮かんだ秋月先輩の瞳の中で火花が散った。

 それ以上は決して踏み込まない。ギリギリのところを指で責めて焦らし続ける。

 

「……大丈夫ですよ。レイン先生のお部屋に着いたら、しっかり楽にしてあげますからね……」

 

「んひぃっ♡ み、耳元でささやくな……っ♡」

 

「律季くん、私も私もぉ♡」(むんにゅっ♡ むにゅぅぅ~~~~~♡♡)

 

「っ♥ ごめんなさい炎夏さん。もう少しの辛抱ですからね……♥」

 

 すっかり性欲に支配された炎夏さんが、空いている俺の背中にしなだれかかって、固くなった胸の先端をこすりつけてくる。――壁オ〇じゃねーか!?

 早く部屋まで着かないとこっちの精神も持たない。三人の美女に求められながら俺はのろのろと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ここが、わしの寝室じゃ」

 

 俺たちの目の前には、薄いピンク色のシーツがかかったキングサイズのベッドが置いてある。一人で寝るには不自然に大きすぎた。まるで、これから行われることを最初から見越しているかのようだ。

 レイン先生は部屋にカギをかけた。当然玄関は施錠してあるし、俺たち以外には誰もいないにもかかわらずだ――それはきっと、誰かの侵入を防ぐためではなく、炎夏さん達の退路を断つため。

 

「はぁ……はぁ……♡」

 

「律季くん……もう、待ちきれないよ……っ♡」

 

 部屋に着くまでの移動中、俺に乳首をこすりつけ続けた炎夏さんと、俺にお股をいじくられ続けた秋月先輩は、もう完全に『できあがって』いた。

 まず俺がベッドのふちに座り、震える手で炎夏さんを招いた。隣に座った彼女に、すかさず抱き着いて詰め寄る。

 

 

 ――もぎゅう~~~~~~~っ♡♡♡

 

「ふぁぁっ♡!!」

 

 乱暴に炎夏さんのおっぱいをわしづかみにした俺に、まだ立ったままの秋月先輩が息を呑んだ。

 興奮で瞳孔の開いた炎夏さんの顔が間近にある。俺の心臓もうるさいほど鳴った。――こうなったらもう、なるようにしかならないぞ。

 

「ねぇ……炎夏さん、覚えてますか? さっきの約束」

 

「――っ♡ え、えぇ……もちろんよっ♡」

 

 ――ぴんっ♡ ぴんっ♡ ぴんっ♡

 絶えず乳首を指ではじき、横乳をもみほぐしながら、俺は炎夏さんに問いかけた。

 

「な、なんだよ? またおれの知らない話か……?」

 

「ロイ達に勝てたら、炎夏さんがちゅーしてくれるって約束です」

 

「――なっ、なんだとぉっ!? 律季お前、どさくさに紛れてそんな約束取り付けたのか!?」

 

 秋月先輩はいきり立って俺の肩を掴んだ。――うん、そりゃそう思うよな。

 レイン先生も「おぬしもワルよのー♡」みたいな生温かい目でこっちを見てるし。

 

「ち、違うわけーちゃん! ――私が、自分から言い出したの……っ」

 

「え゛っ!?」

 

「ほう?」

 

「そ……そうなんです。俺も言われた時は『はぁっ!?』って思ったんですけど……驚いた顔したら冗談で済まされちゃうかと思ったんで、あえて流しました」

 

「お前も計算高いな!?」

 

「しかし律季はそれでがんばってくれたわけじゃし、もう取り消すわけにはいかんのう……♡」

 

「――はい♡ ちゃんと覚悟はしてきました……♡

 だって、けーちゃん助けてくれたお礼なんて、それぐらいしか思いつかないもん……♡  唇ちょっとくっつけてあげるだけで、あそこまでしてもらったお礼ができるなら、全然安いっていうか……」

 

「――!! う、うそだろ……炎夏(ホノー)

 

 俺の顔をしっかり見て決意を伝える炎夏さんに、秋月先輩は愕然とした。

 先輩にとっては親友以上の大切な存在、片思い以上の感情を向ける相手である炎夏さん――彼女の純潔を、俺がもらい受ける。

 

 秋月先輩には見せつける形になってしまう。そのことに罪悪感はある。

 しかし――俺だって炎夏さんが大事だ。誰にも渡したくない。たとえ秋月先輩にもだ。

 

「――あっ」

 

 すっと軽く力を入れて、炎夏さんの上体をベッドに倒した。

 そのまま俺は両足をベッドに上げて、四肢で炎夏さんを閉じ込めるようにする。

 

「い、いきますね」

 

「――ふえっ? あ……ちょ、ちょっ……待って!!」

 

 眼下の炎夏さんの唇めがけて、ゆっくりと顔を近づける。すると、つい一秒前まで緊張しながらも冷静だった炎夏さんが、なぜか突然取り乱しはじめた。

 下に組み敷かれた体勢から、俺の胸を両手で押して必死で抵抗してくる。

 

「むぅぅっ! むぅ~~~~~~っ!!」(必死)

 

「なんじゃ炎夏。覚悟はしてきたと言ったろう」

 

「ち、違うんですっ! 私、そのっ、ほっぺたのつもりでっ……おくちでするつもりなかったんです!」

 

「え?」

 

 キスにはやっていた俺は抵抗されても止まらなかったが、その言葉で少し収まった。

 ――そ、そうきたか。今まであれだけ身持ちが堅かったのに、自分からファーストキスを許すなんてどういう心境の変化かと思ったが・……

 

「……いきなりベッドに押し倒すから、なにかと思ったけど……そっか、律季くんは最初からおくちのつもりだったんだ」

 

「いやそりゃ、あんなお姉さんオーラ出しながら言われたらそう思いますよ……なんすかほっぺたって。乙女すぎません?」

 

「だ、だってお礼のキスって言ったらチークキスのイメージじゃない?」

 

「まあ確かにそうですけど。助けられたお姫様とかがやるやつですよね」

 

「私だって、お口でやるちゅうなら、さすがに安いとは言えないわよ……♡ ――えーっと……どうしよっか? あはは……」

 

「こっちが聞きたいですよ。出鼻くじかれたせいで、俺も恥ずかしくなってきました……あの、一応確認したいんですけど、炎夏さんって誰かとキスしたことあります?」

 

「あるわけないでしょっ。お付き合いの経験だってないのに……強いて言えばウチの猫とはたまに鼻ちゅーしてるけど、ほんとにそれぐらい」

 

「じゃあ皆無じゃないですか……」

 

「……うん。完全にはじめてだよ」

 

 うわ~~~~~~やばい。見つめ合うと照れてしまう。いつも思うけど、近くで見れば見るほど美人だ。

 炎夏さんの美人さんっぷりを実感すると、ゾクゾクして征服欲をそそられる時と、圧倒されてエロい気分じゃなくなってしまう時がある。今は後者だ。無理やりキスなんてとてもできない。

 

「……あ、あのね? 律季くんがおくちじゃないとダメだって言うなら……それでも、いいんだよ? 私一人じゃ何もできなかったし、本当に感謝してるからさ……」

 

「……いや、俺はほっぺたにキスでも全然ありがたいんで、唇じゃなきゃダメってわけじゃないですけど……。

 ――ただ、今日は一歩間違えば、ロイに炎夏さんをとられる所だったので、このチャンスを逃がしたくない思いは正直あります」

 

「……そうじゃの。ロイを倒して終わりではない。『次の機会』なんてもんがあるかどうかも、今からでは分からん」

 

「もちろんだからといって、それに炎夏さんが付き合わなきゃいけないわけじゃありませんよ。あくまでこれは俺のわがままです。

 お礼なんだからちゃんとキスしろ……なんて卑劣なことは、口が裂けても言うつもりありません。それじゃロイ以下のゲスになっちゃうから」

 

「……な、なによ。いっつも無理やりしてくるくせに、こんな時だけちゃんとしないでよ」

 

「ちゃんとしたいですよ。炎夏さんの大切なファーストキスなんですよ?」

 

「……うぅ……♡」

 

 これはしっかり話す必要があると思い、いったん俺はベッドに正座しなおした。炎夏さんも背中に手を添えて起こす。お互い正座でお見合いのような感じになった。

 

「……神前式(おぬしら)のやり方ではないが、キスとは婚姻において神への誓いを表すほど重たい行為じゃ。まして初めてともなれば、それは女の子として神聖なものを捧げる儀式にほかならぬ。宗教に関係なく、万国共通じゃ。

 その上で聞く――おぬし本当に、律季では嫌なのか? ファーストキスの相手として、ふさわしくない男と思うか?」

 

「うっ……! ――そっ、それはぁ……♡」

 

(……!)

 

 上目遣い気味に炎夏さんが俺のことを眺める。その目つきに、俺は人生最大の緊張を味わった。

 ――それは『本気の品定め』だ。この目の奥で、出会った時からの俺の言動のすべてを、この人は真剣に思い返している。

 告白して来る学校中の男をひとりひとり真剣に見定め、袖にし続けてきた女性が、いま俺をふるいにかけているのだ。それもおそらくは、過去最高の厳しさで。

 

 そう――自分の大切なものを捧げるにふさわしいかどうか、判断するのはあくまで相手側だ。

 男がいくら腕力に優れていても、そこを曲げることはできない。ごまかしは通用しない。審判の結果を待つしかないのだ。

 

 

 

「……ううん♡ いやじゃないよ……♡ 律季くんなら、いい……♡♡♡」

 

「~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」

 

 

 

 ――面と向かってそう言われた瞬間、歓喜で魂がひっくり返った。

 どんな大学に受かるよりも難しい――炎夏さんからの『合格』宣言。そのたったひとりの定員に、自分がなった。

 興奮と勝利感で顔がこわばり、閉じたままの口の奥で奥歯が震えて音を立てる。

 

「――律季くん()、したいの……?」

 

「はっ、はいっ。もちろんです」(『も』!? この人今『も』って言ったぞ!?)

 

「……私も、その……他の誰かにされるぐらいなら、君の方がいいからさ♡ 律季くんがそんなに欲しいなら……あげちゃってもいいかな、って……♡」

 

「あっ、あわわわ……!!」(し、しかも自分からっ……!)

 

 抗えない性欲ではなく、確かな親愛と信用がこもった笑顔を俺に向けながら、炎夏さんはゆっくりと手で俺の頭を挟んだ。

 

「……幸せにしてあげるね♡ ん……♡」

 

 正座の体勢から膝でにじり寄って、紅潮した顔を迫らせてくる。俺は待望のキスにもかかわらず、あまりのことに頭がショートし、指一本たりとも動けない。いつの間にか、ほぼ無意識に目を閉じていた。

 

 

 

 

「――ち、ちょっと待ったぁ!!」

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 ――お互い覚悟を決めたまさにその時、秋月先輩が大声で横槍を入れて来た。

 俺と炎夏さんは、揃って驚きのあまり、座ったままの体勢でベッドから数センチジャンプした。

 

「けっ、けーちゃん……!! こっ、これは……!!」(わ、私はいったい何を……!?)

 

「すっ、すみません! えらいもの見せちゃって……!」

 

 完全に二人の世界に入り込んでしまって、秋月先輩が見ているのを忘れていた。な、何やってんだ俺たち? そりゃ止められるに決まってるだろ。

 だが――秋月先輩は怒っているわけでも、驚いているわけでもなかった。なぜか涙目で下唇を噛んで、床の一点を見つめている。

 そして俺に向かって顔を上げて、意を決したように口を開いた。

 

「律季……炎夏(ホノー)とキスするのはやめてくれ。――かわりにおれがしてやるから、それで我慢してほしい」

 

「……へ?」

 

 

 




おまけ:各キャラの好物

律季:鍋物(特に魚介系)、エビフライ
炎夏:うな丼、タコの刺身、千歳飴
螢視:釜揚げうどん、酸味の強い品種のリンゴ、カルピスロック
レイン:中華全般。特に麻婆豆腐、チンジャオロースなど四川料理
ユウマ:高菜チャーハン(米そのものが好き。三食すべて大盛りごはんを食べる)
レン:ホットミルク、チョコレートパフェ
ロイ:バーベキュー。特にとうもろこしの焼き加減に並々ならぬこだわりを持つ
マルス:エナジードリンク、オニオンリング(決してタレはつけない)
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